えっちゃん
次のチャンスはいつ来るか分からない。
そう思ったデュークスは、エミリッタの顔を見つめる。
まだ顔を赤くしているエミリッタも、ジッと彼を見つめていた。
心音がうるさい中、デュークスは精一杯勇気を出した。
「えっちゃん、チューとかしてもいい?」
言った途端に、デュークスの顔が一層熱くなった。
エミリッタも驚いた顔をして、デュークスと同じように赤くなっている。
「い、嫌だったらしないから」
エミリッタは勢いよく首を横に振る。
つまりは。
「……いい?」
怯えながらの再確認。
デュークスの問いに、エミリッタはゆっくりと頷いた。
二人とも考えている事は同じ。
これがファーストキスになるのかと、非常にドキドキしていた。
デュークスは彼女の横髪に触れる。
エミリッタの肩がビクリと跳ね上がった。目線も合わない。いや合わなくていいのか。これから目を閉じればいい。
優しく、怖がらせないように。などと思っている自分が震えている事に気づくデュークス。
落ち着けと自分に言い聞かせて、ゆっくりと顔を近づけていく。
エミリッタもまた、自分の心音に驚きながらも。
ギュッと目を瞑って。
ちょん、と触れた。
バッと。すぐにお互いが、勢いよく離れた。
今はまだ、これが精一杯だった。
一瞬ではあったものの、はっきりと分かった柔らかさと温かさ。
目を開けたデュークスが見たのは、恥ずかしそうに口元を手で押さえたエミリッタだ。
嫌がられてはいない。その表情を見れば一目瞭然だった。
「その……ありがとね」
エミリッタは口元を押さえたまま頷いた。
「じゃあ戻る?」
気を使ったつもりで、デュークスは元来た方角を指さした。いつまでもここにいるのも、気まずいと思うかもしれないから、と。
だがエミリッタは、その場に座り込んでしまった。具合が悪いわけではなさそうだ。
彼女の言いたい事を察して、デュークスも隣に座った。
「……もうちょっと一緒にいる?」
彼女は恥ずかしそうに頷いた。
デュークスにとっては、その行動も嬉しくて。そっと手を繋いだ。
握り返したエミリッタだったが、彼の顔は見れなくて。
話術に長けているデュークスですら、今は無言のまま湖を見つめていた。




