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大罪人ー井伊直弼と共に生きた男ー  作者: Making Connection
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第五十九幕

少し遠回りをして江戸まで来た。

直亮様からの呼び出しではあったが極秘の命令だと言うこともあって直弼様には義父の用事で駿河の方に行く事になったので、ついでに直亮様に翻訳を持っていく事にしたと伝えて彦根をでた。

彦根藩屋敷ではなく宿場に泊まった。少しお高めの良い宿だった。部屋でくつろいでいると町人のような格好をした直亮様がお供に木俣守康様を連れて現れた。

「貞治、遠路はるばる悪いな。」

「いえ、どう言ったご用件ですか?」

直亮様も暇ではないし、変装までして会いに来るからには用件を言ってすぐ帰ってしまうのだろうと思ったが、直亮様に焦る様子はなかった。

「直弼の所に子が産まれたそうだな。」

「はい、元気な女の子でした。」

「そうか、それはめでたいな。守康殿、何かお祝いの品を送っていて頂けますか?」

「殿も要らぬし命令されよ。威厳というものを重視されるべきかと。」

「まあ、守康殿と私の付き合いではないか。

それに貞治の前なら別に気にするほどではないと思いますよ。」

この二人の関係性がいまいちわからない。小さい頃からの世話役であったと聞いているが、直弼様と義父との関係のようなお互いに尊敬しあっているような、あるいは親が子を導くような感じではない。どちらかというと守康殿はめんどくさそうに直亮様に接しているように見えた。それは何度叱っても直らないいたずらをする子供を諭しているかのようにも見えた。

「・・・・と、話がそれたな。

直弼に子ができたのはめでたい事だが、それをよしてとしていない者がいる。西郷に命じて密かに警備を強化しているがそれがいつまで持つかというのもわからないからな。

元凶を取り除きたいと思っている。」

「元凶がわかっているのですか?」

「子がいる者といない者では次期藩主となるのにどちらが良いかという話になる。直元は普段から私に反抗的な態度をとり、何かあると隠居させようとしてくるわけだ。

そこに直弼に子供ができれば直弼への嫉妬もでてくるだろう。」

「直元様が嫉妬されたから何かあるとお考えなんですか?」

「貞治は知っているか?井伊直弼は兄の急死によって世子となり後に藩主となる。」

「そうしようとお考えという事ですか?」

歴史上ではそうなっていたはずだ。多くの兄弟がいる中で藩主になるのは無理だと今までも言われてきていた。でも、現代で習った井伊直弼は藩主になり幕府の大老となり鎖国を打ち破る男になる。でも、それをこの時代の直亮様が知っているわけがない。

直亮様は笑いながら

「奴が我々に反するのであれば始末せねばならないし、そもそも私は前も言ったと思うが完璧な井伊直弼を作り上げることが生きる目的なのだ。それには藩主になり、大老になってもらわなければ意味がない。」

直亮様の言葉は願望ではなく、過去を語るように明瞭な言葉だった。僕が不思議そうにしていると守康殿が

「ところで、彼には全てをお伝えになられたのですか?」

「うん?まぁまだ途中だな。」

直亮様はうっかりしたと言った感じだった。守康殿も呆れたようにため息をつき、

「あなたが良いと思われた時に言われたら良い話ですが、彼の理解がない事には今回の計画は危ういのではありませんか?」

「答えは与えられるものではなく、自らつかみとるものでしょう?では、ヒントの話でもしましょうか。」

直亮様はニヤニヤと笑い僕を見てきた。

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