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隠された地図   大海アメリカへ

前作、隠された地図の続編でありマリウス達は日本からアメリカへ向かいます。ヒントはリンカーン・・。彼らはリンカーン像が二つ存在することに気づきラシュモア公園へ向かいます。何故か敵の襲撃に合いながらヒントを手に入れますが・・・。

アルとジョーは、旅館が急遽、準備してくれた、和室の部屋に向かうため、エレベーターの前に立った。

「明日はアメリカかー。自分の国いくなんて、変な感じだぜ」

「そうだな。でも俺は久しぶりの帰国でワクワクしているよ」

「そうかー。なら、もし時間があれば、大学でも行ってみるか?少し遠いが。な」

「それは、明日着いてみないと分からないぞ。マリウス様が決める事だ」

「かー。お前はマリウス様、マリス様、どこまで従僕だろうね」

「それは・・・。生前のご当主には、返しても返しつくせない礼があるからな」

「フーン」

深く聞かないことにしたアルは、到着したエレベーターに乗り込もうと、乗っていた男とすれ違った。その瞬間、アルは

「あれ?どこかで見た顔だったなー。な、ジョー」

「さあな。俺はいちいち顔まで見ないからな。さあ、行くぞ」

「おい。待てよ」

スタスタとエレベーターに乗り込み、ボタンを押す。


部屋の中では、ジンジャーが銃の手入れをしていた。

「ジンジャー様、すみません。先に休んでくださればよかったのに・・・」

ジョーは、さっきの態度とはうってかわって、ジンジャーに気がねしながら謝った。

「いいや。お前たちが帰ってこないということはマリウスも、だろ。俺が先に休むわけにはいかない」

「そうですか。分かりました。今度からはもう少し早く切り上げることにしますから。どうぞ、シャワーを使ってください」

「じゃあ、そうさせてもらう。それから、ジョー、俺に様は要らないと言っておいただろう」

「申し訳ありません。つい、癖で・・・」

「・・・」

浴室に消えるジンジャー。見ると、銃が分解され、バラバラになっていた。

「ジンジャーは、いつでも銃を放さないみたいだな。一度触ってみたいけどな」

アルは、冗談か本気かわからない発言をして、押し入れから布団を出そうとしているジョーを驚かす。

「さあ、もう冗談はいいから、アル手伝ってくれ」

「えー、俺だって分からないぞー。ここはこうやって、これでいいじゃあないのか?」

「でもそうすると、足が出てしまうだろう。これが縦でいいのか?」

「それでいい」

シャワーから出てきたジンジャーがそう言うと、3組の布団を少しずつ離しながら、

セッティングした。

「って、ジンジャー。お前どこでやり方知った?」

ジンジャーは分解された銃を拾うと、それを組み立て、何事もないように、アルに

「日本各地を回っている間に覚えた。だから困ることはない」

ジンジャーはぶっきらぼうに答えると、隅の布団にドスンと座り、敷き布団の下に銃を隠した。そして

「お前たちも早く入ってこい。ライト消すぞ」

「待ってください。ほら、アル、お前先に入ってこいよ。俺はちょっと、用を済ましてくるから」

ジョーは、アルの背中を押すと出て行った。

「なんだ、あいつ。腹壊したのか?」

1人ジンジャーは、銃を磨きながら考え事をしていた。

{あれから3年、元気にしておられるだろうか。俺が1人居ないだけで、困ることはないだろう。なんせ世界中から集められた精鋭部隊だ。あの方を守ることにかけては長けている}

ジンジャーは思いにふけりながら、胸の傷に手を当てた。そこには銃で撃たれたような傷が、何か所もあり、切り傷も至る所に見える。

ジンジャーはそれらを触り、自然と胸の前で十字架をきる動作をした。


その頃、エレベーターでアルたちとすれ違った男は、マリウス達の部屋の前で足を止めた。そして部屋の番号を見て

「ここか。今なら2人だけの筈。奪えないこともないが」

そう言いながらしばらく立ち止まっていたが、スマホの着信音に気づき

「フン、ここでは事を起こすな。か、主の命令でなければ殺せたものを・・・」

{だが奴は・・・奴だけは許さない。俺に恥をかかせた罪は大きいぞ。あの野郎}

と、ドアの前で悪態をつきながら、その部屋から離れた。

部屋の中では、マリウスがシャワーを浴びて汗を流し、スッキリさせた体に、タオルを巻いて出た所だった。男の声には気づかずに、ベッドに腰をかけて、頭をタオルで拭きながら外の

景色を眺めた。さすがに0時近くになると、誰も通らず静かだ。マリウスには1つ気になることがあった。

{サーガンがなぜ、この日本にいたのか。やはり僕等の後を追いかけて・・・。でもどこから?ロンドンでは追跡者はいなかったはずだ。日本に来てから・・・?}

マリウスは、バックパックのポケットに入っている、暗号の紙を一時的でも奪われた時の事を思い出し、ゾッとした。

{もしあのとき、ジンジャーが通りかからなかったら・・・。今頃どうなっていたか。暗号の紙は奪われ、ヘタをするとみんな殺されていたかも・・・}

マリウスは急に寒気を覚えて、慌てて服を着た。


「アル、出たか?」

自室に戻ってきたジョーは、アルがシャワーを浴びて出ているころだと考えて、布団が敷かれた部屋に入った。しかし、アルはまだ出てきておらず、ジンジャーだけが横になっていた。

「アル、夜中だぞ。早くしろ」

「あれ、もう帰ってきたのか。いいぜ。入りな。俺は出るからよ」

出てきたアルの上半身を見て、ジョーはギョッとした。胸に生々しい傷跡が見えたからだ。

黙っているジョーの態度で、自分の胸を見たアルは茶目っ気の顔で

「これは、女とちょっとな。名誉の勲章よ」

「そうか。そうだよな。お前まで・・・と思って」

「お前まで?」

「いいや、なんでもない。シャワー行ってくる」

ジョーは、服を脱ぐと、温かいシャワーを体に浴びた。浴びながら、さっきのアルの傷が気になった。

{本当に女関係か?いいや、アルは問題児だから、そんなことがあっても不思議じゃない。それよりも、俺と同じ傷が・・・}

 ジョーは、右胸にある古傷を触りながら、過去を思い出し、ぞっとした。それをアルと

かぶせると

「お前は変わってくれるな。俺みたいに・・・」

と、小声でつぶやいた。

マリウス達と同じ階のエレノアは、シャワーを浴びて、奈良で着たのと同じような浴衣に

着替えてから、冷蔵庫の中のジュースを取ろうとした。

「トゥルントゥルン」

急にスマホが鳴った。エレノアは一瞬、身を固くしたが、覚悟を決めたようにスマホを持ち

相手の名前を見ると、不安そうな顔をして画面を手ですべらせ、耳に当てた。

「はい、はい、変わりありません。こちらは順調です。はい、承知しています。明日は

アメリカです。収穫はありました」

エレノアは、相手が切ったことを確認してから、スマホをベッドに投げフーとため息をついた。

「どうしてこんなことになってしまったのかしら」

エレノアは口に出しながら、自問自答したが答えは出ず、イライラしたように、冷蔵庫から

炭酸のきつい飲み物をだして一気に飲んだ。自分の計画では上手くいくはずだったが、予想外のことが起きて行き詰まってしまった。誰にも相談できないことが、余計エレノアを不安に

させた。

{仕方ない、ここまで来たら進むしか方法はないのだから・・・」

エレノアはそう結論つけてベッドに横になった。

夜中、マリウスは夢で目を覚ました。なかなか寝付けずにいたが、1時を過ぎたころ眠気が襲ってきて、やっとうとうとしかけたとき、またいつもの夢を見たのだ。

暗闇の中から、誰かがマリウスを捕まえようとしてくる。闇の中に、マリウスを飲み込み、

引きずり込もうとしているのだ。マリウスはそれに捕まらないように、前へ前へと進もうと

している。後ろには大きな暗闇が見える。

マリウスは叫んだ。これは夢だ!夢だ!と。すると突如、前方に光が見えた。その光は段々

大きくなって闇を飲み込むくらいになっていく。マリウスはあまりの眩しさに目を背けた。

その時一瞬見た気がした。父と母を・・・。

「はっ!」

目を覚ますと、隣で眠るテッドの寝息が聞こえる。時計を見ると、朝の6時になろうとして

いる。まだ外は薄暗く、マリウスは汗をかいた浴衣を脱いで、自分の服に着替えると、窓際に立ち外を見降ろした。静かだが川の音が聞こえる。その音に耳を傾けてマリウスは、さっきの夢を忘れようとした。

「父様・母様、仇は必ず討つよ」

{多分、この夢は、今日、決着がつくことへの不安な心の表れだな}

マリウスは昨日の夜から、エレノアに、この旅の目的を話しておこうと決めていた。

全てを話して、エレノアがついて行くかどうか決めて欲しかった。それほど、この旅は危険なものだから・・・。

空港に着くと、皆それぞれに搭乗までの時間をつぶしにかかる。

「マリウス様、エレノア様、お茶でもいかがですか?」

「悪い。僕はちょっとエレノアに話がある。いいかな?エレノア」

マリウスは、土産を見ていたエレノアにそう言うと、待合室の椅子に座らせた。

ジョーは何か勘づいたようで

「テッド様。では我々だけで参りましょう。ほら、お前も。アル」

と、半ば強引に2人を連れて行った。

2人きりになっても、なかなか言葉に出てこないマリウスを、エレノアは気遣って

「なんだか、最初の頃みたいね。私が足を痛めて困っていたら、マリウスが助けてくれた、

あの日のよう。まだ、2日前の事なのに、なんだか何日もたったような気がするわ」

感慨深く、遠くを見るエレノアに、マリウスは勇気をもらって

「エレノア。これから僕が話すことを聞いてほしい。そして自分で答えを出してくれ」

エレノアはマリウスの真面目な表情を見て、頷き

「私、ちゃんと考えるわ」

マリウスはエレノアに、今までの経緯を話した。

両親が謎の組織に殺されたこと、自宅に隠されていた地図のこと、それをヒントに世界中を旅し、両親の仇を討つことが自分たちの最終の目的だということを・・・。

マリウスは出来るだけ、エレノアに分かりやすいように説明した。最初、エレノアは両親が殺されたという事実に驚き、そして、マリウスたちの真の旅の目的を知って、涙で濡れた顔で

「ありがとう、マリウス。こんな大事なことを、話してくれて。悲しかったでしょう。

辛かったでしょう。でもマリウスあなたは強いわ。乗り越えることは、並大抵のことでは出来ないと思うの。それでもあなたは決意し、ここまで来た。それは両親の仇を討つためもあるけど、自分の人生を、そんな人たちのせいで、台無しにしたくないと思ったからでもあるで

しょう。・・・マリウス、私はやっぱり、あなたに付いて行く。決して同情や好奇心からではないの。日本で出会って、一緒にいるうちに、私にもなにか出来るかもしれないと考えたの。

足でまといかもしれない。ジンジャーやアルのような力や、専門知識もないわ。でも、あなたたちと行くことが私の使命のような気がしてならない。これが運命だとしたら、私はそれを受け入れたいの。何よりも私、マリウスと一緒にいたい。ダメかしら?こんな考えでは」

エレノアは一気に話終えると、マリウスの反応を見た。マリウスは困った顔をしながらも

嬉しそうに

「エレノア。君は僕が守る。だから一緒にきてほしい。僕も不謹慎かもしれないけどいいかな?」

2人は顔を見合わせながら涙顔で笑った。

後ろの壁の陰で3人が見ていた。


搭乗時間になり、6人は飛行機に乗り込んだ。

アメリカに向かう飛行機内は、いろんな民族でごった返し、いろんな言語が飛びかっていた。観光客やビジネスマン、留学生など、その中にあの男と同じ黒服の男がいた。

男の顔には傷はなかったが、なんだかマリウス達を見張るような目つきをしていた。

丁度、マリウス達の席からは死角になっていて、なかなかその視線に気づかないが、ジンジャーだけは男の鋭い視線に気づいていた。

彼は、搭乗時からついてくる男の視線に気づいており、それとなく監視していたのだ。

そのジンジャーの視線には、男は気づいていなかった。男は新聞を広げながら、その片隅で

マリウス達に視線を注ぎ、2ブロックから離れた場所から、聞き耳を立てている様子だった。しかし、聞こえてくるのは、テッドのにぎやかな声と、アナウンスの声のみで、男は苛立

っていた。乱暴に新聞を折りたたむと、不自然さを感じさせない動きで、マリウスの横を通り

ながら、マリウスが膝に置いてある暗号を書いた紙を見ようとしたが、テッドやエレノアが

マリウスに話かけてなかなか思うようにいかない。

それをジンジャーはフッと鼻で笑いながら、視線を外に移した。


「エレノア、家族の人は何だって?」

「連絡はしたわ。パパはいなかったから兄にね。そうしたらパパから電話があって、何か

あったのかって驚いた声で言うの。だから私、日本のいろんな所が見たいから、もう少し日本にいるわ。って、答えたの。パパは少し心配しているようだったけど、兄さんが説得してくれて、1日1回連絡することで納得してもらえたの」

「そう。お兄さんは考古学に興味があるって言っていたよね。エレノアも将来、その道に進むのかい?」

「そうね。考古学には興味あるわ。大学でも、それを専攻するのも悪くないかなって思っている」

両手を合わせて喋るエレノアに、マリウスは憧れの眼差しを向けた。

自分にはこんな夢はなかった。両親に守られ、ジョーが傍にいてなんでもしてくれた。

だから自然と、父の跡をつくのだと思っていた。あの日までは・・・。

だからこうして、自分の将来の話をしているエレノアがうらやましかった。

「エレノアにはそんな夢があるのか。叶うといいね」

「ありがとう、マリウス」


「マリウス様、少し宜しいですか?」

席の後ろから、ジョーが声をかけてきた。

「我々はアメリカに向かっていますが、詳細な場所が特定出来ていません。エレノア様が何かご存じではないかと思い・・・」

「そうだね。エレノア、何かわかる?」

「そうね。あの文章からすると、ワシントン州には間違いないと思うわ。あそこには

リンカーン記念堂があるから。まず、そこにいけば何か見つかるかも」

「なるほど。ジョー、そこまでの経路を、アルと確認しといてくれないか。時間がないからすぐに出発したい」

「承知致しました、マリウス様。アル、頼むぞ」

「了解。まあ、時間はかからないと思うぜ。なんせ有名な観光地だからさ」

アナウンスの声が聞こえる。

「まもなく当飛行機は、ニューヨーク国際空港に到着したします。着陸態勢に入りますので座席にお戻りいただきベルト着用をお願いいたします」

アナウンスの声に、乗客はベルト着用し、マリウス達も座席に着いた。

あの男もいつの間にか座席に戻っている。  

   

空港に着くと、ジョーは皆と距離を置いて1本電話をかけた。

「ワシントン州へ向います」

短い言葉でスマホを切ると、周りを見渡し、マリウス達の方へ向かった。

その後ろでは壁に隠れた黒服の男が

「ワシントン州か・・・」

と、呟き反対の方向に歩いて行った。

マリウス達は、空港を出ると、あらかじめレンタルしていた車に乗り込んだ。

 「運転は私とアルとで行いますから、ジンジャーさ・ま、いえ、ジンジャーは、警戒に当たって下さい」

 「了解」

「多分、リンカーン像に、なにか目印があると思う。ただ、私は、何度か見に行ったこと

あるけど気づかなかったわ」

「まあ、行けば何かあるさ」

休憩を取りながら、5時間超かけて、目的地についた。


昼間のリンカーン記念堂は、観光客でごったがえしていた。像の前で写真や、自撮りをしている人、写生をしている人。記念堂の中に入って皆、観光を楽しんでいた。

マリウス達も一応観光客らしく、像の前で写真を撮影し、拡大して像の詳細を調べた。

リンカーン像は、椅子に座った形で前を見ている。ジョーやアルは、背が高いので上の方を

気にして見る。マリウス達は下の方を見ている。像に触ってみたり、軽く押してみたりしたがなんの反応もない。

1時間ほどそこで時間を費やしたが、なんの発見も出来ず、とうとう5人は座り込んでしまった。

「ないなー。ここに来ればすぐわかると思ったのに。このリンカーン像じゃないのかな。

もしかしたらリンカーンということ自体違うじゃないか?」

アルは、ネットを再確認するため、電波の通りやすい場所へ移動した。

マリウス達はもう一度、暗号の紙を見直すことにした。

「日本から来て、大きな海を渡りインディアンのいた国。そこまでは間違いないよ。

混とんとした国はエレノアの言った南北戦争でないとしたら何だろう。混とん・・・。世界、アメリカ国の暗闇の世界、暗黒時代・・・、アメリカの混とんは別れた国、まだ国として統一されていないことを示すと僕は思う。アメリカにはいろんな大統領がいたけど、リンカーン

ほど、功績を残し、アメリカを打ち立てた大統領はいないと思う。やっぱりリンカーンで良いと思う。ただ、リンカーン像は他の場所にあるとしたら話は変わるけどね」

マリウスはエレノアの情報を信じながら、自分なりの解釈を含めて発言した。

「そうね。リンカーンは合っていると思う。そして、ここアメリカにはリンカーン像はここ1つの筈よ。もう少し探してみましょう」

エレノアは皆を励ますように立ち上がった。

「そうですね。ここまで来て、なにもないじゃ前に進みませんから。もう一度、よく見て

みましょう」

 立ち上がり、リンカーン像に近づく4人。


「おーい。はあはあ、ちょっと待ってくれ。もう1つリンカーン像がある場所があったぞ」

アルが、息を切らせながら、皆の周りにパソコンを見せながら座り込んできた。

「どういうこと?ここだけじゃないの?」

エレノアは、自分の情報に誤りがあったと信じられずに、アルのパソコンを覗き込んだ。

「もう1つは、サウスダコタ州にあるラシュモア山国立記念公園だ。エレノアが勘違いしたのもしょうがない。これは像ではなく山に掘られた彫刻だからな」

「あっ!国立記念公園ね。そういえば、ここにもリンカーンの顔があるわ」

「ああ、歴代の大領領、何人かが彫られている。その一つにリンカーンがあった。

もしかするとおれたちの目的はあっちかも・・・」

「・・・・そう。私、間違った情報を皆に与えてしまったのね。ごめんなさい。マリウス」

エレノアは、神妙な顔つきで下を向いて謝罪した。

「気にしないで、エレノア。まだはっきり決まったわけじゃないから。アル、もっと詳しく調べてみて」

「よし、僕たちはもう少し調べてみよう。見落としたところがあるのかも。さあエレノアも」

マリウスは、エレノアの手を取ってリンカーン像に向かって走って行った。

ジンジャーは、飛行機でのあの男がここに居ないか、サングラスの中から観光客を観察したが、今のところ、怪しい者は見つからず、広場はにぎやかな歓声に包まれていた。

マリウス達は再度、リンカーン像に近づき、足元から上部の方まで見上げた。

エレノアは責任を感じているのか、目を細めて隅々まで確認している。

ジョーは手の届くところまで伸ばし、上の方になにかないか見ている。

マリウスは全体を見上げてからもう一度暗号の紙を確認する。

「大統領に挨拶せよ、か。挨拶・・・?もしかして、お辞儀するということかな。エレノア、テッド、ちょっとこっちに来てくれ」

マリウスはなにか閃いたのか、2人を呼び、リンカーン像の前に立たせた。

「2人とも、リンカーン像にお辞儀をしてみて。挨拶するように。そう、なにか見えるものない?気づいたこととか」

テッドは、リンカーン像に軽く頭を下げたが、なにも発見できない。

エレノアは、テッドより、もっと深々と頭を下げてみた。

すると、今まで気づかなかったが、像が座っている椅子の台座に、なにか空間のような物が見えた。エレノアはそのまま、その空間に目をこらすと、その間から光がもれており、丁度、像の真後ろを示していた。

エレノアはすぐに真後ろの場所、像の裏手に回り、光が指し示す場所に立った。

するとそこに、小さく文字が刻まれていた。

「マリウス、ちょっと来てみて。なにか言葉が書いてあるの。これ、なんて書いてある?」

エレノアの言葉に、ジンジャーとアル以外の仲間が集合した。

白い壁に描かれた文字は英語で読めるが、意味自体が理解できなかった。その言葉をマリウスが代表で読み上げた。


‘私の弟にも挨拶を忘れるな。乾いた大地が水を求める。さすれば鳥は道を開くであろう‘ 


マリウス達は、ここでヒントが見つかったことに喜んだ。エレノアの推理と情報に、

間違いがなかったと分かったからだ。ネットワークで情報を収集していたアルも合流し、発見したものを見せると

「エレノア、やったな」

「ありがとう。それより、なにか情報はあった?」

「どうだった?もう1つのリンカーン像があるラシュモア公園は?」

マリウスの言葉に、アルは自分が集めてき、情報の、大切な部分を思い出し

「そう、そうだ。俺が集めた情報によると、ラシュモア公園にあるリンカーン像も全く関係がないわけではなさそうだぞ。このリンカーン像が出来てから、20年後に、あの彫刻はできたらしい。だから、いま見つかったヒントの言葉を聞いてピンときた。ヒントには、私の弟と書かれていただろう。弟・・・、つまりリンカーン像が2つあるということだ。そしてこの

アメリカに、リンカーン像があるのは、サウスダコタ州のラシュモア国立記念公園。な、ここのリンカーン像は、ラシュモア国立記念公園に行くためのヒントだよ。ここに来なければ次のヒントがなくて、ラシュモア国立記念公園にいっても手がかりがなかったのさ」

「そうか!ラシュモア国立記念公園の場所はわかっても、あそこのリンカーン像には、何のヒントもない」

マリウスは、2つに分かれて隠された暗号に驚いた。それは皆同じであった。

テッドは指をパチンと鳴らし

「ヤッホー。これで次へ進めるぞ。やっぱりエレノアはすごいな。ねえ 兄さん。あっ、もちろんアルも情報ありがとう。テヘへ」

テッドは、両手を後ろ頭で組んで苦笑いする。その横でアルが

「ヘイヘイ。俺も少しは役に立てたみたいだな。いいぜ、気を使わなくて」

「マリウス様、申し訳ありません。ちょっと私はトイレに行ってきます」

「オイオイ、力が抜けるなー。ジョー、早くすまして来いよ」

ジョーは皆から離れると、スマホを取り出し

「ラシュモア公園」

早口にいい電話を切り、天を仰いだ。今日も暑くなりそうだ・・・。


ラシュモア公園は、サウスダコ州に位置する場所にあり、タクシーで山道を抜けると、山に彫刻が刻まれていることで有名だ。

駐車場を着くと、ジンジャーは、みんなの後から注意深く、周囲に目を配りながら付いて

くる。ラシュモア国立記念公園に着いたのは16時を過ぎていた。

20分くらい歩くと、やっと目的の彫像に着いた。ここは本来、観光客が入ってこない場所で、絶壁に掘られた彫刻がマリウス達を圧倒する。

「確か、前の暗号では弟にも挨拶を忘れるな。だったな。と、いうことはこの像にもお辞儀をすればいいのか」

アルが先頭に立ち、5人並んでリンカーン像にお辞儀する。

最初に気づいたには背の低いテッドだった。

「あれ、像の真下の地面になにか彫り物がしてあるよ」

土を手で払いよく見てみると、どうやらそれは鳥のようだ。

「兄さん。これは鳥かな?」

「えっ、鳥?テッドちょっと待って」

エレノアやアルも、テッドの側に集合し、そこは密着状態。テッドの指したところは、確かによく見ると鳥に見えなくはない。

アルはそこに、自分の持ってきたペットボトルの水をかけた。すると白い彫刻は水をかける

ことで浮かび上がるように見えた。どうやらそれは鳩のかたちで羽を広げている。

「大地に水はこのことか。そして鳥が道を開く・・・」

アルは、その形をなぞるように指で触る。そして鳥の彫刻を押したり引っ張ったりしてみたが、なにも起こらない。アルは地面に座り込み、ため息をついて

「それで、これからどうすればいいわけ?鳥が道を示すってことは、この鳥の形のものを、どうにかすればいいってことかな?でも何もないぞ」

マリウスは鳥が何か加えているのに気づいた。

「・・・鳥がなにかくわえている。これは・・・オレンジ。そうか!オレンジ。ほら、アル。日本の暗号の紙に、何か数字があったじゃないか。えーと・・・」

「東に2キロ、南に1キロ、32・105っていう、あれ?」

「そうそう、エレノア。あの言葉の意味するところがまだ分からなかっただろう。もしかすると」

マリウスは興奮しながらアルに伝えた。アルも

「この鳥から東へ2キロ、南に1キロ行った方角に、何かあるということか」

「でもマリウス。この32・105っていうのは、どういう意味かしら?」

「んー。でも方角が合っていれば、地図で何かわかるかも」

「地図?そうか!マリウス、これは緯度と経度だ」

アルは、マリウスの言葉に、PCで世界地図を出し、経度・緯度で方角を示した。

「ちょっと待てよ。えーと、今はここに居る。そして、緯度と経度で割り出すと、答えは

ここになる。えっ!皆、すごい場所が出たぞ」

「どこどこ?アル。まさか、また遠い所?」

「いや、その方がまだ、よかったかもしれないな。それが示す場所は、ニューメキシコ州のロズウェルだ」

イギリス人のマリウスさえも、世界的に有名なその場所のことは知っていた。

「なんだって!あのロズウェル?・・・不思議なこともあるものだね。暗号は何世紀もまえに書かれたものの筈なのに」

「これが、偶然か意図的なものかは別にして、早くそこへ行こうぜ。うわー、今から興奮するぜ」

同じアメリカ人のエレノアは、そう興味もないのか、アルの興奮している様子を楽しんで

いるようだ。

PCが示した場所に着いた6人は、岩場を歩きながら鳥の図形を探した。アルは興奮気味に

「皆、リンカーンの彫刻と同じ鳥の形をしているはずだから、水をかけながら探してくれ」

皆、岩場を這うように、怪しいところには水をかけながら探した。

1時間くらいして日が傾きかける頃、エレノアが

「あったわ。双子の鳥よ」

と、叫んだ。皆エレノアのところに集まり、水で濡れた鳥に注目した。

「鳥だ」

誰ともなく声が出る。アルはその鳥の形をしたものを、グイと手で押した。

皆が声を上げる間もなく、それは起きた。

突然、鳥の彫刻が崩れ始め、下にぽっかりと穴が開いた。

「ここはお前がするべきだよな。マリウス。お前がこのリーダーだしさ」

一同、マリウスを見た。マリウスは頷き

「分かった。ここは僕がやるよ。皆は下がっていて」

マリウスに言われ、皆、一歩下がる。

マリウスは、片手がやっと入る穴に手を入れてみた。

空洞の中は、意外とゴツゴツしておらず、最初から、そこに何かを入れるようになっていた

かのように滑らかだった。マリウスは、何か触れるものはないか。と、手の動く範囲で動かし、掌を上下させてみた。

すると手の先が、硬いプラスチックのような物に触れた。マリウスはソーっと引き抜き、空洞から取り出した。

それは五角形の筒で、透明の中身はまたもや紙きれだった。少し黄ばんで、隅の方は脆く

なっている。5人はその紙をそっと開くと、その文字にまたため息をついた。

「また、暗号かよ。これで何個目だ。で、マリウス、なんて書いている?英語だろ」

アルはマリウスを急かすように先を促した。

「う、うん。ええと、これは英語だから僕でも読める」


‘これを手に入れた者よ。お前たちの頭脳と行動力に敬意を示し、次の道標を示そう。ここより大海を渡り、世界で一番小さな国の多民族の指導者と神に敬意を示せ。そして彼の口から出る言葉に耳を傾けろ。‘ 


皆は、口々にマリウスの言った言葉を反復しているが、意味はまだ分からないといった表情だ。エレノアが

「ねえ、マリウス。大海を渡るというのは、アメリカ以外の国に行くということよね。

世界で1番小さな国はどこかしら。今は国が分裂しているところが多いから、はっきりと断定できない。アル、どこか分かる?」

エレノアは、アルの情報を頼りに聞いてきた。アルは座り込んでネットワークで、検索をすでに開始している。そして

「ビンゴ!あったぜ。世界で一番小さな国、キリスト教徒の指導者のいる場所」

「あっ!バチカン?」

「そうさ、キリスト教、カトリック教徒の中心でローマ教皇がいる。そこには世界中の

キリスト教徒が集まることでも有名だ。だから多民族ということ。と、いうことはそこの

指導者、つまりローマ教皇に会え。って、ことか?・・・そりゃあ難しいぜ。か、不可能だ」

テッドはアルがどうして残念がっているのか理解できず

「なんで?」

と、ジョーに聞いている。ジョーが

「テッド様、教皇様というのは、キリスト教徒の神の代理人と言われる存在で、王様、君主、大統領といった方でも、なかなか会うことが出来ない方なのです。その方にお会いすることは、一般人の私たちでは到底出来ません。ましてや、全キリスト教徒の指導者、神の代理人といわれる方です。警備も万全で、近づこうとするだけでマークされてしまいます」

フーと誰もがため息をついた。ここまでは暗号の紙きれで、その場所に行けば、次の暗号が準備されていたが、今度は本物の人物に会わなくては次に進めない。

5人は難題を与えられた学生のように、途方に暮れた。もうすぐ夕暮れを迎える時間だ。

マリウスは、皆の顔を見ながら

「よし、とりあえず、ここを一旦離れよう。日が暮れる前に、どこか泊まる場所を見つけてから、話合おうよ。今日1日で、いろんなことがあったから疲れただろう。休むことも必要だからね」

「明日はバチカンか?」

「うん・・・。でも僕は、もう1度ラシュモア公園の彫刻が見たい。見逃していることがあるかもしれないから」

そう言うと、紙を5角形の筒にしまい、皆を促しながら、ロズウェルの町まで戻り、そこのホテルに一泊した。

ホテルでは、皆疲れたのか誰もが熟睡した。ただ1人を除いては・・・。

ジョーは同室者の誰にも気づかれないように注意しながら廊下へ出た。そして

「ラシュモア公園」

発信録を消去した。


翌日、タクシーで近くの町まで移動し、ラシュモア公園まで戻ってきた。

リンカーンの彫像を見たいというマリウスの希望で、ここまで来たが、新たな発見はなく、

6人は公園からタクシーを呼ぼうと、駐車場まで降りてきた。

タクシーが来るまでの間、教皇に会う手段を、ベンチに座って考えてはみたが、いい案は

浮かんでこない。

駐車場に車が入ってきた。タクシーだと思い、近づこうとするジョーに、ジンジャーが

「待て。何か変だ。俺が先に行く」

そう言いながら、先頭に立ち歩きだした。みんな背に、バックパックを背負いなおしながら

ジンジャーの後から付いていった。

「隠れろ!」

突然ジンジャーが、マリウスの頭を地面に押し当てた。アルはエレノアを抱えて木影に隠れた。ジョーは、テッドと共に、地面に伏せた。

マリウスは、ジンジャーが見つめる先を見て目を疑った。

目の前にいるのは、黒服を着た3人組で、1人は頬に傷がある。サーガンだ。

まるでマリウス達が、ここに来ることを知っていたかのように、ニヤニヤしながら地面に臥せるジンジャーに、狙いを付けている。

男たちは互いに顔を見渡し何か合図した。そして

「おい、手に入れた物をこちらに渡せ!さもないと痛い目に合うぞ」

男たちは、銃をマリウスやテッドに照準を合わせジンジャーに

「お前もおとなしくするのが賢明だな。この人数じゃどうにもできまい。はははは」

高笑いすると、マリウスに

「さあ、早く渡せ。だれか殺さないと分からないか。あと1分待ってやる」

この危機的状況に、6人は身動きできずにいた。公園の駐車場には、開園前の為、まだ誰もいない。

銃口が火を噴こうとした瞬間、公園を開けるため、警備員が3人警棒をもって、黒服の男たちの後ろからやってくるのが見えた。ジンジャーはアルになにか目配せをした。そして、黒服の男たちにも、聞こえるような大声で

「警備員さん~、落とし物もの、届いていませんか~」

そう言いながら、警備員に近づいていく。

「なんだ。君たち?どこから入った?まだ開いていないのに・・・」

警備員たちは不審がって、腰の銃に手を当てた。

「いやー。昨日ここに、大事な物を落としたみたいで、開いてないところに入ってすんません」

さすがに黒服の男たちも、騒ぎにしたくないのか銃をさっと隠し、何食わぬ顔でマリウス達に背を向けると、車に乗り込み去って行った。

アルはそれを見届けると

「あれー。こんなところにあった。警備員さん、ありましたわ。すんません」

シレっと、警備員に背を向けてマリウス達の所に合流した。

警備員たちは呆然としたまま立ち尽くしている。


「運が良かったなー。あそこで人が来なかったらアウトだぜ。お前でも、切り抜けられなかっただろう?ジンジャー」

ジンジャーは手を顎に当て、考えると

「いや、警備員が来なくても、どうにかできたと思う。例えばマリウスが、渡す瞬間に、

奴らの気を引いてくれればだが」

それを聞いたジョーは

「それは駄目です。マリウス様に危険なことはさせません。囮に使うなら、私を使って

ください」

アルはジョーの言葉を聞いて

「ぷっ。ジョー、冗談だよ。子供を使うほど俺たちは困っちゃいないし、それにジンジャーが言ったのは例えば。の話だから、本当になったときには、ジンジャーがどうにかしてくれるよ」

「俺はそんなに頼りないか、ジョー。お前の主人は俺が必ず守るから・・・だから心配するな」

「そうだね。ジンジャー。頼りにしているよ」

マリウスは、ジンジャーが瞬間的に敵の気配に気づき、咄嗟にアルと芝居で、黒服を退散させたことに安心感を覚えた。

「それにしても、奴らどこからこの場所を嗅ぎ付けたのか。リンカーン像の時にはいなかったが・・・」

ジンジャーは納得できない様子で、渋い顔をしている。マリウスは

「でも良かった。誰もケガしなくて、テッド、エレノア大丈夫?」

テッドやエレノアは、真っ青な顔で少し震えていた。

特にエレノアの方は、言葉もなくマリウスを見ている。マリウスはやはりエレノアには、この旅は困難だと判断した。

しかし今は、とりあえず、場所を移すため、タクシーでこの場を離れることにした。

近くに宿を取ったマリウスは、食欲のないエレノアのために、ルームサービスを取ることにした。ピザやサンドウィッチ、オレンジジュースや、少し度数のあるワインなど各自自分が

くつろげるように好きな物を頼んだ。テッドはどうにか食べられていた。

マリウスはエレノアが心配だった。さっきのことがどうしても頭を離れず、今後も同じことがあれば、エレノアを守り抜く自信もなかった。

マリウスはエレノアの側にすわり、静かに話しかけた。

「エレノア、怖かっただろう。やはり君にはこの旅は無理だ。今日の事で、僕は君がこの

メンバーから離れることを勧めるよ。奴らは何をしてくるか分からない。今日は助かったけど明日は保障できない。だから、エレノア・・・。君とはここで・・・離れるべきだ。その方が君も安全だし・・・」

最後は言葉にならなかった。しかし、マリウスの本音は

{これが、最善の選択の筈だ。これから、もっと危険な事になるかもしれない。その時、僕は、エレノアを守れる自信がない}

マリウスの気持ちを聞いたエレノアは、静かに

「マリウス、私、確かに怖かったわ。怖くて、足は震えて声も出なくて、今でも少し寒い

くらい身震いするの。でもね、マリウスの言うように、ここで離れるのとは違う気がする。

私は、強制されて付いてきたわけじゃなくて、自分の意志で一緒に来たの。それは、皆と居たかったから。怖かったのは、自分に自信がなかったせいよ。少なくても、誰かに守って

もらう自分じゃあ駄目なの。その為に私はもっと努力する。だから、置いていくなんて言わないでよね」

エレノアは、マリウスの顔を真剣に見つめた。それを聞いていたアルが

「俺も、エレノアの言っていることは分かるぜ。そしてエレノアの判断も正しいと思う。

ここまで一緒に来て、今さら別れたって、奴らには通用しない。むしろ、人質にされて俺らと交渉をしてくる可能性が高い。ここにいる俺ら全員、自分の身は自分で守るようにしないと

ダメだと身にしみて思った。ジンジャーだけでは太刀打ちできないことも、あるかもしれない」

アルは頭を掻きながらエレノアをみて頷いた。ジョーも

「マリウス様、私もアルと同じ意見です。エレノア様はもう私たちの仲間です。ここで見捨てることは出来ません。女性をここで置いていくことは、英国紳士としては失格です。どうかエレノア様をお連れください」

「ジンジャー、君はどう思う?」

ジンジャーは銃の手入れの手を一旦止めると

「俺はよくは分からない。ただ、アルの言ったことは当たっている。ああいう輩は、利用

できる駒は何だって使うだろう。その時に、1番危ないのはエレノアだ。そして自分の身は、自分で守るという意見にも賛成だ。敵は何を使ってくるかしれない。最低自分の身は守ることが、今後俺たちには必要だと思う。俺が守ってやるのにも限界はある」

「ジンジャーに習えばいいじゃないか。基礎的な攻撃の仕方や防御のやり方。それができれば自分の身くらい守れるはずだよ」

テッドは、ジンジャーの顔をみながら、皆に問いかけた。マリウスも頷き

「ジンジャー、どうかな?僕たちを鍛えてくれるかい?自分の身を守れるくらいに・・・」

「・・・どうかな。基礎的な体力の付け方は教えてやる、防御方法も。後は自分たちで訓練するしかない。それでいいなら、俺は協力する」

ジンジャーは皆を見渡しながらそう言った。

「ありがとう、ジンジャー。じゃあ、みんなそうしよう。自分の身は自分で守れ、だ。

エレノア、君もそれでいいね」

「ええ、ありがとうマリウス、ジンジャー、皆。私頑張るわ。足でまといにならないように」

エレノアは、笑顔でマリスに言った。その笑顔は先ほどまでの恐怖の顔が消え、希望の表情になっていた。

それを見て、ジンジャーは軽く微笑むと銃の手入れに戻った。   

皆、緊張がとれたのか、笑顔で笑い話や冗談も言えるようになってきた。

「アッ、忘れていた!兄さん、さっきの暗号の話がまだ途中だよ」

急にテッドが大声で叫んだ。皆一応に、さっき手に入れた筒の事を思い出し、また一気に部屋のテンションは高くなった。

「そうだ、マリウス、さっきの言葉をもう1度読んでくれ」

「う、うん。そうだったね。・・・」

マリウスはバックアップのポケットから、5角形の筒を出すと

「もう一度読むよ。大海を渡り、世界一小さな国の指導者と、神に敬意を示せ。そして彼の口から出る言葉に耳を傾けろ」

「そうだったな。それで、次の場所がバチカンで相手が教皇という所までは、解読できた。問題はその教皇に、どうやって会えばいいか。ということだ」

アルは、こればかりはネットワークでも、解決しそうにないことが分かっていて、苦虫をつぶした表情をした。

皆、一様に黙り込む。方法がないのは誰でもわかる。誰も、教皇にコネがあるわけでもなく、口利きがいるわけでもない。

ジンジャーは、ふと口に何か出しかけたが口を閉じ、みんなに教える基礎の体力つくりの

作成に集中した。誰もがおし黙ったまま、時間だけが過ぎていく。

アルは、教皇と繋がりのある人物がいないか調べ、無理だと知ると、強硬策に出ようとまで考え始めた。

「とりあえず、行かなくては何も変わらない・・・」

皆の体力メニューを作っていたジンジャーが、ボソっと口にした。皆はジンジャーの方を

見ながら

「そうだよな。行けば、なにかいい案が浮かぶかもしれないし、ここで悩んでも仕方ない。行こう、バチカンへ」

「そうですね。あちらでなにかいい案がでるかもしれない。行きましょう。バチカンへ」

マリウスは意外そうにジンジャーを見て

「ジンジャーも喋ることがあるのだね」

「フッ。」

ジンジャーは、笑いながらまた作業に戻った


アメリカでのヒントを手にした一行は、今度は世界一、会うのは困難なバチカンの教皇様に謁見しなければならず途方に暮れます。私も大変興味のあるバチカン市国。ある映画で見た通りの場所を思い浮かべながら楽しく執筆しました。私もマリウス達と世界中を旅している錯覚になり、これから彼らがどこに向かうのか、ハラハラドキドキしながら彼らの旅を見守ります。

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