表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/26

15話 託された力、選ぶ未来

一方その頃、海洋生命研究機関WOLL指令室では、薄暗い照明の中、大海原はモニターに映し出された映像をじっと見つめていた。

そこには、眩い光の中で新たな姿へと生まれ変わったイヲティス   

いや、「シーレイヴ」の姿が映し出されていた。


「これは……」


無意識に息を呑む。モニター越しでも感じる圧倒的な存在感。


その滑らかで流線型の装甲、そして戦闘用に最適化された機構の数々。

単なる武装ではない。それはまるで、イヲティスという存在そのものを強化し、潜在能力を引き出すために設計された完璧な物。


「素晴らしい……」


大海原の声は抑えきれない興奮を滲ませていた。

これほどのものを、白波は作り上げていたのか。単なる人間の科学力の域を超えた、まるで生物と機械が融合したかのような精巧な造り。


(白波、お前はどこまで先を見据えていた……?)


驚きと歓喜、そしてわずかな焦燥が胸を満たす。

これは単なる兵器ではない。おそらく、白波はこの力を"希望"として託したのだろう。

だが、その"希望"がもたらす未来が、果たして彼らにとって幸福なものなのか。


大海原は組んでいた腕を解き、ゆっくりと立ち上がる。

モニターの向こうで、イヲティス——シーレイヴが、怪物との戦いの中でその力を存分に振るう姿を見据えながら、静かに呟いた。


「……面白くなってきたじゃないか」



その呟きが終わると同時に、画面の中で激しい衝突が起こる。


シーレイヴは一気に間合いを詰め、怪物の腕をするりと回避すると、そのまま鋭い蹴りを放つ。

「はぁっ!!」

強烈な衝撃が怪物の胴を叩きつけ、弾かれるようにその体がよろめいた。


しかし、怪物も負けてはいない。うねる触手が勢いよく振り回され、まるで鋭い鞭のようにイヲティスへ襲いかかる。


シーレイヴは瞬時に後方へ跳び、さらに地面を蹴って側面へ回り込む。


避けた直後、地面に叩きつけられた触手がアスファルトを砕き、破片が四方に飛び散る。

煙が舞う中、シーレイヴは隙を突くように前傾姿勢を取り、一気に踏み込んだ。


「これならどうだ!」


  「アクアインパクト!!」


右拳を強く握りしめ、全身の力を込めて一撃を放つ。装甲の内部でエネルギーが集束し、拳から淡い光が放たれた瞬間——。


ドガァッ!!


炸裂するような衝撃音とともに、怪物の身体が吹き飛ばされる。ゴロゴロと地面を転がり、激しく水飛沫を上げながら海辺へと叩きつけられた。


海翔は思わず声を上げた。

「す、すげぇ……!! でもさっき締めで押し切るって言ってたのに最後はパンチなんだ…」


倒された怪物は、動きを止め、やがて静かに海面に沈んでいった。

その瞬間、WOLLの特殊処理班が現れ、迅速に動き始める。


一台の大型車両が停まり、専用の装置を使って、怪物を回収する準備が整う。

処理班の隊員たちは冷静に連携しながら、怪物を慎重に取り扱い、瞬く間にその場から撤退していった。


海翔はその様子を見守り、ため息をつく。

「これで終わりか…。あの怪物、もう二度と現れないでくれよ。」


シーレイヴは一度、海翔に目を向けた後、しばらく黙ってその場の状況を確認していた。 



イヲティスがシーレイヴとしての力を振るった戦いの後、海翔はシーレイヴを解除したイヲティスに歩み寄り、静かに口を開いた。


「イヲティス、君に託したそのデバイス、実は…俺の父さんが残したものなんだ。」


イヲティスの瞳が僅かに揺れる。


「父さんは、生前WOLLで研究を続けていた。でも、ただの研究じゃない。君のために、いや君みたいな存在が“未来”を選べるようにするためのものだったはずだ。」


海翔は懐から折り畳まれた紙を取り出し、そっと開く。そこには父の手書きの文字が残されていた。


「俺もこの手紙を読んだとき、正直、どうすればいいのかわからなかったよ。

でも、父さんは“恐れるな”って言ってくれたんだ。

選ぶのは俺だって。だから、君にこれを渡したのは… 俺が、君を信じると決めたからだ。」


冷たい風が吹き抜け、イヲティスに僅かな波紋を描く。彼はゆっくりと手を伸ばし、その手紙を受け取った。


「海翔の父さんは、俺やエイビスの民との共存をずっと願ってくれて、そして俺を信じてくれていたのか。」


「そうだよ。だから俺も信じる。俺の見た“あの夢”とは違う未来を選べるはずだって。」


イヲティスは黙って空を仰いだ。父から託されたもの、それを受け継いだ海翔の想い。その全てが彼の中で交錯する。


「海翔、君がそう言うなら、俺は…」


静かな決意の色が、彼の瞳に宿った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ