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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
傀儡の城脱出編
6/34

05話 すごいスキル・・・らしい。

 アンジェの城案内が終わり、食事を済ませる。

 その後、俺たちはメイドさんが()れてくれたお茶を飲んで、一息ついていた。

 そこにギーシャさんがやってきた。 


 今回は、あのでっかい剣は持っていないようだ。

 まあ、いつも持ってたら疲れるよね。


 ギーシャさんは、俺が倒れた後のことを教えるために来たらしい。


「そもそも、我々が君に気づいたのは、城外の森から莫大(ばくだい)な魔力反応が感知されたからだ。敵国の攻撃とも考えられたが、感知部隊によると、一人の人間から発せられているものだとわかった。数年前にも似たようなことがあったのでね。すぐにピンときたよ。」

「そう、私の時だ!私も騎士団たちに取り囲まれたが、その時は弱っていたので、おとなしく捕まったんだ。だが、ナズみたいに魔力切れで、倒れたりなんかはしてなかったぞ!」


 若干、ギーシャさんが渋い顔をしたが、何かは聞かないでおいた。

 それよりも気になるワードが出てきたな。


「・・・・?魔力切れ?」


 なんのことかわからなかった。

 確かにあの時は、眠くて倒れていたが・・・。


「ナズ、あの時、異常に体がダルかったんじゃないか?体に力が入らず、眠気もひどい。そんな状態ではなかったか?」

「そうなんですよ!あの時はもう、眠くて眠くて、仕方がないって感じでした。」

「それが魔力切れという状態だ。君はこの世界に来てから、常に、大量の魔力を体から放出していたんだ。そして、あの<装甲竜(そうこうりゅう)>を殺した時に、その魔力も底が尽き、魔力切れの状態となったのだろう。」


 なるほど。

 だからあんなに眠かったのか。

 あと、あの黒いドラゴン、そんな名前だったのか。



「え・・・ていうか。あのドラゴンって俺が倒したんですか?ていうか死んでたんですかっ!」


 少し声が上擦(うわず)ってしまった。


「?ああ。状況から見て、それしかありえん。ナズがスキルを使って殺したんだろう?それも一撃で。」

「いや、俺は、歩いてたら急にドラゴンと遭遇(そうぐう)して、、、、怖くて、必死になって逃げてただけなんで・・・。」

「まあ、必死だったのは向こうも同じだろう。何せ、膨大(ぼうだい)な魔力を体から吹き出して、こちらに向かってくるんだ。ドラゴンも相当警戒していたに違いない。本当に恐怖していたのはドラゴンの方かもな。」


 俺の方が怖かったに決まってるだろ!

 何言ってんだ、このおっさん!


 いや、でも、まさか・・・。俺が本当にドラゴンを殺してるなんて。

 虫でさえ、あんまり殺したことなんてないのに。

 猫より大きい生き物なんて、殴ったりすらもしたことない。


 だからだろう。

 一つの生命の、命を奪ったという事実に手が震える。

 この辺の感覚はアンジェも一緒なのだろうか?




 すると大人しく聞いていたアンジェが口を開いた。


「装甲竜を一撃とは、すごいスキルなんだな、ナズ!」


 こいつ、ニコニコと笑顔で、俺のスキルを褒めてきた。


 全く、俺の心境がわかってないご様子だ。

 まあ、あまり期待していなかったが。

 だが、聞けば流石にわかるんじゃないか?


「アンジェも、この世界にいるモンスターとか、もう殺したりしたのか?」

「ああ、当然だ!私だってものすごく強いモンスターや、敵国の猛者をたくさん(ほうむ)ってやったぞ!!」

「それって、人もってことか!!??」

「・・・?当たり前だろう?なんせ私は、この国で、騎士団の総団長なのだからな!!」


 誇らしげな顔をしている。


 ダメだ、この女。完全にバグってやがる。

 まさか、人まで()ってるなんて。

 いや、でも元の世界で、人を殺す系の仕事を生業としていた、という線がまだあるか・・・。


「なあ、アンジェは、前の世界でも・・・・・」




 続きは、怖くて聞けなかった。

 もし、普通の女の子だとすれば、それがなんの躊躇(ためら)いもなく、人を殺したなんて、言えるわけないだろう。

 この世界の環境、自分に宿(やど)った大きな力。

 そのせいで価値観が変わってしまうのなら、それは心底、恐ろしいと思った。

 だから、答えなんて知らない方がいいんだ。


 てか、人を殺す系の仕事ってなんだよ。

 物騒(ぶっそう)すぎるだろ。





 俺が変なとこで、質問を切ってしまったため、その場に微妙な空気が流れた。


「・・・・話が少し脱線したな。戻すぞ。・・・・ナズが装甲竜を倒し、魔力切れでその場に倒れていたところを、騎士団が保護し、そこから城の部屋で、2日ほど眠っていたわけだ。」

「えっ、俺、2日も寝てたんですか!!?」

「ああ。初めての魔力切れゆえ、その回復にも時間がかかったのだ。次に魔力切れを起こした時は、もう少し、早く起きられると思うがな。」


「安心しろ!私も、この世界に来て、騎士団に捕まった時は、3日ほど目を覚さなかったらしいからな。それにしても、先ほどの食事の食いっぷりは、なかなか見事だったぞ!」


 2日も寝ていたら、そりゃ、腹減るよな。

 人生で一番、飯が腹に入ったやも知れん。





「これが、お前がこの世界に来て、そして倒れてから起こったことだ。理解できたか?」

「・・・・はい。・・・色々、説明してもらって、ありがとうございます。」


 受け入れるのには、時間がかかりそうだが。

 そんなことは言わなくてもいいだろう。



 そういえば、倒れる前に金毛の猫を見たな。

 それで思い出したが、あの金髪の獣人。俺のスキルを鑑定してくれたやつ。

 あの獣人とも話してみたいな。



「あの、ギーシャさん。」

「ん?まだ何か、わからんことがあったか?」

「いえ、そうじゃなくて・・。俺のスキルを鑑定してくれた、金髪の獣人。あの子はなんて名前なんですか?」

「あー、獣人のことか。名前は・・・知らんな。文官の誰かに聞いてみるといい。知っているやも知れん。あれは獣人だが、鑑定のスキルが非常に高い精度で扱えるのでな。この国で文官をさせているのだ。」


 ・・・・・。なんか引っかかる言い方だが、たまたまか?





 その場を後にして、城内ですれ違う文官たちに、獣人くんの名前を聞いてみた。

 驚くことに、ほとんどの人が名前を知らなかった。

 いわく、獣人はこの城内では彼一人だから、獣人と呼べばいいらしい。

 いくらなんでも、それはひどくないか?


 その後、やっとの思いで、名前を知ることに成功した。


「あーー、あの獣人の名前な・・。確か、アレクっていったけな。まだやつが、この城に入ったばっかの頃に、名前を教えてきてな。ほらあの獣人、喋れねえからな。紙に字書いてよ。ったく、紙は貴重なもんなんだから、無駄遣いすんなって、怒ったんだよ。その時の記憶で、名前も一応、そんな名前だったかなって覚えてたわけよ。」


 本来、その獣人くん、改めアレクとすれ違えられたら、本人に名前を聞くだけで済んだのだが。

 そもそもアレクは喋れないらしい。

 だから、スキルを鑑定してくれた時も、ずっと静かだったのか。

 にしても、喋れないやつが、紙に自分の名前を書くのは、全然、紙の無駄使いじゃない気がするが。

 それほど、紙は、この世界では貴重なものなのかな。




 そんなこんなで、日が暮れた。

 驚きの連続だったせいか、2日も寝ていたにも関わらず、夜には当然のように眠くなった。

 ベッドの寝心地は、やはり最高だった。



             ***



 次の日。

 豪華な朝食を楽しんでいると、メイドさんが、女王様との約束の時間を、伝えに来た。

 軽く返事をして、部屋に戻る。


 時間まで、部屋でゆっくり過ごしていると、迎えが来た。

 




 連れて行かれた先は、広場・・・・いや修練場(しゅうれんじょう)だろうか?


 そんな場所に似つかわしくない、オシャレなティーテーブルに、女王様は座っていた。

 女王様の後ろには、ギーシャさんもいる。

 日を(さえぎ)るためにテーブルについた傘のフリフリが、修練場とのミスマッチにひどく貢献していた。


 総じて、あまり居心地のいい場所ではなかったが、絶対に口に出してはいけないことはわかる。


 


 女王様に勧められて、向かいの椅子に座る。


 「せっかく、外が晴れてるんですもの。ここでなら、スキルも使えるし、講義の場所としては、打って付けよね。」

 「はい、、、、今日は、ありがとうございます、女王様。勉強させてもらいます!」

 「うふふ、やる気のある生徒は、大歓迎ですよ。あと、いつまでも女王様なんて呼んでないで、私のこと、名前で呼んでくれて構わないわ。」

 「じゃあ、マリー様・・・・でいいんですか?」


 大丈夫か?

 不敬罪に当たらないか??


 「ええ、アンジェもそう呼んでくれるし、私も嬉しいわ。ギーシャは、私のこと、そう呼んでくれないのだけども。」


 そう言ってマリー様は、少し顔を膨らませる。

 

 「私は、クリスティーナ様に誓って、御身を守る盾であり続けますので。ご命令とあらば、そう呼びますが。」

 「もう、そうじゃないのっ!私はもっと、気軽に接してほしいのよ!」

 「そういうことならば、できませぬ。」


 マリー様はより一層、怒ってみせるが、本気じゃないことくらい、見てればわかる。

 マリー様が接しやすい人で、俺も緊張がほぐれた。


 そして、気になる名前が出てきた。


 「あの、マリー様。クリスティーナ様って・・・?」


 俺は恐る恐る、聞いてみた。




 「ああ、クリスティーナはね、私の姉なの。私と違って、厳格で優秀な人だったわ。けれど、敵国の謀略(ぼうりゃく)(はま)ってしまって・・・。お父様、前国王も一緒にね。今はもうこの世にはいないわ。お母様も、私を産んだ時に、命を落としてしまって・・・。だから王家の血は、もう私だけになってしまったの。」


 想像以上に重い話を、気軽に聞いたことに申し訳なくなる。



 「いいのよ、そんな顔しなくて。姉様は私の母親の代わりをしてくれたし、お父様にもたくさんの愛情を注いでもらった。私は幸せに生きてきたわ。敵国のことは許せないけれど。私はこの国を、お父様や姉様がやろうとした分まで、豊かにしていくつもりよ!」


 ・・・・・・なんて素晴らしい女王様なんだぁ。

 こんな素敵な人の家族を奪うなんて、敵国の奴らは、どんだけ酷いんだよ。

 健気(けなげ)に頑張ろうとするマリー様の想いに、俺は、目頭が熱くなるのを感じる。


 「さあ、こんなお話はもういいから。本題に入りましょう!」


 ・・・切り替えの速さがすごい。

 もう完全に前を向いているのか。

 強い人なんだなあ。





 

 「とりあえず、あなたのステータスを見てもらいましょうか。」


 そう言ってマリー様は、俺に1枚の紙を見せてきた。

 これは、獣人のアレクが、書いたものを、まとめたものだろうか?


 「すみません、紙に書いてもらって。紙、貴重なものなのに。」

 「いいのよ、紙くらい。たくさんあるから。そんなに貴重でもないわ。」


 あれ?紙って貴重なものじゃないのか?

 疑問を(いだ)きながらも、紙に目を落とす。

 

 そこには俺の名前や、年齢。魔力量?

 そして、スキルの段階っぽいのと、その横にスキルが書いてあるようだ。

 







ステータス

 名前:ナズミ・スグル(17)

 種族:人族

 魔力量:S

 スキル:神位スキル【森羅ヲ崩壊スル力(ア・レース)】(固有)

     

     極位スキル【緋雷ノ獣(ブロッディバーク)】(固有魔法)

    

     上位スキル【身体強化】(強化)

          【言語理解】(強化)


 魔法適性:雷



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