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僕の聖獣 私の半身  作者: 月見草
6/9

眠り 4

 朝食の後は、学校へ行きます。

 聖獣持ちのための学校なので、聖獣のお世話の仕方や上手く付き合うためのコミュニケーションのとり方といった契約者としての授業と、魔法使いとしての訓練と、その理論を学ぶ場所です。魔力を持っているから聖獣持ちとは限らないけれど、聖獣持ちは必ず魔力を持っているので、魔法使いとしての勉強が欠かせないのです。他にも年齢が上がれば国の歴史や数学の知識といった教養関連の授業が増えますが、幼い王子達にはまだそのような授業はありません。

 魔力を暴走させない事、聖獣をきちんと扱えるようになる事が第一だからです。

 王子に関して言えば、聖獣のお世話の仕方を学校で教えることは出来ませんでした。

 なぜなら人型の聖獣は世界初。

 人間のお世話の仕方は、お城の侍女達以上に判っている者はありません。

 ですから聖獣のお世話の仕方は、王城に勤めている侍女長が教師役を勤めています。

 その授業の時間は学校から王城に戻って侍女長から直接手ほどきを受けるのです。

 朝一にその授業がある日は、学校へ行かずに部屋で侍女長を待つ事になります。

 ですが今日の最初の授業は魔法の基礎理論。

 もちろん学校へ行く必要がありました。


 馬車に乗り込む前に、一旦兵にリーナを預け、王子はまずは1人で乗り込みます。

 次いで背負っていた籠を座席の上におき、中のクッションを丁寧に整えます。

 籠を整えた後は、馬車の中から手を伸ばしてリーナを受け取り、調えられた籠の中にリーナを横たえます。

 馬車が揺れても籠が座席から落ちないように、特別に設置してある紐などで籠をきちんと固定していきます。

 これで準備は完了です。

「出してください」

 王子の合図で馬車は動き出しました。

 ガラガラという車輪の音を耳にしながら、窓の外を眺めます。

 手は籠の中で、サラサラとしたリーナの髪を戯れに弄って、その感触を楽しんでいます。

「リーナ、アベリアの花が咲いているよ。あ、カンナの実がなってた。鳥がそれを狙ってよってきてる。お腹がプックリとしててね、凄くかわいいよ。あれはなんて鳥だろう」

 外の景色をそうやって一生懸命説明します。

 綺麗な物、可愛いもの、面白い物。何でもいいなと思ったものは口にして、それを伝えます。

 この世界はこんなにも楽しく良い物に溢れているよ。だから早く目覚めてね。そんな願いを込めています。

 もし目が覚めたら、この世界の物を色々案内してあげたい。どんな物を見せてあげよう、どんな物が喜ぶだろう。そんな風に王子は考えていました。だからこうして”良いもの”を探すのは、そのいつかの時の楽しみのためでもあったのです。

 王子達を乗せた馬車は、ゆっくりと学園の敷地内に入っていきます。

 何時もの定位置で馬車が止まると、王子は降りる準備を始めます。

 固定していた紐を外し、馬車のドアを開け、籠の中かリーナを抱き上げ、外で待ち構えていた兵に一旦リーナを預けます。

 その後籠を背負いなおしてようやく馬車から降りていき、預けていたリーナを受け取ります。

「行ってらっしゃいませ」

 送ってきてくれた兵達の見送りを受け、王子は校舎に向かいます。

 兵達はここで解散とはなりません。馬車は邪魔にならない場所に寄せられ、残った人員で離れたところから王子の護衛に回ります。如何に安全な学校内といえど、王子なので油断は出来ないからです。

 ことに、王子の聖獣は、世界で1頭の人型です。王子もろとも誘拐されないとも限りませんでした。

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