アライブ!
…気が付いたら断頭台に立っていた。
隣で、ひげのおじさんが何か言っている。
それによると、私は王子の婚約者にあるまじき行いをしたらしい。
記憶はあるが、なんだかテレビ画面を見ているような感じで実感がない。
それに、どうもはめられたっぽいし。
王子は、もともと私を疎んでいたようで、別の人と一緒になりたかったみたい。
その人と仲良くしていることについて、それとなく注意していたら、そのことを王子に利用されてこういう状況になっていた。
正直、どう考えても処刑されるほどのことをしたと思えないし、隣のおじさんの話してることもけっこうループしてるしで、だんだんつらくなってきていた私は、徐々に前世の最後の思い出、アニソンライブのことを思い出し、現実逃避を始めていた。
「ああ~○○SAさんの生歌よかったなぁ~。○○たそ~やっぱ最高!○○ワは青春だよな。」みたいなことを考えていたら、なんだか髭のおじさんがこっちを向いて話しかけていることに気が付いた。
最後に思い残すことや、話したいことはあるか的なニュアンス。
おじさんがこっちを見る目はなんだか気遣わしげで、この人以外にいい人だなと思いつつ、私は「安西先生!ライブを・・・したいです。」と口にしていた。
今考えてもなんでそんなことを言ったのかはわからないけど、たぶんアニソンライブのことを直前まで考えていたからだと思う。
その瞬間、脳裏に「その願い、聞き届けましょう。」と声が響き、周りが光で包まれた。
まぶしすぎて、閉じていた目を開けると、そこは前世の最後の思い出の場所、ライブ会場だった。
服装はひらっひらのアイドルみたいな衣装になっていて、いつの間にかマイクを握っており、処刑を見に来ていた血の気の多い人たちは、アイドル親衛隊のはっぴ的なものを着て、手にペンライトを握った状態になり、一様に困惑していた。
なに・・これ・・・?と思いながら周りを見渡すと、ひげのおじさんがカンペ的なものを手にもってやっぱり困惑している。
カンペには「今日は私の処刑に来てくれてどうもありがとう~!最後に、私の気持ち、みんなに届けます!」なんて超シュールなことが書かれていた。
おいだれだこのカンペ考えたやつ!とおもいながら、こうなりゃやけだ!と思った私は、カンペ通りマイクで話した。
すると、カンペの文字がかわって、「5秒後に、始まります・・・○○ー・レ○リュー○ョン!」と表示された。
○○たその曲じゃねぇか!これは本気出すしかねぇ!と謎のテンションに襲われた私は、曲が始まると同時に○○たその記憶にあるかわいさを精一杯表現しながら、「○○○~キミに~○たい~その○○い○○の○○~」と高らかに歌い始めた。
ちゃっちゃっちゃちゃ、ちゃっちゃちゃちゃ~ちゃっちゃっちゃちゃちゃちゃとイントロが流れ、困惑している観衆たちがその顔のままペンライトを振り始め、「っへい!っへい!」と掛け声を始めた。
困惑している顔を見ると、どうも勝手に動いているっぽい。
そんなことが全く気にならないほどテンションが上がりまくっていた私は、超笑顔で歌い続けた。
困惑したままコールしていた観衆も、終盤になると雰囲気にのまれたのか、超楽しそうにペンライトを振り回し、「○○きゅー!」とか言い出していた。
謎の一体感に包まれていた私と観客たち。
歌い終わってカンペを見るとまた更新されており、「さみしいですが、そろそろ処刑のお時間です。」と書かれている。そのままマイクで話すと、予想通り、観客たちから「えぇ~?」のコール。
結局、その後、○&○リ○イ○ルとか、○○サー○ュ○ーションとか、3時間ぐらい歌い続けた。
ライブが終わって、元の場所に戻ったら、なぜか握手会が始まって、処刑はうやむやになってしまった。
この日から、世界中で「ライブ」というものをする侯爵令嬢が現れるようになったとかならなかったとか。
ノリで書いてしまった・・・