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神託者について

 いい機会なので神託者について、ユノハにあれこれ(たず)ねた。

 ここにまとめておく。


▽質問①『他の神託者に会ったことはあるか』

 「ないことはない」との回答。

 ユノハもだいぶ色んな大陸、色んな街に行ったことがあるようで、その道中で他の神託者に遭遇(そうぐう)することも二度三度、といった具合らしい。

 お互いに翼を見せびらかして歩いているわけでもなかろうに、どうやって発見し合うのかと思ったら。神託者は神威(しんい)に鼻が()くものだから、同じ街に滞在すれば何となく(めぐ)()うのだとか。

 ……神威の、匂い? オレそれ、分かんないかも。

 あと、東方の大陸には、神託者が(ぬし)をしている街があるらしい。神の権能に、街主(まちぬし)の統治力まで重ねてるなんて、どんな化け物だよと思ったが。「君が言うな」と言われた。確かに。


▽質問②『どうやって神託者になったのか』

 オレの場合はこの世界に渡ってくる()()けが、そもそもキアシアの行った神召喚に巻き込まれたからで、そのとき出会った神様と契約したからだ。

 ユノハは故郷に伝来する試練をクリアしたから、だそうである。

 回路神が用意した、挑戦者を何千人と食ってきた迷宮に挑み、知恵と勇気と才覚を散々(しめ)したことで、最深部で神本人と対面するに(いた)ったのだと。

 つまりオレのように、させたい仕事があって神託者にされたのではなく。

 ユノハは報酬として神託者にされたということになる。

 そういうパターンもあるのか。

 あとはいずれ神となる者が、前段階として神託者となり、修行しているパターン。実際に何柱かの神は、そうして神格を得たのだとか。

 降臨した神が、気まぐれに女と交わり、子どもが生まれたパターン。その子は生まれながらに神託者なのだとか。……神様がそんな不埒(ふらち)をするもんかね? まぁする奴はするのか。


▽質問③『権能の扱いはどう(みが)いているか』

 オレは神様から「もっと権能を自在にしろ」と申し付けられているので、これ重要。

 が、ユノハだとあんまり参考にならないな……。

 というのもコイツ、オレとは違って実に普段使い向きの権能で、言われなくとも四六時中(しろくじちゅう)神威を纏っているからだ。

 ただ指標(しひょう)は一つ教えてくれて、羽や輪を出さなくても神威が発せられるようになったら、仕手(して)としてある程度の水準に届いていると見ていいらしい。が、最初から羽のない状態でウンウン(うな)っても意味はないから、地道に練習しろ、だと。

 最近やってる練習法を言ってみたら、それで正しいから続けろとお墨付(すみつ)き。

 なお、権能を『練習』するって神託者もそういないのだそうだ。

 何故なら他の皆はモデルにするべき神様がもっとはっきりしていて、その逸話・神話をモチーフに権能を発動すればいいから。聖書や文献(ぶんけん)辿(たど)ればそれで答えが書いてあってって具合。(うらや)ましい。

 だがユノハに言わせると、オレこそ贅沢(ぜいたく)なんだと。模索する楽しみなんて、他の神託者じゃ持ちえないから。そういうもんかね。隣の芝は、ってやつか。


▽質問④『シスター姿の神託者を知っているか』

 あるいはセピア色の羽の神様を。

 そういう神託者と出会い、ちょっと因縁(いんねん)が付いたと伝えると。ユノハは怪訝(けげん)そうにしていた。そんな羽、聞いたこともないそうだ。

 魔術師のようでもあり、血の一滴(いってき)で街一つを異界化させた……と言ったらユノハは、今度は半笑いを浮かべた。

「君は妙なものと関わる天才か?」だと。そういうお前もその妙なものの何号かだよ。

 付いた因縁については(あきら)めるしかないとも言われた。

 神託者と神託者が一度(ほこ)(まじ)えたら、いずれ必ず決着は付けなくてはならないのだそうだ。これは絶対。後に当人たちが望まなくなったとも、運命がそう(さだ)まってしまうのだと。それは呪いのように互いに付きまとう……。

「僕と君もね」とか抜かしやがった。コイツそこまで分かっててあの時オレに絡んできたのかよ……いい迷惑だ。

「今でもいいんだよ?」だとさ。ふざけやがって。


 主なのはそんなところ。

 後は神託者豆知識だ。

 気に入った相手に翼から羽根を一枚(おく)ると、幸福にしてやれるとか。

 他の神の教会で権能を使うと、いつもより出力が弱まるだとか。

 これから行くレドラムダ大陸の女帝も、初代は神託者であり、当代も何らかの力を受け継いでいるとか。

 

 まぁ大変勉強になった。

 一応ユノハには感謝しておく。ぶん殴ってやりたい内容も含まれていたけど。一応。


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