表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喋れない幼馴染とイチャイチャしながら、花探しの旅に出ます ー龍竜深紅ー  作者: 二木弓いうる
真実とハッピーエンド編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/75

えっちゃん、声が

 デュークスは改めて部屋の中を確認した。狭い部屋ではあるが、落ち着きのある部屋だ。

 一つしかないベッドも、十分広く。二人で寝てもスペースが余りそうだった。


 そこまで見て、デュークスの思考が停止した。

 一つしかないベッド?? と。

 

 エミリッタはそのベッドの上に座る。出られないのであれば、ここで過ごすしかないと思ったのだろう。彼女には意外と度胸があった。


 デュークスも彼女の隣に座る。彼女が落ち着いているのなら、自分も落ち着こうと考えた。


「えっちゃん。アイツの言う事信じた方がいいかな? 俺個人的にアイツ好きじゃない」


 エミリッタは首を横に振った。彼女もまだ、完全には信じていないらしい。


「そうだよねぇ。何より、えっちゃんをやらしい目で見ている!」


 それはどうだろうかと思ったエミリッタだが、言葉にする事はできない。

 デュークスは真剣な顔をして、これからについて口にする。


「でも、えっちゃんの声が治るなら……とも思ってるんだけど」


 エミリッタは眉を八の字にしながらも頷いていた。花を探すための危険な旅が早く終わるなら、その方が良いに決まってる。


「とりあえず見てもらうだけ見てもらう、っていうのでも良いのかな。勿論、ヘングリーと二人にはさせない」


 エミリッタはもう一度頷いた。ただの旅ならまだしも、マフィアから目を付けられ、人々からも恐れられるような旅だ。早く終わらせるために渋々、という感じだ。


「それで、その……先に俺に口の中を見せてもらうことは?」


 デュークスはそう言いながらも、我ながら変な質問をするな、と思っている。

 本当に見せてもらう必要もないのだが、やはりヘングリーにだけ見せるというのも嫌で。


 エミリッタも変な質問をされたな、と思いつつ。

 頷いて、小さく口をあけた。


 デュークス相手に、嫌がる事でもなかった。


「あ、ありがとう」


 なんとなく礼を言って、親指で彼女の唇に触れた。

 柔らかな唇を、少し押すだけでもドキドキしてくる。

 ぷにぷにしている感触は、ちっとも飽きそうにない。

 

「口っていうか、喉なんだろうけどさ……」


 そう言われて、エミリッタはさらに口を大きく開けた。

 せっかく彼女が見やすくしてくれたのだから、見ない理由はないだろう。

 

 己の顔を近づけて、彼女の口の中を覗き込む。

 小さな舌や歯が見えるも、喉の傷なんてものは見えず。むしろ暗くて、よく見えなかった。


「ちょっとごめんね」


 彼女の口の端に指を当てて、さらに奥を見ようとするも。

 ただ指先が生暖かくなっただけで終わった。


「顎疲れない? 大丈夫?」


 そう聞かれたエミリッタは、口を閉じて。デュークスの指を甘噛みした。どうやら、顎は疲れていたらしい。

 噛まれても嫌悪感はなく。むしろ心地いいとまで感じていた。

 これ以上、変な気を起こす前に指を離す。


「ごめん。俺が見たところで、何の解決も出来ないや」


 そもそも口の中を見るという流れになったのも、ヘングリーに対抗しての事だ。

 見た所で、ただ可愛いなと思っただけだった。

 

 エミリッタはズボンのポケットからハンカチを取り出し、デュークスの指を拭いた。

 その気遣いが愛おしく、デュークスを余計にトキめかせた。


 勝手に用意された場所とはいえ、せっかくの二人きりだ。

 デュークスは、もう少し堪能しても良いんじゃないかと思い始めた。


「……えっちゃん、もうちょっと、イチャついてもいい?」


 エミリッタは恥ずかしそうに頷いた。驚いている様子がないところを見ると、彼女もこうなる事を予測していたのかもしれない。

 そう思うと、余計に感情が高ぶって。


「えっちゃん……!」


 押し倒す形で、彼女にキスをする。


 部屋の中がリップ音で溢れた。

 外でヘングリーに聞かれてないかとか、マフィアに襲われないかだとか。余計な事を考えては、考えないようにしようと思い。


 欲のままに回数を重ねると、エミリッタはデュークスの手をギュっと握って来た。

 きっと彼女なりに、嬉しさを伝えたかったのだろう。


 そんな彼女が可愛くて、つい舌を入れる。

 エミリッタの肩が大きく跳ね上がった。

 嫌がられてないかが怖くて、そっと彼女の表情を覗いてみれば。

 恥ずかしそうにはしているものの、嫌がっている様子は一切なくて。


 だったら、もう少しだけ。


 そう思って、何度も唇を重ねた。


 このまま終われるだろうか。そんな恐怖心さえ芽生え始めて。


「えっちゃん。ありがと。これ以上だと止まれなくなっちゃうから、ここまでにしとこう」


 デュークスは心の中で、冷静に言えた自分をほめた。


 エミリッタは頷いて、呼吸を整えている。

 息の仕方が分からなかったのか、涙目になっていた。

 その事に気づいたデュークスは、途端に後悔し始める。


「ご、ごめんえっちゃん。ちょっとがっつき過ぎましたかね!?」


 エミリッタはすぐさま首を左右に振った。

 嫌ではなかったと言いたげに、彼の顔を見つめ。


「……デュークス……」


 小さく口を動かした。


 デュークスは目を丸くした。

 彼だけではない。彼女も自分自身で驚いていた。


 エミリッタは久々に、声を出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ