25話 古龍の大迷宮
この物語の、メインヒロインの登場です。
男子小学生にも張り合うくらいの元気さで、声を掛けた。
がしかし、俺の陽気な挨拶とは対照に、その女性から返ってきたのは吐息のような声と、極小さな会釈だった。
(あ、挨拶を無視とは、大層な大物なんだろうね・・・!)
アレクが唾を飲み、謎に警戒度を上げている。
「いや、これは多分・・・」
ただの人見知りじゃないか?と、言いかけて止める。
流石に本人の前で口にするのは失礼極まりないだろう。
それに小さくだけど、会釈してくれた・・・・・と思うし。
でも確かに、周りから見れば無視していると映っても、仕方ない。
というか、本気で無視している可能性もまだあるか。
「あ、あの?お話聞いてもいいですかっ?」
言葉を選びすぎたせいで、なんか職質みたいになってしまった。
「俺、ナズって言います!こっちの獣人はアレク。」
俺の言葉に女性の方は・・食事する手を一旦止め、膝の上に乗せる。
そして、俯いたまま目を合わせず、再度、口から小さく漏らした。
「・・・ァス・・・・・。」
頭を小刻みに揺らしながら、上体を少し後ろに引く。
頑なに目は合わせようとしない。
(また無視した・・!?いい度胸だね・・!?)
と、アレクが熱くなっている。
スキルが通じないからって、動揺してるのか?
それはそうと、この女性も今回は無視してはいなかっただろう。
ちゃんと反応を示してくれた。ペコペコお辞儀もしてたし。
話をするのは、断られたっぽいけど。
「あのー、ナズくん?知り合いですか?
私、先に部屋行って、荷物とか置いてきますよー!」
「あー、了解!」
後方で見ていたリタリアから、声が聞こえる。
適当に返事しながら、なんとか目の前の女性と、会話をする為に思考を巡らせる。
とにかく、心を少しでも開いてもらわなければ。
そういえば前世で妹が、『プレゼントを貰って嫌がる女はいない』と言っていたな。
よし、その作戦で行くか。
「はい、これ。お近づきの印に、どうぞ。」
プレゼント作戦。これでどうだ・・!!
とはいえ、この世界において、センスのあるプレゼントとはなんなのか。
何が喜ばれるのか全くと言っていい程、知らない。
なので俺が持ち得る、最高に高価なものを渡す。
<宝帝兎>の角、その先っちょだ。
武器の素材に出す前に、先端を少し貰っていたのだ。
何かの役に立つかもしれないと、トルミィから言われたのだが、その時が今だろう。
「これ、<宝帝兎>って魔物の角。綺麗でしょ?あげますよ!」
「・・・ァスゥ・・・・。」
ペコっと小さくお辞儀をして、また吐息のようなものを漏らす女性。
さっきと似た反応だが、お礼を言ってるのはわかる。
しかし、思っていたより、反応が薄い。
<宝帝兎>と言えば、この世界では有名なものだと、トルミィに聞いたんだけどな。
(まさか、<宝帝兎>の角を貰っても、無視を貫くとは・・。
なんかもう僕、怖くなってきたよ。)
「いや、だから・・。」
無視はしてないだろ。
と、言いたいけど、これも本人の前で言うのは憚られるな。
しっかりお辞儀もして、むしろ丁寧だと・・・・。
・・・・・・あれ?妙だな?
この女性とのコミュニケーションは、何故かしっくりくる。
むしろ、この世界に来てから一番、安心感があるというか・・・。
妙な懐かしさがある。
これは・・・・そう、お辞儀だ。
この女性はお辞儀をする。
そして、俺の言葉に対しての反応。
アレクには、無視していると映っているようだが、俺には伝わっている。
・・この人、まさか・・・。
「あんた、もしかして日本人か!?」
「っっ!!?」
(・・はあっ!!?)
つい、思ったことが口から溢れた。
当然、アレクは俺の突拍子もない言葉に驚いている。
そして女性の方も、かなり驚いている様子だ。
この時、初めてこの人と目が合った。
驚いた拍子に、バッと顔を上げたからだ。
精悍に整った顔が、目を丸くしている。
クールな顔立ちからは想像できない驚いた表情に、思わず頬が熱くなるのを感じる。
「あ、・・・あの、もしかして・・・あなたも・・・?」
「そう、俺も日本人!てことは、やっぱり日本人なんだよなっ?」
「・・はい・・・。」
(うっそん、マジだったの!?待って。理解が追いつかない・・・!
え、なんで・・・だって、全然日本人っぽくないじゃん!?)
確かにそうだ。
目の前の女性は、日本どころかアジアの血すら一滴も入ってないような、純ヨーロッパって感じの外見だ。
それでも俺が気付けたのは・・。
「お辞儀だよ。日常的にお辞儀をするのは、日本特有の文化だからな。」
まあ彼女のは、お辞儀というにはあまりに小さかったのだが。
「それとな、アレク。日本人ってのは『っす。』だけで会話できるもんなんだぜ。」
(そ、そうなの・・・?日本人ってすごいんだね・・。)
そう。この『っす。』には、お礼や謝罪、挨拶や了解、拒否の意味まで込めることができる。
万能の言葉なのだ。
その代わり、相手には素っ気ない印象を与えることもあるが。
使い所が重要ということだ。
「にしても、こっちで日本人に会えるなんて、驚きましたよ!」
「あ・・・わ、私も、です・・・。」
「俺、泥優って名前なんです。泥って書いて、なずみ。
こっちの世界では、ナズって名乗ってます!ちなみに歳は17です。」
「私・・・は、えっと・・。あの、・・・ヒナって言います。原野ヒナです。私も17歳、です。」
「あ、同い年だったのか!ぱっと見だけど、年上だと思ってたわ。ヒナは、ハーフか何か?」
「いえっ・・・。あの・・・どっちも日本人です。この体は、こっちの世界に来てから、というか・・・。」
そりゃそうか。ハーフにしては、日本の血が淘汰されすぎてるもんな。
「そんなことあるんだな。俺もアレクも、もう一人いたやつも、体は前世と変わってないから。
よほど、酷い死に方をしたのかもな。」
(僕の場合、種族は変わっちゃってるんだけどね。)
でもヒナみたいな、劇的ビフォーアフターとまではいかないだろ。
まあ、酷い死に方をしたかどうかなんて、俺たち転生者は自分の死因を覚えていないから、わからんのだけどね。
「いえ、えっと・・。私は自分で死んだので・・・。首を吊って・・」
「え?」
(え?)
「・・え?」
時が止まった。突然の衝撃発言に、俺とアレクの体が固まる。
場に変な雰囲気が漂い、それを察知したヒナが、困惑している。
「あの・・・、ごめんなさいっ。私、何か変なこと、言いました・・・?」
「あ、いや、変というか・・・。ヒナは、自分の死因を覚えてるのか?」
「え、・・・はい。・・・・えっと、普通は覚えてないんですか・・・?」
「俺もアレクも覚えてない。『この世界に来た転生者は、死因を覚えていない』と教えられもしたから。だからびっくりして・・・。」
「あ、・・・・そう、だったん、ですね・・。」
気まずい沈黙が流れる。
「と、とにかく!無神経なこと聞いて、ごめんな。」
「いえ、そんな・・・。私も、他の転生者に会うの、初めてで。
驚かせてしまって、すみません。」
俺とヒナが、日本人特有の、謝り合戦を繰り広げる。
そこにアレクが【年話】で割って入ってきた。
(ねえナズ。謝ってるとこ悪いんだけどさ。彼女にスキルのこと聞いてくれない?
さっきからずっと気になってるんだよね。)
「あ、ああ。そうだな。・・・なあヒナ。君のスキルについて知りたいんだけど、いいか?」
「私の、ですか?・・・・はい、いいですけど・・・。」
「率直に言うとな。こいつ、アレクのスキルは、鑑定スキルの最上位みたいなもんで、相手の能力や種族・・・あと魔力量なんかも、わかったりするんだけど。
ヒナ相手だと、それが何もわからないみたいでさ。
何か隠す系のスキルがあるのかって。」
「いや・・・、えっと、・・特に、そんなスキルは、持ってない。・・・と思います。」
(自分のことにしては、ひどく曖昧な返事だね。やっぱり何か隠してるのかも・・?)
アレクは疑ってるようだけど、本人がないと言っている以上、詮索するのは止めた方がいいだろう。
「なるほどな。ちなみに、ヒナの神位スキルって・・・・」
「ナズ君、アレク君!そろそろアリスさんたちのところへ、戻りますよー。」
「え、まじか!もうそんな時間!?」
「もうそんな時間ですっ。早くしないと置いて行っちゃいますよ!」
正直、ヒナについてもっと話していたいけど、そうもいかない・・・か。
アリスとの約束をすっぽかしでもしたら、無事に明日を迎えられない可能性もある。
「ヒナ。俺たち用事あるからもう行かないとだけど、また話せないかな?
夜は多分またここに帰ってくるから。」
「あ・・・、はい。大丈夫です。また・・、会ったら・・」
「サンキュ!じゃあ、またな。」
「・・・はい、また・・。」
俺とアレクは席を立つ。
そのまま出口へ足を向けるが、一つ言い忘れたことを思い出した。
「あ、それとさ。同い年なんだから、敬語とか使わなくていいよ。
その方が俺も、話しやすいしさ。」
「・・はぃ。あっ、・・・うん、わかった・・・。」
「じゃ、また!」
目は合わせてもらえなかったが、いい返事をもらえたので、それで満足した。
俺は今度こそ、宿屋を後にする。
俯き気味に返事をした彼女の口角は、わずかに上がっていた。
***
「全員揃ってるわね。冒険者で時間を守れるのは、いいことよ。
今後とも、続けなさいね。」
集合場所に集まって、開口一番。
アリスからお褒めの言葉を頂いた。
こいつは何様のつもりなんだ。お前も今は冒険者だろ。
「お嬢様からのお褒めの言葉だ。お前たち、光栄に思え。」
なぜかグラディアも偉そうだし。
まあ、ツッコミはしないんだけどさ。さらに面倒臭いことになりそうだから。
「いやでも、私が呼びかけなかったら、ナズ君とアレク君は遅刻してたかもだったんですよね。」
「はぇっ、何言ってんの、リタリア!?」
「あら、そうなの?」
「はい、アリスさん!宿に居た、女の人をナンパするのに忙しそうでした!」
おいおいおい。それは誤解だ、待ってくれ。
「ちょっと待ってくれ。ナンパなんかしてないっ。ただ話してただけだって!」
「えー、そうですかぁ?随分、熱心に口説いてたみたいですけど?」
ニヤニヤと、悪戯っぽく笑いながら、リタリアが続ける。
するとこれが、鉄壁の女騎士のセンサーに触れてしまった。
「ふん、所詮は冒険者。下半身に脳みそを搭載したような低俗なサルか。
やはり、切り落としておいた方が、お嬢様のためか・・・。」
切り落とす!?何を!?いや、何であっても困るんだけど!
グラディアは、剣の柄に手をかける。
それを俺は、必死に止める。
「はいはい。戯れはその辺にしてちょうだい。」
「はっ、お嬢様。」
アリスの声で、ようやくグラディアの暴走が止まる。
「ナズが他所で、誰をナンパしてようが勝手だけど、約束を反故にするなんて愚かなこと、しないわよねぇ?」
「もちろんデスヨ!!」
一瞬でも、その選択を考えていたなんて、口が裂けても言わないでおこう。
「それじゃあ、早速、行きましょう。『古龍の大洞窟』へ。」
アリスとグラディアに先導されて、村の外へ、その洞窟へ向かう。
(切り落とされなくて、よかったね。)
「人ごとじゃないだろ。お前も見てないで、止めるの協力しろよ。」
(いや、ついね。面白かったから。)
なんて根性してやがるんだ、こいつ。
それから、俺たちは目的地を目指し、しばらく歩いた。
そういえば、まだ大事なことをアリスから聞いてなかったな。
「なあ、アリス。結局、今から探しにいく人物って誰なんだ?」
「あら、言ってなかったかしら?」
「ああ、聞いてないぞ。」
「え、教えてもらえるんですか?」
リタリアが、意外そうな声を出す。
逆になんで、教えてもらえない可能性があるんだ。
人探しなんだから、どんな奴か教えて貰わないと、話にならないだろ。
「依頼は人探しではなく、洞窟内での護衛だと思ってました!」
「洞窟に住んでるなら、原始人みたいな奴だったりするのか?」
冗談っぽく俺が言うと、アリスは凍りついたような笑顔を顔に貼り付けて、振り返った。
「私の前で、『あの方』を蔑む様な言い方はしないことね。それが冗談であってもよ。二度はないと心得なさい。」
「え、あ、すいません・・・。」
無自覚に地雷を踏み抜いてしまったみたいだ。
笑顔で怒っている。めっっちゃ怖い。もうやらないと心に誓いますた。
「ご、ごめんな・・?もう二度としません。」
「そうしなさい。それじゃあ質問に答えるけれど、私たちが探してる『あの方』はね・・・、古龍様よ。」
「「え?」」(え?)
「古龍様・・・。古龍ソフィアリス様よ。」
「え・・・、は?・・・いや、人じゃねえじゃんかよ!!?」
「あら。私がいつ人だと言ったかしら?」
「言っ・・・・・てない、な・・・。」
「ナズたちが勝手に勘違いしたのでしょう?」
「そう、なのか・・?」
勘違いさせられてたのでは?わざとじゃない?
「ま、待ってください!『古龍の大洞窟』って場所には、本当に古龍がいるんですか!?」
「どういうことだよ、リタリア?」
逆に、いない事あるの?
「龍というのは、自然そのものです。人間の意思でどうこうなるものじゃないんです。
一箇所に長く留めておく、ましてや人がそれを把握してるなんて、あり得ないことです!
なので名前のことも、何か縁があるだけなのかと・・。」
「いいえ。ソフィアリス様は、絶対にいらっしゃるわ。」
リタリアの言葉を、アリスは真っ直ぐ否定すた。
その言葉は確信でもあるかのように、自信に満ちている。
「で、でも居たとしても、人間が近づくのは危険すぎますよ!?」
「だから伝えたじゃない。危険よって。」
「うぐぅ・・・。」
リタリアが言い負かされてしまった。
でも、そうか・・。古龍に今から会いに行くのか・・。
「なあ。その古龍様に、アリスは何の用があるんだ?」
単純な疑問が頭をよぎる。
「それは、古龍様を探すにあたって、必要な情報かしら?」
「いや、そうじゃないけど・・。気になっただけで。」
「なら、答えは秘密よ。」
探し人の正体を聞いたパーティーには、今までにない緊張が走っていた。
そして目的地に辿り着く。
洞窟の入り口は、ポッカリと大きな口を開いていた。
見上げるほど大きなその入り口に、思わず感嘆の声が漏れる。
「おおぉ。」
(大きいね。)
「大きいですね。」
「ああ、そうだな・・・・。」
と、俺とアレク、リタリアが関心している中、アリスがパンっと手を叩く。
「いいこと?ここから先は、危険なモンスターが多く出現するわ。全員、気を引き締めなさい。」
「了解です!」
「了解。」
アレクもコクンと頷く。
心の準備を終えた俺たちは、洞窟の中へ進んでいく。
パーティーの立ち位置としては、まず索敵要員としてリタリアが先頭に立つ。
その護衛兼、迎撃要因として、俺がリタリアのすぐ後ろに控える。
中心にはアリス、そのアリスを守るようにグラディアが立つ。
最後尾はアレク。戦闘も広範囲索敵もできる万能要員だ。
洞窟に進入して数歩。
アレクから【年話】で報告が入る。
(ナズ!魔物が一体、高速でこっちに向かってくる!飛行型の魔物だ!)
そのすぐ後に、リタリアからも声が上がる。
「何かこっちに来てます!すごいスピードです!」
「了解!」
事前にアレクから聞いていた俺は、焦ることなく戦闘態勢に入る。
【身体強化】によって高められた俺の動体視力が、魔物を捉えた。
そいつは、翼を生やした<リザードマン>だった。
「<リザードマン>!?って飛べんのか!?」
(聞いたことないよっ、そんなの!)
「私も初めて見ました!っていうか、もしかしてここ・・・。」
俺の問いに、アレクとリタリアから返事がくる。
二人とも、心当たりは無さそうだ。
ともかく、新種の<リザードマン>について議論をしてる暇はない。
俺は高速で飛行してくる<リザードマン>に正面から突っ込む。
すかさず、神位スキル【森羅ヲ崩壊スル力】を発動。
ぼやける視界に、鮮明に<リザードマン>が映される距離まで接近した所で、右腕を一閃。
側から見れば、ただ殴ったように見えるだろうが、スキルによって、その威力は何倍にも跳ね上がっている。
俺の攻撃を受けた<リザードマン>は、壁に激しく激突し、力無くその場に沈んだ。
「ふぅ。何なんだ、こいつ。翼生えてるのは。」
俺は倒れた<リザードマン>に近づく。
他のメンバーもその死体に寄って来ていた。
この生き物について、軽く話し合いを・・・。
と考えていたが、そうはいかないようだ。
(っ!!ナズ!また来る!魔力からして、また<リザードマン>だと思う!!)
「皆さん!!また魔物が来てます!!」
アレクとリタリアの報告通り、またもや翼付きの<リザードマン>が飛んで来る。
それも今度は、6体。
突っ込んでくる<リザードマン>に、俺は迎撃に出る。
「ふっ!!」
初撃で一体を撃ち落とし、さらに二体目に【雷球】を喰らわせる。
が、しかし他の4体は、俺を無視して、まっすぐパーティーに突っ込んでいった。
「すまん!そっち頼んだ!!」
「はい、大丈夫です!!」
「言われんでも、遅れは取らん!!」
俺が取りこぼした魔物を相手にする場合。
リタリアはアリスと同じ位置まで下がり、弓で援護。
逆に、グラディアは一歩前に出て、魔物を迎え撃つ決まりになっている。
グラディアは腰に差していたレイピアに手を添える。
かと思ったら、次の瞬間には、<リザードマン>の胸部にポッカリ穴が空いていた。
魔石がある位置を、その周りごと無慈悲に貫いたグラディア。
それは、素材や魔石を優先する冒険者のものではない。
魔物を殺すことだけに特化した剣技だった。
一体目を貫いたグラディアは、流れる様に2体目、3体目と剣を繰り出し、4体全てを始末してみせた。
「す、すげえ・・・。」
「当然だ。なぜなら私は、お嬢様の騎士だからな!」
グラディアはレイピアを鞘に納めながら、鼻を高くする。
騎士道というやつだろうか。
「ようやく、一息つけそうだから、言うけど・・。こいつら、何なんだ?」
(見たことないし、聞いたこともないね。こんなの。)
「それなんですけど・・・。アリスさん。」
「何かしら?」
リタリアが神妙な顔で、アリスの方を向く。
何か気づいたことがあるのか?
アリスは何か知ってるのか?
「ここ、もしかして・・。洞窟じゃなくて、迷宮・・・・なんじゃないですか?」
迷宮・・・?ただの洞窟ではない・・・?何が違うんだ?
俺の頭にいろんな疑問が浮かぶが、アリスの答えを聞くのが先だ。
リタリアの言葉に、アリスは目を細める。
そして、諦めた様に首を振って口を開く。
「やっぱり、ベテランに隠せるものではないわね。」
「!!?ってことは、やっぱりここって・・・・」
「そうよ。これに関しては、騙して悪かったわ。
ここは本当は、『古龍の大迷宮』と呼ばれる場所よ。」