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大罪人ー井伊直弼と共に生きた男ー  作者: Making Connection
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第三十四幕

天保9年(1838年)になった。直弼様と彦根に帰ってから、約三年が経った。直弼様は学問に武芸にそして趣味として茶道や和歌を学びながら過ごしていた。

僕も直弼様について武芸は学んでいたが、たまに直弼様にお茶を飲ませてもらう程度に趣味は付き合い、英語の文章の翻訳の仕事などをしながら過ごしていた。

人間と言うのはいつもやっている事や慣れてくると、成長するのだとわかった。

始めの頃は英和辞典がないと翻訳どころか単語の意味もわからなかったが、いつの間にか辞典を見なくても意味がわかるし、一回読むだけでだいたいの和訳ができるようになってきた。

直弼様に英語を教え始めてから5年近くなると直弼様も日常会話ができるようになっていた。

僕よりできるのでは?と不安になる事もあった。

今日も直弼様と外国の話や英語の授業をしていると、西郷殿が現れた。直亮様の従者である西郷殿は僕の翻訳を取りに来られたり直亮様の用事で彦根に帰ってくる事が多い。

「失礼します。

ああ、直弼様もこちらでしたか。」

西郷殿が言うと直弼様が

「お久しぶりです、西郷殿。

今日は貞治に用ですか?」

「お二人に聞いていただきたい件がありました。

お揃いでこちらの手間が省けて良かったです。」

「直亮様から何か伝言ですか?」

僕が聞くと西郷殿が

「うーん、そうと言えばそうなのですが。

お二人はモリソン号事件をご存じですか?」

直弼様は聞いた事がなかったのか僕に顔を向けてきたが僕も知らなかったので

「すみません、初めて聞きました。」

「そうですよね。

あまり知られていなかったのですが、水野様を中心にどうするべきかと判断がわかれているので、お二人のご意見を聞かせて頂こうと思ったのです。

では、どのような事件だったかをご説明します。

モリソン号事件とは、日本の漁船が海上で遭難し他国の船が救助してくださった時の遭難者を送り届けて頂いたのですが、異国船打払令に基き、砲撃で追い返したと言う事件です。

鎖国政策をとっている日本からするとヨーロッパの国はオランダ以外の船は認めないとなっておりますので、イギリスの船のモリソン号は受け付けられなかったのです。」

「ちょっと待ってください。

僕も詳しくは知らないのですがモリソン号はイギリスではなくアメリカの船だったと思いますよ。」

僕が言うと西郷殿が驚いた顔で

「そうなんですか?」

「確かそうたったと思います。

どちらにしても、どこの国とか関係なく日本人を救うべきだと僕は思います。」

「貞治の言うとおり人命を優先したいですね。

でも、その見返りに通商を求められたりするのも困るので、やはりオランダ船で届けていただくのが現実的ですね。」

「なるほと、人命優先ですか?オランダ頼りなのは幕府の大目付などと同様ですね。

ただ、そこから通商がなければ連れてきても良いと言われる方や通商ありきなら漂流者たちを見殺しにしろと言う意見もあります。とても厄介なのでどうしたものかと水野様が困られてるんですよ。この件にあわせて蘭学者の方や医者の方から鎖国政策自体に対する批判など出ており大変なんです。

貞治殿も蘭学者ですから少しお発言には気を付けられた方がいいですね。」

「なるほど。わかりました注意します。」

「幕府の文化部門の中には儒教の朱子学しか認めないとか訳のわからない事を言い出してる人もいますからね。

南蛮(なんばん)の学問を学んでいる人達をあわせて『蛮社』などと呼ぶものもいますからねご注意ください、」

「わかりました。」

僕も直弼様が同時に答えたところで西郷殿が立ち上がり、

「それではまたご意見を聞きに来ますので、用意しといて下さい。」

西郷殿は僕たちに反論を許さないほどのスピードで部屋から出ていった。


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