第百五十八幕
「薬師寺殿についてどう思う?」
直弼様の質問に僕は
「斉昭殿の息がかかっていると思います。」
「自分の息子の将軍になれるかがかかっている所であのような男を送り込んでくるか?」
「斉昭殿からすると数多くいる子供の一人ですし、今回の将軍継嗣については諦めているのではないでしょうか。忠固殿が大奥を味方につけている以上、斉昭殿には対抗できませんからね。」
「まあ、あの方は女性問題が多い人で大奥から目の敵にされてるからな。」
「信頼を得させたうえで間違った批判とかをさせて陥れる作戦の準備段階かもしれませんね。全く事実でない事でない事で強烈に批判とかしたらこちらの信頼が無くなりますね。」
「先日の九日にも斉昭殿だけでなく松平慶永殿、海防掛の一橋派に向かっても陰謀を企てていると言ってきたな。実際にどうかわからないから話半分に聞いてたけどな。」
「それが良いと思います。様子見になりますがあちらの情報も得られるなら泳がすのは良いと思います。
将軍継嗣問題に関してはたぶん南紀派の方に分があると思います。なので考えるべきはすり寄ってくる人たちのふるい分けと条約の締結ですね。」
「堀田殿が動き回っているが上手くはまとめられないだろうな。」
「京都の方を説得するのは難しそうですね。ハリスとの交渉で締結期日を伸ばせるかが大事になってきますね。とりあえず時間を稼いで根回しをしながら朝廷を説得できるようにした方が良いですね。」
「堀田殿が引き続き説得にあたれるだけの心持ちがあるかが問題だな。」
「おそらく周りからも本人からも辞退を申し出てくると思います。ですが、交渉の窓口が変わると朝廷からの信頼を損ねる恐れがあるので変わらない方が良いと思います。ただ、下手に出てしまうと大老としての威厳が損なわれれるので周りから辞退を取り消させるような働きかけさせた方が良いですね。直弼様は罷免するべきだというくらいの方が良いかもしれませんね。」
「ふうー、立場が変わるとなかなか難しいな。時期的にはすぐか?」
「そこまではわかりませんし、誰が話を持て来るかわかりませんがそう遠くないと思います。」
「わかった、その時は気を付けておくとしよう。」