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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
傀儡の城脱出編
9/34

08話 訓練するのも、楽じゃない。

最近、モチベーションが高い。

いいことです。

 それから2週間くらいが、経過した。


 第一騎士団の元で、訓練をする毎日。

 俺の戦闘スタイルとしては、神位スキルを主に、活用していくのがいいとのことだ。

 アンジェと違い、俺の神位スキルは、欠点を除けば、コスパも良く、長く使える。

 欠点の視力だって、発動を解除すれば、瞬時に元に戻るし。

 護身用に、剣の訓練もしているが、これは最低限でいい。

 だって、スキルを使ったら、刃物なんて簡単に砕けるからね。

 簡単な話だ。

 当たる前に、折っちゃえばいい。

 それを可能とする、上位スキルの【身体強化】だ。

 見えさえすれば折れるので、ほぼ勝ちゲーだ。


 下位スキルの【結界】も、【防護結界】に進化できた。

 これで、アンジェの一振りを喰らっても、死にはしないらしい。

 実際に当たりはしてないし、そんな実験も、するつもりは毛頭ないけど。


 そして俺は、この訓練期間に、下位だけど、魔法のスキルもいくつか覚えた。

 城内には、魔法師団もいたみたいで、そこで簡単なものだけ習ったのだ。

 そこの人たちも、多くは戦争で出払っていたため、あまり人数はいなかった。

 だがマリー様の願いもあってか、残った魔法師団の人たちは、(こころよ)く俺に教えてくれた。

 魔力の流れや、イメージなどを教えてもらい、俺は2週間で、【雷球(サンダーボール)】【雷鳴(サンダーショック)】【雷槍(ライトニング)】を習得した。

 2週間でこの数は中々すごいと、褒めてもらった。

 だが、気になることが一つ。

 俺の雷魔法は、全て赤かったのだ。

 固有魔法の【緋雷の獣(ブロッディバーク)】が赤い雷なのは、固有魔法だからで、解決したけど、今回のは全て一般の魔法スキルだ。

 赤いものなんて、見たことないそうな。

 これも結局のところ、原因不明だったので、固有魔法に影響したのだろう、とういことに落ち着いた。


 ただこれだけ訓練続きだと、俺も気が滅入(めい)ってくる。

 今日も訓練でへとへとだ。

 俺は重い足で、訓練場をあとにする。


「・・・・・!

 お兄ちゃん、訓練はもう終わったの!?」

「・・・おう!待っててくれたのか、エフィ?ありがとな。」


 この少女はエフィ。

 最近9歳になった女の子だ。

 1週間ほど前に城にやって来た、奴隷たちの一人だ。

 そう。

 この国・・・というより世界では、奴隷制度が広く普及しているらしい。

 この国も例に漏れず、『奴隷』という地位がある。

 最初に奴隷を見た時、ギーシャさんに詰め寄ったことを思い出す。


 〜〜〜〜


「この国、奴隷がいるんですか!?」

「ああ。この国というより、世界中に、奴隷はたくさんいる。」


 俺はギーシャさんの言葉に、耳を疑った。

 あり得ない、といった俺の顔を見て、ギーシャさんは(さと)すように言う。


「他の国のことは知らない。

 だが少なくとも、この国では、生まれた瞬間に、やるべきことがある程度決まる。

 私であれば、女王様をお守りすることだ。

 貴族の息子は貴族として生きるし、パン屋の息子はパン屋を継ぐ。

 奴隷の子だって奴隷になる。

 何か特別な力があれば別だが、なければレール通りの人生だ。

 みんなやるべきことをやる。

 私も貴族も、パン屋も奴隷も、そこは変わらない。

 それがここの常識だ。

 どうか受け入れてくれ。」


 ・・・・この国の常識。

 確かに、ここは異世界だ。

 俺が一人で、おかしいなんて言っても、それは俺が変なだけだ。


「それに、奴隷だからと、ぞんざいに扱われたりはしない。

 社会的地位が低いのは確かだが、奴隷にも仕事があり、それをこなしてもらうだけだ。」

「そうなんですか・・・。

 前の世界でのイメージでは、殴られたり、蹴られたり。

 休みなしで、無理やり働かされたりとかだったので・・・。」

「そうか。

 この国でそんなことをしている者がいたら、即刻捕まるな。」


 〜〜〜


 ギーシャさんの説明で、ある程度、奴隷の理解はした。

 だが納得したかと言われれば微妙だ。

 まあ、とやかく言ったところで、変わるものではないので、考えないことにした。


「お兄ちゃん、大丈夫?訓練で、チヲナガシスギタ?」

「んん!?血は流してないから、大丈夫だよ。」


 ぼーっとしてたから心配してくれたのだろう。

 エフィが心配そうに声をかけてくれる。

 優しい子だ。

 だが心配の仕方が、少々、過激すぎるな。

 血を流しすぎるのは、訓練とは言わないわな。


「ていうか、どこでそんな言葉覚えたの?」

「アンジェお姉ちゃんが、言ってたの。

 お姉ちゃん、戦いのお話いっぱいしてくれるから。

 そこで、覚えたの!」

「そうだったのか!でもその言葉は、びっくりするから、もう言わなくていいよ。」

「えーー。折角(せっかく)覚えたのにー!」


 アンジェとは後で、話し合う必要があるな。

 エフィは拗ねたような顔をしているが、素直に従ってくれる。

 いい子なのだ。


 エフィは人懐っこい子で、城に来てから、よく俺と遊んでいる。

 小さい頃の妹を彷彿(ほうふつ)とさせて、俺としても懐かしい気持ちだ。


 そもそも、エフィたち奴隷が城に来たのは、健康診断?みたいなのが目的らしい。

 詳しいことは知らないが、エフィに聞いたところ、体調や病気について調べられたと言っていた。

 奴隷にもそんなことをしてくれるなんて、かなり扱いが良いな。

 エフィの順番は最初だったらしく、他が終わるまで、城内で自由に過ごしていた。


「それじゃ、エフィ。今日は何しようか?」

「えっとね、私、中庭に行きたい!前にも行ったけど、お花、綺麗で楽しかったから!」

「オッケー。中庭、綺麗だもんな。一緒に行こうか。」

「おっけー!!」


 笑顔ではしゃぐエフィ。

 ぴょんぴょんと、その場で飛び跳ねている。

『オッケー』の意味はよくわかってないらしいが、俺の真似をして、使っているらしい。


 中庭に行く道中。

 俺たちは、金髪、猫耳、獣人のアレクとすれ違った。

 ここで訓練している日々で。

 俺は何度か、アレクと会っている。

 最初に会った時は、嬉しくて、話しかけようとしたが、アレクは忙しいらしい。

 軽い会釈だけして、歩いて行ってしまった。

 まあ、仕事の邪魔しちゃ悪いしな。

 それからは、会うたびに挨拶している。

 エフィが来てからは、エフィが手を振ったりするので、アレクも少し笑って、手を振り返してくれるようになった。


「アレクさんだー。こんにちわー!」

「よう、アレク。仕事、お疲れ様。」


 アレクは手を振ってエフィに答えてくれる。

 俺にもお辞儀してから、やはり忙しそうに、行ってしまった。


「アレクさん、今日も静かだったねー。」

「アレクは喋れないからな。でもいつか、一緒に遊べると良いな。」

「うん!今度遊びに、誘ってみよー!」


 それから俺たちは、中庭で時間を過ごす。

 その間、アンジェも中庭にきて、自分の武勇伝を語り出そうとした。


「お前それ、エフィの教育上、悪いから、今後禁止な!」

「えーーー!」

「えーーーーーーー!」


 アンジェとエフィが悲しそうな顔をする。

 特にアンジェは、世界の終わりみたいな顔をしている。

 どんだけ話したいんだ、こいつ・・・。


「話をするにしても、表現はマイルドにしてくれ。」


 こいつはどうでもいいんだが、エフィの悲しそうな顔に負けて、折れてしまった。

 こんな感じで、最近の俺の1日は終わる。

 城の人たちの計らいで、夕食は、俺とアンジェ、エフィで一緒にする。

 それからは、各自の部屋に戻って、眠りについた。


 ***


 夜。

 このところ毎日、同じような夢を見ている。

 一人の騎士が、マリー様に(ひざまず)く夢。


 この夢を見ると、やはり、マリー様に忠誠を誓えと、焦らされる。

 しかも、最初は寝てる最中や、寝起きだけだった。

 だが、ここ最近は、起きてる日中でも、この思考に(おちい)ることがある。

 ふとした瞬間、突然に思い出すのだ。

 それからしばらくは、その事で頭を埋め尽くされる。


 それに最初は、ただ焦らされてる感じだけだった。

 しかし今では、この考えになるだけで、とても苦しい。

 呼吸も上手くできなくなり、汗が止まらなくなる。


 もういっそのこと、忠誠を誓ってしまおうか・・・。


 そんな事を考えると、それはダメだと踏み止まる自分もいる。

 マリー様には失礼な話だが、『マリー様に忠誠を誓う』ことに対して、強い嫌悪感を抱いているのだ。

 だから、やはりこの夜も、長く、苦しい、軽い拷問のような時間を過ごした。


 ***


 それからさらに数日。

 相変わらず、例の夢に苦しめられてはいる。

 それでも、体は眠れているようなので、元気に振る舞っている。

 そろそろ、精神的に辛いものがあるが・・・。


 そんなこんなで、魔物を討伐に行く日がやって来た。

 これまで、訓練でしてきたことをぶつければ、余裕だと言われた。

 なんか部活みたいだ。

 まあ、最初に竜を倒してるしな。

 ネックなのは、気持ちの方だ。

 俺が、魔物への恐怖心と、殺しへの忌避感(きひかん)を克服できればいい。


 これまで一緒に訓練してきたサバロスさん、アンジェ。

 そして、サバロスさんの部下2人、計5人で森へ向かった。


 そういえば、城の外に出るのは、これが初めてだな。

 城の中から、見てはいたけど、毎日訓練で、忙しかったからな。

 でもいつか、行ってみたいと思っていた。

 なんならこのまま、魔物の討伐なんてやめて、街の散策がしたい。

 許されるわけないけど・・・。

 門番に出る(むね)を伝えて、俺たちは森に入る。


「いいですか、ナズさん。

 このへんの魔物は、基本的には弱い奴らばかりです。

 ただ稀に、強力な魔物も出現することがあります。

 これには、いろんな要因がありますが・・・・。

 ナズさんが倒したという、<装甲竜>も、そのケースです。

 なので、今日、強力な魔物に出会う確率は、とても低いでしょう。

 大丈夫、弱い魔物ばかりですよ!」


 サバロスさんが説明してくれる。

 その間も、俺たちは、森の深くへ、入っていく。

 (いわ)く、国を囲む壁には、魔物を近づけない特殊な技術が使われてるらしい。

 これも、魔巧(まこう)帝国から、もらい受けた技術だそうな。


「出てきた魔物は、基本的に全て、ナズさんに倒してもらいますよ?」

「はい、サバロスさん!俺も覚悟は決まってるので!頑張ります!」


「大丈夫!訓練通りにやりゃあ、ナズ殿には楽勝ですよ!」

「はい、ありがとーございます!」


 軽く俺を励ましてきたのは、第一騎士団第2部隊の、アッシュさんだ。

 チャラチャラした感じの人で、前の世界だったら、絶対に関わらない系の人だ。

 もう一人の寡黙(かもく)な人物は、同じく第2部隊の、モルクさん。

 訓練の頃から、この人が喋ってるところは、中々見れなかった。


「ご飯を食べるみたいにやれば、簡単だ!」


 とアンジェもよくわからない励まし?をしてくれてる。


「それくらい、『気楽にやりましょう』って意味だと思います。」


 すかさず、サバロスさんの注釈が入った。

 ありがたい。

 この注釈に、訓練中も何度か、助けられた。



 それから歩くこと、数分。

 一匹の魔物が、俺たちの前に、現れた。


エフィを書くのが、楽しいです。

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