怪しい図書館 前編 真
半生死神の主人公、可解 舞武の親戚の女の子が巻き込まれた、ちょっとだけ不思議で全く怖くないお話、今ここで始まります
小学3年生の名探偵少女、可解 芽衣[かかい めい]は気がつくと図書館に迷い込んでいた。どのようにしてここに迷い込んだのか彼女には分からなかったが本の好きな彼女には関係ないことだった。そこには誰もが手の届かないような高い棚とぎっしりと詰められた数々の本があった。
「凄いわ!ここにある本たち。お父様の書斎よりも沢山ある。一生かけても読み切れないんじゃないかしら。」
興奮していた芽衣の元に誰かが現れる。
「嬢ちゃん。こんな本はどうかな?なかなかに面白いぜ?」
芽衣は周囲を見渡すもののその人物は一向に見つからない。
「もっと下を向け。下だ!」
そう促され下を見るとなんとウサギが喋っていたのだ。
(なんて可愛げのない兎だこと。いっそ喋らなければ可愛いのに。)
「あら、どんな本かしら。」
芽衣はウサギからその本を受け取りペラリと開き、1ページ目に目を向けた。
◇◇◇◇◇
「あら、どんな本かしら。」
芽衣はウサギからその本を受け取りペラリと開き、1ページ目に目を向けた。
「これは・・・
◇◇◇◇◇
「これは今起こってる出来事が記され続ける本なんだ!面白いだろ?」
「そうね。ありがとう。」
(現実的じゃなくてあり得ない存在しないような兎からふざけた本を貰ってしまったけどまぁ良いわ。いつか読みたくなる日が来るかもだわ。例えば誰かの心の声が読みたくなった時、とか。)
今まで饒舌だった兎は黙ったまま、可愛い仕草をしてピョコピョコと跳ねてどこかへ行ってしまった。芽衣は本を手に持ったままフラフラと歩いていく。しばらくすると開けたところに出てくる。
そこには大きな机に4つの椅子があった。偶然なのか、必然なのか。そこには四人の少女が集まっていた。
「立ったままというのもあれですし折角この場に四人もいるので座って本についてのお喋りでもしませんか?」
一人の少女が口を開く。
「あぁ、自己紹介がまだでしたね。私の名前は回生 輪廻[かいせい りんね]です。永遠の小学4年生にしてこの図書館の管理をしてるんですよ。あなたは?」
「可解 芽衣ですわ。私は小学3年生にして名探偵ですの。お父様やお母様に保護者として私にできない事をサポートしていただきながらやってますわ。」
「次はあなた。お願いします。」
そう言っては不良少女に自己紹介を促した。
「なんで順番に自己紹介する流れなんだよ。まぁいいか。人と話せたのは久しぶりだからな。少しくらい付き合ってやるよ。ウチの名前は金子 得[かねこ どく]。13歳の中2だ。親父が金子グループって会社の社長やってるけどウチには関係ないから。」
「金子グループの御曹司か。凄いじゃないか!おっとすまない。僕の自己紹介がまだだったね。僕は神宮寺 千代[じんぐうじ ちとせ]だ。みんな、仲良くしてほしいな。」
カッコいいボーイッシュな少女はそう口にする。
(回生 輪廻に金子 得?私が解決出来なかった事件の・・・。なぜこんなところに?そしてもう一人の少女、神宮寺 千代。彼女は一体何者なのかしら。)
「さて、仲良くする・・・と言っても何をしようか。僕はなんとなく考えてるんだが聞いてくれるかい?」
「何でしょう?」
「君たちもそれぞれ持っているのだろう、この本を。これは今起こっている出来事が記される本だと聞いたよ。」
少女たちはデザインの違うそれぞれの本に目をやった。
「そこで僕は思ったんだ。つまらない内容が書かれていたら今後の読者くんの反応が面白いと思わないかい?そこの君?ブラバはよしてくれよ?」
「何を言ってんだコイツ・・・。」
得はその毒舌を見せつける。
「ということで、『本当に怖くない話』で怪談話をしよう。せっかくなら全員に話してもらいたいし、僕はみんなの話が聞きたい。まずはこれで親睦を深めようじゃないか!」
「みんなで順番に回しながら話していくのは私も賛成です。」
「ウチもどうせ暇つぶしに過ぎないからなんだっていいぜ。」
「ということで芽衣くん。どうかな?」
「みなさんがやるというのであれば私も参加させていただきますわ。」
「さて、では始めようか。まずは言い出しっぺの僕から話し始めるよ。」
千代はみんなが千代の話に耳を傾けようとするまで一息ついた。そして彼女はおもむろに自身の話を始めた。
◇◇◇◇◇
「あるところにね、麻雀が好きな大学生の集団がいたんだ。彼らの一人は山奥に別荘を持っていたんだ。その別荘は正方形の面白い形の部屋があってね?そこで1つの台をみんなで囲んで夜更かししながら麻雀をし続けたんだよ。誰もトイレにさえ抜けることなく全員で3時間ほどしていたんだ。」
(既に少し怖そうな雰囲気が出てしまっているけどここからどうやって怖くない話に繋げるのかしら。)
「夜の2時になった時にね、誰かが言い始めたんだ。『肝試しをしないか?』って。麻雀ばっかやっていたのも少し飽きたんだろうね。電気を落として部屋の角に散ったんだって。あらかじめ決めた人が動き始めて角まで移動したらそこにいる人の肩を叩いて今度は肩をた叩かれた人が次の角へと向かうんだ。」
(読んだことあるわ。これ、有名な怪談でしょう?そこからどう怖くなくなるのかしら・・・。)
「彼らはそれを100周繰り返したんだけど何も起こらなかったんだ。なぜだか分かるかい?元から5人だったんだよ。」
◇◇◇◇◇
「なんだよ。下らない話をしやがって。」
「得くんはこの流れで怖い話をするかと思ったのかい?言ったじゃないか。この本を読者ががっかりする本にしたいって」
そう言って千代は持っている本をコツコツと叩いてみせる。
(本当にこの話は怖くない話なのかしら?全員で麻雀をしていた。麻雀は最大でも四人までしか1台で遊べないはず。そして部屋は正方形。あえて怖く感じさせる表現を選んで話したようにも感じるわね。)
「ハードルが上る前に次はウチが話す。」
得は千代とは違い、もったいぶらずに唐突に話し始めた。
◇◇◇◇◇
「幼稚園児の小さな女の子がいたんだ。その子はウサギのぬいぐるみが大好きだった。その子が持ってるぬいぐるみは既に黒ずんでいて寝る時だろうと抱きしめ、親が一瞬でも触ろうとするとすぐ起きて親のことを威嚇するんだとよ。だからその親はぬいぐるみに触れるタイミングが無かったらしい。ある日、幼稚園でプールに入る時間があったんだよ。その子は聞き分けのいい子だから仕方なくぬいぐるみは置いてプールに入ったんだ。」
(前回と違って最初から怖い雰囲気な訳では無いようですわ。これからどのようにお話が展開されるのかしら。)
「プールから帰るとな、その子のぬいぐるみはなくなっちまってたんだよ。その子はひどく取り乱して帰るまで一人の保育士さんがほぼつきっきりでいてあげたんだとさ。そしてその子が帰るタイミングになって親が迎えに来てくれたんだ。その時、一人の中肉中背の男がそこに現れたんだ。そして持っていたぬいぐるみをその子に渡して言ったんだ。『これは君のぬいぐるみだろう?もうなくしちゃダメだよ。』ってね。保護者も保育士さんもその人のことは知らなかったんだけど知らない相手に対する見返りの求めない善意を感じられるいい話だろ。ウチとは対極な位置にいる感じ。これでウチの話はおしまいだ。」
◇◇◇◇◇
「すごいいいお話ですね。私もそんなふうに人のためになる事をしたいです!」
輪廻はとても感動しているようだった。
(この話・・・、一見ただの良い話のように感じるけれど本当にそうなのかしら。黒ずんだぬいぐるみに本当にその女の子の持ち物であると確証を持てる証拠はあったのかしら。黒ずんで見えなくなったタグには名前を書き直す暇さえなかった。そしてそれを持っていて渡してきたのは大人たちの知らない男。さっきの話とは別ベクトルの怖い話のようにも感じるわね。)
「さて、次は私が話させてもらいましょうか。」
輪廻はそう口にしてゆっくりと姿勢を変える。
「図書館の管理人なのに最後にトリを飾らなくてよろしくて?私にトリは少々荷が重たいわ。」
「フフッ。そんな事はないですよ。それにいつがトリになるかだなんて誰にも分からないでしょう?あなたの番は回ってこないかもしれませんね。私のお話は少し怖くなってしまうかもしれないけど安心してください。傍観する分にはきっと、楽しいお話になりますから。」
今までと雰囲気の変わった少女はどこか現実味のない雰囲気を纏っていた。
楽しすぎてかなりの短時間で執筆させてもらいました。続きや「偽」も是非読んでいただけたら嬉しいです。




