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蒼穹幻島ミラクネア  作者: 楊咲
第二パーティー 第一章
39/46

1-2 三文芝居


 景色は変わらない、全く同じ部屋。

 家具の配置も変わらなければ、トイレと風呂場のあるドアの位置までも同じ。


 ただ、寝ている人物は違った。


 服装までは掛布団により確認できない。顔だけ見れば男性。日本では目立つ金色の髪。不良だろうかと心の中では身構える。


 青年が寝ている人物を見ている横目に、神様はこの部屋の椅子を持ってはベッドの近くに置き、椅子に座る。


「隣、来て」


 青年は指示を受けては神様の隣へと立つことに。


「起きるまで待つのか?」

「そうです。起こしてはいけません」

「俺も……同じだったのか?」

「はい。かなり長く眠っていたかと」


 神様の返答を耳にし、背筋が凍るような感覚に襲われる。


 朝目覚めて、スマホのアラームを止め、勉強して……そのすべてが、夢だった可能性。昨日の出来事も、本当に起きた現実なのかわからない。

 死んだのか……? そういった疑問も持たずにはいられない。


 そのようなことを考えていると、神様に裾を引っ張られては寝ている人物が目を覚ました。


「…………これが……知らない天井だって展開か……?」

「お目覚めになりましたね」


 青年の時と同じセリフを神様が口にする。目を覚ました人物は頭を抱えながら、ゆっくりと起き上がる。


 その人物の見た目は、髪は金髪。耳には複数のピアス。無地の白の半袖Tシャツに、右腕には光沢のある銀色の腕輪。

 青年は、発する言語からも同じ日本人であり、ヤンキーだと断定した。


「……綺麗な美少女……」

「ありがとうございます」


 呆けた面を見せる金髪の男に対し、聞きなれた言葉なのか、神様は平然と言葉を返す。


「……これ、ガチなやつ?」

「えぇ、ガチなやつです」

「マジなやつ?」

「えぇ、マジなやつ」

「……じゃあ、あんたが俺をここに連れてきた……でいいよな?」

「……はい」


 貼り付けたかのような笑顔を神様は見せる。


「で、隣は誰? 普通は神様ひとりだけ……ってこの部屋も何だ?」


 金髪の男は、神様の隣にいる青年に目を向けては部屋を見渡す。


「隣は……下僕です」


 神様は青年に一瞥してから言うと、青年は神様を睨みつける。


 今は混乱している状態ではないため、すぐに反応を示せる。下僕になった覚えはないと。


「この部屋はあなたの世界に近づけて見せました」

「そうか……。で、俺死んだのか? そんな予兆なかったんだが」


 自身の知識をなぞってか、金髪の男は神様に問う。


 表情からわかるとおり、青年と違い、冷静に物事を分析しているようだ。


「あなたはどこまでの記憶がございますか?」

「え?」


 質問を質問で返されるとは思わなかっただろう。

 金髪の男は、一瞬困惑した表情を見せるも、腕を組んでは思い出す。


「……普通に日本で生きてきて、さっきは気晴らしに散歩してたところ、まで。田舎だし、車も全然通ってなかったはず。てか、服もそのまんまだし靴も履いたまま」


 金髪の男は掛布団を剥ぎ取り、ベッドから足を降ろして見せる。


 彼は日本と口にした。習慣の話で言えば、靴を履いた状態でベッドに寝転ぶことは、基本ないだろう。


「あなたは死んではいないです。ご安心ください」

「そっか。転生する前じゃない……転移か召喚もの……いや、召喚ものになるのか? 神様が居るけど、転生ではなく、召喚もの……で、特典ございます?」

「それは不明です。今は何とも」


 神様の言葉に、金髪の男は考え込む。


「今は、ね。……どうやって生きていくんだ? それと何の使命で呼ばれたんだ? あぁ、まずどんな世界か知りたい」

「……」

「まさかの魔法が存在しない世界だったりする? ロボットだったり、戦争の時代だったり」

「あとで、話します」


 神様は瞼を閉じながら告げては、金髪の男は首を傾げる。


 そして、青年と同様の言葉を金髪の男も口にする。


「あとで? 普通は話してくれるのが筋……何か胡散臭いな。もしかして、異世界じゃなくて誘拐的なやつか? デスゲームでもさせられるのか?」

「あなたが得た知識と同じにしないように。現実はこんなものです」

「でもこういうのって『神様の空間だ!』『異世界だ!』って感じがワクワクさせるのに、近づけちゃ駄目だろ。もしかして、神様の姿も寄せたんですか? せっかくの美少女なんだからさぁ……もうちょい神々しい格好で露出ギリギリを狙って、って夢与えてもよくない? 服が下僕と同じってどうなのよ」


 金髪の男は自身の思い描いていたような事柄が起きず、次々と文句を吐き出していく。


 その指摘を受けている神様はイラついている様子を伺えない。

 ただ、遠い目をしていた。


「……いや、もしかして、神様は神様じゃなくて、下僕のほうが実は偉い人パターンか? まさかの異世界に降ろす適性があるか試されているのか?」

「下僕は下僕です。ひとりでの生活は退屈ですから」


 青年は再び下僕と言った言葉に反応するも、言いつけを律儀に守っている。

 心の中は殴りってやりたい気持ちではあるが。


「なるほど。……でも、良い点は間近にいること。触れられる距離に美少女がいること。引きこもりには味わえない、最高のご褒美だ。……神の姿に戻ってくれません? やっぱりエチエチですよね?」

「ドスケベな人間に見せるとでも?」

「なっ!! ……そういうことか……! だから同じ服を……!」


 金髪の男は、電気が走ったかのように驚いて見せては、悔しそうに眉を寄せ、ふむふむと頷いている。

 そんな彼の言動に、青年は顔を少し歪めてしまう。


「そうです。変態には見せないのです」

「さっきのは冗談です! そんな下心は一ミリ……いえ、百ありますのでお願いします!! オタクに夢を与えてください!! モテたことがないんです!! 恥を忍んで頼んます、神様お願い!!!」


 言葉のとおり、恥を忍んで頼む金髪の男は絨毯に頭をこすりつける。

 いわゆる、土下座の状態であった。


 なおも青年の表情を歪ませる行為。

 受ける神様はというと、器が広いのか、微笑んだ姿で話し出す。


「正直者とはよろしいことで。では、この世界を救いなさい。そしたら、見せるでしょう」

「マジっすか?」


 すんなりと金髪の男の願望を受け入れる神様。

 聞き入れてくれると思っていなかった本人は、きょとん、とした表情で神様を見上げていた。


「あ、そうだ。あとひとつ条件が」

「何なりと!」


 金髪の男は下手に出るようなセリフを吐き、どんな要求も達成するような気迫を見せる。


「下僕とキスをしなさい」

「「は?」」


 ふたりの男は、声を揃えた。いや、被ったというべきだろう。

 あまりに意味の分からない条件が付けたされては、ふたりは顔を見合わせる。


 足を組みだした神様は、期待しているかのような笑みを見せては、愉悦に浸ろうとしていた。


「さぁ、やってみなさい」

「ひ、卑怯だ……卑怯だぞ、神様……!」


 血涙でも流しそうな勢いで、金髪の男は悔しがっている。


「ふざけるな」

「下僕は黙りなさい。あっ、金髪君が受け──」

「この状況で黙るわけないだろ」


 ようやく、怒り抑えられなかった青年は黙ることをやめ、利き手であろう右手を神様の頭に乗っけては、指に力を入れた。

 傷みを与えるための行動。いくら神様とはいえ、女性に殴ることは駄目だと判断したようだ。


 だけど、その攻撃は無効のようだ。

 神様は苦しむ表情を見せるどころか、青年を見ては圧ある眼光と言葉を飛ばしてみせる。


「何かしたか……?」

「おー、神様すごー」

「よせやい」


 青年が指に力を入れ続ける中、強者のオーラを漂わせていた神様はわざとらしく照れている。


「もう離しな、そんなへなちょこな力じゃ、マッサージにもなりやしないよ。あと、神様に罰当たりな行動に加え、女の子にお触りするのは死刑レベルだよ。セクハラで訴えるよ」

「……」


 青年は諦めて手を放す。早く帰らせろと言った気持ちを抑えて。


 すると、神様は大きなため息をついては男ふたりに説教をしだす。


「無礼者が多い。下僕は分をわきまえなさい。そっちの金髪君はこの空間にケチつけない」

「ははぁ~」

「神様と言うならもう少し言葉遣いをどうにかしろ」

「下僕の偏見を押し付けないで。基本的には神様も取り繕うので大変なんです。少しぐらい人を小バカにしたりするのも許しなさい」


 退屈な日々が続いているようで、愚痴らしきものも言っていた。


「なぁ、神様」

「なんだい?」


 未だに正座をしている金髪の男が呼びかけると、神様は聞き入る体勢に入る。


「眼鏡の人とキスは無理だ。異世界って言うんだったら、この世界で確実に見れるだろうし、神様のはいいや」


 本来の姿を拝むことは、諦めると口にした。

 ただ、神様にはお見通しのようで……。


「そう言って、日本ではできないハーレムを作り、結局は神をも口説き落として……満足を得ると。そのご予定では?」

「さすが神様。そう、俺はこんな人を放っておける男ではないのです。出会ったからには一度でいいから見てみたいです」


 自身の妄想を赤裸々に語る金髪の男は恥ずかしくもない様子。

 思い込みの効果か、特に隠すようなことはしないらしい。


「……見れたらいいですね」

「その含みを持たせたやつは何ですか? やっぱり、神様が──()()()だ(・)か(・)ら(・)か(・)ですか?」

「イエスイエス、よくわかったね。私も日本人…………──ん? 今なんて言った?」


 神様が戸惑ったような声を出すと空気が一変する。


 それは、自然すぎるが故の流れでもあった。



  ◆



「いや、ブラフだったんだが……まさか、同志か?」


 金髪の男は、目の前の人物の発言から同じ日本人ではと指摘している。


 近づけたと口にしていたが、ここまでの言動から、同じ趣味の匂いを感じ取ったのかもしれない。


「なんのことですか?」


 すっとぼけるは自称神様。


「いや、さっきイエスって言っただろ」

「いいえ、と言いましたが?」

「そうか、認めないのか。いいぞ、追い詰めてやろう」

「ほう、かかって来なさい」

「はい、かかって来なさいって言った時点でアウトだろ」

「何がですか?」


 さっそくと言わんばかりに金髪の男は正体を暴きにかかる……というよりは、認めさせようとする。


 そのような出来事に対し、青年は口を挟まず見届ける。正直な話、何がどうなっているのかわからず、頭の中が混乱していた。


「では、これより異世界の神様にいくつか質問を行わせていただきます。迎え撃つと言ったからには無言は厳禁です。よろしいですか?」

「さあ、かかってきなさい!」

「では参りましょう。日本人かどうか──いや、オタクかどうか検定スタート!」


 なぜか、神様と一般人の役割が逆なっているかのような言葉遣いになっていては、金髪の男は怒涛の質問ラッシュへと入る。 


「好きなアニメは?!」

「知りません!」

「好きなラノベは?!」

「文字読まない!」

「好きな漫画は?!」

「わかりません!」

「コミケに行った回数は?!」

「行ってません!」

「ネット通販か?!」

「ネットとは?!」


 一度止めると、金髪の男は二度頷く。


「やりますねぇ」

「ふっふっふっ」


 まだ続くらしい。


「好きなキャラは?!」

「わ、わかりません!」

「好きな髪色は?!」

「それは黒!」

「推しのVtuberは?!」

「く──いません!」

「推しに誓って言えるのか?!」

「言えません……!!!」

「なら認めるんだ! 日本人だということを!」

「認めません!!!」

「なんでだよ!!!」


 息を切らしたらしい彼らは、もう終わりと言わんばかりに、いつの間にか上げていた腰を勢いよく下ろしてみせる。


「はい、もう諦めろ、同志」

「諦めろとは意味がわかりません。同志とは異世界を救う同志といった意味ですよね? そもそも、さっきから私に馴れなれしく話しかけないでよ、この豚が!」

「その返しは無理があるだろ。それにキャラ変わりすぎ。いきなりツンツンし出すなよ」


 疲れた挙句、呆れたような視線を送る金髪の男を見ては、自称神様は大きくため息を吐いた。


「……バレてしまっては仕方がない。答えはイエス、我らの同志よ」


 ようやくというべきか、彼女は認めた。自分は日本人だということに。


「いや、もう今更って話だけどな。だけど、よくこんな部屋で上手いこと躱してたな。咄嗟にしてはなかなかだったぞ」

「そう、咄嗟にしては私頑張った。もう少し姿とか場所が違えたらいけたのに」

「とはいえ、ところどころ口調もと思ったが……多種多様でありか」

「そう、ありでしょ? いろんなシチュとかもあって」


 和やかな空気が振りまかれる。

 それは、金髪の男が彼女を讃え、讃えられる彼女も平然と答えていた。


「待て」


 青年が彼女の肩を掴み、口にする。


「お前は……人間なのか?」


 先ほどから蚊帳の外になっていた青年は、強張った顔を見せている。

 掴まれた彼女はというと、気が抜けたように素を出していたからか、ビクッと肩が跳ねさせていた。


 ただ、冷静さを装ってか、青年に向けた顔は貼り付けたような笑顔を取り繕う。


「……神様です」

「さっきまでの話はどうした?」

「神の戯言です」

「通用すると思うか?」


 彼女の頬に冷や汗が伝っている。

 鬼の形相というべきか、青年の鋭い眼光に怯んでしまう。


「そうか。神様じゃなければ眼鏡の人は下僕じゃないのか。てか、すっかり忘れてた」


 とどめの一撃が仲間から入ってしまえば、彼女は口を結んでしまった。


「どういうことだ……?」

「……同志よ、ここは空気を読んでほしかった」


 ここからは、青年が何度も彼女を問い詰める形となった。

 彼女はそれに対し、金髪の男の暴露もありながらも青年の問いに対し、どうにか屁理屈を交えては躱そうとする。


 しかし、ついには言いわけが作れない状況に追い込まれてしまっては、彼女は反省の意を通して正座をすることに。


 なぜか金髪の男も、彼女の隣に正座させられている。


「俺を巻き込むなよ」

「許せ」


 ふたりして、コソコソと話し出す。


「あの人が怒ってるのはその知識が無いのか?」

「そう。テンプレを知らない人」

「それはやってしまったな」

「こんな場所に来て知らないとは思わない。それに諸説なかったっけ? 異世界に呼ぶ人間は日本人が多い理由」

「あぁ、日本人かは忘れたけど、俺たちの世界がアニメや漫画やラノベやらと、異世界に精通する知識を持っているからーとかだろ? でもあれって、何かの作品の設定じゃなかったか? アニメで見たような……それともラノベか漫画か……なぜ思い出せないんだ……」


 金髪の男は頑張って思い出そうと、難しい顔をしている。


「だから日本人っていっても、基本的に知っている人だけが召喚されるって思ってた」

「やっぱり、フィクションであり、オタクに夢を与えるご都合主義。実際はこんな人も呼ばれます、みたいな? てか、全く知らないのも結構厳しい家庭なのかな。ゲームすらも与えられない?」

「こっちからは眼鏡だから同志かもって思ってしまうよね。偏見になっちゃうけど。もしくは──」

「いつまで話している」


 鋭い視線を感じ取る彼女は、青年の言葉を聞くとともに背筋を最大限までに伸ばしてみせる。


 そして、青年はいくつかの質問をふたりに投げかけた。


「整理させてもらうが……ふたりとも、同じ日本人でいいな?」

「「イエス」」

「ここは本当に別の世界なのか?」

「まだ断定はできないっすね。同志が神様じゃなかったし、ワンチャン誘拐パターンもある」


 可能性として挙げられる彼の言葉には、頭の片隅に入れておく。


 夢かも知れない。その可能性があったと仮定した際、誘拐はない話ではない。

 それでも、彼女の言葉を耳にすれば、少しは異世界ではないかと考えが傾く。


「あ、この部屋以外にリビングとダイニングみたいのがあるよ。少なくとも日本風ではない。部屋の家具といい色合いといい、結構豪華な部屋」

「ってことは異世界濃厚じゃないか? 海外まで俺たちを連れていく意味がわからん」


 青年はふたりの話を聞き、少し考えてから再び質問する。


「ここからどうすればいいか、ふたりも知らないのか?」

「知らない。でも、呼び出した人がいる可能性は捨てられない」


 彼女は首を傾げてと、考える仕草を見せている。


「お前が……呼び出したわけではないんだな?」


 青年の言葉に彼女は首を横に振ってみせる。


「違う。あれは異世界に来たと思ったから、はしゃいだついで。呼び出した神様側の役をやってみたくなったから。多分あるんじゃない? 『異世界に転移したと思ったら、異世界に送り出す神様役になっていました。~適当に送っていたら魔王を斃してくれないので、送った人物たちを叩きのめしに地上へ降り立ちます~』とかさ」

「いや、あるとかないとか以前に、ここまで良くホラ拭けたな。魔法がどうのとかも」

「バレないかやってみたかっただけ。名演技と言いなされ」


 彼女は胸を張ってみせてはどやっている。


「その結果、眼鏡の兄さんを混乱させたと。この人が言われた話から考えると、そうなるぞ」

「……ごめんなさい。知らない人のことを考えていませんでした」


 彼女はふざけず、頭を深く下げては謝罪する。


 反省ができ、謝罪できる人間らしい。

 受け取った青年は表情には出さずとも、静かに肩を落としていた。


「なら──」

「あ、待って」


 まだ聞き足りない青年であったが、彼女に遮られては止められてしまう。


「まだ人がいるから。全員が集まったら整理しあおう」

「……は? 眼鏡の兄さんと、同志と俺、この三人だけじゃないのか?」

「そう。あと二部屋あるはず。金髪君も服着替える? そこのタンスに色んなサイズのがあるよ」


 彼女は自身の服をつまんで見せては、タンスのあるほうを指さす。


 金髪の男は立ってタンスの引き出しを開けると、青年と同じように衣服が存在していた。


「おー、全く同じだな。こっちの引き出しは……全く同じ」

「一番下に下着とか靴下があるよ。あとは、服のサイズと半袖か長袖の違いだけ。結構用意されてる」

「お、ほんとだ……」


 金髪の男は、タンスの五つある引き出しを開けては締めてと、確認していくと、一番下の引き出しを開けては固まった。


 視線の先には、彼女が言ったとおり、下着に靴下とある。

 その中には、なぜか女性ものの下着も存在していてと……。


「うわぁ……同志だとは言ったけど、マジもの、いやそれ以上の変態だった……」


 彼女は覗き込んでみると、金髪の男を蔑すんだような目で見ては、距離を取る。


「待て、誰が仕組んだんだ? 俺はさっきまで寝ていたんだが?」

「実は、私たちが来る前から起きていたと。そして、私が寝ていた部屋から奪ったと……」

「どうせ茶番だろ? 眼鏡の兄さん」


 恐る恐るといった感じで金髪の男は尋ねている。


「茶番だとは思う。謝ったとはいえ、こっちもあまり信用していない」


 青年がそう口にすれば、金髪の男の表情は明るくなる。


「おー、見た目だけで判断しない男! いい眼鏡の兄さんだ!」

「んー、演技が悪い?」

「どっちも信用していないと言っただろ」


 青年の中では彼女への印象も悪い。

 それは金髪の男の返し。変態的発言の話から、も、という言葉が付いているのだろう。


「まぁ、言ったとおりの茶番。私の部屋にも男物がある。たぶん、みんな同じで服も下着も入ってるのは全部一緒。じゃあ、先に外で待ってる」

「同志、靴はどうした?」

「ベッドの下にあるの履いてる」

「オーケー」


 金髪の男が着替えをするため、ほかのふたりはこの部屋を出ることに。


「お兄さんもこの間に靴履いてきて。靴下も金髪君と同じ場所だから」

「サイズは?」

「五種類ほどあったはず」

「……助かるが、最初に言ってくれ」


 青年は彼女に言われずともと、自身がいた部屋へと戻り靴下、靴と履いていく。

 履き心地は悪くはない、むしろ歩きやすいとまで感じとる。


 感触を確かめたのちに、青年は彼女元へと戻った。


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