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第3話 闇夜に浮かぶは
緋倭斗はまたしても倒れた少女に驚き、慌てて駆け寄った。見るとスゥスゥと柔らかな寝息を立てている。まだ体が回復しきっていなかったのだろう。見知らぬ男との遭遇に緊張して疲れたのもあるのかもしれない。幸いなことに、倒れたときに頭などは打っていないようだった。
その安らかな寝顔に胸をなでおろしつつ、慌てて焚火のそばの寝袋まで連れていった。
だから彼女が何と言ったのかなんて気にする暇もなかった。
≪なんて温かい魔法――≫
その言葉に呼応するように、一本の青白いほうき星が夜闇を照らすように流れていった。