出戻り
村に戻れたのは日がだいぶ傾き夕焼けが大地に沈み始めた頃。櫓には行くとき見た者たちとは違う、二人の男が監視を行っていた。先の二人に報告は受けているのだろう、ヴェルドたちが一緒に戻ると少々怪訝そうな顔をされたが、武器の類を所持してないことが分かると思っていたよりすんなりと村に入れた。
一旦家に戻り、荷物を置いてからレイテは急ぎ村長宅へと向かう。村長に呼ばれていると言っていたヴェルドたちも一緒についてくる。
「村長すいません、遅くなりました」
レイテは村長宅に入ると、子供たちとテーブルを囲んでいた村長がこちらに顔を向ける。
「こっちこそ、いつもすまないなレ……!」言いかけて、固まった。レイテの方を見て動きが止まったのだが、正確にはその後ろに立つ人物、ヴェルドらを見て驚いていた。
程なくして、村長は口を開く。
「…………何故あなた方は、まだ村に居られるのですか?」
この言葉にレイテは面を食らう。ヴェルドからは村長に呼ばれていると聞かされていて、だからこそ一緒に帰って来たのだ。しかし村長の様子からしても、そんな話はしていたようには見えない。レイテもヴェルドの方に振り返ってしまう。
「邪魔するぞ」
ヴェルド本人はなに気にすることなく家に上がり込む。そして丁度村長の前の席が空いていたので、そこにドカッと座った。
「あ……いやしかし。あなた方は午後には村を出ていくと。その、これは……」どういうことなのか。そう聞きたかったのだろう。村長は困った様子で説明を求め、視線をレイテに移す。
「え、えと。あたしはヴェルドにいわれて。その……」最後の方は語尾が小さくなってしまう。
どうにも聞かされていた内容と食い違いがあるのは確かなようだ。騙された――と言ったところであろう。
一体なんのつもりだろうかとレイテはヴェルドの背中を睨み付けるが、こっちのことなどまるで気にもとめていない。どうにも悪いことをしてしまった雰囲気で、レイテはなんとも言えない気分になってきた。
「ウム、用があったのでな。また来てやったぞ村長」
いけしゃあしゃと上から目線の言葉を投げかけるヴェルド。随分偉そうで、不遜な態度をしている。一方の村長は淡々としすぎる説明では理解出来てないようで、ますます困惑してしまっているように見える。
「あー…………話が見えないのですが。用と言うのは、私にですか?」
口の端を吊り上げ、ヴェルドは言葉を続ける。
「昼に話したではないか」
「え? いやあれは……」村長はなにか口にしかけて言いよどみ、そして回りを見回した。目を向けると子供やレイテの視線が、二人に釘付けになっているのに気がつく。
「……とにかく、場所を変えた方がよさそうですね。こちらへ」
言って立ち上がると隅の部屋、村長の私室へと促す。ヴェルドはそれに従い、レイテの後ろで控えていたフリックもまたそれに続いて中に入っていく。
「レイテ、すまないがあとは頼む」
「は、はい」
返事を確認して村長は静かに扉を閉じる。一体何の話をするつもりなのだろうか? レイテも気にはなったが、小さい子たちもいる中で盗み聞きなど、最年長の自分がそんなことしては示しがつかない。
――とりあえず、自分の役目は果たさないといけないよね。
「はーい! じゃ夕食の当番は集まって」
かけ声を上げると五人の子供がレイテの前に集まる。その子たちに決まった役割を伝え、あとは出来る限り自分たちで行ってもらう。危なっかしいとこは手助けするけども、出来る範囲は自分たちでやってもらう方針だ。
レイテや他に教えるものがいなくとも、自分たちだけでも出来るようになってもらう必要がもしかしたら今後ないとも言えない。そのことも踏まえてこうやっていた。
これが始まったのはもう一年くらい前のこと。あいつらがこの村を襲いだしてから、親が連れ攫われたり殺されてしまい。身寄りがない子供たちを村長が一手に引き受けると決めたときから続いている。
元々、村長は自分と奥さんの二人で子供たちの面倒を見ていた。
奥さんは肝っ玉が強い人物で厳しく、だけどもそれ以上に優しい人物で、実子がいない二人は村の子供たちを本当に自分たちの子のように接していた。
けど、その心の優しさが仇になってしまう。
村の女性が攫われそうになったときには、度々止めるよう奥さんは頼み込んでいた。だが聞き入れられず。それでも尚止めるのを続けた奥さんは、最後にはあいつらに問答無用で殺されてしまった。
それからは村長はあまり家事が得意ではないこともあって、紆余曲折ありながら、今ではレイテや他の村の住人たちが引き継いで行っている。
このやり方はその奥さんが生前にやっていたやり方を模範しており、奥さんは子供たちに狩りのしかたや火の起こしかた等も伝える気であったと村長から聞かされていた。
当時は何でそんな方法をとっていたのかレイテは疑問に感じていたが、今ならよく理解出来てしまう。こんな村の状況下では何時なにが起こるかわからない。だからいざというとき、最悪一人になっても生きていけるよう。出来うる限りは自分でやって、覚えてもらえるようにしているのだと。
説明を終えると、子供たちは動き始める。
「ん?」
服の袖をクイクイと引っ張られ、そちらに目を向けた。引っ張っていたのはボブカットの女の子リズだ。レイテは膝を曲げるとリズと視線の高さが合う。
リズが何を伝えたいのか、レイテにはわかっていた。「お手伝いしてくれるの?」聞くと、リズは頬を赤くしてコクコクと頷く。少し恥ずかしがり屋なこの子は、自分の当番以外のときでもよくよく手伝ってくれる頑張り屋さんであった。
布巾を手渡して、テーブル拭きをお願いする。リズは背が低く、イスに乗ってテーブル拭きを始め出す。
他の五人も四苦八苦しながらも、少しずつ進めている。これでもだいぶ上手になってきていた。お陰で今ではレイテが手を出さなくても、大体は子供たちだけで行えるようになっていたりする。
どうしても村の者たちの都合が取れないときには、この中の年上のメンバーに任せたりしてしまうこともあった。
皮肉な考え方かもしれないが。あいつらが来る前に比べ、この村の子供は皆自立しているか、しようとしている。
……もちろん、それが子供らしいかと言われれば別問題だけどね。
準備が終わると夕食が食卓に並べられていく。
村長たちはまだ応接室から出てこない。声をかけるのは躊躇われるような気がしたので、先に食事を始めさせてもらうことにした。
本日は収穫があり、皿には薄く切った果実が一枚ずつ乗っけられる。それから商人のギョームから買ったモノやおまけしてもらえたジャムがあるので、いつもより幾分か贅沢な食事が出来る。本来ならその分、他の食料を減らして後日に回した方が良いのかもしれないが、生ものはあまり日持ちさせらないし、他の食材自体も傷みだしている。食べられなくなってしまっては本末転倒だ。なので、食べられる間に食べなくてはいけない。それでも控えめな食事だが、子供たちはの顔からは普段よりも笑顔が見られたことにレイテは少しの満足感を得ていた。
食べ終わり、夕食の後片付けを終わるころには辺りはすっかり暗くなっている。
風呂の支度をして順番に子供たちを入浴させた後、一日の最後として皆を寝かしつけていく――と言っても、朝から畑を手伝っている子や、年下の子の面倒を見ていたりする子たちは疲れて直ぐに寝てしまうし、遊んでいた子たちも同様だ。ここでもレイテ自身がやることは多くない。
皆がベッドに潜り込んだのを確認してから、レイテは一人では大きすぎる広間のテーブルでコップに口をつけていた。中身はただの白湯。この地方では定期的に雨が降ってくれるので、口に入るものとしては唯一、水だけは苦労していない。
もし水にも困っていたならどうなっていたのか?
そんな考えが脳裏をよぎり、背筋に冷たい感触が過ぎていく。
「寒……」
少し身が震えた。夜も更けてきたので、気温が下がってきている。今は春先ではあるものの、ここいら一帯は北風が少々強く。特に今夜は冷え込む。
レイテは火のついた暖炉の前に移動して、床に座り込む。現状ではロウソクや油は貴重品なので、これだけが光源だ。自分自身を抱くように縮こまる。燃える火を見つめていると、今とこれからのことが立て続けに頭に浮かんでくる。
今日商人のギョームさんには渡してしまったのは農具と、それから巻き割り用の手斧だ。農具はまだ予備があるけど手斧は……村長や他の人たちから借してもらおう。食料に関しては交換した分で今は何とか食いつないではいけそうだし。
だがそれでも飽くまでぎりぎりであった。余裕が出来た――なんて楽観視出来る要素など微塵もなかった。
今日も森に行ったりで体は疲れている筈なのに、考えなければいけないことが山積みでまったく眠くなれない。
実は昨夜も剣を振り、湯に浸かった後に寝床に向かったが、なかなか寝付けないでいた。目を閉じると、不安が押し寄せ、眠れないのだ。あいつらが来てから安心して眠れたことなんてあっただろうか? とレイテは思う。
窓の景色に目を向けると、いくつかの住居が見える。ポルク村の住人はそのほぼ全員が農民だ。朝は自分たちの畑や家畜の世話があるので早寝早起きが当たり前で、これくらいの時間に寝静まっているのが以前の光景だった。しかし、今はその住人たちの家からは明かりが漏れているのが見える。
きっと他の住人たちもレイテと同じく、眠れないのだろう。皆未来に不安を抱いているのだ。
そしてそんなときに限って、普段は考えないよう頭の隅に追いやったものが浮かんできてしまう。
「何時まで続くんだろう」口からぽつりと零れ出てしまうと同時に、目に涙が溜まるのを感じた。
顔を伏せ、止まれとレイテは念じる。あたしは泣いてはいけないのだと、強く強く何回も言い聞かせる。それはレイテにとって掛け替えのない、父や母との約束からくる想いから。
あいつらに脅える日々の中、父さんと母さんがあたしによくこう言った。「泣くよりも笑っていなさい。それがあなたの、誰かの生きる力になる」からって。
そして二人に約束した。いつだって笑顔でいられるようになると――けど現実は、今はそれは難しい。だからせめてなにがあっても泣かない、自分の弱い心に負けない自分であろうとした。
「…………父さん…………母さん」
それでも、現状を受け止めるのにはまだレイテは幼すぎる。小さな子の世話をしているといっても、レイテもまだ子供なのだ。一人であることを寂しいと思ってしまうこともある。
溜まる涙に合わせるかのように、震えは徐々に強くなり出す。
「おねえちゃん」
声をかけられ驚いた。後ろを振り返ると、リズが毛布を被ってそこに立っている。
情けないとこを見られてしまったのかもと思い、頭をブンブンと軽く振った。
「――リズどうしたの?」
出来る限り明るい声を出す。表情はどうだろう? 上手く取り繕えたか自分ではよくわからない。
「眠れないの?」
リズはコクリと頷く、それから小さくくしゃみをした。
「ん、こっちおいで」
手招きするとこちらに歩み寄ってくる。リズを自分の足の間に入れ、持っていた毛布を二人で羽織る。こうすると結構暖かい。
後ろから抱き寄せるとリズが震えていることに気がつく、寒いのかとレイテは思ったが違うようだ。
少しして、リズは啜り泣き始めた。リズも同じように、嫌なことや怖いことを思い出し眠れなくなってしまったのかもしれない。
リズは既に両方の親を亡くしている。殺された訳ではない――自殺だった。
あれは初夏を少し過ぎたぐらいの暑い時期。リズの母は元々体が強くなく、病気に侵されがちで余り外には出ない人だった。代わりにといってはおかしな話だが、父親は奥さんの分も働く健康的な人物で、快男児然とした気持ちの良い人であった。
だがその父親もあいつらが村を初めて襲ったとき足を斬られ、その時の後遺症で歩けなくなってしまう。
どちらも動けず畑も見られない中。他の村の人間が手を差し伸べて食料等を分け、生活の手伝いもしていたのだが、それも自分たちの生活もあって限界がある。唯一付きっきりでいられたのはリズだけで、両親はそんなリズを見ていられなかったのだとレイテは思う。
それに食料の問題。動けない自分たちによりも、他に回すべきだと考えたのかもしれない。村長宛てにしたためた手紙をリズに手渡すと、見せに行くようにと両親は語ったそうだ。
その手紙を読み終えた村長は血相を変え、家を飛び出して行ったのを当時既に手伝いにきていたレイテはよく覚えている。村長の形相に驚きながらも、手紙を拾ってレイテもその内容を読んでしまった。
書かれていたのは、リズを頼みたいこと。家具を全て食料に交換して村で分配して欲しいこと。これまでの感謝の言葉。
そして最後のけじめに関して、二人で決めたと――
直ぐにレイテもリズの自宅に向かうが、目に入ってきたのはリズの家の前には佇む村長の姿であった。
どうだったのか聞いても村長は首を横に振るだけだったが、それで理解するには十分だった。
もう終わっていた。全てが。
他の人たちとリズの両親を埋葬した後は遺言通り、一部を残して家具は食料と交換させてもらうことに決まり。今その家は、空き家となってしまっている。
自殺とは言ったが、殆どあいつらに殺されたようなものとレイテや村の住人たちは考えている。生きる活力を奪われた結果なのだから。
そして皮肉でしかないが、手に入れられた食料と結果として口減らしが起こったことで、村全体が助かったとこは決して小さくなかったという現実だけが残されてしまったのだ。
レイテはリズ泣き止むまで頭を撫で、声をかける。大丈夫、大丈夫と。それは半分、自分にも言い聞かせていたものだったことに、後でレイテ自身も気がついた。
村長たちが応接室から出てきたのは、リズが寝息をたて始めた頃だ。
「……レイテ、まだいてくれたのか。すまないね」
村長はレイテを労ってくれたが、その顔は思わしくない。疲れているといった雰囲気。食事も子供に回しているので、大して食べてないのもあるかもしれない。
レイテはリズを抱えてベッドまで運んでから村長宅を出る。玄関先まで、村長は見送りに来てくれた。
「食事は台所においてありますので、ちゃんと食べて下さいね」
「ありがとうレイテ」
村長はレイテの後ろに視線を向けた、その先にはヴェルドとフリックが立っている。
「こんな時間まですまなかったな村長」
「……いえ」村長は静かに首を横に振る。
「では失礼する」言って、ヴェルドは後ろを振り向いて歩いていく。
「夜分遅くまで失礼致しました。それでは村長殿、これにて……」丁寧にお辞儀してから、フリックもその後に続く。
「ちょっと―― それじゃあ村長おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
レイテも一度頭を下げてから、少し駆け足で二人に追うが――
「レイテ!」
村長に呼び止められ、一度振り向く。
「あの二人を頼んだよ」
「あ、はい」
今夜も二人を自宅に止めてほしいということだろうか? とレイテは思う。
「うん、それじゃよろしく頼んだよ。用はそれだけだから、引き留めてすままい」
「……いえ、それではこれで失礼します」
話を終えるとレイテはまた駆け出して二人の背を追う。しかしレイテは去り際の村長のことが少しだけ気になっていた。
村長、なんだか笑っていたような気がしたけど……気のせいかな?
暗がりだったから、正確にそうだったとは言えない。けど最後に見た村長の顔は笑顔だったような気がした。
レイテはそんなことを思いながら二人に追いつく。が、その行先は村の中心から少し離れていっている。
「ねえ、なんであたしを騙したのよ?」
隣を歩きながら率直に今回の件を聞いてみる。
「なに、簡単なことだ。村長に用があったからな」
ケロッと悪気もなく話すヴェルド。その普段と変わり映えしない顔に多少の苛立ちを覚えてしまう。
「じゃあその要件ってなんだったのよ」
くだらない理由なら、一発殴ってやろうかとも考えていたのだが、ヴェルドの答えにレイテは耳を疑った。
「ひと時ではあるが、この村の住人にしてくれと言っただけだ」
レイテから直接村の惨状を話してはいない。でも、村に異常が起きていることがわからない訳ではないだろう。そんな村に、一時ではあるが残るとヴェルドは言ったのだ。
「……どうしてそんなこと」
今まで村に訪れた部外者達は村のことを心配してくれたりもしたが、残るといった酔狂なことを口走った者はいなかった。
「なに、約束してしまったからな」
「約束?」
内容を聞き出そうとしたところ、ヴェルドは歩みを止める。そこは整備の進められていない。自然のままが残ったちょっとした高台になっており、村を一望することができた。
ヴェルドは何も言わず、腕を組んで村の様子を見ていて。フリックも静かに、数歩下がった位置に佇んでいる。
レイテも横ヴェルドの横に立って村を見る。村長宅の窓からも見えていたが、こうやって外から見ると多くの家の明りが点いていることが余計にわかってしまう。
「村の住人になるってさ、簡単に言うけど。もう村の状態がどうなっているかなんて、わかっているんでしょ? なんでそんな――」
なんでそんな先が見えない村に残ろうとするの?
言いかけてレイテは口を噤んで下を向く。それ以上は言ってはいけない。言ったら歯止めがきかなくなってしまいそうだ。
それにもしかして、まだ村のことに気づいてないのだろうか? とも思ったが、流石にそんなことはなかった。
「村のことは知っている。村長に今日村を出る前に話は聞いた――まぁ、薄々わかってはいたがな」
「なら……なんで?」
それなら尚更村に残る理由はこの二人にはない筈である。でもヴェルドの声には迷いが一切ない。
「あの悪魔のような小僧に頼まれてな」
唐突にヴェルドが語りだす。これは先の約束のことに関してだろうか。
「悪魔って……」
レイテは顔を上げてヴェルドを見る。ヴェルドは自分の額に指差し「我が額に【う魔王】などと書き殴った、あの悪辣な小僧だ」と話す。
その小僧とは、本日何度かヴェルドからマントを奪っていたギリのことだろう。昼に戻った時に馬にされていて、そのあとレイテは直ぐに食事の準備に入ってしまったので過程は知らないが、きっとその間に話されたのだろう。
「あの小僧、言うに事欠いて。マントを返して欲しければ少しでも村の皆を助けてくれと言いおったは!」
憎々しく語るヴェルドだが。その表情に曇りは一切なく、ちょっとだけ嬉し気にしているようにレイテには映る。
「――はは、それであんたたちは残ることにしたって訳? バカみたい」
「ふん! このマントは大切なものだ。条件の一つや二つくらいは飲んでやるは」
この時レイテはいつぶり以来か、ほんの少し心から笑えた気がして、胸の痞えがちょっとだけ軽くなった気がした。
まだこの二人と会ってたった二日しか経っていないが、少なくとも悪人ではないことくらいレイテにもわかる。本当にマントのためだけで村に残る気になったのかはわからないけども、この二人なら信用してもいいのではいかと思っていた。
「それでさ、村長はなんだって?」
「うむ、そこは快く快諾してくれたぞ」
レイテは部屋から出てきた時の、あの疲れた表情の村長を思い出し絶対に嘘だなと思う。
「フッ、これぞ我がカリスマの成せる業よ!」
自信満々に身振りもつけて返答するヴェルド。もしかしたらヴェルドの頭の中では、事実は置いといてそうなっているのかもしれないとレイテは思ってしまう。
でも、あの村長の最後に見た顔はやっぱり笑顔だった気がして、ヴェルドが全くもって嘘を言っているようにも感じなかった。
「はいはい。それで、これからあんたたちはどうするの?」
レイテの問いに、ヴェルドはもう一度村に目を向けて「さて、まずはどうするかな」と呟くのだった。




