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機獣世界グランマキナ  作者: 音髄
第一章 機獣世界へ
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第1節 始まりの光

第一章が終わり近くになって来て当初のコンセプトから少し外れているなと感じている部分があるので、第一章終了後に全体的に少し手を入れる予定です。

基本的に話の展開は変わりませんがいくつかイベントが増えると思います。

変更点については事後に活動報告でまとめます。


 オレ、東彪流あずまたけると、両道鶇ふたじつぐみ山代玖麻理やましろくまりの三人は家が隣近所で、幼稚園時代から親ぐるみの付き合いだったいわゆる幼馴染みだ。

 今はもう三人とも六年生の同学年なんだけど、口数が少なくて引っ込み思案なクマリをツグミは妹のように扱う事が多く、オレにまで姉貴風を吹かしてあちこち引っ張り回す事がよくあるのが困りものだ。

 ツグミは髪が少し赤茶けており、くせっ毛で肩まで伸ばしている。赤みがかった瞳からは自信と意志の強さを感じさせる。オレより少しだけ背が高かったり誕生日が早いのも、オレを弟扱いする一因なんだろう。

 一方、クマリは普通に黒髪のミニボブだかショートボブだか言う髪型だけど、前髪を伸ばしているのとうつむきがちな事からあまり目を見せない。オレたち二人より頭半分くらい背が低く、クマリの事はオレもツグミもクーって呼ぶことが多い。


 オレたち三人はそれぞれ他にも学校に友達はいるけど、休みの日とかは大体一緒に遊んでいた。

 うちのおじいちゃんが近所で廃車工場をやっており、その廃車置場の一角に古い大きなキャンピングカーがもうずっと置きっぱなしにされてて、そこを三人の秘密基地にしている。親たちがみんな共働きで全員家にいない事もあるので(母親は誰かしら家にいることが多いけど)、じいちゃんの目の届く範囲であるここをたまり場にするのは親たちにとっても都合が良かったらしい。

 外観はボロいけど中はまだキレイで、小さい台所やシャワーやトイレなんかもあって、じいちゃんが気を回してくれて、水や電気も引かれてるのでその気になったら住むことすら可能だ。まぁ基本的にいつもは泊まったりしないで暗くなる前にそれぞれの家に帰るんだけど。

 でもその日は、夏休みということもあり、珍しくキャンピングカーに泊まる予定だった。お泊り会というやつだ。

 個人的には六年生にもなって男女でお泊り会なんていいのかなぁと思わないでもなかったけど、ツグミもクーも乗り気で親も特に止めなかったのでまぁいいんだろう。

 こないだ母親たちが「将来はどちらと結婚するのかしらねぇ」なんて言ってたのが聞こえた気がしたけど気のせいだ。気が早すぎる。

 そりゃ、オレはツグミもクーも憎からず思ってはいるけど、どうせ思春期?だっけ、中学に上がったらだんだん向こうが離れてくんだろうな~という予感はしている。多分。このところ時々よそよそしい時があってほとんど話もしない日があるんだよな。



  ◇ ◇ ◇



 昼過ぎにお泊り用の荷物を持って三人で家から出発する時、今日はツグミとクマリのママたちが家にいて、見送ってくれていた。


「なぁ、一晩泊まるだけなのに荷物多くね?」


 オレは背中のリュック一つ分の荷物しかないというのに、ツグミもクマリも旅行バッグ二つ分の荷物がある。

 廃車置場までは徒歩十分くらいしか離れてないし、キャンピングカーには今まで少しずつ運び込んだ荷物だって色々あるのに何がこんなに必要なんだ?


「いいでしょ、女の子には色々あるのよ」


 二人のバッグをそれぞれ一つずつ持たされるオレとしては全然良くないんだが!


「それじゃあタケルくん、二人をよろしくね」


 ツグミのママに二人を任されるが、それは今日のお泊り会だけの話だよね? どうもママさんたちがいつもオレを生暖かい目で見てくるのが気になる。それにいつも何するか決めるのは大体ツグミで、オレもクマリも引きずられてるだけだぞ。


「クマリも二人に迷惑かけないようにするのよ」

「ん」


 クマリは相変わらず無表情で言葉数も少ないなぁ。まぁオレもツグミも長く一緒にいるせいか、クマリのその時その時の気分は見てれば大体わかるようになっちゃったんだけど……。



  ◇ ◇ ◇



「じゃあ、じいちゃんももう家に帰るからな。これ以降は朝迎えに来るまでバスから離れちゃダメだぞ」


 夕方、三人で夏休みの宿題をやってる時に、オレのじいちゃんが工場を閉めて敷地のすぐ隣にある自分の家に帰る前に声をかけに来た。じいちゃんはなぜかこのキャンピングカーをバスって言う。確かに大きさだけ見ればバスぐらいあるけど、運転席は無いんだけどなぁ。そういや前に父さんが、なんとか式だからキャンピングカーじゃなくてキャンピングなんちゃらだとか言ってたような。まぁ、もう他のみんなはキャンピングカーで呼び名が固まっちゃってたけど。


「わかってるよ、じいちゃん」

「何かあったら何時でも電話してくれればすぐに飛んでくるからな」


 じいちゃんが帰った後は、詳しくは知らないけど敷地の入口などに仕掛けられた警備システムが作動するんだそうだ。だからもう朝じいちゃんが出勤してくるまでは、敷地の外に出ようとしたり、工場に近づいたりすると警備会社の人が来ちゃうんだって。キャンピングカーがあるこの辺りには特に何も置いてないらしいけど、具体的にどこにカメラなどの仕掛けがあるのか把握してないから、夜に肝試しで敷地内を歩き回ったりするのは無理だ。

 まぁ、昼間でも危ないからって廃車置場のキャンピングカーの辺り以外はうろちょろしないようには言われてるんだけど。

 オレたち三人はキャンピングカーの中から帰るじいちゃんを見送った。

 さっきまで聞こえてた工場の音がしなくなってて、この辺りは住宅街の外れで車通りも少ないからかなり静かだ。


 今日の夕食と明日の朝食はここでとるので食料も持ち込んでる。もう六年生だし電磁調理器だから子供だけで火を使うのも(火じゃないけど)許されてるから、料理ができる。するのはツグミ一人だけど。

 今日は手軽にパスタだそうだ。最初はカレーにしようと思ったけど、持ち込む荷物が多くなるからやめたんだそうな。電子レンジや小さい冷蔵庫はあるけど、炊飯ジャーもお米も置いてないもんね。非常食的にパックのご飯が少し置いてはあるけど、あれで夕食は味気ない感じがするしなぁ。


 ご飯の後は交代でシャワーを浴びて、ツグミとクマリはパジャマに着替えて、テレビを少し観たり三人で遊んだりした。オレは寝る時はパジャマじゃなくてシャツと半ズボンだ。

 三人で遊ぶ時は基本スマホはいじらず、トランプやチェリング、ボードゲームなどのアナログゲームで遊ぶことが多い。ゲーム機でも遊ぶけど、三人でできるゲームをあんまり持ってない。あとはマンガとかの本も色々持ち寄って回し読みしている。二人の持って来るマンガはやっぱり少女マンガも多いんだけど、オレに気を使ってか恋愛マンガ以外の、ギャグとか冒険物とかもあるので、いくつか読んではいる。

 そうして夜も九時過ぎになり、普段はほとんど使わない備え付けのベッドで練ることにした。オレは最初ソファで寝ようと思ってたけど、二人が当たり前の顔で一緒に寝ればいいじゃんと言うので、三人でクイーンサイズのベッドに入った。なぜかオレが真ん中だった。

 ドキドキして寝られるか心配だったけど、意外とすぐに眠りに落ちた。



  ◇ ◇ ◇



 一度地面が揺れる感じがして目を覚ますと、外から何か音が聞こえる。

 何だかギーギーとかピーガーとか電子音のノイズにしか聞こえないけど、何者かが会話してるようにも聞こえる。

 カーテンをそっとずらして外の様子をうかがうと、キャンピングカーの近くの開けたところに少し離れて黒いロボットが立ってて、すぐそばに置かれている古いスポーツカーに向かって話しかけてるようだった。

 黒いロボットは頭に大きな角が生えていて、顔は赤いバイザーが覆っており、何だか怖い感じだ。身長は近くに比較物がないのでわからないけど、十メートルくらいだろうか。かなり大きく感じる。

 これだけでも驚いたけど、息を殺して見ていると、スポーツカーの方からも電子音が聞こえてきて、何事か返事をしてる様子だ。

 そして何言か言葉を交わすと白いスポーツカーが変形して二~三秒でロボットになってしまった。キャンピングカーに距離が近すぎるのと、こちらに背中を向けてるのであまり外見が分からないけど、黒いロボットより少し背が低いように見える。


(…ちょっと! あれ、何!?)


 いつの間にか起きてきて隣で見ていたツグミが小声で騒ぎながらオレの右腕をつかんだ。思わず近距離に接近して来ていい匂いがした。

 と思ったら左側にもクマリが近寄ってきていてオレのシャツにしがみついた。


(わかんねーよ! 目が覚めたらいたんだ! …夢、じゃないよな)

(どれどれ…)


 言ってツグミがオレのほっぺをグイッとつまむ。


(いででで、オレのをつまんでどうすんだよ!)

(私痛いのやだもん)


 なんて勝手な。



『****!!』


 黒いロボットが声を荒げたので注意を戻すと何か剣のような武器を出して白いロボットに襲いかかって来た。

 白いロボットの方は気のせいかこのキャンピングカーを守るように前に出て立ち塞がり、光る盾と銃を取り出して立ち向かった。

 ガキィィィン!


「キャア!」


 白いロボットの盾に黒いロボットの剣が叩きつけられ激しく光る。衝撃でキャンピングカーが揺れ、ツグミが思わず悲鳴を上げた。

 これはマジでヤバい。このままだと三人とも巻き込まれて死んでしまうかもしれない。

 とは言え、逃げようにもキャンピングカーの入り口はロボット達のいる側にしかない。気づかれずに外に出るのは無理そうだ。

 オレは咄嗟に二人を両腕で抱き寄せるのが精一杯だった。

 白いロボットが盾で剣を押し返しキックで応戦したけど、あまり効果はないみたいだ。

 二体は続けて接近戦を繰り広げているけれど、どうも白いロボットの方は防戦一方に見える。右手に持つ銃を撃とうとしないからだ。

 なぜ撃たないんだ?


「もしかして、周りに被害を出さないために撃てないのか?」


 二体が激しく動き回り、キャンピングカーがガタガタと揺れ続けている。

 ここは町外れで周りに家は少ないとは言え、離れたところに数軒建ってはいる。じいちゃんの家もある。廃車置場自体はトタンなどの壁で囲われてはいるけど、高さはせいぜい三メートルというところだろう。外からでも余裕でロボットは見えるはず。この振動や音でそろそろそちらの方にもロボットが戦ってるのが気づかれそうなものだけれど……。


 そのまま数分は戦いが続いてるけど、周囲の家の電気は消えたままで、特に気付いた様子はない。間に近くの道路に車が通りかかったけれども特に止まる様子もなく通り過ぎて行ってしまった。ひょっとすると何か外からは気づかれないような仕掛けとかがあるのかもしれない。

 二人の戦いの影響で周りの廃車はメチャクチャになっているけど、このキャンピングカーにだけは攻撃が飛んでこなかった。白いロボットがそれを身を挺して防いでるからだ。


 一度二体が少し距離を取り、構えを取り直した。白いロボットはすでにボロボロで、このままだと負けてしまいそうだ。


 その時、どこから現れたのか複数のロボットがやって来た。

 こう六体も増えるとそこそこ広いはずの廃車置場がかなり狭く感じる。

 後から現れたロボット達は黒と白それぞれの仲間の様子で、互いを警戒しながら何か仲間内で会話をしている。

 白いロボットの仲間は赤・青・黄・緑とカラフルだ。黒いロボット達を扇状に囲むようにそれぞれ武器を構えている。

 黒いロボットの仲間は灰色のスラッとしたロボットとオレンジのゴツいロボットで何だか手下っぽい様子だ。灰色の方が白いロボット達にあまり見えないように箱に入った何かを見せると、黒いロボットが頷いた。

 数的には三対五か…? 数だけなら白い方が有利に見える。

 このまま戦闘が終わるか、どこかに行ってしまうかしてくれるといいんだけど……。


『***、****! フハハハ!』


 黒いロボットが白いロボットに何か言って笑った。そして何かの装置を起動させたらしく、黒いロボット達三体の足元が光る。


『**!』


 白いロボット達が慌てて黒いロボット達に向かって行くけど、黒いロボットが剣を振ると刀身が崩れてムチのようになり、白いロボット達を蹴散らした。

挿絵(By みてみん)

 白いロボットがキャンピングカーのすぐそばに倒れる。

 そのまま足元の光が広がり、黒いロボット達を包む。と思ったら灰色のロボットが持っていた箱の中の装置が虹色に激しく輝き出した。どうやらそれは黒いロボット達にも想定外だったらしくて何だか慌てている。

 光はどんどん強くなり、足元の光が呼応するように広がり始めた。

 数秒の内に地面の光が数十メートルにも広がり、白いロボット達もキャンピングカーも範囲内に巻き込まれた。

 そして強い光に包まれ、オレたちは意識を失った。

最初はSF要素強めですが、いずれファンタジーになる……予定。

イラストはリア友のイヌゾー(https://twitter.com/inuzo999)に頼んでます。

今後も数話に1枚は入る予定ですが、ペースは彼次第です。


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