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僕の聖獣 私の半身  作者: 月見草
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眠り 2

「おはよう、リーナ。今日もとても可愛いよ」

 額をくっつけて、王子は少女に語り掛けました。

 今まで一度もそれに答えはありませんでしたが、王子は気にしません。

 侍女達に少女の髪を結い上げてもらっている間、王子は少女にいろいろな事を語りかけます。

 答えはなくとも、声は必ず届いていると王子は信じていました。

 契約をしてから2年の年月が経ち、王子の背は大分伸びました。

 ですが少女の姿は変わりません。

 始めは抱き上げる事はおろか、体を起こす事も出来なかった王子が、少女を一人で抱えて歩けるようになっていました。

 着替えも何も王子は少女の世話が出来なかった2年前に比べ、ずいぶん成長したものです。

 今の王子の目標は少女の髪を結えるようになる事、少女を抱えて階段の上り下りが出来るようになる事です。

 少女の身支度が終わると、今度は王子の番です。

 王子は少女の頬にチュッと口づけて、離れます。

 テキパキと顔を洗い、歯を磨き、着替えを済まします。

 何もかも自分ひとりでやってしまいます。

 王子様は少女の世話をしているうちに、自分の事は何でもこなせるようになっていたのです。

 身支度を整える間も、決して少女から目を離すことはありません。

 これは王子が異常な事ではなく、大概の契約者がそうなのです。

 特に眠りについている半身を持っている契約者ほどその傾向がとても強くなるのです。

 契約者にとって、半身の聖獣とはそれほど大切な存在です。

 その所為か、契約者はそうではない人間に比べ、10倍近い離婚率を誇っています。

 その主な原因は、契約者があまりにも聖獣を優先するので、その伴侶に私(俺)と聖獣どっちが大事なんだとなじられ、聖獣と迷わずに答えてしまうことにあったのです。

 身支度が終わり、王子は少女を抱き上げて食堂へ向かいます。

 長い廊下を少女を抱えて苦もなく進んでいきます。

 とても手馴れたものでした。

 途中の階段だけは、護衛の騎士に少女を預けて下りてもらいましたが、階段を降りきったところで直に受け取ります。

 迂闊に手を出せばひどく怒られてしまうため、王城に勤める者達は、とても微笑ましくそれを眺めています。

 小さな子供がさらに小さな子供を抱っこしている様子は、とても愛らしく映るのもその理由です。

 この国の王家では、朝食は全員そろって取る事が習慣付いています。

 外国へ外交に出かけていたり、地方へ視察に出ているといった仕方のない場合以外は、全員が必ず集まるのです。

 夜や昼など忙しくて顔を合わせることが出来ない王家の面々が、せめて朝だけでも家族の団欒をと考えての事でした。

 現王家では、聖獣持ちは王子とその一つ上の姉王女だけですが、姉王女の聖獣や王子の聖獣である少女の分の席も用意されています。

 全員が勢ぞろいして朝食が始まります。

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