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欠陥転生者たち、そして覇道へ  作者: 朽木 庵
傀儡の城脱出編
11/34

9.5話 とある獣人の独白

1話と2話に、対応しています。

よかったら、そちらもどうぞ!

 いつまで、こんな日々を送るのだろう。


 世界では、今この瞬間も、苦しんでいる人が大勢いる。

 絶えず続く戦争。

 (しいたげ)げられる、罪なき人々。

 貴族階級による横暴(おうぼう)で、理不尽にあえぐ国民たち。


 変えられると思っていた。

 いや、今でも本気で、そう思っている。

 しかし、一人では無理だ。

 僕のスキルは、戦闘に向いてるものでは、ないから・・・。

 だからこそ、同志を見つけるために、この国に来た。

 わざわざ、城の中にまで、入ったのだ。


 それなのに。

 この国の、もう一人の転生者。

 アンジェリーナは、もう遅かった。

 次に現れるのは、いつなんだろうか。

 もう一生、現れないのかな・・・・。



 ある日。

 いつものように、押し付けられた、雑務をこなしてたところ。

 国の外の森から、絶大な魔力反応を感知した。


 わかりやすいほどの、膨大な魔力。

 敵国の攻撃なら、もっと上手く隠すだろうし。

 何より、感知できた時点で、すでに仕掛けられているだろう。

 魔物という線もあるが・・・。

 これは・・・・高確率で、転生者だろう。


 城内も、感知班の報告で、間も無く動き出すだろう。

 それよりも早く、どんな人物なのか、確認しておきたいな。


 僕は、城内で人気(ひとけ)のない場所に移動する。

 そしてスキルで、自分の使い魔を出した。

 僕はこの使い魔を、結構気に入ってる。

 戦闘能力は一切ないけども、こいつとは視界の共有ができ、攻撃スキル以外なら扱えるため、便利なのだ。

 それに、僕に似て、賢そうな猫だしね。


 僕は使い魔を、急いで魔力の発信源へと向かわせた。



 ***


 10分ほどで、魔力の発信源へと近づけた。

 僕は、対象に見つからないように、草むらから、静かに観察する。


 間違いない。

 あの男が、魔力の発信源だ。

 ・・・・アジア系の人だな。日本人だろうか?

 フラフラと、頼りない足で、歩いている。


 なぜ、あんなにも覚束(おぼつか)ない足取りなのだろう?

 今使用してる、スキルの影響か?


 彼は今、意識してか無意識か、スキルを使用している。

【身体強化】が使われてるのはわかるが、もう一つは・・・。

 見たことのない魔力の動きだ。

 これが彼の、神位スキルみたいだな。

 一見、何も起こってないように見えるが・・。

 彼には何か、見えているのだろうか。


 とにかく、スキルをフル稼働で使用し、さらに魔力も放出させている。

 常人ならこれで、魔力切れを起こしてぶっ倒れているだろう。

 しかし彼の魔力量はかなり多い。

 だから、こんな無茶も、成立している。



 他の魔物たちも、彼の放つ魔力を恐れて、逃げてしまっている。

 そりゃそうだ。

 普通の魔物からしたら、魔王の凱旋(がいせん)でも始まったのかと、思うだろう。

 そんな中、逃げない魔物がいるな・・・。

 あれは・・・<装甲竜>か!?

 なぜあんな魔物が、こんな場所に?

 ・・・・食料を取りにたまたま来たのか・・。

 あるいは、他国の妨害工作の一つだろうか。


 だが<装甲竜>も相当に警戒しているようだ。


 ・・・・・・んん!?

 なんか彼、<装甲竜>に近づいて行ってないか!?

 気づいてないのか!?

 なんか、すごい嬉しそうに、近づいて行ってるが・・・。

 そんな戦闘狂だったのか?


 とうとう彼が、<装甲竜>に触れた。

 あ、なんか、驚いた顔してる。

 もしかして、今、気づいたのかな。

 彼と<装甲竜>が対峙している・・・。


 ・・・あ、逃げた・・・・。

 いや、彼、何してんだ?

 自分で近づいといて、逃げ出すなんて。


 とにかく、彼を追いかける。

 どうしよう。

 助けようにも、この使い魔じゃあ、戦闘できないしな・・・。


 ***


 あ、行き止まりだ。

 彼の方を見る。

 彼は、絶望的な顔をしている。

 ・・まずいな。

 なんか、強そうな魔法スキル持ってるし、あれで攻撃とかしないかな。

 それか神位スキルで。

 どうしようか・・・。

 あいにく僕は、声が出せないから、助言することも出来ないし。

<装甲竜>にも、今僕が使えるスキルはなさそうだ・・・・。


 まあ、彼も【身体強化】してるし、避けられるだろう。

 がんばれ・・・!


 あ。

<装甲竜>が仕掛けた。

 彼は・・・・ビビっていた。


 そして響く轟音。


 なんと彼が、神位スキルを発動させたみたいだ。

 これも、無意識っぽいな。

 完全に呆けている。


 そろそろ、城の騎士たちが、彼を捕獲しに来るだろう。

 そうだ!

 上手くやれば、彼のあの、膨大な魔力量を誤魔化せるのでは?

 彼を寝かしつければ、城の奴らは、魔力切れだと勘違いするだろう。



 ここから彼に、バレないように、【睡眠針】を一発打ち込む。

 あれ?

 思い通り、スキルの発動は止まったみたいだ。

 だけど、彼はまだ眠ってない。

 アンジェリーナですら、一撃で眠りにつかせるのに・・・。

 ・・・・そうか。

【状態異常耐性】を持っているからか。


 どうしよう。

 とりあえず、もう一発打ってみるか・・・。


 お、眠そうにし出したぞ。

 いいぞ、その調子だ。

 彼はそのまま、眠りについた。


 彼に近づいてみる。

 うん。

 種族は人間だな。

 僕は神位スキルで、彼を見てみる。


 よし、間違いないな。

 転生者だ。

 ようやく、この日が来た!

 やっと、実行に移せる!


 騎士たちが、こちらに向かってきている。

 カチャカチャと、金属音が微かに聞こえてくる。


 僕もそろそろ、帰るとするか・・・。

 ん?

 あれ、起きたぞ?


【睡眠針】、効いてないのか?

 いや、耐性能力が素で高いのかな。


 あ、見つかった。

 彼と目があう。

 なんか、彼が急に元気になった。

 こちらに手を伸ばそうとしてくる。


 怖いので、本日3本目の、【睡眠針】を打ち込んだ。

 今度は効きが早かったようだ。

 気絶するように、彼はすぐに、眠りについた。


 ・・・・帰るか。


 ***


 何はともあれ、念願の転生者が現れた。

 しかし、彼の性格なんかは、まだわからない。

 これからの城内での生活で、観察することにしよう。


 でも、この為にすごく待ったんだ。

 とんでもないクズとかじゃない限り、協力してもらおう!



 僕は早足で、城へと帰還した。


次回は、本編に戻ります。

まあ、今回のも、本編ではあるんですけどね。

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