02話 生き残った・・・?
とりあえず、生きてるっぽいな・・・俺。
呆然とその場に立ち竦む。
なにが起きたんだ・・・?
急展開すぎて、頭が追いつかない。
目の前に横たわるドラゴンさん。
あんなに硬そうだった黒い甲殻は、ベキベキに砕けている。
見るも無惨なドラゴンさん。
それを中心に、地面には大きなクレーターができている。
まるで隕石が直撃して、潰されたみたいだ。
・・・・これ死んでるのかな・・・?
いや、気絶してるだけかも。
わからないことだらけだが、朗報もある。
なんと、ここに来て、俺の目が良くなっている。
遠くのものもはっきり見える、2.0のクオリティだ。
よし。
すぐにでも、この場から逃げ出そう。
いつ動き出すかわからんし。怖いし。
そう思ったのも束の間、急な倦怠感が体を襲った。
あー。まずいなーー。
自分でいうのもなんだが、俺はこういう時の倦怠感やら眠気なんかは、
甘んじて受け入れるタチなのだ。
というかもう、家庭の方針と言ってもいい。
先ほど、俺の逃げ道を塞いでいた目の前の壁に腰を下ろす。
なんかもう全てがダルくなってきた。
何もしたくない。
こういう時は寝た方がいい。
少しだけ寝よう。20分だけ。うん、それがいい。一番いい。。。
・・・・・・・・
どのくらい時間が経ったのだろうか。
まあ、大体20分くらいだろう。
こういう場合、得てして1時間以上、時間は経っているものだけど。
遠くの方から微かに聞こえる金属音に、俺は目を覚ました。
どうやらこの音。こちらに近づいてきているようだ。
人・・・・・だろうか?
まだまだ眠い目を擦りながら、ぼやけた頭で考える。
新手のモンスターとか、もう本当に勘弁してほしい。
こんなところで、くつろいでる暇はない。
四の五の言わずに、逃げ出したい。
だが、そんな俺の思いとは裏腹に、この体は2度寝に洒落込もうとしている。
寝るわけにはいかない。しかし、長年の英才教育によって、俺の体は全力で寝ようとしている。
そんな葛藤をしている間にも、金属音は俺に近づいている。
かなり怖い。見つけられ次第、殺されたりしないかな。
ヤバめの部族とかだったらどうしよう。
本日何度目かの、意識が遠のきそうな状態を迎える。
そんな俺の視界に、1匹の生き物が写った。
あれは・・・・・・猫か!?
ダルかった俺の体に、電気が走る。
金色の毛並みが素晴らしい、聡明そうな猫。
少し燻んだ黒い瞳で、俺のことを観察している。
距離をとっているので、警戒されているようだ。
流石に、触りたい。
体のエネルギーが、回復している気がする。
そういえば、家の猫は元気にしているだろうか・・?
浮気をするのは許されないだろうが、すまない。
俺は今、癒しが必要なんだ!!
心の中で、謎の言い訳をしながら、俺は猫に手を伸ばす。
しかし、すぐに体の力が抜け、伸ばした手は、だらんと力なく地べたに落ちた。
猫を触りたさに漲っていたエネルギーは、もう体に残っていないみたいだ。
もうそろそろ、限界だ。
俺にしてはよく耐えたと、褒めてほしい。
すぐそこにまで迫っている金属音を子守唄に、俺は意識を手放す。
閉じゆく眼で、金毛の猫を見ながら願う。
次起きた時、牢屋か檻に、ぶち込まれて、いない、こと、を・・・・・・。