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大罪人ー井伊直弼と共に生きた男ー  作者: Making Connection
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第十七幕

「江戸とはこんなに遠いのだな。」

江戸の彦根藩屋敷に到着した直弼様が言った。

「季節も冬で旅をするにはあまり向いてませんでしたからね。」

僕が言うと直弼様が

「本当にそうだな。

貞治がしっかり準備してくれたから凍える事もなかった。助かったぞ。」

「いえ、直弼様も直恭様も彦根を出られるのは初めてだと聞いていたので、逆に物を持ってきすぎてしまいすみませんでした。」

直恭が

「いや、そのおかげで私も凍えずにすみました。

兄上が余った着物を貸して下さったからです。」

大久保殿が苦虫を噛み潰したような顔で僕を睨んでいるがそこは無視しておくのが最善だと思い気づかないふりをした。直弼様が

「まあ、その代わりに直恭の食べ物を分けてもらったりもしたから、お互いさまといった感じだから気に市内くていい。」

「いえ、それも私が食が細いばかりに食べきれない分を食べて頂いていたわけですし・・・」

直恭が言おうとしたところに西郷殿が現れて、

「皆様、長旅お疲れさまでした。

今回は直亮様とご同行頂いたので、大名行列だとゆっくり進まないといけないので余計に長く感じられたと思います。まあ、この先もお二人が大名になられましたら経験し続ける事ですのでご容赦のほどをお願いします。」

「大名行列でなければもっと早く着く物なのか?」

直弼様が聞いた。西郷殿が

「そうですね、私が貞治殿に翻訳を貰いに伺うときは早馬を走らせて、三日か四日くらいですね。

往復でも十日かかるかくらいです。

歩くとやはり2か月くらいは見ておいた方がいいですね。」

「諸国の大名は参勤交代で毎年このように江戸と領地を行ったり来たりするのであろう。

財政がひっ迫しそうだな。」

直弼様が言い、僕が

「それも一部では狙いとされています。

家康公が幕府を開いた際に、外様大名ほど江戸から離したのそうした出費を多くして、逆らうだけの財源を奪う事も目的とされていたそうです。」

「だが、このままでは遠国の者ほど不満が溜まりかねないな。

時代が進めば制度の見直しも必要になると思うが・・・」

「それは直弼様が出世して変えてくださればよろしいかと存じます。」

西郷殿が笑顔で言い、そして続けて

「貞治殿、翻訳の件でお話したい事があります。

別室にご同行頂けますか?」

「わかりました。」

僕は西郷殿と別室に移動した。

そして西郷殿が

「この度は私の伝令ミスで直弼様・直恭様の健康を害する恐れがあったにもかかわらず、貞治殿のおかげで問題もなく到着でき、ありがとうございました。

本来ならどのような持ち物を準備してなど詳細をお伝えせねばいけなかったのですが、私が伝えきれていなかったのですみません。」

僕はいくつか違和感を覚えたが、優先すべき確認事項だけを聞くことにした。

「本当に忘れられていたのですか?」

僕の質問に西郷殿の眉が吊り上がった。しかし笑顔になり、

「忙しい時期とは重なるものでして、本当にすみません。」

「では、今回の事に対してどのような罰を受けられるのですか?

藩主の弟方の体調を損なうような失敗をしてしまったのですから、罰はうけられるですよね?」

「さすがは貞治殿です。

3か月間の減給です。3割ほど減らされることになりました。」

「それだけですか?」

「直亮様が自分が仕事をやらせすぎた事が原因で今回の事が起こったのだから、西郷を責める事は許さないと言っていただけまして、ただ何も処罰しないでは体裁が悪いので減給処分になりました。

ご納得いただけましたか?」

「なるほど、これは私の勝手な仮説なので違ったら許していただきたいのですが、

今回の事もすべて直亮様の指示だったという事はありませんか?」

「何のためにですか?」

「参勤交代の厳しさを教えるため、または長旅に対して必要なものを自ら判断しどれだけ持ってこれるかを試すためとかですかね。」

「貞治殿、従者とは主君の命に従い、そして補助する事が仕事です。

正直に言うと直亮様のお考えは私には理解できませんが、今回の事が直亮様の指示であった事とするなら、その目的は貞治殿のお考えの通りですよ。

おっと、少し話過ぎましたね。こちらの紙に直亮様からの翻訳依頼の詳細が書かれてますので、よろしくお願いします。」

西郷殿はそう言って、紙を渡して部屋から出て行った。


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