生徒会長と私
本を読んでいるつもりのに、内容が何も入ってこない。好きなはずの本が、ただ文字が羅列されている紙の集まりに過ぎない。急にソワソワしてきた。
「おいっ!生徒会長がきたぞ!」
クラスのムードメーカーの男子の声を皮切りに、クラスの私以外の全員がドアに視線を移し、生徒会長を見れる喜びが口から溢れている。
私はドキドキしすぎて顔が火照っていることを確信し、顔を上げられずにいた。
生徒会長は、容姿端麗、頭脳明晰で高嶺の花。それに加え、体が弱く入退院を繰り返しており中々目にする機会がないのだ。
ウワァァ!!キャアアア!!
どうやら、生徒会長のお目見えのようだ。
そう思い、俯いていた顔を上げた時――
声にならない声が出た。なんと目の前には、あの生徒会長がいたのだ。
「おはよう、ゆりかさん。ちょっとお話が」
そう言われて私は生徒会長と共に、誰もいない屋上前まで来た。
「やっと会えた、まゆ」
「久しぶり、ゆりか。ずっと会いたかった」
態度には出ないが、まゆと二人きりになれた喜びを噛み締める。
「今日はきっと、まゆ生徒会長の話題で持ちきりだね」
「今、私たち以外の話しないで。二ヶ月ぶりに会えたんだから、もっと、ゆりかとの時間を噛み締めたいの」
まゆもそう思っていてくれたを知り、多幸感に包まれる。
彼女は私だけの前では嫉妬深く、甘えん坊なのだ。
「まゆは相変わらずだねー」
「ゆりかは私と会えて嬉しくないの?」
まゆは恥ずかしながら、そう言った。
「嬉しいに決まってるよ!でも、会ってすぐに、好き好き言ったら引かれちゃうかと思って……」
「そんなことで引かないよ!寧ろ、言ってほしいくらい……」
照れて、話す声が段々小さくなるまゆが可愛過ぎて、思わず抱きしめた。
「っっ……!」
「大好き」
まゆは一言も話さないが、空気から相当照れていることが分かり、更に強く抱きしめる。
「ゆりか、ちょっと苦しい……」
「ごめん、まゆが可愛過ぎて止められなかった」
「ちょっと、恥ずかしいこと言わないで」
本人は気づいているのかは分からないが、沸騰しているくらい顔が赤い。
「じゃあ、そろそろ教室戻ろっか。もうすぐ授業始まるし」
「本当だ、ゆりかといると時間が経つのがあっという間ね」
教室に戻り、私は本の続きを読んでいる。やっぱり内容が入ってこない。それに、さっきからやたらと視線を感じるような。その方を見ると、ドアの側に多くの生徒に囲まれているまゆを見つけた。どうやら、周りの人たちの話を流して、私のことを見ていたらしい。
頭が、好きな人のことでいっぱいなのは、私だけじゃないようだ。
二人だけの秘密の関係、大好きです。もっと執筆能力があれば、解像度を高くすることができるのに......グヌヌ