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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
古龍登場編
19/34

17話 到着!王国最大の街『ゾダニア』

感想もどしどし、お待ちしてます!!

 俺とアレク、『銀灰(ぎんかい)の剣』の面々は、無事ゾダニアに到着した。

 門の前には街を訪れた商人や来訪者たちが、長蛇(ちょうだ)の列を作っている。

 今からあれに並ぶのかぁ・・・・。

 と、俺が憂鬱(ゆううつ)な気分になっていると、アンスは列を無視して門番の方に向かって行った。

 しばらく門番と話たアンスは、俺たちの方に手招きをする。

 周りの視線に当てられながら、俺たちはアンスと門番のもとまで、いそいそと移動した。

 アンスとにこやかに話していた門番だったが、俺たちには至って真面目な面持ちで口を開く。


「君たちが、アンスさんの言ったナズ君とアレク君?」

「はい、そうです!!」

「アンスさんの連れだから、大丈夫だとは思うが。

 ・・・くれぐれも、街中で騒ぎを起こすなよ?」

「もちろんです!おとなしくしてますよ!!」


 まあ、もうすでに騒ぎを起こして追われる身ではあるんだけど。

 口が裂けても、そんなことは言えないな。

 門番の警告に元気よく返事して、俺たちは列を並ぶことなく、街の門をくぐる。

 列の最前列に割り込みしたような気分になり、少し気が引けていたが、なるほど。流石に『銀灰の剣』はこの街の有名冒険者パーティーらしい。

 門番や列に並んでいるものたちは、それが当然であると言わんばかりに受け入れていた。

 街の中に入るとそこは活気溢れる露店や人通りで、ごった返しといった具合だった。


「うおぉ。すごい賑わってるんだな、ゾダニアって」


 思わず感嘆の声が漏れる。

 俺の純粋な感想に、アンスはどこか嬉そうに笑う。


「そうだろそうだろ。ゾダニアは王国最大級の街だからな!

 祭りの日は、こんなもんじゃないぞ!」

「おおお!いつか参加してみたいっ!」


 アンスと俺は二人で盛り上がる。

 そんな俺たちを尻目に、他のメンバーは疲れた顔をしている。


「アンス。アタシたちもう疲れたから、今日はこのまま解散でいい?

 早く帰って、シャワー浴びて、ベッドで寝たいのよ。」

「おう、早いとこそうしようや、アンス。

 俺も早く、体にビールを流し込まねえと、干からびて死んじまいそうだっ」


 ガーベラとジニーが苦しそうに(うったえ)える。

 確かにこの人らも、仕事を終えて、早いとこ休みたいよな。


「そうだな。依頼の報告や、魔物の換金なんかはまた明日にしよう。

 今日はもう解散だ!明日もいつもの時間にな。みんな、お疲れー!」

「お疲れ様です!」

「また明日ー」

「アンスっ!昼からは勘弁してやるから、夜はちゃんと来いよー!!」


 各々(おのおの)が別れていく。

 ジニーがアンスに何か叫んでいるが、なんのことかはよくわからない。

 アンスはやれやれといった感じで、肩をすくめる。

 さて、俺たちもどうするか。

 とりあえず、アレクと相談しよう・・・。

 そう考えていた俺に、一人残っていたアンスが声をかけてきた。


「なあ、ナズとアレクよ。お前らどうせ金なんか持ってないんだろ?

 ほら、これ。やるよ。」


 アンスは俺の手に、一枚の金の硬貨を渡してきた。


「え、これって・・。」

「金貨だよ。これで大抵の宿には泊まれるし、余った金で飯も食える。

 今日はその金を使ってくれ。明日は10時頃に、冒険者ギルドに集まる予定だから、顔出してくれりゃ、ギルドに話くらは通すぜ。」


 こいつ・・・・!

 なんて良いやつなんだ!

 明日のことまで考えてくれている。


「ありがとうな、アンス!!

 お前の言う通り、金なんて持ってなかったから、すげー助かった。

 明日もギルドに行くから、その時はよろしく!!」

「何、助けてくれた恩に比べれば、これくらい。お前らもゆっくり休めよー。」


 アレクもペコペコと、頭を下げている。

 俺たちはヒラヒラと手を振って去るアンスを、礼を言いながら見送った。

 その後、俺はアレクと共に人通りを外れて、今後の相談をする。


「この後、・・どうする?」

(んー。まずは宿の確保だね。そのあと、余ったお金で、ご飯にしよう!)

「異議なし!」

(じゃあ、宿選びは任せたよ!)

「任された!」


 俺は街ゆく人に、おすすめの宿を聞いてみた。

 条件は、多少高くても良いから、ベッドと飯が充実しているとこだ。

 聞き込みを続けること、数十分。

 聞いた中から、一番名前が多く上がった『一月(ひとつき)の宿』に決定した。

 道を聞いて、お目当ての宿に辿(たど)り着く。

 二階建ての綺麗な建物。

 他の建物と比べても、かなり大きい。


「よし、入るか・・!」

(うんっ。)


 少し緊張しながら、俺とアレクは、宿の扉を開けた。

 ギイィっと音を立てたドアは、それが呼び鈴であるかのように、中の者に俺たちが入るのを知らせた。

 中はレストラン風になっており、まだ昼前にも関わらず、ちらほら食事をしている人が見られる。

 俺も早く、飯が食べたい。

 じゅるりと、垂れそうになる(よだれ)を飲み込みつつ、目を輝かせる。

 すると、奥のカウンターに座っていた女性が立ち上がり、駆け寄ってくる。

 こちらに来た女性は、ニコッと愛想良く喋り出した。


「いらっしゃいませ!ようこそ『一月の宿』へ!

 お食事ですか?宿泊ですか?それとも両方?」

「両方でっ!!お願いします!!」

「あ、ありがとうございます!」


 食い気味に答えた俺に、少し引きつつも、女性は営業スマイルを貫く。

 この人、プロだ!

 と、引かせてしまったことに申し訳無くなりながらも、感心する。


「何日宿泊して行かれますか?」

「えーと、とりあえずしばらく滞在するつもりなので・・・。

 これで二人、どのくらい泊まれますかね。あ、食事付きで。」


 俺は手のひらに乗せた1枚の金貨を、女性に見せる。


「1ゴールドですと、7日の滞在までですね。

 もちろん、世界一美味しい食事付きで、ですよ!」

「!、じゃあそれで、お願いします!」

「はい、ありがとうございます!食事はすぐになさいますか?」

「是非に!!」


 アレクもブンブンと、頭を振っている。

 俺もアレクも、早くプロが作った料理を食べたくてしょうがないのだ。

 俺は金貨を女性に渡す。


「先にお部屋の方にご案内しますねっ!食事ができたら、呼びに行きます!

 あ、私、イアンって言います!お客さんは?」

「俺がナズ。で、こっちが()()のアレク。よろしく。」

「・!・・獣人の友達なんて、珍しいですね。わかりました、お客さん2人ですね。

 おとーさーんっ、食事2人前、今すぐね!!」

「はいよっー!」


 奥にあるであろう厨房から、野太い声が響く。

 俺たちはイアンに連れられて、部屋に行く。

 一階はレストランで、2階が宿になっているらしい。

 イアンに角の部屋に案内してもらい、中に入る。


「では、この部屋でご自由にお過ごしください!

 でも、中にあるものを壊した場合は、弁償してもらいますからねっ!」


 イアンがぱちっと目配せをする。

 俺たちとしても、そんなつもりはないので、しっかり頷く。


「では、食事ができたら呼びに来ますね!ごゆっくりー!」


 イアンは頭を下げて、部屋から出ていく。

 俺は扉を閉め、部屋の中を見回す。


「綺麗な部屋だな。結構広いし!」

(うん!2人でも十分快適に過ごせるね。)


 ベッドも二つあることから、この宿の人間、少なくともイアンは、俺とアレクを対等に扱ってくれてるらしい。

『友達』ってとこを強調して紹介した甲斐があったかな。

 部屋の端にはベッドが一つずつ配置してあり、真ん中に椅子と机が並んでいる。

 小窓が取り付けられており、日当たりもいい。

 とりあえず、俺とアレクは椅子に腰掛ける。


「ふう。ようやく、一息つけたな。」

(そうだね。これからしばらくは、ここを拠点に活動していこう。

 2人の転生者も、探しつつね。)

「わかってるよ。まあ転生者だし、少しは目立ってるだろうからな。

 探しようもあるだろ。」


 そんなこんなで、アレクと今後のことを話していると・・。

 コンコンコンっ。


「ナズさーん、アレクさーん。お食事、出来ましたよー。」


 イアンの声が、扉の向こうから聞こえてきた。

 俺たちは足早に部屋を出て、用意された念願の食事にありつく。


「今日のメニューは、鶏肉と新鮮なお野菜をふんだんに使ったデミグラスシチューです!!

 ご一緒に、焼きたてふわふわのパンもどうぞ!」

「おおおお!!」

(おおお!!)


 俺もアレクも、目の前のご馳走に興奮する。

 絶品の料理を無我夢中に食らいつき、気づけば皿は使う前のようにピカピカになっていた。


「ふうー、ご馳走様。すげー美味かったよ!」

「ふふっ。それは何よりです!作った父も、喜びます!」


 その後俺たちは部屋に戻り、泥のように眠った。

 1週間の野宿生活は、思ったより体を削っていたようだ。

 余裕そうに振る舞っていたアレクでさえ、スースーと寝息を立てている。

 俺も翌朝まで、一度も目を覚ますことなく熟睡を満喫していた。



 ***



 同日の夜。

 隣には、気持ち良さそうに眠るナズの姿。

 少しばかり音を立てたところで、起きることはないだろうが、一応静かにベッドから降りる。

 部屋の小窓を開け、夜風を部屋に取り込みながら、椅子に腰を下ろす。

 金髪の獣人、アレクは、小窓に広がる街の夜景を眺めていた。

 しばらくして満足したのか、鼻を鳴らし顔を引き締める。

 そして自身のスキル【従魔召喚(コール・ファミリア)】を発動し、使い魔を召喚する。

 使い魔というのは、主人によってできることが違ってくるため、その性能も千差万別だ。

 アレクは使い魔と五感の共有ができる他、一部のスキルの使用や、魔力の調整で体の大きさを変えられる(小さくなれるだけで、大きくはなれないが)。

 召喚した使い魔はその体を縮めて、勢いよく窓から外に飛び出した。

 この使い魔の見たものや聞いたものなどは、余すことなくアレクに入ってくるようになっている。

 このように、無口な獣人が使い魔を通して夜街を徘徊(はいかい)するのは、何も探検がしたいからではない。

 無論、これからのための、必要な情報を収集するためである。

 アレクは人目につかないように夜道を前進しつつ、ある酒場を探す。

 それは、この街に着く少し前に、『銀灰(ぎんかい)の剣』のジニーから出た名前の酒場である。

 ジニーはあの時機嫌よく、こう口走っていた。


「ゾダニアに着いたら、まずは酒だよなぁ!『ドランカードの家』が俺を待ってるぜ!!」


『ドランカードの家』。それはどうやら、この街にある人気な酒場らしい。

 ここまで聞いてきた会話の内容的に、ジニーとアンスは夜、この酒場で落ち合うようだ。

 もしかしたら、何か自分たちのことを話すかもしれない。

 そうじゃないにしろ、酒場は情報の巣窟(そうくつ)だと、相場が決まっている。

 聞き耳を立てるには絶好の場所だろう。


 暗い道を、人の活気が溢れる方へ進んでいくと、見知った魔力を視認した。

 アンスだ。

 アレクは使い魔を動かし、アンスの後を慎重に追う。

 突然。

 少し歩いたところでアンスの足がピタッと止まる。

 そしてグリンっと首を動かし、こちらに顔を向けてきた。

 あまりに突然のことに、使い魔を動かしていたアレクの、全身の毛が逆立つ。

 アレクは別に、油断していたわけではない。

 ただ、尾行相手が想定以上に優秀な冒険者だったのだ。

 使い魔は自身の気配を消すことに、集中していた。

 アンスも、変な違和感を感じただけで、この使い魔には気づいていない様子だ。

 再びアンスが歩きだす。

 ふうっと息を吐き出すアレク。

 そして細心の注意を払い、尾行を再開した。


 少しすると、案の定アンスはお目当ての酒場『ドランカードの家』へ入っていった。

 アレクの使い魔も、肉眼ではほぼ見えないくらい小さくなり、酒場の中へ入る。

 ワイワイと(にぎ)わう酒場。

 その中のとある一席。

 そこには、今しがた到着したアンスのほかに、顔を少し赤くしたジニーと、すでに出来上がっていそうなガーベラが座っていた。

 アレクは近くまで移動して、聴覚に意識を集中させる。


「よう、ジニー。約束通り、ちゃんと来ただろ?ガーベラも来てたんだな。」

「おお!お前は約束守る男だと思ってたぜ、アンス!

 とりあえず、なんか頼めよ!おーーい!」


 そう言うとジニーは、酒場の給仕を呼びつけた。

 アンスも何か注文し、給仕は去っていく。


「さっきまで、なんの話してたんだ?」

「んなの、決まってるでしょぉ?あの2人のことよぉ。」


 若干、呂律が怪しいガーベラの答えにアレクの使い魔は、耳をピクッと反応させる。


「あー。ナズとアレクのことか。まあ、変わったやつらだよな。」

「『変わった』なんてもんじゃねえよ!助けにきた時ゃ、どこぞのS級冒険者が来たのかと思ったぞ!」

「そうよぉ!何がやばいって、あの子、ナズくん。

 あんな特大魔法スキル使っといて、魔力切れを一切気にしてないってことよぉ。

 あの後も、ぽんぽんスキル使ってたしぃ。

 尋常じゃない、魔力量してるんだわぁ。」

「それによ。あいつら魔法だけじゃねえ。

 強化系のスキルも持ってるっぽいし、何より、魔法なしの接近戦でも十分戦えていた。

 ありゃ、訓練されたやつの動きだ。」

「んー、確かにな。普通、魔法が使えるやつは、魔法の練度を優先させて近接戦は苦手な傾向にある。

 その方が効率よく成長できるし、むしろ、二つとも伸ばそうとする方が、非効率的だ。

 それをどっちも高いレベルでこなしてるってんだから、まるで軍のエリート騎士だよな。

 山の集落で暮らしてたって話だけど、妙なのは間違いない。」


 ここで注文が届く。

 一同は話すのを一旦止めて、酒や料理に手をつける。

 アンスは、酒を一気に喉へ流すとジョッキをテーブルに勢いよく降ろし、口を開く。


「ともかくだ。余計な詮索(せんさく)は無し。

 あいつらの正体が気になるのはわかるが、それで怒らせちゃ、話にならないからな。

 気のいい奴らだったし、それだけでいいんじゃないか?」

「わかってるわよぅ。本人たちに直接聞く、なんてことはしないわぁ。」

「ああ。自分たちより強い奴らを敵に回して、良いことなんてないからな。」


 アンスの言葉に、ガーベラもジニーも同意する。

 アレクとしても、自分たちに害がないなら、それでいいという考えだ。

 ただ、自分たちの存在は周りから見れば異質だということを、再認識する。

 今後はより一層注意して行動しなければ。

 ともあれ、聞きたいことも聞け、アレクは他に使えそうな情報を集めるため、席を離れようとした。

 そこに1人の男が、アンスたちの席に近寄ってくる。


「よお、『銀灰(ぎんかい)』じゃねえか。帰ってきてたのか。

 その様子じゃあ、あの高難度の依頼も、達成したみたいだな。」

「ああ、スキーロスか。依頼の方は、なんとかな。

 そんな依頼より、帰り道の方が大変だったけど。」


 スキーロスと呼ばれた、チンピラのようなガラの悪い男は、不可解そうな顔をした。


「お前らが苦戦する相手?

 はっ。まさかドラゴンでも、降ってきたのかよっ?」

「・・・・そのまさかよぅ。」

「・・・・・はぁ!?」


 冗談めかしく笑うスキーロスに、ガーベラがぶっきらぼうに答えた。

 スキーロスもこの回答に笑うのを止め、同情と感心の混ざった顔をする。


「お前ら、よく倒したな。依頼の後だってのによ。」

「強力な助っ人がいたんだよ。それと、スキーロス!

 明日、ギルドに新人が二人入ってくるけど、変にちょっかい出すんじゃないぞ!!」


 アンスがスキーロスに指を差し、釘を刺すように言う。


「おーおー、そうかい。気ぃ付けるよ。」


 スキーロスはヘラヘラ笑って、取り合おうとしていない。

 使い魔越しにアレクは、この男への警戒度を上げた。

 明日、ギルドに行った際は、目を光らせておこうと。

 それからも、アレクの偵察(ていさつ)は続く。

 夜の街を人知れず、金毛の猫は躍動(やくどう)していた。


今回は結構長くなってしまいました。

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