24話 まさかの再会・・・?
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「古龍の大洞窟ぅ・・?なんだそれ?」
アリスから告げられた目的地に、首を傾げる。
アレクは知ってるのだろうか。
その疑問をアレクに目で伝えるが、アレクも同様の反応を見せる。
(いや、僕も知らないよ・・。古龍っていうのは聞いたことある。
でもそんなビックネームがこの近くにいるなら、耳にしてもいいはずだけど・・。)
「だよなー。そんな話、聞いたことないよなー。」
俺たちはこの街に来てまだ日が浅いので、偶然という可能性もあるだろう。
しかし、『古龍の大洞窟』なんてものがあれば、街の看板になっていてもおかしくない。
それなのに、一つも耳に挟んでないというこの状況は、変だと疑いたくもなる。
(もしかして、結構遠くにあるとか?)
なるほど。その可能性は高いかも。アリスに聞いてみるか。
考え込んでいたため下に落ちていた視線を、元に戻す。
すると、怪訝な顔をしたアリスとグラディアが、視界に映る。
「ど、どうした?」
「ナズ、あなた・・・。もしかして一人で喋ってるの・・・?」
「お嬢様。もう少し遠回しに聞いた方がいいのでは・・?
この男は少しばかり、心が可哀想なのかもしれません・・・。」
「いや、俺はアレクと話てたんだよっ!」
俺はアレクと【年話】によって話しているが、周りから見れば確かに俺が一人で喋ってるみたいに見えるのを忘れていた。
「ええ・・・、そうよね。あなたにとってはそうかもしれないわ・・。
けど、実際にアレクは口をきいてないし、ナズは一人で喋ってるわ・・。
もう少し、現実を見てみましょう・・?・・ね?」
「お嬢様、こういった場合はそっとしておいた方がいいかもしれません。
自覚させるだけ、無駄かと。」
「だから・・・・!!!」
俺はアレクとの【年話】についての説明をする。
確か、『銀灰の剣』のメンバーにも説明したし、これから会う人全員に同じ説明しなきゃならんのかな。
あと俺を『一人で喋ってる可哀想なやつ』みたいに扱うのやめろ!
その『頑張って現実を受け入れましょう!』みたいな顔も!優しく諭してくるなっ!
俺は何度か説明して、やっとの思いでアリスとグラディアの理解を勝ち取った。
「そうだったの、【年話】で・・。アレクは便利なスキル持ってるのねえ。」
「ならその【年話】で、私たちとも喋れるようにしたらどうだ?」
グラディアから尤もな意見が出る。
しかしそうはいかないらしい。俺は前にアレクから教えてもらった【年話】の仕組みを話す。
「【年話】ってスキルは、誰か一人としか繋がれないらしいぞ。
それと、後から変更することもできないらしい。」
「なんだ、そうなのか。つまらんな。」
「私も【年話】なんて珍しいスキル、話にしか聞いたことなかったから。
そんな性能だったなんて、知らなかったわ。
ナズも、変な疑いをかけてごめんなさいね・・。」
「いや、誤解が解けたなら、もういいよ。」
「ほら、グラディア。あなたも。」
「・・・・悪かった。」
「おう・・。」
ちゃんと謝ってくれるあたり、アリスはいいやつだ。
グラディアは渋々って感じだけど、それでもアリスには従うみたいだ。
「そうだ、聞きたいことがあるんだけど。
その『古龍の大洞窟』ってのは、この辺にあるのか?」
「ええ。まずは、ここから少し離れた村に寄るわ。
そこで準備をして洞窟に向かう感じかしら。」
「でも、そんな大層な物があるんなら、この街でも話くらいは聞くんじゃないか?
俺たちはそんなのがあるなんて、聞いたことなかったぞ?」
「まあ、そうでしょうね。あそこは公にはされてない場所よ。
だから、あなたたちも無闇に言いふらさないことね。
報酬にはその意味も込めてあるから・・!」
振り向いて、ニコッと笑うアリスの笑顔は怖かった。
つまり、報酬は弾んでやるから、『古龍の大洞窟』の存在は秘密にしとけよってことか。
コクコクと俺とアレクは頷いてみせる。
そんな会話を繰り広げつつ、俺たちは街の出口に向かう。
そこに、この街で数少ない知った声が、俺たちに投げられる。
「あ、やっと見つけました!ナズ君、アレク君!」
「この声は・・・、リタリア!」
声の正体は『銀灰の剣』のメンバー、リタリアだった。
「見つけたって・・。俺たちを探してたのか?」
「はい、そうです!実は・・お願いがありまして・・。」
お願い?またか?
「私を、ナズ君とアレク君のパーティーに入れて欲しいんです!」
「パーティーに入れて欲しい!?」
まさか同じお願いを、一日に2回もされるとは。
「いやでも、『銀灰の剣』はいいのか?」
「はい!アンスさんたちに話したら、いろんな場所で経験積んでこいって。
快く送りだしてくれました!」
「そ、そうなのか・・。」
「ああ、それと、アンスさんから伝言です!
『俺たちが依頼で街を出てる間に、スキーロスが迷惑かけちまったみたいで、すまなかった。』だそうです。」
「アンスが?なんでアンスが謝るんだ?」
「アンスさんとスキーロスさんは同期で、仲が良いそうですよ。
だから、ナズ君たちに迷惑かけたことに責任を感じてるって言ってました。」
「なるほど。」
まあスキーロスの一件は、この世界を生きる上での洗礼を受けたって感じで納得してるし。
もう気は済んでるから、気にしてない。
「アンスには『気にしてない』って伝えといてくれ。
ああ、それと・・。パーティーの件なんだけどな。」
俺はアリスとグラディアの方にチラッと視線を向ける。
「実は先にもう組んじまった奴らがいて。
俺たちだけで決められないんだ。」
「こんにちは、リタリアさん。私はアリス。こちらは護衛のグラディアよ。」
「あ、どうも・・・。なんだ、そうだったんですね。」
こればかりは、アリスとグラディアの許可が必要だろう。
「・・・アリスさん、グラディアさん。私もパーティーに入れてくれませんか?」
「ふむ・・。リタリアさん、あなた冒険者ランクは?」
「B+です!」
勢いよく言い放つリタリアに、アリスは・・・。
「そう。だったらパーティーには入れられないわ。」
「えっ!?」
バッサリと、鋭い断りの返事を送る。
「私たちが今から向かうのは、かなり危険な場所なの。
申し訳ないけど、あなたには危なすぎるわ。」
「そんな・・・!」
悲しみを惜しげもなく、顔に浮かべるリタリア。
ここまでバッサリ断られてるのを見ると、不憫に思えてくる。
リタリアの顔も相まって。
それに、アリスはリタリアを使えないと思ってるんだろうが、それは違う。
「リタリアは回復魔法のスキルが使えるだろ?
パーティーにいてくれたら助かるんじゃないか?」
「そ、そうです!私、回復スキルも使えますし、索敵だって出来ます!
冒険者としての経験も、パーティーで動く経験もあるので、役に立てると思います!」
俺の助け舟に、リタリアも便乗する。
リタリアのアピールを聞いて、アリスは顎に手を当てる。
「・・・確かに、回復スキルはありがたいわね。
経験値があるのも、いざって時役に立つし・・・。
でも、場所がねえ・・・。」
いや、今から行く場所、そんなに危険なのかよ。
B+の冒険者って、そこそこ強い方だろ。
それをここまで心配するって。
「お願いです・・・!!」
「・・わかったわ。自分の身くらい、自分で守りなさいね?
それと、今から行く場所は、外部には秘密にしておくように。
出来ないならパーティーは組めないわ。」
「わかりました!秘密にします。」
「ええ、約束よ。破らないようにね?自分と周りの命が惜しかったら・・・。」
それ、悪役が脅し文句に使う時しか聞かないな。
アリスの顔も合わさって、さながら物語の黒幕のようだ。
リタリアも、涙目で激しく頷いている。
このような一悶着もあって、リタリアが俺たちのパーティーに加わった。
〜〜〜
『古龍の大洞窟』が近くにあるという村までやってきた。
アリスに村の名前を聞いたら、そんなものはないと突っ返された。
あえて呼ぶなら、『森の中の村』だそうだ。
そんなの、この世界に100個はあるだろ。
とにかく、村は村なのだそうだ。
村はグルっと柵で囲われており、所どころに見張り台が建ててある。
俺が想像していた村よりも規模が大きく、人も多い。
「結構大きい村なんだな?」
「そうね。他の村と比べると大きい方かもしれないわね。」
「それに、門番や見張りの装備も整ってますしね!
ここの村は、かなり潤ってるみたいです!」
「へー。よくそんなこと、気がつくな。」
(何か、特産品とかで潤ってるのかも?)
「・・・何か特産品とかあるんかな?」
「どうでしょう!村の中を見て回るのが楽しみですね!」
「これと言った特産はなかったと思うわ・・。」
俺とリタリア、アリス(一応アレクも)が村の外観を見て、話す。
アリスはどうやら、何回かこの村に来たことがあるようだ。
俺たちを残して、アリスとグラディアは門番の所へ向かう。
その間、俺はリタリアと喋っていた。
しばらくすると、アリスが戻ってきて、一緒に村の中へ入る。
「さてそれじゃあ。
今日からこの村を拠点に、洞窟の探索を行っていくから。
あなたたちは、宿を確保してきなさい。私とグラディアの分はいらないわ。
それから各自、いるものを調達して、そうね・・・・。
大体、一時間後くらいにまたここに集まること。
いいわね?」
「了解。」
「わかりました!」
それから、アリスとグラディアは行く所があるらしく、姿を消してしまった。
「よし、俺たちも宿に行くか。」
「はい、そうですね!」
(うん。)
俺はアレクとリタリアと共に、宿へ足を向ける。
この村は大きいが、それでも、村の中ではという話だ。
街のように発展しているわけではない。
無論、旅人や冒険者用の宿は、村に一個しかないらしい。
あらかじめアリスに場所を教えてもらっていたので、寄り道せずにそこへ行く。
「それにしても、賑やかな村ですね!
人の活気が溢れてます!」
「確かに。みんな忙しなく動いてるな。」
(でも来訪者は珍しいのかもね。
結構、視線感じる・・!)
「そうかぁ?俺はそんなことないけどなあ?」
「?、アレク君が何か言ってるんですか?」
「ああ。視線感じてむず痒いってよ。」
「そうですか?私も別に感じませんけど。」
(・・・・スーパー鈍感ブラザーズ。)
「なんだそりゃ。マ◯オみたいな言い方しやがって。」
「アレク君は、なんと?」
「スーパー鈍感ブラザーズだとよ。」
「なんですか、それ!私の方が、ナズ君より年上なんですから、鈍感シスターズでしょ!?」
「訂正するとこ、そこじゃねえだろ。」
村を見回りながら、歩いていると、宿に着いた。
来訪者が少ない村のようなので、宿の大きさも控えめだ。
扉を開き中に入ると、すぐに受付が設置されていた。
そこには、頭を突っ伏して寝ている禿頭・・・。
この宿の店主だろうか?
ガチャンと扉が閉まる音に、体をビクッと反応させ、頭を起こす。
「ああ、いらっしゃい。宿のご利用かい?」
「あ、ああ。3人です。」
「3名様だね。部屋は・・・・、男女別で二部屋でいいかい?」
「はい、そのつもりで・・。料金は・・・?」
「いいよ、料金なんて。うちはお金取らないんだ。」
「え、そうなの!?食事もあると嬉しいんだけど、そっちは金かかる?」
「食事ね。言ってくれれば作るよ。
言わなくても、勝手に作るかもしれないけど。勿論タダでね。」
そう言うと、ニカっと笑った店主は奥に並んでいるテーブルを指差す。
そこには、一人、食事をする姿が・・・・。
・・あれ、他にも人がいたのか。言われるまで、奥に人がいるなんて気づかなかったな。
あれは、女せ・・・
(あーーーーー!!!!!)
「うわっ!なんだ!!?」
奥で食事を取る女性が目に映る。
その瞬間に、アレクが【年話】で大声をあげた。
奥の女性を見て、驚いた顔をしている。
アレクの声に、俺もビックりする。
そして俺の声に、近くにいたリタリアと、奥にいた女性も少しビクッとしていた。
奥に座る女性。青みがかった白銀の・・・・そう、ちょうど、グラディアの鎧の色と酷似しているな。
その色の、長い髪を垂らしている。
座っていてもわかるくらい、背が高い。
顔も精悍としていて整っている・・・・と思うのだが、それを帳消しにする程オドオドとした感じで、どんよりした雰囲気を纏っている。
猫背なのも、その雰囲気の要因の一つだろう。
(ナ、ナズ!あの人だよ!僕らが、冒険者ギルドに登録に行った日!
得体の知れない、190cmの美女がいるって言ったろ!?
それがあの人だ!)
「あー、そんなこと、言ってたな。」
(今も、僕の【万象ヲ賛美スル瞳】を使っても、スキル一つ見えない!
何者なの、彼女!?)
「そんなに謎なら、話しかけてみるか。」
(うん・・・!)
俺は状況に着いて行けてないリタリアと店主を置いて、その女性の元に近づく。
女性は黙々と食事を続けて、近づく俺とアレクに見向きもしない。
なんて、声かけるかな・・。まあ普通に挨拶してみるか。
「こんにちは!」
意識して、明るくフレンドリーな感じで、挨拶してみた。
その女性からの返事は。
「・・・・・ぁ、」
微かな吐息みたなのが、聞こえてきた。
小さく、本当に小さく、会釈もしてくれたみたいだが、目は合わなかった。
・・・・人見知りか?
〜村へ向かう道中のピンチ〜
『ゾダニア』を出て、森の中を進む俺たち一行。
よく考えたら、いいとこのお嬢様がよく、森の中を文句無く歩くな。
そう言ってみると、アリスは、「歩きじゃないと、入れないのよ。」と言った。
どうやらその村は、普通の場所にはないらしい。
「アリスさんは、商人のお嬢様なんですか?」
「ええ、そうよ。それが何か?」
「いえ、とても育ちが良いんですね!
大きな商人でも、こんなに気品のあるお嬢様は、多分いませんよ!
少なくとも、私はあったことないです!」
リタリアが、アリスを褒める。
確かにアリスは、ただの商人の娘と言うには、あまりにも風格がある。
可憐さと、豪胆さの、どちらも併せ持つような・・。
「私、これでも冒険者歴は長いので、いろんな方の護衛をしてきたんですけど・・。
アリスさんは、お嬢様というより、むしろお姫様って感じです!」
一瞬。
その場の空気がひんやりした。
気がしたけど、気のせいかな?
「リタリアこそ、いろんな経験してるのね。羨ましいわ。」
「いやあ、そんなあ・・。」
と、場が和む。
でも確かに、アリスって、お姫様っぽ・・・
「おい、貴様。何お嬢様をジロジロと見ている。」
やべ。
ちょっと考えに没頭しすぎてしまった。
「いや、違くて・・」
「黙れ、ケダモノ。お前のモノを、今、ここで、切り落としてやろうか。」
「お、お、おい。落ち着けってっ!わ、悪かったから!もうジロジロ見ないから!!」
大事なムスコの危機を、緊急回避しつつ、俺たちは村へと向かった。