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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
傀儡の城脱出編
5/34

04話 他にも転生者が、いたらしい。

「・・・ああぁ、よろしく・・・・・。」


 アンジェの高いテンションに、少し気圧(けお)されながらも、とりあえず返事をする。


「アンジェ。あなたも確か、自分が死んだ時の記憶はないのよのね?」

「はい!マリー様!・・・でも女神様のことは、はっきり覚えています!」


「・・・・ん?女神様?」


 なんだ、こいつ。いきなり何を言い出すんだ?


 アンジェはキョトンとした顔をしている。

 女王様やその後ろのギーシャさんまで、俺に懐疑的(かいぎてき)な目を向けている?


「ナズ。お前まさか、あの美しい女神様のことも忘れたのか!!??」

「・・・覚えてない。」

「は〜〜〜〜。なんて失礼なやつなんだ、お前は。せっかく女神様は私たちに、()()()()()()を与えてくれたのに。それなのにお前は、その恩人の顔も覚えてないなんて!!」


 覚えてないものは、仕方ないだろう。

 ていうか俺、死んで間も無い人なんだから、もうちょっと優しくしろよ。

 死んだとか、転生したとかで、これでも動揺してるんだぞ、今。

 だがここで、俺はあることに気づいた。


「・・・・!いや待って。『2度目の人生』・・・。」


 聞き覚えのある言葉。

 あの光の中で聞いた美しい声。

 脳裏に刻まれた言葉。『それでは、良い2度目の人生を』


「いや、もしかして俺、女神様に会ったかもしれない。声を聞いたんだ、光の中で。『それでは、良い2度目の人生を』って。これ女神様の声なんじゃないか!!?」

「おお!そうだ、私も同じことを言われた!!なんだ、ちゃんと会ってるじゃないか!なんで嘘なんかついたんだ?」

「嘘じゃなくて、女神様の姿は見てないんだよ。声、聞いただけで。だから女神様かどうかか、わからなかったんだ。」

「そうか、そうだったのか。じゃあナズは、失礼なやつじゃなくて、勿体無いやつだったんだな!女神様はとても美しくて、神々しかったんだぞ!!」


 神々しいのはなんとなくわかるけど。

 めっちゃ光ってたし。

 てか、こいつの女神見たマウントはなんなんだ、腹立つな。


 ここで、俺とアンジェの話し合いを見ていた女王様が、口を開く。


「これまでに確認された転生者は、全員、女神と会ったと言ったわ。女神の姿を見ていないのなら、転生者かどうかも怪しところね・・・。」


 女王様は何か考え事をしたのか、一呼吸置いて、また続ける。


「ともかく、スキルを鑑定すれば、あなたが転生者かどうか、はっきりするわ。」

「・・・・スキル?俺そんなの、持ってるんですか?」

「ええ、あなたが本当に転生者ならね。<女神の祝福>といって、決まったスキルを与えられてるはずだわ。転生者を見抜く基準になるのよ。」


「そうなんだ!すごいだろ!!」

 アンジェが自信満々に言い放つ。


「アンジェが発見したのか?この法則性。」

「いや、全然私じゃないぞ!!」


 じゃあ、なんで『自分が見つけました!』みたいな顔してるんだ、こいつは。

 なんでそんなに、誇らしげなんだよ!


「それじゃあ早速、鑑定しましょうか。今日はそのために来てもらったのよ。」


 そう言うと、女王様は文官たちのいる方へ視線をやった。

 するとその中から数人がこちらに向かってきた。



 おお、なんか目立つのがいるなと思ったら、金髪の猫耳を生やしたやつが混ざっている。

 これは・・・・獣人か!

 しかも猫の獣人。いいね、好感が持てる。

 前髪が目までかかっている。静かそうな印象だ。

 たぶん男だろう。


 すると猫の獣人は俺の後ろに立って、背中に手を当ててきた。


「あの・・・・これは?」


 わけがわからなかったので、女王様に質問してみた。


「ああ、そのまま楽にしてなさい。スキルの鑑定はね、その人に触れて、同意を得る必要があるのよ。だからナズは鑑定に同意してくれさえすればいいわ。」


 俺は頷いて、『鑑定に同意します!』と心の中で叫んだ。

 ・・・・叫ぶ必要はなかったのかもしれない。


 少しすると、猫の獣人は文官たちの方に戻って、何かやりとりを始めた。

 なにか紙に記録しているのかな。

 文官たちは、猫の獣人の記録が書かれるのを見ると、興奮したようにその紙を取り上げ、女王様の方に向かっていった。

 取り残された猫の獣人は、列の中に戻っていった。



 紙を見て、文官たちと、そばにいたギーシャさんと少し会話をした女王様は、俺の方に視線を向けると、()みを浮かべた。


「ナズ。やはりあなたは、転生者だったようね!転生者特有のスキル、【言語理解】【身体強化】そして神位(しんい)スキルの発現がみられたわ!」


 どうやら、証明できたっぽいな。

 にしても、スキルか・・・・。

 どうやら言葉が通じているのも<女神の祝福>による【言語理解】ってスキルが働いてるらしいな。


「女神様は優しいからな!私たち転生者が、この世界で生きていけるようにスキルをくれてるんだ!」

「へーー、そうなのか。太っ腹だな、女神様は。」

「おい、失礼だぞ、ナズ!女神様のウエストは細いんだぞ!!見てないから知らんかもしれんが!!」

「女神様のこと、デブとは言ってねえよ!」

「・・・?それならいい!」


 アンジェ、こいつ女神様のことすげー(した)ってるな。

 ちょっとアホっぽいけど。


「それじゃあ、ナズ。今日のところは、これで解散よ。この後は同郷(どうきょう)のアンジェと話してるといいわ。スキルやこの世界のことについては、また明日。教えてもらうといいわ。・・・アンジェ、ナズにお城の案内してあげてね。」

「わかりました!マリー様!」


「それから・・・・・、バラン。ナズにスキルのことについて諸々、教えてあげれないかしら?あなたの部下でも良いのだけれど・・。」


 女王様の視線を辿(たど)ると、身なりのいい文官らしき男が、前に出てきた。

 細身で、結構老けた顔だな。

 穏やかそうな顔をしている。たぶん優しい人だろう。

 バランさんは、チラッと女王様の方を見たかと思えば、すぐに俺に視線を向けてきた。


「初めまして、ナズさん。私がバラン・クレイスフィルです。この国で、内務大臣をしております。」

「あ・・・・初めまして・・・・ナズです・・。」


 なんて自己紹介すればいいかわからなかったので、変な感じになってしまった。


 バランさんは、女王様の方を向き、申し訳なさそうに口を開く。


「ナズさんにご教授したいのはやまやまなのですが、対処しなければならない問題がいくつかあり・・・・。そのため、申し訳ないのですが、そちらまで手を回せそうにありませぬ。」

「そう・・・そうね。今はみんな忙しいものね。・・・・・わかったわ。ナズ、明日は、私があなにスキルやこの世界のこと、教えることにするわ!」


「え!・・・いいんですか?女王様が自ら?」


 俺が聞くと、女王様は美しく微笑んだ。


「ええ、みんな忙しいのだし、私もできることをしなくては!というわけで、時間は明日の朝食の時にでも、伝えに行かせるわ。今日はお疲れ様、ナズ。」






 それから俺はアンジェに連れられて、城の中を歩いて回った。

 自分の部屋も与えられたが、今度はちゃんと窓もついてて、快適そうだった。


「へーー、ナズは日本人なのか!私、日本人初めて見たぞ!!でも、ナズは日本人なのに、ちょんまげじゃないんだな?」

「・・・・現代の日本人は、いろんな髪型なの。全員がちょんまげだったのはもう、ずっと昔のことで、今は一部の人しかしてないよ。」


 いまだに日本人が全員ちょんまげだと思ってるやつ、いたのか。

 まあ、これでこいつも少し賢くなれたのだし、良しとするか。


「そうなのか・・・・昔の時代のことなのか・・・・。なあ、ナズ。」

「ん?」


「手裏剣、投げてみてくれよ!」

「っふ、お前もうちょっと黙れよ・・。」


 アンジェのあまりのアホさに、不覚にも少し吹き出してしまった。


 目をキラキラさせてワクワクしていたところを、シュンとした顔にしたのは少し悪かったかもしれない。


ナズ(17)174cm 人族

 2日前に転生


アンジェ(19)183cm 人族

 3年前に転生

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― 新着の感想 ―
[良い点] テンプレ的な転生の後で、元気のよい同類との遭遇の場面が女王様の前とは…、早い内から女心モヤモヤフラグを立たせていて先が気になります。
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