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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
古龍登場編
17/34

15話 相棒の能力が、有能すぎる。

と、と、と、投稿です!!

 日が沈む。

 光る夜空の下、俺とアレクは焚き木を囲って座っていた。

 辺りは木々に(おお)われており、静かなものだ。

 そんな 閑散(かんさん)とした空間に、焚き木のパチパチと爆ぜる音が、心地よく響く。

 簡単に食事を済ませ(アレクが意外と料理のできる奴で助かった)俺たちは一息ついていた。

 これで、ふかふかのベッドでもあれば、最高なんだがな・・。


「なあ、アレク。

 そのマジックバックの中に、ベッドとか入ってないの?ふかふかのやつ。」

(入ってるわけないでしょ。簡易テント、立てたよね。そこで寝てもらうよ。

 もちろん、交代でね。もう一人は、見張り。)


 アレクがテントを指差す。

 あれも、魔道具の一種らしく、簡単に組み立て、解体ができるんだとか。

 便利なものだ。


(それじゃ、ご飯も食べたことだし。

 昼に話してた、二人の転生者のこととか、後は僕自身のスキルについて、話そうと思う。

 心して聴くようにっ。)


 アレクがなぜか、鼻につく教師のような喋り方で、話始める。

 とりあえず、黙って聞いておくか・・。


(まず、転生者についてだけど、二人とも、日本人だと思うな。

 一人は多分、ナズと同い歳か、少し上くらいだと思う。

 背丈もそこまで変わらなかったし。あ、あと、かなりのイケメンだったね。)


 ・・・ん?、それだけか?

 俺は、2回ほど頷いて、アレクの話を(うなが)す。

 まだ、続きがあるかも知れんしな。


(もう一人は、あれだね。すごい人相の悪い顔でさ。

 僕の予想では、前世は、ヤクザとかだね、きっと。

 年齢は僕たちより、一回りくらい上かな。)

「・・・・・、終わりか?」

(・・・終わり。)


 アレクが俺の質問に、コクンと頷く。


「その情報だけで、見つかるか、そいつら?」

(まあ、なんとかなるんじゃない?)

「・・・お前、人探し舐めてるだろ。舐め腐ってるだろ?」

(いや、舐め腐ってまでは、いないけど・・。

 そういうナズは、人探しとかしたことあるの?)

「いや、ないけど・・。」

(ほらっ、ないじゃん!だったら、僕の情報に、とやかく言う筋合い、ないよね!)


 何が、『ほらっ』だよ。

 まあいいか。

 やりたいように、やらせてみよう。


「わかった、わかった。そっちは任せるよ。俺も手伝うから。

 で、アレクの能力とかも、教えてくれるんだろ?」

(そう。今後一緒にやっていくなら、僕のステータスも把握しといて欲しいからね。)


 そう言ってアレクは、自身の能力について、あれこれ話出した。

 まとめると、こんな感じか。


 ステータス

 名前:アレク・サントス

 種族:獣人(猫人族(キャットピープル)

 魔力量:S +

 スキル:神位スキル【万象ヲ讃美スル瞳(ヘル・メス)】(固有)


 極位スキル【鋼ノ心髄】(強化)

 【深淵ノ衣(フォルーン・アビス)】(魔法)


 上位スキル【念話】【猛獣化】【防護結界】【言語理解】(強化)

 【従魔召喚(コール・ファミリア)】(魔法)


 下位スキル【睡眠針(ビー・スリープ)】【闇弾丸(ブラックガン)】【麻痺(パラライズ)】【闇着(ダークウェア)】(魔法)


 魔法適正:闇



(これで、全部かな。)

「へえー。闇属性の魔法使えるのか。いいな、闇って。なんかカッコよくて。」

(カッコいいかどうかは置いといて、利便性は高いから、僕も気に入ってる。

 ただ、強力な攻撃スキルを持ってないのが、僕の弱点かな。

 一人だと、火力不足なんだよね。)

「それを補うための俺ってわけだなっ!」

(うん、頼りにしてるよ!)


 親指で自分を指差す俺に、アレクは素直に肯定する。。

 調子に乗ってるのは自覚しているが、やはり、頼られると嬉しいものだ。

 頑張ろうと、心の中で再度決心した。


「で、スキルの詳細とかは、どんな感じなんだ?

 極位系のスキル、二つもあるけど・・。」

(えーっとね。まず、【鋼ノ心髄】は、精神攻撃耐性における最高位のスキルだね。

 自分は精神攻撃無効の上、人に耐性を付与することができる。

 これで、僕もナズも、マリーグレーテの洗脳を防いでたんだよ。)


 なるほど。

 確かに、これにはお世話になったな。

 今後とも、役に立ちそうだ。


(そして、【深淵ノ衣(フォルーン・アビス)】だけど・・。これは下位スキルの【闇着(ダークウェア)】の完全上位互換だね。

闇着(ダークウェア)】は、纏った闇のオーラで攻撃すると、そこに、回復妨害の効果を与えるんだ。

 纏えるのは、体の一部だけで、物にはできない。でも、攻撃の威力も上がるから、便利ではあるよ。

 んで、【深淵ノ衣(フォルーン・アビス)】だけど・・。これは、全身に纏える上に、武器にも付与可能だ。さらに、回復妨害なんてやわなもんじゃなく、触れた相手の部分を『死亡』させる。つまり、細胞自体を殺すんだよね。与えた傷は、一生回復することはない。

 纏ってる間は、筋力も爆発的に上がるし・・。)

「なんだよそれ、めちゃくちゃ強いじゃんか!

 そんなすげースキル、持ってたのかよ。」


 実はこいつ、戦闘能力も高いのか?

 だったら、俺のいる意味が・・。

 ただ、アレクはどこか、浮かない顔をしている。


(そうだね。これは、闇魔法スキルの中でも、最上位のものだから、強力なんだけど・・。

 結構、残酷だから、人相手には、あんまり使いたくないんだよね。魔力消費も激しいし。

 あと、相手が強いと、何もできない。

 こっちの攻撃を一発も喰らわずに、一方的にやられたら、どうしようもないでしょ?)

「そんなの、どんな能力だって一緒だろ?」

(いやまあ、そうだけど。

 でも、僕はこれ以上の攻撃手段を、持ち合わせてないからさ。格上相手に勝つことは、難しいんだよ。

 その点ナズなんかは、神位スキルのおかげで、格上にもゴリ押しで勝っちゃうこと出来るだろ?

 だから、ナズは必要なんだよ。)

「お、おう・・。」


 俺がお払い箱になる心配をしているのに気づいたのか、アレクがさらっとフォローを入れる。

 俺の心を読んでいるのか、こやつ。

 でも確かにそうか。

 アレクの神位スキル【万象ヲ讃美スル瞳(ヘル・メス)】は、戦闘向きではないらしいからな。


「お前の神位スキルって、具体的には何が出来るんだ?」

(僕の神位スキルはね。まず、相手のスキルを看破できるよ。詳細までね。

 それから、魔力の動きを見ることで、相手が何をしようとしてるのかも、()れる。

 普通の人は、魔力を感知するくらいだけど、僕は魔力そのものを視認することができるってこと。

 後は、偽装なんかを見破ったり、逆に精巧な偽物を作ったりするのにも役立つかな。)

「精巧な偽物・・・。もしかして、城に届いてた偽物の報告書って・・。

 お前が作ってたのか?」

(ふふん。なんのために、忙しく動き回ってたと、思ってんのさ!)


 アレクが得意げに、鼻を鳴らす。

 やってること、えげつないな。


(とりあえず、能力については、これくらいでいいかな。

 今日はもう寝ようか。)

「そうだな。もういい時間か。」


 時計がないので、月の位置とかで把握するしかないが、もう夜は深いはずだ。

 実を言うと、俺もかなり前から眠かった。


「見張りのことだけどさ、・・ジャン負けが、一晩中見張するってのはどう?」


 俺は、もうすでに閉じかけている目を(こす)りながら、提案する。

 出来るだけ沢山寝たいのだ、俺は。


(それ、ナズが一睡もできない可能性もあるってこと、わかってる?)

「・・へ?」

(へ?じゃないよ!なんで負けないこと前提なのさ。じゃんけん知ってる?)

「言われてみれば確かに・・・。じゃあもう、しょうがないから交代にするか・・。」

(最初から、そう言ってるよ僕は。ナズが最初に寝ていいから。

 時間が来たら起こしに行くよ。)

「起こしに来るの、忘れてもいいからなー。」


 そう言いながら俺は、テントの中に入り、横になる。

 しばらくして。

 アレクが起こしにくるのを忘れるはずもなく、しっかり交代させられた。

 野宿、辛い。



 ***


 それから俺たちは、西にひたすら歩いていた。

 目的地は『ゾダニア』という街で、活気に溢れた大きな都市なんだそう。

 規模だけなら王都よりも大きいそうで、交易の中心でもある。

 全部、アレクから聞いた情報だ。


 道中、魔物との遭遇はかなりの頻度だったが、城での訓練のおかげで、なんとかなっていた。

 あれがなければ、未だに殺すことへの忌避感で何もできなかっただろう。

 今でも、少しの躊躇(ちゅうちょ)はするんだけどな。

 それに比べてアレクは、そういった躊躇(ためら)いは一切なかった。

 不思議に思い俺は、聞いてみたのだ。


「なあ。なんかこう、生き物を殺すことへの忌避感とかないの?

 さっきから、顔色ひとつ変えずに、ズバズバやってますけど・・?」

(んー、特にないかな。まあこの世界では、そういうもんだって、思ってる。)

「いや、この世界の人間ならともかくよ。

 俺たちは異世界人で、前の世界では殺しとは縁遠い生活してただろ?

 そんなに、切り替えられないだろ?普通。」

(でも、アンジェだって、すぐ順応(じゅんのう)してたじゃんか。ナズも早く割り切りなよ。)


 こういった問答を繰り広げ、俺は結論を出した。

 アレクにしろ、アンジェにしろ、頭のネジが2、3本吹き飛んでいるんだろう。

 そうして俺は、考えることをやめた。

 ちなみにこの道中で倒した魔物。

 その素材を、次の街に着いた時、売るために、マジックバックに片っ端から詰め込んでいたのだが。

 ここに運良く、希少素材が紛れていることを、俺たちはまだ知らない。


 小さい村なんかも、ちらほらあったが、食料や雑貨なんかを買うだけで、滞在はしなかった。

 俺たちは最速で『ゾダニア』に向かっていた。


 そうして、野宿生活にも慣れてきた頃(不満がないとは言ってない)。

 アレクによると、明日にでも西の街『ゾダニア』に到着するらしい。


「これで、やっとベッドで寝れる・・!交代もしないでいい・・!」


 俺は自然と溢れる涙を(ぬぐ)いながら、(つぶや)いた。

 俺たちの足どりも軽くなるってもんだ。

 油断すると出そうになるスキップを我慢しつつ、俺たちは歩いた。


「無事に早く着いてくれー。」


 と、ご機嫌に口走った俺と、その横でニコニコと歩くアレク。

 なんて素敵な空間なん・・・・


「ぐわぁぁぁああーーーーー!!!!」


 街道から外れた、森の中からだ。

 男の、我が身が引きちぎられたような叫び声が響く。

 そういえば、なんか俺、フラグみたいなの、立ててたな・・。

 アレクを見ると、『やったなこいつ』みたいな顔して、俺の方を見ている。

 お前も、にこやかな表情してたじゃんか!!


 だがこの悲鳴を、無視することはできないよな・・。


「・・行くか・・・・?」


 少しの責任を感じつつ、一応、尋ねてみる。

 アレクは、肩をすくめながら、鼻から息を出す。

 そして【念話】で、俺に答える。


(早く行くよ!!)


 悲鳴の原因を探るべく、俺たちは、森の中を突っ切った。


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