第四十九幕
貞徹は終始、たか殿の雰囲気にのまれてお茶会は終わった。
みんなが帰ると直弼様は書斎で書き物をされていた。
「お疲れ様です。今日の集まりはどうでしたか?」
直弼様が集まりをすると基本的にはどうだったかを確認している。特に意味があるわけではなく直弼様がどんな風に感じたかを基に次の集まりをより良い物にしようと思っての事である。
直弼様は笑顔で
「楽しかったよ。お茶菓子もおいしかったし、何より貞徹と剣の話で盛り上がりお茶も楽しんだ上にたかを含めて和歌の話もできたから満足だよ。」
「それはよかったです。
そういえば、北庵殿が言っておられた学者のえーと・・・」
「長野主膳義言殿だよ。
三浦殿のお屋敷に滞留されているらしいのだが、なかなかいい機会がなくてな。」
「国学者なんですよね?」
「歌道もたしなまれているが国学の方も本居宣長殿に師事されていたらしい。
学ぶ事は多そうだなと思うとぜひお会いしたいなと思うな。」
「本居宣長さんは僕も習った事があります。
何がすごいとかはよくわからなかったですけど国学者として教科書に載ってましたね。」
「そんなにすごい人だったんだな。
それではぜひ教えを頂きたいな。」
三浦太沖というのは坂田郡の市場村というところに住む医師である。
また三浦北庵とも呼ばれていて和歌の方にも通じている人だ。
直弼様も面識があり、僕もその繋がりで何度か会った事がある。
とても感じのいい人で普通に話していても楽しい人である。
その人のもとで長野という学者が門下を得ながら教えているという話を聞いた。
そんな中で三浦北庵から「こういう学者がいる。」と直弼様に教えてもらった感じだ。
結構いろいろな所を渡り歩くタイプの人のようなので接触するなら早い方が良いかなと思った。