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眠れない街  作者: 桜月
呪われてくれたらいいのに
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1

ハラスメント問題はなくならないですよね。

 環奈はドアの前で深呼吸した。手には白い封筒。


 辞表と書かれたそれは、環奈に握りしめられてすでにヨレヨレである。


 部長室の前で、もう数十分ウロウロしている環奈は十分不審者だが、ありがたいことに目撃者はいなかった。


 今日こそは、と思い詰めて早幾日。覚悟を決めて部長室のドアをノックしようとしては、同僚に声をかけられたり部長がでかけていたりと運がなかったりした。


 深く吸い込んだ息は、ため息として吐き出された。



 最初は、なんにもなかったのだ。

 入社して配属された部署は、男性ばかりで女性は環奈を入れてふたり。仕事に慣れるまでは皆あれこれとフォローしてくれたりと、居心地のよい空間だった。


 空気が変わったのは去年、人事異動で彼がきてからだった。


 一回り上の彼、水鳥川(みどりかわ)は平たく言ってしまえば仕事ができなくて飛ばされて来た男だった。本人は気づいていないが。むしろ仕事を認められての移動だと思ってるくさい。ありえない。


 やたら上からの間違った指示とか、ミスを認めず長々ダラダラと言い訳を繰り返しうやむやにするなど、どちらかといえばモラハラ臭プンプンである。


 水鳥川はもうひとりの女性を、見下しバカにし奴隷のように扱おうとした。アホである。


 彼よりもとても仕事ができた彼女は、移動願いがあっさり通って出世した。デキる女はかなり違う。ステキ。


 見下す対象がいなくなった水鳥川は、ターゲットを環奈にロックした。迷惑極まりない男である。そしてキモい。


 水鳥川は、環奈が上司に許可を取り処分しようとした書類をいつの間にか盗みだし、上司に環奈のミスを訴えた。どや顔で。だからそれは上司がミスって処分を頼まれたものだというのに。


 次に、環奈のいない時に彼女のゴミ箱を漁り、節約がなってないの記入が漏れているのなんのと。姑か。


 上司に注意されたのは水鳥川の方だったが、それも逆恨みしてくるとか、もうバカなの死ぬの勝手に死ねば、と。


 気にしてないわけではなかったが、環奈に非がないことは上司も同僚も理解して同情もしてくれていたので、たまに愚痴りつつも仕事に専念していた。


 それが面白くなかったのか、わざわざ環奈のデスクに近づいては舌打ちとか小声で「クソ」だの「バカ」だの子供以下のことをしていくようになった。ネチネチとお局様のようである。しかもこれらすべて環奈とふたりきりの時しかされない。ないわーマジでないわー、なキモさである。


 されていることは小さなことでも、積み重なれば結構な重さである。ストレスもマックスになろうというものである。なんどか上司に相談という名の訴えをしてみたりもしたのだが、上司曰く「引き取ってくれる部署がない」のだそう。どんだけー。


 愚痴やら相談は聞くしフォローもするから、という上司に拝まれ、仕方なく環奈は我慢した。我慢して愚痴って我慢して爆発して我慢して大泣きした。それでも問題にされなかった。


 限界もとっくに突破してるっつうの。


 かくして部長に直談判後、退職願の受理を目標に、環奈はここにいるのである。


 いざ、とノックして開けたドア。


「失礼します。ぶちょ、う?」


 そこはゴルフのパター練習セットが置いてある部長室ではなく、だだっ広いフロアに一面ガラス張りの窓、雲ひとつない青空が見える、応接セットがあるだけの部屋だった。


「え?」


「ようこそ、星蒼屋(せいそうや)へ」


 あなたの願いはなんですか?


かなり私情入りますが、お気になさらず(笑)

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