06話 スキルを使おう!
紙に書かれたスキル表は、前回のページの最後にございます!
「あの、スキルって鑑定でしか見れないんですか?」
だとしたら、だいぶ不便だよな。
鑑定できる人がいないと、わからず終いだもんな。
するとマリー様は、軽く首を横に振った。
「いいえ、本来スキルは、自分しか見ることが出来ないの。
頭の中で、『スキルが見たい』って念じれば、いつでも見れるわよ。鑑定スキルは唯一、他者のスキルを見ることのできる方法ね。」
「へー!本当に、それだけで見れるんですか!」
「試しに、ナズ自身で、見てみたら?」
そうだな。
ものは試しだ。
念じれば見れるなんて、到底信じ難いが・・・。
『スキルが見たい』・・・・・・
神位スキル 【森羅ヲ崩壊スル力】(固有)
極位スキル 【緋雷の獣】(固有魔法)
上位スキル 【状態異常耐性】【言語理解】【身体強化】(強化)
【精神攻撃耐性】(付与)
おお。
本当に見れた。
「見れました!」
興奮気味に、俺は報告する。
ん?でもなんか、紙に書かれてないスキルもあるような・・・・。
「言った通りでしょ?」
マリー様は頷きなら、続ける。
「確認なのだけど、あなたのスキル。これで間違いないわよね?」
んんー。
正直に言うと、全然間違ってる。
2つほど足りてない。
だが。ここで違うなんて言ったら、アレクの評価が下がってしまうだろう。
なんかここの人たちは、アレクに冷たいみたいだし。
・・・たまにはミスくらいするよな。
木から落ちる猿だっているんだ!
このミス、隠蔽に協力しよう!
「はい、間違いなかったです!!」
めっっちゃ笑顔で、嘘をついた。
「そう、それならいいわ。」
マリー様も満足そうにしている。
「鑑定スキルもね。ランクによって見ることができる情報が違うのよ。
名前や年齢しか見れないものもあれば、スキルのランクまで見透かすものもあるわ。
うちの鑑定士は、スキルの種類から、魔法適性まで見れるから、とても使えるのよ。」
・・・・なんか、上から目線なのは気になるが、まあ女王様だしな。
それよりも、アレクのことをしっかり評価してくれてるのは、俺も嬉しい。
マリー様がスキルの説明を続ける。
「スキルの横に(固有)とか、(強化)って書かれてあるでしょう?
それはスキルの種類で、おおまかに、3つに分けられるわ。
(固有)と(強化)と(魔法)にね。
ちなみに、魔法にも、通常のものと、固有のものがあるわ。ナズは(固有魔法)を所持してるから、とてもラッキーなのよ!」
どうやら俺は、ラッキーらしい。
死んだ人間に、何がラッキーなんだとは思うが。
まあ、ポジティブでいることは大事だし。
ラッキーだと捉えておこう。
でも固有魔法って、そんなに重宝されるものなのか?
聞いてみるか。
「固有魔法って珍しいんですか?」
「そうねー。固有魔法自体は、そんなに珍しいものでもないわ。
でもね。極位の固有魔法は、とっても珍しいのよ!
スキルにはランクがあって、上から神位、極位、上位、下位に分けられるわ。
極位スキルを持つ者も少ないのに、それが固有のものなんて、とてもすごいことよ?女神様に感謝ね。」
聞いたところによると、スキルの獲得にも、色々あるそうだ。
生まれ持ったスキルは、女神様が与えてくれるものらしい。
特に、神位クラスのスキルは、努力とかでは手に入らない、ギフトのようなものだとか。
本人の努力次第で、手に入るのは極位クラスまでらしい。
それから、これは稀なのだそうだが、血統によって、受け継がれるスキルや、特別な職に就いて、習得するスキルなんかもあるのだそうだ。
あと、他者から渡されることもあるらしい。
「あとは、魔力量と、魔法適性ね。魔力量は(S)だから、かなり多いわ。
ギーシャでも(A +)だから、流石、転生者と言ったところかしら。
ちなみに、アンジェの魔力量は(S +)で、ナズよりも多いのよ。」
そうだったのか。
あいつのドヤ顔が、目に浮かぶ。
が、無理やり消す。
それより、この世界の平均はどんなもんなんだろうか。
結構平均とか気にしちゃうタイプなんだよな。
学校のテストでも、平均点を、一番気にしてたし。
「この世界の人たちは、普通どれくらいなんですか?」
マリー様は少し考える素振りをしてから、口を開く。
「そうねえ。全ての人が、多かれ少なかれ、魔力を持ってるけど・・・。
でも騎士や、冒険者みたいな、戦闘を生業としている人たちは、(C)くらいはあるんじゃないかしら。どうかしら?ギーシャ。」
マリー様は後ろにいる、ギーシャさんに話を振った。
確かにギーシャさんなら、場数踏んでそうだし、色々知ってるかもしれない。
「そうですね・・。多くの冒険者や、街の自警団なんかは、その程度でしょう。
我が国の騎士たちも、第二、第三騎士団は、そんなものです。
しかし第一騎士団や、それ以上の部隊であれば、平均(B +)くらいになるでしょう。」
やっぱ世の中的には、(C)くらいが平均なのか。
この国の精鋭でも、(B +)。
てことは、俺の魔力量(S)って、かなりすごいな。
平均を知ったことで、実感が湧いてきた。
なんか、こんなに、女神様によくしてもらって、いいのかなあ。
申し訳程度の遠慮を、してみる。
そんな俺の心は、ニッコニコであるが。
貰ったものなら、ありがたく使わせてもらおう!
「ありがとう、ギーシャ。ということで、ナズ。自分の魔力量の多さ、わかってもらえたかしら?」
「はい!よくして下さった女神様に感謝ですよ!」
「ふふ、そうね。あと、魔法適性なのだけど、ナズは(雷)の適性があるみたいだから、今度、覚えるといいわ。
上位や極位の魔法スキルは、習得するのに、練習も時間もかかるけど、下位だけなら、割と早く覚えられると思うわ。まあそれも、本人の才覚次第なのだけど。ナズは転生者だし、大丈夫よ!」
こんなに女神様に、贔屓にしてもらってるんだからな。
魔法の才能くらい、あるだろう!
俺もマリー様も、謎の自信を持って、頷き合っている。
「さあ、それじゃあ早速。スキル、使ってみましょうか!」
ぱちっ。とマリー様が手を合わせる。
早く俺のスキルが見たいご様子だ。
よし!やってやるかー!
と、思ったが。
俺、スキルの使い方、知らないなぁ。
困った顔でギーシャさんを見つめる。
助けて!ギーシャさーん。
ギーシャさんは、やはりな、といった顔をして少し口角をあげた。
それからマリー様に、
「マリー様。ここでは危ないので、少し離れたところで使用してもらいます。
向こうで、ナズにスキルの使い方を教えてくるので、ここでご覧になっていてください。」
と言うと、俺と一緒に、修練場の真ん中くらいまできた。
「いいか、ナズ。スキルは、そのスキルを使うイメージをして、魔力を消費することで、行使する。
魔法スキルなんかは、魔力を込めれば込めるほど、強くなるが、魔力が尽きれば使えなくなるので、多くを込める必要はない。基本的には、必要最低限の魔力だけ、使えばいい。」
そして俺は、引き続き、ギーシャさんからの説明を聞く。
うん、難しそうではないな。
やはりスキルも、イメージで使用するらしい。
そして魔力を消費して使う、と。
魔力は必要以上を使うことがなければ、最低限が引かれる。
まあ、魔力を込めるとか言っても、俺、魔力の操作とか出来ないからね。
ギーシャさんも、魔力込めるうんぬんの、心配はいらないと言っていた。
これで準備は整った・・・!
「よし。そしたら、あれに向かって、ナズの固有魔法を打ってみろ。」
ギーシャさんはそう言って、並んでいる人型の的みたいなものを、一つ指差した。
「・・・あの、大丈夫なんですかね、あれ。
壊しても、俺、お金とか持ってないですよ・・・?」
「ああ、心配いらんよ。あの人形は、魔巧帝国から買い取ったものだ。この修練場もな。
特別な技術で、何重にも防護結界が張られている。それも極位クラスの結界だ。神位スキルにだって耐えられる。」
見た目以上に固いらしい。
見かけはただの、木の人形だからな。
魔巧帝国ってとこの技術力は、かなりのもののようだ。
「この国は魔巧帝国と、懇意の仲なんだ。同盟も結んでいる。城の中にも、少なくない魔道具が使われているぞ。」
てことは、謁見の間にあった、自動で開いてた、あの扉も。
魔巧帝国のものだったんだろうな。
「・・・少し、喋りすぎたな。とにかく、心配はいらないから撃ってみろ。」
「わ、わかりました!」
そういうことなら、遠慮はいらんか。
俺は頷いて、一歩前に出る。
人生初の魔法。
やはりテンションは上がるものだ。
前の世界でも、誰だって何回かは、魔法を撃つ練習はしただろう。
その練習が実を結ぶことになろうとは・・・。
軽く息を吐く。
そして、なんとなく右手を前に突き出してみる。
狙いを人形に定めて、スキルを使うイメージ!
「【緋雷の獣】!!!」
次の瞬間。
俺の背後で、幾重もの赤い稲妻が迸る。
バリバリバリィィィィィィィィィイッ!!!
少し遅れて響く雷鳴。
その稲妻は、一つに集まり、やがて獣の顎のような形が構築される。
大きく開かれた赤雷の顎は、俺の狙った、木の人形目がけて・・・・・。
あれ?
なんか、大きくない?
明らかにサイズオーバーしてるんですけど。
お隣の人形ごと、覆い尽くして、俺の魔法は、奥の壁にぶち当たった。
砂塵が舞って、どうなったのか、よくわからない。
「ギーシャさんっ、これ、大丈夫なん、ですかっ!?」
砂埃のせいで上手く喋れなかった。
が、一刻も早く、どうなったのか知りたくて、口が動いた。
「ああ。問題ない。」
と、冷静な返事が返ってくる。
少しすると、砂埃も収まり、前が見えるようになった。
状況を確認する。
うん。
確かに、木の人形は無事だったよ。
いや、違うな。
木の人形だけ無事だった、だな。
人形の周りの地面は全て抉れて、ぐちゃぐちゃになっている。
それだけじゃない。
魔法が、壁に向かって通った跡までも、しっかり抉れている。
そしてなんと。
魔法が当たった壁は、無惨にも貫通しちゃっている。
向こう側の景色、丸見えです。
穴の中から、城壁が見える。
ここが、城から離れた場所で、人もいなくてよかったー。
とりあえず、人にあたってないなら安心だ。
「あの、ギーシャさん?ここって結界張ってあるんじゃなかったんですか?」
「張ってある。当然だ。
・・・・だが、魔法の威力が強すぎて、それを破ってしまったのか。すごいな。
・・なかなか、できることではないぞ!」
ギーシャさんが驚いた顔をしている。
これ、レアなんじゃないか。
それに、褒められてもな。
こんだけ破壊しといて、素直に喜べるか。
「だが、見てみろ。人形は、傷一つ、ついてないだろう。
これは高いそうだからな。壊してもらったら困るが、壁なんかは、修理すれば大丈夫だ。」
マリー様の方を見ても、パチパチと拍手をしている。
あんまり深刻そうでもないし、許されてるな・・・。
「にしても、赤い雷なんて見たことないぞ。
流石、極位の固有魔法だな。
よし、この調子で、神位スキルの方も使ってみろ!
私は少し、離れておくから。」
そうだよな。
あのドラゴンを一撃でやったと言わているスキルだ。
警戒しなきゃな。
・・・・あ、俺が使うのか。
えーー、嫌だな、怖いな。
怪我とかしないかな。
・・・言ってても仕方ないか。
慎重に使おう。
また、なんとなく右手を前に出す。
「【森羅ヲ崩壊スル力】」
すると突然、視界が悪くなった。
遠くのものがモザイクみたいにぼやける・・・。
これ、前にもあったやつだ。
転生して起きてから、しばらくこの状態だったな。
何も見えないことには、どうしようもない。
とりあえず、人形が見える位置まで、歩いて近づく。
視界に人形がはっきりと映った。
ドラゴンを倒した経緯から、触れずに力を加える系のスキルだろうと、昨日のうちに、予想は立てておいた。
実際に予想してくれたのは、ギーシャさんなのだが。
なので試しに俺は、軽く人形を小突くように、その場で仕草をしてみた。
すると人形から、ゴンッという音がなった。
・・・これは本当かもしれない。
「ギーシャさんっ。あの予想、当たってるかもしれないです!」
「おお、そうか。・・もっと何かできそうか?」
どこにギーシャさんがいるか、わからないので叫んでみた。
そしたら意外と近くに寄ってきていたようで、側から返事が聞こえた。
もっと何か・・・。
んーー。
じゃあこんなのは、どうだろうか。
人形を掴むような、動作をしてみた。
すると人形から、ギギィと軋む音がする。
お!いけそうだ。
上手くすれば、持ち上げられるかも。
そしてゆっくり、俺が拳を握ると・・・・。
ギギギギギギィィィィィィ!!!
目の前の人形もゆっくりと、潰されていった。
人形の胴体部分が、ごぼうみたいな細さになっている。
あまりにヌルっとできたので、何が起きたのか理解に時間がかかった。
視界が元に戻る。
いつの間にか隣にいたギーシャさんと、目が合った。
「・・・・弁償は、、、勘弁してください・・・。」
間抜けな声が、静かに響いた。