18話 冒険者ギルドに登録しよう!
いいペースで投稿できてます!
今回は、お約束の展開でお送りします!
ゾダニアに到着した、翌朝。
俺とアレクは冒険者ギルドへ向かっていた。
ギルドへの道は、アレクが調べてくれたらしい。
一体、いつの間に・・。
いつものようにアレクの案内で、俺は歩いていた。
しかし、久々にベッドで睡眠した俺の足取りは軽い。
ベッドの偉大さに、思わず平伏してしまいそうだ。
快眠した後の朝飯も、大変美味なものだった。
「なあアレクゥ、今日の晩飯はなんだと思う?」
(おじいちゃん、さっき朝ごはん食べたばっかでしょ?
なんでもう夜のこと考えてんの。)
「いやボケてねえよっ!食べたのも覚えとるわ。
ただあそこの料理が美味すぎて、気になったんだよ。」
アレクは呆れ気味に首を振る。
(そんなこと考えてる場合じゃないよ、ナズ。
今日は冒険者ギルドで、色々とやらなきゃ、いけない・・・・)
「?おい、どうしたアレク?電池でも切れたのか?」
急にアレクの言葉が途切れる。
俺の軽口にも反応を示さない。
「おい、大丈夫か?」
どうしちまったんだ、こいつ。
アレクの顔を覗き込むと、驚いたような表情のまま硬直している。
その視線の先を、俺も目で追った。
そこはなんてことない、普通の人通りがあるだけだった。
驚くべきもの何て、一つもない。
(ナズ、・・・見えてない?)
「何がだ?お前には何が見えてるんだ?」
(今さっきそこに、190cmくらいのすごい美女がいた・・・。)
「・・・美女?」
それで目を奪われてたのか、アレクは。
こいつも意外と、女好きなやつだったんだな。
「それでその人に、鼻の下伸ばしてたのか?」
(い、いや伸ばしてないでしょ!)
「はいはい、そういうことにしといてやるよ。」
(ちょっと、違うってば!)
俺は良いと思うよ。
綺麗な女の人を目で追っちゃうのなんて、男の性だ。
しっかり、理解しているよ。
アレクが【念話】でごちゃごちゃ言ってるが、聞き流す。
そんな、まともに取り合おうとしない俺に苛立ったのか、アレクは俺の尻に蹴りを叩き込む。
「痛っ!」
(もう!大事なことなんだから、ちゃんと聞いてよ!)
「お、おう。悪かったよ。ごめんごめん。」
普段のアレクならこれくらいのこと、笑って受け流す。
その美女の話は、尻に蹴りを入れるくらいには、大事なことだったみたいだ。
(大体、変だと思わないの?
僕が『190cmの美女がいる』って言ったのに、ナズには見えてないんだよ?
そんな背の高い美女、普通目立つでしょ?)
「た、確かに・・・。」
(でしょ!?でも実際、ナズには見えていない。
つまり、その女の人、気配を消すスキルを持ってる。
しかも、とんでもなく高位のね。
・・・・・多分。)
「多分?お前のスキルなら、どんなスキルかわかるんじゃないの?」
(問題はそこだよ。その人のスキル、全く見えなかった。
神位クラスの鑑定スキルを持ってしても、見えなかったんだ。
こんなこと、今まで無かった。
・・・それに、姿も一瞬しか見えなかったんだ・・・。
その後すぐに見失っちゃった。)
アレクの神位スキルを、完全に上回ってるってことか・・・?
てことは、そいつのスキルが神位か、それ以上ってことか?
あるのか、そんなスキルが!?
(とにかく、まだなんとも言えないけど、この街にはとんでもない女性がいるってこと。気を引き締めていこう!)
「わかった・・・!」と俺はアレクの言葉に深く頷いた。
***
そんな話をしていた俺たちは、冒険者ギルドの前まで来ていた。
冒険者ギルドは、街の広場の一角に鎮座している。
広場の真ん中には、シンボルであるかのような顔で噴水が建てられており、広場の景観に彩りを与えている。
その広場には時計台も置いてあり、時刻は10時少し過ぎを示していた。
うん、時間通りだな。
俺は鼻から息を吐き出し、固くなっていた体を僅かだがほぐした。
「よし、入るか。」
(うん。)
俺とアレクは、ギルドの扉を開け放ち、中に入る。
ギルドの中は結構広々としており、奥に受付のような場所がある。
2階もあるようだが、何があるのか、ここからでは見えない。
入って左側には掲示板があり、そこに張り紙が綺麗に貼り付けられている。
右手には、テーブルと椅子が乱雑に置かれてある。
そしてたくさんの人。
人、人、人。
受付の前にも、掲示板の前にも、テーブルにも、冒険者らしき人で混雑している。
「うわぁ、すげー数の人がいるな。」
(うん。予想以上に冒険者ってのは、多いらしいね。)
アレクも少し驚いた顔をして、ギルド内を見渡している。
「と、とにかく、こういう時って、どうしたらいいんだ?
俺、冒険者ギルド、初めてなんだよ。」
(いや、僕も初めてだよ。
・・でもまあ、まずは受付に行くんじゃない?)
「そ、そうか。よし、わかった。受付に行ってみるか。」
こういう、初めて施設を利用しに来た時って、妙に緊張するんだよなぁ。
前世でもよくあったけど、あまり共感は得たことがない。
俺だけじゃないと思うんだけどなぁ。
受付の前にできてる列に、俺たちも並ぼうとする。
そこに、一人の女の子が声をかけてきた。
「ナズ君と、アレク君?」
「あ、リタリア!」
話かけてきたのは『銀灰の剣』のメンバー、リタリアだった。
「やっぱり、そうでした!おはようございます!
冒険者ギルドに、登録しに来たんですよね?」
「そうそう。俺たち何もわかってないんだけど、受付に行くで、合ってる?」
「はい、合ってますよ!
受付で簡単に手続きして、魔力の測定なんかもしますね!
そしたら、冒険者ランクが決められて、晴れてギルドへの登録は完了です!」
「へー。なんか面倒臭そうだな。」
「ふふっ、すぐ終わりますよ!」
本当だろうか。
会員登録とか、『5分で終わる!』みたいな謳い文句に何度騙されたか、数知れないぞ。
(すぐ終わるのは、本当みたいだよ。ほらあそこ。)
アレクの視線の先には、唯一、誰も並んでない受付。
その上に、とある紙が大きく張り出されていた。
『冒険者登録、最速で終わります!!受付はこちらから!!』
(ほらね?)
「怪しぃーーー!!
何あの、クレジットカードの審査みたいな感じは!!
この世界でもああいうの、あるんだ!」
(ちょ、ナズ!?なに口走ってんの!?)
やべっ!思わず声に出してしまった。
ここにはリタリアもいたんだった。
俺たちが転生者だってのは、秘密にしなきゃならない。
リタリアの方を見ると・・・。
俺たちの方を凝視していた。
・・・まずいか、これ・・?
「あの、ナズ君って・・・・、アレク君と会話できるんですか?」
た、耐えた〜〜。
そっちか、気になってたの。そっちだったのね。
「あ、ああ。俺とアレクは【念話】で会話できるんだ。」
「えー!【念話】って、レアスキルじゃないですか!
すごいですね!!」
「ま、まあね。それより、他のメンバーはいないの?」
俺は強引に話題を変えた。
「アンスさんとガーベラさんは、依頼と<赤炎竜>の報告をしてますよ。
デンドロさんは、向こうの椅子に座って待ってます。
ジニーさんは・・・寝坊中です。」
おい、ジニー。大丈夫なのかお前は。
「そ、そうなんだ。じゃあ、俺たちは登録に行ってくるわ・・。」
「あ、私も付いていってもいいですか?
ただ待ってるのも、暇なんです。」
「えっと・・・。」
俺はちらっとアレクの方に視線を送る。
アレクは、俺の方は向かずに【念話】で答える。
(別にいいと思うよ。
スキルがバレることは、ないだろうし。)
そういうことなら。
「ああ、付いてきてもいいよ。
俺たちもギルドの人と顔見知りのリタリアがいた方が、安心するし。」
「ありがとうございます!それじゃあ、早速行きましょう!」
俺とアレク、リタリアは、冒険者登録用の受付の前にきた。
誰もいないので、前に置いてある呼び鈴を鳴らしてみる。
チーンと甲高い音が響いた。
しばらくすると奥からにゅっと、いきなり人が現れる。
「はいはーい・・。あら、リタリアちゃんじゃない。
そっちの子たちは、新人さんかしら?」
「あ、おはようございます、セレンさん。
そうなんです。この二人の、冒険者登録をお願いしたくて。」
出てきたのは、目のやり場に困る服を着た、セレンと呼ばれた女性だ。
豊満な胸を、これでもかと強調した服装は、大変素晴らし・・ん゛ん゛っ。
大変、けしからんですなっ。
「ふーん、リタリアちゃんのお友達?」
「いえ。依頼の帰り道で、助けてもらって。
友達というよりは、恩人です!」
「助けたぁ!?助けたって、『銀灰の剣』をってこと?」
「はい!私たちのパーティーをです!」
「・・・・、ははっ。リタリアちゃんも、冗談言うようになったのね。」
セレンは、リタリアから俺たちに視線を移す。
その値踏みするような鋭い視線は、美人なのも相まって迫力がある。
「あ、あの・・?」
「・・・いいわ。ぱっぱと終わらせちゃいましょう。」
そう言うとセレンは、俺たちに紙とペンを渡してきた。
「その紙に、必要事項を書いてちょうだい。
書き終わったら、魔力の測定よ。結果に応じて、冒険者ランクを決めるわ。」
「わかりました・・!」
俺たちは手早く記入を済ませ、セレンに紙を渡す。
「・・ナズとアレクね。さあ、次は魔力測定よ。
どっちからやる?」
(ナズ。僕が最初にやるで、いいよね?)
「ああ。アレクが先にやるってよ。」
「そう、わかったわ。じゃあアレク、この水晶玉に触れもらえる?」
アレクは頷くと、出された水晶玉に手を乗せる。
「ふむ。魔力量C +ってとこね。新人にしちゃ、中々じゃない。
将来に期待できるわ!」
あれ?
アレクの魔力量って、確かS +とか、言ってたよな。
・・・まさかこいつ。
アレクの方を見ると、イタズラが成功した子供のような顔で、舌をぺろっと出した。
やっぱこいつ、スキルで偽造しやがった。
偽造するの好きだなー、こいつ。
「じゃあ、次。ナズの番よ。」
「あ、はい。」
俺はアレクのように、偽造することはできない。
素の魔力を測定されるだろう。
でも魔力量には自信がある。
多少なりとも、驚かれるだろうか?
少しワクワクするな。
「じゃあ、手を乗せて。」
「はい。」
俺はニコニコしながら水晶玉に手を乗せる。
次の瞬間。
パッッァァァアアアン!!!!
「「「・・・・え?」」」
その場にいた者たちの声が揃う。
軽快な音と共に、水晶玉が粉々に弾け飛んだのだ。
ガヤガヤとしていたギルドの中が、何事かと、静まりかえる。
「あ、あの?これって・・・?」
大丈夫か、これ。
水晶玉壊れたけど。
「あ、ああ。大丈夫よ。
うん、大丈夫。その測定器、古かったのよ。
こっちのやつで、もう一回測ってもらえる?」
そう言うとセレンは、新しい水晶玉を取り出した。
焦ってるみたいだが、懸命に冷静さを保とうとしてる様子だ。
後ろのリタリアは未だにポカーンとしてるし。
(ナ、ナズ?壊したらダメだよ?
ただ手を置くだけで良いからね?)
わかってるよ。
アレクも俺が壊したんじゃないかと、驚いているようだ。
いや俺、壊そうとはしてないんだけどな。ただ手を乗せただけですよ・・・?
そして再び、水晶玉に恐る恐る手を乗せた。
セレンの喉が動くのがわかる。
「ごくっ・・。」
そして。
パアアアアッッッンンン!!!
デジャブかと思うくらい同じような音が、静まり返っていたギルドに再度響いた。
さっきとの違いは水晶玉が粉々にはならず、散弾銃の如く、破片として周りに飛び散ったことだろうか。
その破片の一部が、俺の頬を掠める。
危なすぎだろ。
そしてもう一人。
飛び散った破片は近くで見ていたセレンの、その際どい服と服を繋いでいた紐目の部分を、綺麗に切り裂いた。
繋ぎ止めるものがなくなり重力に従うだけの存在となってしまった前側の、布面積の少ない服(?)が、ずるっと落ちそうになる。
お、おいおい、見える見える見える。
しかし、俺以外誰も気にしている様子ではない。
目の前で起こった現実に、皆唖然としていたのだ。
「あ、あのぅ。俺、その、人より少し、魔力量が多いらしくて・・・。
別に壊す気とかは無かったっていうか・・・。
・・・さっせんしたぁぁああ!!!(すいませんでした)」
一通りゴニョゴニョっと言い訳した後に、全力の謝罪をする。
静かなギルド内に、俺の謝罪が反響した。
そして徐々に、ギルド内が音を取り戻し始める。
「おいおい、あいつ、測定器、吹き飛ばしやがったぞぉ!!」
「何もんだ、あいつ!!誰か知ってっか!!??」
「隣にいんの、銀灰のリタリアかぁ!!??」
「測定器って、壊れるもんなのか!!?」
「リタリアちゃんの彼氏か、あいつ!!??」
「魔力量が多いっつっても、限度があるだろお!!」
「後ろの獣人も仲間か!!?あいつもやべーのか!!??」
「リタリアちゃんから離れろぉ!!」
なんか、身に覚えのない野次まで飛んでるな。
ギルド内の冒険者が、俺たちの方に集まってきた。
ご丁寧に、2メートルほど距離を取ってるので、警戒はされてるっぽい。
そんな中、セレンが口を開く。
「あ、あなたねえ!魔力量がちょっと多いったって、測定器は壊れないでしょ!?
この測定器は、S +まで測定できるのよ?」
「じゃ、じゃあ、それより、多いってことじゃないんですかね?」
アレクの鑑定によると、俺の魔力量はSSって言ってたしな。
でもアレクのスキルは秘密だから、俺も知らないふりをする。
「それより多いって・・。だとしたら、人類の最高値更新よ!!おめでとうっ!!」
セレンは投げやりに言い放つ。
俺の魔力量って、そんなに多かったのか・・・。
少数派だとは思ってたけど、他にもいるんだとも思っていた。
(これは、完全に予想外だ・・。僕の考えが甘かった・・・!!)
アレクもあまり、この世界のことは詳しくないらしい。
さて、どうするか・・。
もう収集がつかなくなりそうだ。
こうなったら・・・。
「あ、あの!!魔力量が多いと、何か問題があるんですか!?
むしろ、良いことですよね!?
魔力量はなんでもいいんで、早く登録してください!!」
うん、ごり押しだ。
どうしようもない時は、強引に突破して行くしかない。
人生で役立つ豆知識だ。
「そ、そうね・・。ちょっと、今までにないことだから、ギルマスに相談してくるわ。それまで、待っててちょうだい・・・。」
そう言い残してセレンは奥に引っ込んでいった。
他の冒険者たちもいつも通り日常に戻って・・・・。
なんて都合よくはいかない。
「お前、名前は!?魔力量がS +以上ってマジか!?」
「ナズ・・。魔力量はそうみたいだけど・・・。」
「強いのか、お前!?そっちの獣人も強いのか!?」
「いやー、どうでしょう・・。アレクも普通だと・・。」
「リタリアちゃんとはどういう関係だ・・・・!?」
「どうって・・、友達だよ・・・。」
やばい。
鬱陶しくなってきた。
今すぐ逃げ出したい。
でも、登録終わるまで待ってなきゃならんし・・・。
「おい、どけどけぇ!なんの騒ぎだこりゃ!?」
「ハッ。この声は、ジニーさん?」
俺たちを囲む人だかりを掻き分けてきたのは、リタリアの予想通りジニーだった。
「おうっ、リタリアじゃねえか。悪いなあ、寝坊しちまって!
ナズとアレクもいんじゃねえか!
何の騒ぎなんだ、こりゃあ。」
お気楽そうに聞いてくるジニーに呆れつつ、それでも少しの安心感を覚える。
そうして俺とリタリアは、今まで起きたことを一通りジニーに説明した。
「ブワッハッハハ!測定器を吹き飛ばしたってえ!?
何だそりゃ、聞いたことねえぞ!どうなってんだ、お前は!?」
ジニーは大笑いをしている。
笑い事ではない。
あの時の空気を知らないから、こいつは好き勝手笑えるのだ。
「ひー、おかしいっ。
・・あー、お前らもっ、もういいだろっ。こいつら新人なんだ。あんまり、脅かすな!
散れ散れっ!!」
「ま、まあ、ジニーさんが言うなら・・。」
笑っていたジニーだが、この煩わしい人だかりを追い払ってくれた。
ぞろぞろと、ギルド内に散っていく。
視線はびしびし向けられているが・・・。
「もしかしてジニーたちって、すごい冒険者だったりするのか?」
「あーん?まあまあな。」
ジニーの言葉を、リタリアがすぐに否定する。
「私以外の『銀灰の剣』のメンバーは、すごい人たちなんですよ!
みんなAランク冒険者で、この街では、一番強い冒険者パーティーと言っても過言じゃありません!!」
「パーティーではな。個人だったら、俺たちより強いのが何人かいるだろ。」
そんな強いやつらだったのか、こいつら。
第一印象があれだったから、イメージつかないな。
(実際、街の中での評価も高いみたいだよ。
同業の冒険者からも、結構慕われてるようだし。)
アレクも知ってたようだが、お前はずっと俺と一緒にいただろっ。
いつの間に情報仕入れてんだ、こいつは。
「なあ、デンドロも来てんだろ?そっちに集まっとこうぜ。
俺たちもアンスを待たなきゃならんし、ナズたちも一緒こいよ。」
「ああ、是非ともそうさせてもらうよ」
ジニーたちと一緒にいれば、変に絡まれることはないだろうし。
ありがたく、同行させてもらうとしよう。
俺とアレクは、冒険者登録が終わるまで、しばらくジニーたちと話すことになった。
お約束を書くのは、楽しいものがありますね。
あと、ツイッタ・・・Xも始めましたので、よければ覗いてみてください!