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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
古龍登場編
29/34

26.5話 とある少女の独り言?

本編の裏では、少女の激しい独り言(?)が呟かれていたようですね。


彼女は今、ひどく興奮していた。


〜〜〜


最近は自身のコミュ力向上のため、近くの村に通って人と関わってきた。

と言っても、その村唯一の宿、兼レストランに入って食事をするだけだが。

会話をすることはないし、目も合った記憶はないが、宿屋の主人はこんな自分にも親切に接してくれる。

それに、これでも彼女にとっては、精一杯のコミュニケーションをしているつもりなのだ。


『この村は大丈夫だ。』とソフィも言っていた。

あの人がそう言うなら、信じてみよう。

彼女はソフィに安心してもらうためにも、自分を変えようとしていた。


そして今日。

いつものように宿屋で食事をしていると、扉が開く音が聞こえてきた。

この村には、滅多に旅人が来ない。

当然、宿屋はいつもガラガラ。自分以外に利用している者はいなかった。

周りの目を気にしなくてよいこの空間を、彼女は居心地よく感じていたのだが。

しかし今日、珍しく自分以外の人間が入ってきた。

嫌だなー。早くどこかに行かないかなー。

密かにそんなことを思いつつ、自分の気配を殺す。

空気と一体になる感じだ。

彼女の得意分野の一つで、処世術と言っても良い。

前の世界でも、毎日のようにやっていた。


それなのに、今日に限って上手くいかなかったようだ。

一人の男が、こちらに向かって、喋りかけてきた。


〜〜〜


興奮冷めやらぬまま、彼女は自身の寝床を目指した。

心拍数が上がっているのは、村を駆け足で出てきたからではない。

火照った体を冷まそうともせず、彼女は足を急に止めた。

ここから歩くとそれなりに時間が掛かるのだが、そこは異世界。

魔法でワープして、すぐに到着。

便利すげる・・・!!と心の中で、震える。


寝床に着くと、リラックスした格好になって、話たいことを整理する。

こんなにも喋りたいことがあるのは、いつぶりだろう。

・・・そろそろだろうか。


「・・・・・・あ、おかえり・・!」


「・・え?テンションが高い?・・・うん、そうかも。実はね、今日他の異世界人に会ったの。」


「そう。しかも二人。一人は日本人だったんだ!」


「・・いや?男の子だったよ。どっちも。」


「・・・大丈夫だよ・・!優しい人たちだったよ。」


「・・・ふふっ。酷い言い草。そっちもだいぶ苦労してるみたいだね。」


「久しぶりに、ソフィ以外の人とあんなに話したよ。また今度、話す約束もしてるんだ。」


「えー?大丈夫だと思うけど・・・。うん。・・・わかった。・・ありがとう。」


「じゃあ、今度はそっちの話。今日はどうだった・・・?」



その空間に、彼女以外の生き物などいない。

彼女のそれを、独り言だと認識してしまうのだって、無理もない。

しかし、彼女は明らかに誰かと喋っている様子だ。

彼女の独り言から出た、ソフィと呼ばれた人物。

遠い場所にいる誰かなのか。それとも、近くにいるのだろうか。

そもそも、存在しているのか。

真相はわからない。

だが、コミュ症の彼女がなんの気兼(きが)ねも無く話せている時点で、親密な仲であることが(うかが)える。


「・・・うん。じゃあまたね、ソフィ。おやすみ。」


彼女の言葉は、その場にひっそりと消えていく。

大迷宮の最奥で、他の誰に聞かれることなく。


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