表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喋れない幼馴染とイチャイチャしながら、花探しの旅に出ます ー龍竜深紅ー  作者: 二木弓いうる
花嫁とマフィア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/75

誘われちゃったよ、えっちゃん

 シャード兄ちゃんというのは18人いるデュークスの兄弟の内、8番目の兄だった。

 幼馴染のエミリッタも、遊んでもらった事がある。


「もしかしたら、他の皆の石もアイツが持ってる可能性もある。それこそ……えっちゃんの石も」


 龍竜族の石は、里を教われた時にほとんどが奪われてしまった。

 里を襲った奴らこそエミリッタの祖母が倒してくれたものの、石は行方知れずになっていた。


 既に売られた後だったのか、どこかに捨てられてしまったのか。そのどちらかだろうと思っていたデュークス達。

 その一つをマフィアが持っていた、という事になる。


「これから先、命を狙われるだろうからね。俺はえっちゃんの事、ずっと守る気でいるけど。えっちゃんが自分で身を守れるすべがあるなら、それに越した事はない。だから……もしアイツが、えっちゃんの石を持っていたら取り返そう」


 エミリッタは眉を八の字に曲げて、デュークスを見つめていた。


「ん? どうかした?」


 何か言いたげなエミリッタだったが、すぐに首を左右に振る。


「うーん、伝えられそうだったら伝えてくれていいんだよ? 難しいかもしれないけど」


 エミリッタは少し考えて、デュークスの顔の傷を撫でた。


 もしかして俺を心配してくれているのか!?

 そう思ったデュークスは、喜びながら彼女を抱きしめた。


「大丈夫! えっちゃんを危険な目には合わせない!」


 エミリッタはへにゃりと笑う。どうやら、正解だったらしい。


「そうと決まれば、早速アイツらを探さないと。俺らを狙ってるのは変わらないだろうから、そう遠くには行ってないはずだけどね」


 名残惜しく思いつつも、デュークスは彼女から離れた。

 エミリッタはリュックの中から、あるものを取り出した。


「どうしたの、えっちゃん……地図?」


 彼女が広げたのは、街周辺の事が書かれた地図。アリシアが別れる前に貸してくれたものだった。

 エミリッタは城の絵が描かれた場所を指さしている。

 文字は読めないデュークスだが、その絵が何を意味するかは理解出来た。


「この城に行きたいの? まぁ、元々その予定だったけど」


 竜の暮らす城の伝説を聞いて、この街を行先に選んだ二人。彼らの目的はあくまで、ケノアの花を探す事だ。


 エミリッタは首を傾げる。他に伝えたい事があるらしい。

 右手の人差し指を伸ばした彼女は、空中に星形を描いた。


「星……シャード兄ちゃんの石の事? もしかして、マフィアがここにいるって?」


 デュークスの問いを聞いて、エミリッタは嬉しそうに頷く。どうやら正解だったようだ。


「どうしてここにいるって……あぁ、そうか。マフィアが俺らの行先を予想してるかもしれないのか。待ち伏せしてる可能性もあるよね」


 デュークス達がこの街にいる事を突き止めた奴らだ。彼らの行先もある程度候補を上げているかもしれない。それに彼らも竜の伝説について知ってるかもしれないし、今は知られていなくても今後バレる可能性は十分ある。


「どちらにせよ、目的地は同じだし。まずは城の方に行こう」



          ***


 二人は城の前に到着した。

 壁には蔦が絡まっている。その姿はまるで、緑色の上り竜のようにも見えた。


「まさか竜が住む伝説って、あれの事じゃないだろうな」


 エミリッタは首を傾げた。否定も出来ないらしい。


 城の警備をしている者がいてもおかしくないと思っていたデュークスだったが、周囲には誰もいない。 


 それでもマフィアだけは近くにいる可能性も考えて、デュークスは大声を出した。


「ロン! いるなら出てこい!」


 ヒュンっ!

 城前にある木の影から、ナイフが飛んでくる。

 デュークスは慌てて避けた。ナイフは彼の足元スレスレに刺さっている。


「誰もナイフを出せなんて言ってないだろ!」

「そんな事を言われてもぉ。そっちから呼んでくれるなんて思ってなかったから、警戒しちゃってー」


 木から飛び降りたマフィア二人が、デュークス達の前に立つ。

 デュークスはエミリッタを背中に隠し、マフィア達に怒りをぶつけた。


「何で俺らがマフィアに警戒されなきゃならないんだよ」

「竜相手に警戒して何が悪いのさ。それより、どうして呼んだの? 殺してほしいから、って訳じゃないよね?」

「当たり前だろ。石返せ。他の石も持ってるんじゃないだろうな?」


 デュークスの質問に、ロンは鼻で笑った。


「じゃあさ、取引しようよ。君に石をあげる代わりに、その女の子頂戴。それなら、君の事は殺さないであげる。今はね」


 今はという事は、後々は殺すかもしれないという事だ。デュークスは舌を出して断る。


「どっちも嫌だ」

「それじゃあ取引にならないからね?」

「取引をするつもりなんてない。俺はただ、家族のものを取り返したいだけだ」

「家族、ね」


 ロンは何故か悲しい顔をし始めた。


「おれも家族の命令でやってるんだよ」

「は?」

「可哀そうだと思わない?」

「可哀そうだと思われて嬉しいか?」


 間髪入れずに返ってきた答えに、ロンはサングラスの向こうで目を丸くしてから笑った。


「ははは、いいね。大抵の奴は可哀そうって思ってくれるんだけど。その答えは悪くない。面白いから、ひとまず殺すのは保留にしておいてあげんね」

「一生殺さないで欲しいんだけど。いいから石返せ」

「じゃあさ、一緒にマフィアやらない?」


 思ってもいなかった提案に、今度はデュークスの方が目を丸くする。


「は? 俺が、か?」

「うん」


 ウミも初耳だったようで、仲間の提案を止めに入る。


「ロン、流石にそれは!」

「いーじゃん。それはそれで面白いかもよ」

「でも」

「いやいやウミちゃん。君、おれっちに命令できる立場じゃないよね?」

「っ……!」


 ロンに冷たい目で見られ、ウミは黙ってしまった。仲間なんだよな? とデュークスは疑問を抱きつつ、一番聞きたい事を問う。


「マフィアの仕事なんて、大体悪い事じゃないのか? 悪い事をするのも心苦しいし、えっちゃんを危険な目に合わせるのも嫌なんだけど」


 ロンはデュークスの隣に立ち、彼の肩を掴んだ。


「いやいや、素質あるよ君。だって殺したんだろ? マリノスの隊長の事」


 その言葉を聞いて、デュークスはロンから勢いよく離れた。

 デュークスの反応を見たロンは、にんまり笑う。


「情報入ってるよぉ。竜龍族に食われたって。ぶっちゃけさぁ、それって殺しちゃったって事だよね? 他にも人間相手に攻撃した事もあるんじゃない? そうなったら人の事、言えなくない?」


 確かにデュークスは、門番を踏みつけたり、隊長を飲み込んだ事もある。

 全てはエミリッタを守るためとはいえ、人間の常識からは外れているだろう。


「あれは、アイツがえっちゃんを傷つけたから……俺は悪い奴しか倒さない」

「一緒にするなってか」


 一緒にされたくはない。そう思いつつも、一緒にされても仕方がないとも分かっていて。デュークスは黙ってしまう。

 デュークスの想いに気づいたのか、ロンはある提案をする。


「じゃあさ、まずはお試しって事で。一つ仕事を頼みたいんだ。なに、そこまで危険な事は頼まない。ただ、確認してほしいだけなんだよ」

「確認……?」

「最近、ある貴族の坊ちゃんが嫁を貰ったらしいんだよね。で、その嫁なんだけど……龍竜族かもしれないんだ。一緒に確認してくんない?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ