表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍竜深紅 〜幼馴染を助けるため、花探しの旅に出ます〜  作者: 二木弓いうる
朧族とファーストキス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/77

腕枕だよ、えっちゃん

「それはない。龍竜族にとって、人の体も竜の体も大差ないから。俺は竜体のえっちゃんもすごく好き」

「な、なるほど……」


 即答されて、ハックは逆に戸惑ってしまった。


「そのあたりはマナも同じだと思うんだよな」

「であれば良いが……ともかく、まずは友人として、親しくなるところから始めよう!」

「おう。なんなら協力してやるから。困ったときは言えよ」

「か、感謝する! そうだ、兄上とお呼びしても!?」

「それはまだ早いかなー?」


 協力するとは言ったが、結婚させてやると言った訳ではない。デュークスはあくまで、マナの味方だった。

 前向きに検討する二人の姿勢に、叔父も嬉しそうにしていた。


「ワシも喜んで協力しよう。まぁ、既に先ほど協力したがな」

「先ほど? 叔父上、いつ何の協力を?」

「マナ殿の隣に立たせ、共に料理を作らせたではないか」

「そんな策略が!? むしろ客人を立たせておいて、自分はいなくなるなど無礼だと思っておりましたぞ」

「ぶ、無礼など働いておらぬ」


 とは言いつつも、叔父はしおらしくしていた。どうやら反省はしているらしい。


「シャワーいただきましたー。あ、お兄ちゃん。服借りたよー?」


 そこに、マナとエミリッタが顔を出した。


 流石に髪を乾かす道具もなかったのか、二人とも髪が濡れたままだった。体が温まったことにより肌が紅潮しているからか、妙に艶めかしく見える。


「見るなハック。お前にはまだ早い!」

「こ、心得た!」


 デュークスはエミリッタとマナの前に立ち、ハックは彼女達から背を向けて座った。


 自分自身、湯上り姿のエミリッタに何度もときめいている経験がある故に。

 大事な彼女と大事な妹の湯上り姿を、そう簡単に見させまいと隠していた。


 ハックもデュークスの気持ちを理解しているのか、律儀に目まで閉じている。


 兄がいかがわしい事を考えていると察したマナは、両腕で自身の体を隠した。


「何言ってるのお兄ちゃん。ちゃんと服着てるよ?」

「着てれば良いってもんじゃないんだよ。ところで、服借りたよって……俺の服着てるの、えっちゃんじゃん」


 エミリッタが着ていたのは、デュークスのTシャツだった。代わりにマナの方が、エミリッタの持参したTシャツを着ている。


「最初は私が着ようと思って、荷物から拝借したんだよ。そうしたらえっちゃんが、目で訴えてきたの。私もデュークスの服着たいなーって」


 デュークスは非常にドキドキしていた。人のシャツを着ておいて照れている彼女の反応も可愛いし、シャツの下から見え隠れしている太ももだって、ついつい目を向けてしまう。


「正直すごく嬉しいけど、目のやり場に困るから。せめてズボン履いて」

「何も履いてない訳ないでしょ。私もえっちゃんも短パン履いてるよ」

「もっと長いの。なんなら俺の履いていいから」


 マナ達は渋々長いズボンに履き替えに行った。

 その隙を見た叔父がデュークスに頭を下げる。


「とにかくデュークス殿、先ほどの件、どうぞよろしく頼む」

「分かった分かった。前向きに検討しまーす」


 履き替えるだけだったからか、マナ達はすぐに戻って来た。


「お兄ちゃん、先ほどの件って何?」


 叔父との会話も聞かれていたようで、デュークスは咄嗟に隠す。知られてしまっては変に意識してしまうだろうと、配慮しての事だ。


「俺がえっちゃん大好きって話」

「いくら何でも誤魔化すの下手じゃない?」

「いや、えっと」


 話術が得意な彼も、動揺しているせいでうまく力を発揮出来なかった。

 マナに突っ込まれて焦っているデュークスに、叔父も加勢してくれる。


「否。誤魔化しなどではないぞ。デュークス殿はかなりエミリッタ殿を愛しておられる。意地でも他の男に奪われないように常に警戒されて」

「そうやって言われると恥ずかしいな!? お、俺の話は良いからさ。叔父さんの旅の話とかしてよ。うちの里に来た時の話とかさ!」」


 恥ずかしさを誤魔化すため、デュークスはわざと違う話題に持って行こうとする。

 

「わ、我も叔父上の旅の話は聞きたい」


 未来の兄上を手助けしようと、ハックも加勢する。

 叔父は天井を見上げ、過去の事を思い出していた。


「龍竜族の里の話か。石を噛むと我ら朧族と似たような姿になるのは、実に不思議であったな。中でも複数の石を同時に噛んだ変身は、実に見事であった」


 予想外の話を聞いて、デュークスは思わず眉を歪めた。


「複数の石……?」

「うむ。黄と緑の石を噛んだ者が黄緑色の龍になったり、青と黒の石を噛んだ者が紺色の竜になったりしていた。二つ以上の石を持つ者だけの、大人の特権と言っていたな」

「そんなの聞いた事ないんだけど。基本的に、石を噛むときは一つずつでしか噛んだことない。それを二つ、三つまとめて噛むって事?」

「知らぬのか? しかしあれは、間違いなく龍竜族の民だったが」


 石を複数同時に噛むなど、聞いた事もなければ見た事もなかった。

 だがハックの叔父が、嘘をついているようにも見えなかった。


「えっちゃんとマナは聞いた事あった?」


 エミリッタは首を左右に振る。どうやら彼女も知らないらしい。

 マナの方も聞いた事がなかったようで「むしろ初めて聞いた」と驚いていた。


 デュークスは自身の石を握り締めた。

 やった事はないけれど、自分でもやれるなら。

 そう、興味を抱いた。


「もし俺が、他の姿にも変身できるなら。色々と試してみたいな。その方がもっと、えっちゃんを……皆を守れるようになるかもしれないから」


 自分のためと聞いて、エミリッタも嬉しそうにしていた。

 そんな彼女の反応も嬉しくて。デュークスはすぐさま、石を自身の口元へ近づけた。


「じゃあ早速」


 赤と青の石を噛もうとしたデュークスを、マナが慌てて止める。


「待ってお兄ちゃん。もう夜も遅いし、明日にしようよ。ご迷惑だよ」

「それもそうか。明るい場所で見た方が、状況も理解できるしな」


 納得したデュークスは、石から手を離した。


 ハックの叔父は立ち上がって、隣の部屋を指さす。


「ならば今宵はこちらで寝ると良い。一応毛布もあるが、質の良いものでもない事だけはご了承願おうか」

「じゃあお言葉に甘えて。屋根壁があって、毛布まであるんじゃ上等だよ」


 マナとエミリッタも「お世話になります」と頭を下げる。


 叔父は隣の部屋に毛布を三枚用意してくれた。枚数的に考えて、デュークスとエミリッタ、マナの分だろう。

 デュークスは一応、ハックに気を使った。


「ハックも一緒に寝る?」

「いいいいいいい否! 叔父上と積もる話もある! 今宵は我の家で寝泊まりする!」


 照れた様子のハックは、すぐに建物を出て行ってしまった。叔父も「ゆっくり休まれよ」と挨拶すると、ハックの後を追って行った。

 デュークスは胸をなでおろす。むしろ一緒に寝ると言われたらどうしようかと思っていた。


 その場に寝転び、組んだ腕を枕にする。 


「じゃあ寝ちゃおうか。せっかく三人でいるし、川の字になるかー」


 デュークスの提案に乗り気のエミリッタは、彼の隣に寝転んだ。


「だったら、こっちの方が良いかな」


 そう言ったデュークスは、腕を真横に伸ばした。その理由を察したエミリッタは、すぐに彼の腕を枕にする。

 満面の笑みを浮かべているカップルを見て、マナは呆れた顔をしていた。


「私がいるんだから、夜こっそりイチャイチャしたりしないでね?」

「し、しないって! ほら、お兄ちゃん真ん中になってやるから。反対の腕、枕にしていいぞ」

「しょうがないなぁ。えっちゃん、お兄ちゃん借りるね?」

「なにを物みたいに」

 

 だがエミリッタは頷いて、デュークスの腕なら喜んで貸し出す、と言っているようだった。


「じゃ、おやすみ」

「はーい、おやすみー」


 エミリッタも唇をおやすみと動かして、目を瞑った。

 しばらくして、少女達の寝息が聞こえて来た。

 

 デュークスは首だけ横に動かして、可愛い彼女の寝顔をジッと見つめる。


 ハックの件に感化された訳でもないが。

 デュークスはつい、考えていた。


 今は隣に妹もいるし、両腕も動かせないから無理だけど。


 そろそろキスとかしてもよくない? と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ