眠り 6
王子達が教室に入ると、ほぼ全員が揃っていました。
教室の中にいる聖獣の何体かは眠りについています。
中・高位の聖獣を持つものたちのクラスです。
高位の聖獣となると、人数はぐっと少なくなります。彼らの年齢では4人しかいません。
クラスの大半は中位の聖獣で、基礎的な授業からもっと高度な専門知識を学ぶようになるまでは、中・高位の聖獣持ちは一緒に授業を受けるのです。
「お~い、皆聞けよ!」
ジェラルドが声を張り上げ、クラスメイト達はなんだと注目しました。
「リーナが返事ををしたんだと」
わっと歓声が上がります。
眠りについてない中位の聖獣を持った子供も、眠りについている高位の聖獣を持った子供も、全員が驚きそして喜びの声を上げました。
特に眠りについている聖獣を持つ子供達の喜びようは顕著でした。
彼らも王子やジェラルドと同様に、己の聖獣と会話する喜びを皆知っているだけに、王子の事を我が事のように喜んでいます。
彼らの聖獣のように眠りについていても、心での会話は可能でした。
王子を除いた他3名は全員少しづつ話せるようになって来ていて、まだ出来ていなかったのは王子だけなのです。
いまだ返事をもらえない王子の前でその喜びを大っぴらに語ることは出来ず、彼らも気を使ったりしていました。
「何て言ったんだ?」
誰からともなく訊ねます。
記念すべき第一声なのですから、皆が興味津々です。
王子は胸を張って答えました。
「甘い」
一瞬の間があり、皆が首をかしげます。
「甘いって?」
「蜂蜜を口に入れたら、甘いって一言」
「それだけ?」
「うん」
「美味しいとかそういう感想って言うより、事実を言っただけって感じだな」
クラスメイト達はみな考え込んでしまいました。
「なんというか、話しかけてきたというより独り言に近い感じか?」
ポツリと誰かが言います。
「ああ、なるほど」
「そうかも。なんとなく寝ぼけたような雰囲気もあったし……」
王子も僅かながら顔を曇らせました。
思わずそれに3人は顔を見合わせます。
「そこまでくればまともに話せるようになるのも後ちょっとだろ?」
「もうじき意識がはっきり起きて、返事を沢山くれるようになるよ」
「そうだね」
王子はニッコリと微笑みました。