6話 絶対絶命の少女
混乱に包まれた朝の境港。シェルアノスが暴れ回り、人々は叫び声をあげながら逃げ惑っていた。
その中に、友達とはぐれた一人の少女がいた。小学校低学年ほどの少女は、何が起きているのかわからず、泣きそうな顔でその場に立ち尽くしている。
「おい、早く逃げろ!」
逃げようとする大人たちが声をかけるも、少女は動けない。恐怖で足がすくんでしまっていた。
「……ここも汚すのか。」
シェルアノスの視線が少女に向けられる。瞳には怒りが宿り、彼の鋭い爪がゆっくりと少女に向かって持ち上がる。
「やめろ!」
遠くから男の声が響いた。その声の主は、昨夜逃げ出したWOLLの隊員、海翔だった。
彼は自宅で休んでいるところ、叫び声を聞きつけて飛び出してきたのだ。人々が逃げる中、彼はその流れに逆らい、海沿いの現場へと駆けつけていた。
「このままじゃ、あの子が……!」
少女に向かって迫るシェルアノスを見て、隊員は迷わなかった。
彼の手には、WOLLが開発したパワードスーツの装着アイテムが握られていた。昨夜の自分の失態が頭をよぎる。しかし、今度こそは逃げないと心に誓った。
「WOLL出動!」
変身アイテムを起動させると、装置から発せられる光が彼の体を包み込む。次の瞬間、彼の体にはパワードスーツが装着されていた。
シェルアノスの爪が少女に迫る。だが、その直前に海翔が割り込み、その爪を手で受け止めた。金属音が響き、スーツのアーマーが火花を散らす。
「貴様は!」
シェルアノスが怒りを込めて叫ぶが、海翔は歯を食いしばり、目の前の敵を睨み返した。
「この子には、指一本触れさせない!」
少女を抱きかかえ、隊員はその場を飛び退く。スーツに備わった俊敏性が彼の動きを助けた。
「立てるか?」
隊員は優しく少女に声をかけた。少女は震えながらも小さく頷くと、彼にしがみついた。
「大丈夫だ。俺が守るから。」
一方、シェルアノスは怒りに燃えながら睨みつけていた。
「また人間か。愚かな者ども、海を汚し、我々を侮辱するお前たちが――!」
その時、周囲で騒動を見ていたイヲティスが声を上げた。
「シェルアノス、やめろ!これ以上の暴走は許されない!」
だがシェルアノスの耳には、イヲティスの言葉は届いていない。
海翔は、少女を安全な場所へ避難させると、再びシェルアノスに向き合った。
「海を守りたいのはお前たちだけじゃない。俺たちだって!」
次の瞬間、シェルアノスが再び爪を振り上げ、海翔との一騎討ちが始まろうとしていた。