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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
傀儡の城脱出編
4/34

03話 どうやら本当に、異世界らしい。

アクセス数も増えてきて、嬉しい限りです。

読んでいただき感謝です!

 目が覚めるとそこは、牢屋・・・・なんてことはなく、むしろ牢屋とは真逆の風景だった。


 道理で快眠できたわけだ。

 俺が寝ているのは、17年生きた中で一度も寝たことのないような、キングサイズのふかふかベッドだ。


 広い部屋に豪華な内装。

 そこに似つかわしい豪華な家具が、部屋の中に並んでいる。


 ふかふかのベッドに座り、俺は(あた)りを見回していた。

 

「いや、どこなんだ、ここ」


 例えるならスイートルームだろうか。

 まあ、入ったことないから適当ですけど。

 だが、明らかに金はかかっている、だろう。

 そのへんの物を値踏みしながら、思考にふける。金額なんてわかりっこないんだけど。


 時間・・・。

 この部屋、時計ないな・・・。

 それに窓も付いてない。

 外の様子がわかれば、何時か大体想像つくのに。

 窓が無いせいで、今が朝か夜かもわからない。

 こんなに豪華な部屋なのに、日当たりがないのは、勿体無くないか?

 俺が大工なら、絶対に窓、付けるのに。


 あの後から、どのくらい時間が経ったんだ?

 そして何が起きて、俺は今、VIPみたいな待遇を受けているんだ?


 そんなことを考えていると、コンコンコンコン、と扉がノックされる音が聞こえた。


 いきなりのことに体がビクッとした。

 が恥ずかしいので、バレないように、平静を(よそお)った声で「どうぞ」と返事をしてみた。


 するとゆっくり扉が開き、女性が入ってきた。

 なんとこの女性。メイド服を着ていらっしゃる。

 あれ、そういう系のカフェなの、ここは。

 金持ち専用のメイドカフェにでも、招待されたのかな俺。


 そんな考えを嘲笑(あざわら)うかのように、メイドさんの後ろから、銀色に光る甲冑を(まと)った大男が現れた。

 歳のほどは40くらいだろうか?

 右の頬についた傷が印象的だが、その傷に負けず劣らず、顔が怖い。

 傷があるから怖いのだろうか。

 (いな)。傷が無くても余裕で怖い顔である。

 腰には、でっかい剣?が差してある。


 ・・え、あれ本物?

 だとしたら、どこの国だここ。

 日本だったら、ぶっちぎりで銃刀法違反ですよ?

 目の前のおっさんとメイドさんの顔を見ても、日本じゃないことまでは確定していいのか?


 そんな完全にフリーズしている(主におっさんのせいで)俺を心配したのか、メイドさんが口を開く。


「具合はいかがですか?」


 綺麗な声で、聞くだけで元気になりそうだ。

 と思ったのは流石にキモ過ぎるか・・・・。


「あ、だいぶ良いみたいです。」


 あれ?なんか違和感を感じるな。

 なんだろう・・・・・。


 ・・・・・・言葉が通じてる!!??


「あの、ここって日本なんですか?」


 思い切って聞いてみた。

 ていうか、日本語が通じている時点で、日本なんじゃないか?

 あんな複雑な言語、日本でしか使わんだろ。


「いいえ、ここはオネマリッタ王国ですよ。」


 ニコっと微笑んだメイドさんはすごく可愛かった。

 うんうん、なるほど。オネマリッタ王国ね。・・・・・いや、どこぉぉーーー!!!


 どこだよ、聞いたことないよ!

 なんで、わかって当然みたいな顔してるの、メイドさん。

 正式に日本じゃないみたいだし。


「そんな、当然みたいな顔して教えても、わからんと思うぞ。」


 おっさんの低い声が部屋に響く。

 そうそう、そうなんだよ、おっさん!!

 よくぞ言ってくれた!


 俺は激しく頷いて、おっさんに同意した。


「あら、確かにそうでした。お兄さん、転生者様ですもんね。」

「てん・・・??あ、あのぉ・・・」

「何はともあれ、回復したのなら幸いだ。今から女王様に謁見(えっけん)してもらう。ついてこい。」

「あ、はい・・・。」


 俺の意思はフルシカトで話が進んでいく。

 俺も逆らう気はないので、言われるがままついて行くことにした。

 むしろ、断るという選択肢などあり得ないしな。

 だってあの腰にぶら下がってる剣。本物っぽいし。おっさんの顔、すげー怖いし。


 それよりも。

 メイドさんが言ったセリフ。転生者。

 頭に刻まれた、あの女性の言葉。

 目の前で起きた、現実離れした状況の数々。


 受け入れるしかないのか・・・・。


 〜〜〜



 豪華な廊下を、メイドさんと騎士であろうおっさんと歩く。

 色々聞きたい。

 質問攻めにしたい。

 だが、誰も話そうとしない空気なので、口を開くことができない。

 結局、一言も言葉を交わさないまま、これまた一段と豪華な装飾が(ほどこ)された、扉の前に着いた。


 どうやらこの中に、女王様がいるらしいな。


 ここに来る道中、廊下の窓から外が見えた。

 どうやら今は昼間らしい。


 意識を失ったときはまだ、日が出て間もないくらいだったと思うから、そんなに時間は経ってないのかも?


 騎士のおっさんが扉の前に立つと、自動で扉が開き始める。

 中から誰かが引いてるのかとも思ったが、扉周りに人はいなかった。






 部屋の中に入るとそこは、いかにもな謁見の間だった。

 

 広い部屋の奥、その中央に、玉座が一つ。奥だけ、階段2つ分、高くなっているな。

 その玉座に座っているのは、美しい女性だ。


 あれ?そういば、王様じゃないんだ。女王様なんだ。何か訳ありなのかな?


 部屋には等間隔で支柱が建てられているが、その支柱でさえも、凝った意匠が施されている。

 外から差し込む光も、モダンなステンドグラスのおかげで、部屋を豪華に彩っている。


 玉座から少し離れた左右には、兵士とメイドさん。それから、文官っぽい人たちも整列している。

 結構な人数が並んでるな。

 やばい。なんか急に、緊張してきた。



 体が強張(こわば)っているのを感じながらも、騎士のおっさんとメイドさんと共に、女王様のいる玉座手前まで歩く。

 そこまで行くと、二人とも片膝をついて、女王様に頭を下げた。

 

 いやいや、俺、王族と謁見するときのルールなんて知らないよ!!礼儀なんてわからないから!!

 なんかあるなら、先に教えといてよ!!

 俺が会ったことのある偉い人なんて、MAX、校長先生ぐらいだよ!!!


 慌てて、見よう見真似で同じポーズを取ってみる。が、あっているのかはわからない。

 とにかく、不敬罪とかで斬り殺されないように、全力で頭を下げた。


 「マリーグレーテ様。例の男を連れてまいりました。」

 「ご苦労様、ギーシャ。イザベルも。戻っていいわよ。」


 そう言われると、おっさん騎士ことギーシャさんは、女王様の玉座の後ろまで歩いていった。

 メイドのイザベルさんも、後ろの方に戻ったみたいだ。


 ・・・・・取り残された。心細い。


 これっていつまで頭下げてればいいんだろう。

 人の話を聞くときは、目を見なさいって、おばあちゃんに教えられてるんだけどな。

 話しかけられたら、頭、勝手にあげていいのかな。


 「楽にしていいわよ」


 助かった。とりあえず、頭をあげると、マリーグレーテと呼ばれた女王様が、ニコッと微笑んだ。

 わお。すごい破壊力だ。女王様には失礼かもだが、アイドルとかやった方が良いんじゃないか?


 「お疲れのところ、悪かったわね。あなたの名前、教えてくださる?」

 「あ、はい。おれ・・・・私の名前は、(なずみ)スグルです。」

 「ナズ・ミスグル?変わった名前ね。」

 「いや、それだとなんか高貴な感じになっちゃってますね!ナズミ・スグルです!!」


 どこかで吹き出す声が聞こえた。文官の列の中からだろうか?

 女王様も含めその他大勢の方には伝わらなくて、スベったみたいだが。

 それでも、一人にウケたのなら俺は満足だ・・・!!・・・よし、一旦冷や汗を止めよう。

 

 ともかく、ミスグルだと、神様を呼ぶ時の()、みたいになってしまっている。

 流石に神みたいな名前は、背負いきれないので、やめてもらいたい。


 「そう?よくわからないけど、でも呼びやすいし、ナズって呼んでもいいかしら?」


 そっちが採用されたか。

 それなら前も呼ばれてたし、呼びやすいならいいか。

 てか『ミスグル』のツッコミ、スベったし早くこの話は終わりたい。

 出来ればもっと笑って欲しかった・・・。

 

 「はい、それでいいですよ。」

 「よかったわ、ナズ。それじゃあ、早速なのだけれど、あなた。自分の身に何が起きたか覚えてるかしら?」


 いきなり、聞きたいことを教えてくれそうだ。

 

 「いや、それが全くわからないんですよ。何が起きてるのか。気づいたら森の中で、寝てたし・・・。」

 「そうよね。まあ、端的に言うと・・・・あなたは前の世界、つまり前世で死んでしまったみたいね。そして、こちらの世界に転生してきた、ということになるのよ。」

 「・・・・・・・てことはやっぱりこの世界って・・・。」

 「あなたたちの言葉でいう、異世界ってことかしらね。私からしたら、あなたたちの方が異世界人なのだけど。」


 確定してしまった。

 どうやら本当に、異世界転生してしまったらしい。

 

 「ナズは自分が死んだ時のこと、本当に、覚えていないの?」

 「はい。死んだなんて実感、全然ないですよ!普通は覚えてるものなんですか?」

 「んー、そうね。・・・・同じ境遇のものに聞いてみた方が、早いかしら。・・・アンジェ!こちらに来て。」

 

 「はい!!!!」


 女王様が誰か呼ぶと、すごく良い返事が返ってきた。

 そして兵士の列の中から、これまたゴツい鎧を着た、背の高い女性がこちらに歩いてきた。

 栗色のロングヘアー。肌は色白で、少し暗いブルーの瞳。

 

 アンジェと呼ばれた女性は、俺と女王様の中間地点くらいに立つと、勢いよく口を開いた。


 「私が、アンジェリーナ・イネッサだ!!アンジェでいいぞ!前世ではロシア人だった!!よろしく!!」

 

 見た目はクールなのに、性格元気すぎだろ、こいつ・・・・。

 裏表の無さそうな笑顔が、少し眩しかった。

 

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