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朝起きて隣を見るとの敷き布団はなくなり彼女も既にいなかったが薄い掛け布団は俺の上にあった。

「そう言えば朝は寒くなかったな。それに居なくなっている」

朝になるとあやかしは消えてなくなると曽祖父から聞かされていたので、やはりあの女の子はあやかしだったのかと少し残念がっていた。

「あの通りすがりの農家のおじさんの話は本当だったんだ、もしかしたら今夜も出るかもしれない、それにしてもまぁまぁ可愛かったな、今夜はお茶とお菓子ぐらいは用意しておくか」と少し痛くなった背中を摩った。

するとガサゴソと台所の方に人の気配を感じた。

「ん・・誰も居ない筈だが。他にもあやかしが居るのか・・」

「平助、ごはんができているわよ、早くこっちに来て」と台所の方から昨日の彼女の声がした。

「何だ、未だ居たのか、心配しなくて良かったな。それに朝になっても消えていないぞ、もしかしてあやかしじゃないのか・・」と驚いて台所に行くと、彼女が朝ごはんを作って待っていた。


「確か昨日調べた時はガスは無かった筈だが・・ガスも無い台所でどうやって作ったのか」と分らなかったが食卓には結構豪華なおかずが並んでいた。

「あやかしは朝になると消えてなくなると曽祖父から聞いていたが、お前は朝になっても消えないのか?」

「はぁ? 失礼ね、私はあやかしじゃないしお前でもないわよ。ちゃんと麻衣と言う名前があるのよ」

「麻衣ちゃんって言のか、あやかしじゃなかったは良かった。それに少し可愛いし・・」

「はぁ? 少し可愛いって酷くない。凄く可愛いの間違いでしょ」

「はいはい、凄く可愛い」

「よしよし」

「それで麻衣ちゃんがこれを全部作ってくれたのか?」

「そうよ、何時も泊めて貰った朝にはお礼として住職に作っていたわよ、でも薪で炊くのは大変なのよ」と彼女は俺にごはんをよそうと、もう一つの茶碗にもよそった。

二人しか居ない筈なのに俺の対面に空席があリ、そこにその茶碗を置いた。


「薪で炊くって?」

「えっ、薪で炊くが分らないの?」

「それは分るぞ。俺も夏のキャンプで飯盒で炊いた事は有るが、それを朝から君がしたと言う事なのか?」

「そうよ、それが・・」

「そうよって、簡単そうに言うけど、結構難しいし下手の者が炊くとご飯が硬くなる」

「でぇ、このご飯はどうなの? 先ずは一口食べてみてよ」

「あぁ・・」と一口食べてみると美味しかった。と言うか家の電気炊飯器のご飯よ数段美味かった。

「もしかしたら君の家はおすし屋さんか?」

「そんな訳無いでしょ。これも経験よ」


「これは納得したが、君の他にもう一つ茶碗が有るけど、あれから君の他に誰か泊まったのか?」

「あぁ、それは・・」

「俺も良く眠っていたし、あれから誰かが来たとは全然気が付かなかったな」

「気付く訳ないわよ、誰も来ていないし」

「えっ、誰も来ていないって、でも茶碗が3つだし誰か居るんだろう?」

「居るけど、気にしなくていいわよ。直ぐに現れるから・・それにしても遅いわね。未だ寝ているのかしら、それとも怖がって起きてこられないのかしら・・」

「何だ、まだ寝ているのか。また可愛い子なら良いけど、でも何処で寝たんだ・・」

「多分貴方の上よ、それに勿論可愛いわよ」

「俺の上だって・・そんなに重くは無かったしな」

「なかなか起きないわね。ほらご飯よ、さっさと起きてきなさい」と彼女が大声で呼ぶと、空席がキラキラすると小さい女の子が急に現れ、そして「おはよう」と呟いた。


俺はその光景に驚き一瞬声を失ったが、唾をごくりと飲み込むと

「この子が本当のあやかしなのか?」と麻衣に尋ねると

「そうよ、それで何か問題でも?」

「否、そうなのか、この子が本物のあやかしなのか?」

「そうよ、この子は座敷わらしと言って、住み着いた家に富をもたらす謂わば神様みたいな者よ、雑に扱うと罰でも当るわよ」

「この子が神様なのか、それはすまなかった。どうか神様、俺に罰を当てないで下さい」と手を合わせてお願いするとその子供はニコニコと笑った。

「この少年は平助と言って住職の曾孫だから怖がらなくてもいいわよ」と麻衣がわらしに説明すると、わらしは笑ってうなずきご飯を食べ始めた。


人間ではないあやかしと一緒に朝ごはんを食べている現実がそこにはあった。

麻衣も気にせずにご飯を食べていた。でも、どうしても俺には朝ごはんが上手く喉に通らなかったので、食事中に悪いと思ったが麻衣に尋ねてみた。

「君はあやかしを見ても全然平気なのか?」

「平気だけど、平助には何か有るの?」

「いや、俺の日常生活にはあやかしは居ないもので、少し慣れなくて・・」

「当たり前でしょ、私の日常にも居ないわよ、このお寺に来た時だけよ」

「そうなのか、このお寺が特殊なんだな」

「そうよ、このお寺が特殊なの、直ぐに平助も慣れるわよ」

「慣れるって・・それに俺の名前を平助ってよく知っているな? 昨日君に話したかな?」

「以前住職が曾孫の話をしていたからよ、それであんたの名前をどうにか思い出したのよ、ありがたく思いなさい」

「それはどうも、でもじいさんが俺の話を君にね・・」


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