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急 ≪分岐≫

 ()()すとすぐに、()てつく海風が厳しい。


「うぅぅぅぅ……寒いぃぃぃ……」


 船室もとっくに氷室(ひむろ)のようだ。

 風こそ直接は吹き込まないにしても、物も少なくだだっ広い空間はすぐに冷え切り、その隅でキアシアは毛布を頭から被って丸まって、ガタガタと震えていた。


 船に乗り込む前に、船守(ふなもり)からあらかじめ言われてはいた。

 この北海には『熱を食う魚』というのが群生していて、海上は岸からは想像もつかないほど寒いのだと。

 なので陸歩たち、とくにキアシアはそれなりに身支度をしてから出港したのだが。


「ささささささぶぃいいいぃいぃ……」


 見かねた陸歩が、やれやれと首を振る。


「イグナ。ちょっとキアシア助けてやって」


(かしこ)まりました。――キアシアさん、失礼いたします」


 イグナが毛布に(もぐ)()み、キアシアと共に(くる)まる。

 キアシアは地獄に仏とばかりに彼女を抱きしめて、この世で一番贅沢(ぜいたく)な湯たんぽを堪能(たんのう)していた。


「はぁ……生き返るわ……イグナ、あったかい。しかもモチモチ」


「キアシアさん。そこは。くすぐったいです」


 そもそもこの船は客船ではなく運搬用であり、また荷物もこれから受け取りに向かっているところだ。そのためほとんど空っぽの状態。

 さらにはシーズンから外れているとかで、乗り合わせる客は他にいない。

 船室は貸し切り状態で、居るのは陸歩たち三人と、あとはもう一人。


「ささささささぶぃいいいぃいぃ……」


 毛布を被った(かたまり)が、もう一人と言うべきか、もう一個と言うべきか。

 ユノハである。


 陸歩は何度目か分からないため息を吐いた。

 結局、口車に乗せられた形。

 いやまだ旅に連れていくとは決めていない。とりあえず船に同乗しただけだ。ノイバウン大陸まではしばらく時間があるし、その間に改めてユノハを見極め、不都合あるなら下船と同時に追い出すつもりだ。


「うぅぅぅぅぅぅ……い、イグナちゃん。そっちに余裕が出来たらでいいんだけどさ。僕のほうも暖めてくれないかなぁ?」


「拒否します」


「ぐぅう、つれない。……じゃあもうリクホくんでいいや、火くれない?」


「おーおー、全焼(ぜんしょう)させてやっから避けるなよ」


「なんだい誰も彼も」


 すねたようにユノハは丸まり直すが、良い気味以上の感想は出てこない。

 かく言う陸歩はわずかに厚着をしているものの大した衣替(ころもが)えはなく、炎熱を自在にする彼はそれで充分でいる。


 さて。陸歩は思案する。ユノハにはあれこれ、真意を問いただす必要がある。

 のだが、どう()いたものか。

 『正しい手順』がどうの、というは詳細を聞き出すべきだ。

 ユノハがいない場合、自分たちはどう行き詰るのかも。

 だがこの、見た目こそ妖精のようでありながら、その腹の内は妖怪そのものである男が、素直に答えるだろうか。


「…………」


 (もく)して考える陸歩の手は、知らずに鈴剣を(もてあそ)んでいた。


「――剣なんか(たずさ)えるようになったんだね」


「ん?」


 毛布でミノムシ状態だったユノハが、顔だけを出してニンマリとしている。


「お仕着(しき)せでもなく、拾い物でもない、自前の強さを求め始めたってことなのかな。意外と感心な奴だね、リクホくん」


「……うっせぇ、ぶった斬るぞ」


「あっはっはっ! 照れちゃって!」


「……」


 ムッとしたので陸歩は(さや)の先で突っついた。

 上手く脇腹へ入ったのか、ユノハは「うひひ」と身体を(よじ)っている。

 陸歩は何だが、あれこれ悩んでいた自分が馬鹿らしくなってきた。

 ユノハの態度は一から十まで悪ガキのそれであり、実は単にこちらが嫌がるのを楽しんでいるだけのことで、腹芸とはとんと無縁なんじゃなかろうか。


「……なぁユノハよ。ちゃんと聞きたいんだけど」


「なんだい」


「オレはお前をこのまま連れていくと、どんな良いことがあるわけ? 連れていかないと、どんなマズいことがあんだよ? その辺りをはっきり教えてもらえないと」


「リクホくん、違うよ。違うんだよ。メリット・デメリットの話なんか最初っからしてないんだ」


「あぁ?」


 姿勢を正したユノハは毛布から頭を出し、さっきまでのからかう笑みとはまた別の微笑(ほほえ)みを浮かべる。

 それはあたかも宗教画やステンドグラスの登場人物じみた表情であり、陸歩もつられて背筋に力を込めていた。


「ここで僕を旅に加えるのが、『正しい手順』なんだ。僕も交えて四人でノイバウン大陸に行くのがね。それが正しいの。それ以外は間違いなんだ」


 回路神セキュアは、道理(どうり)と筋道を(つかさど)る神様だ。

 その権能はユノハがくり返す通り、正当な手順を知り、示し、行く者を導く。

 従えばその道は福音に繋がる。

 背けばどうなるかは想像に難くない。

 そしてその神威を下賜(かし)されたユノハの言葉は、字面以上の説得力を持って陸歩へと(せま)ってはくるが。


「……その、正しい手順を取った場合、オレは目的の物を手に入れられるのか?」


「知らない。僕は未来を()ているわけじゃないもの」


「……」


「そもそも君の求めてるモノとやらが手順として正しいのか、僕の知ったこっちゃないしね」


「…………。正しくない手順を取ったら、オレはどうなる?」


「知らない。僕は正しい手順が視えるだけだし。道を外れた場合なんて興味もないよ。それで今まで困ったことないし」


「………………」


 いかにも要領(ようりょう)を得ない。


「……正しい手順ってのを取ってたら、どこに行き着くんだ? 何にとっての『正しさ』なんだ?」


「知らない。もう一回言う? 僕は未来を視ているわけじゃないの。

 何にとってって、そりゃあ僕や君にとってさ。それはイコールで世界にとってでもある。

 『正しい』がどう正しいのかって議論は無意味だよ。それはあらかじめ定まっていることであって、僕らの知恵や感覚で変わるものじゃないんだから」


「……お前と話してると頭痛がしてくる」


「あそ。じゃあ気付(きつけ)になる話をしてあげる。

 ――の前に、イグナちゃん」


「なんでしょうか」


 水を向けられ、イグナの返す視線は冷たい。

 どうも彼女がユノハへ抱く感情は、陸歩よりもよっぽど厳しいようで、その態度はあからさまに固かった。


「僕はねぇ、君が本当に好きなんだよ? 綺麗だし、賢いし、強いし、本心から君が欲しいんだ」


「はぁ。拒否しますが」


「うん。まぁそれとは別にして。僕がかつてイグナちゃんを欲しがってリクホくんと戦ったのは、それが『正しい手順』だったからだ」


「っ、は?」


 声を上げたのは陸歩だ。話の筋が読めない。

 一体どこから、いつの話を、どの角度からしているのか。

 ユノハは肩を(すく)めている。


「勘違いしないでほしいのは、『正しい手順』っていうのは理由というか()()けに過ぎなくて、僕は本当にイグナちゃんのことが本心から、」


「うるっせぇ何遍(なんべん)も言うんじゃねぇよ! そんなとこで誠実アピってくんな鬱陶(うっとう)しい! いいから話を続けろイグナは絶対にやらねぇからな指一本触れさせねぇぞ!!」


「はいはい。

 ――だからね? あの時ああして、僕と君たちは知り合うのが『正しい手順』だったんだ。重ねて言うなら、敵対、という形が最も望ましかった。だから僕はそうした。

 それから必要な間を置いて、再会することが『正しい手順』だった。つまり、今この状況ね」


「…………」


「リクホくん。君は僕と戦ったことで、必要な力を意識したんじゃないのかい?

 その力を求めるにあたり、出会った人たちがいるんじゃないのかい?

 出会った人たちが(かて)となって、君の旅は続いてきたんじゃないのかい?」


 陸歩は御伽噺(おとぎばなし)を強く連想する。

 自分は斉天大聖(せいてんたいせい)。ここは釈迦(しゃか)(てのひら)の上。

 そして釈迦は今、目の前で、毛布に(くる)まりニヤケ面を(さら)している……。

 そんな始めから道を(ぎょ)されていたのか……。いやそもそも、一体どこが『手順』の始めだったのか。


「ユノハ。お前は、運命の話をしているのか」


「リクホくん。違うよ。そんな不確かなものは話のどこにも登場していない」


「仮に今ここで、お前を斬ったらどうなる」


「出来ないんじゃないかな。それは正しい手順ではないから」


 ばさりと、ユノハは毛布を脱いで立ち上がった。

 そして瞳の奥に、神に従う者とは到底思えないほど、剣呑(けんのん)悪辣(あくらつ)な快楽の色を(とも)している。


「でも、望むなら、やってごらん。手順を乱す者を(ちゅう)するのはセキュアの信徒の、最大の愉しみだからね」


「――――」


 束の間、陸歩はこの青年の姿した化生(けしょう)を本当に斬るべきか、ひどく迷った。

 本当に斬れるのか、ひどく心を乱した。

 ユノハという男、その背後には、巨大な『流れ』のようなものが息づいている……そんな感覚がして。たとえ斬りかかったとしてもそれは激流に小枝(こえだ)を突っ込むようなものなのではないか。そんな感覚が、まざまざとして。


 ふ、とユノハは唇を曲げた。

 陸歩は驚いた。彼が浮かべたその表情が、一転してとても人間じみていたからだ。

 あたかも苦笑。申し訳なさそう、済まなそうでもある。

 この男がそんな顔をすることがあるなんて、陸歩にはとても思わなくて、意味も分からず、何が何やら……。


 かと思えばユノハは一瞬で不快感をあらわにした。

 そして大股(おおまた)で船室の入り口まで向かい、ドアの小窓から用心深く外を(うかが)う。


「おい? ユノハ?」


「……。面白くないね。当事者以外が曲げようとするのは、ちっとも面白くない」


「はぁ?」


 同時にイグナも耳をぴんと(そばだ)てている。

 彼女の豊かなセンサーは、今まさに船に横付けされた新手の船の存在を感知し、その大よその規模まで見通(みとお)していた。


「リクホ様。何者かが、船へ乗り込んできます」


「何者かって……まさか海賊?」


「分かりませんが。完全武装した者が、十、二十……」


 しっ、とユノハが唇に指を当てた。

 彼は扉の横の壁にぴったりと背中を付けていて、侵入者を待つ構えだ。

 ドアの窓には人影が揺れて、まさに、今、


「――ふっ」


 賊が踏み込むと同時、その首根をユノハは捕まえた。

 相手は全身甲冑にフルフェイスの(かぶと)まで完備した重武装。

 だがユノハは、その彫刻のように(ととの)った容貌(ようぼう)からは思いつかないほど乱暴な腕力を発揮し、(つか)んだ頭部をそのまま床へ叩きつけた。


「がっ!」


 侵入者は短く悲鳴を漏らす。

 頭に直接のダメージは少なかろうが、兜の中を跳ね回る衝撃は意識を()()るには十分すぎるものだ。

 ユノハはぐったりと伸びた相手にはそれ以上の関心も持たず捨て置き、船室の外へ出てさらに凶暴な気配を(ただよ)わせている。


「なんだか分かんねぇけど、イグナ、オレたちも外に出るぞ。キアはここにいろ!」


「了解しました」

「う、うん! 気を付けて」


 陸歩たちが追うと。

 ほんのわずか数秒の()だったというのに、既にユノハは新たに四人を()いつくばらせていた。


 甲板には同じような甲冑がまだ何人も残っていて、しかしその誰もがユノハに及び腰となっている。


「ま、待て! 我々は貴殿らに危害を加えるつもりは、」


 そんなことを言っている者もいるが。

 ユノハはとっくに理性を飛ばしている。一体何がそこまで彼の逆鱗に触れたのか。


「何なんだ、お前らは……何なんだ? 面白くもない、路傍(ろぼう)の石くれが、道に入り込んでこの僕の足を(すく)おうと言うのかい? 何なんだ、面白くない、何なんだ……」


 殺気すら帯びてユノハが(つぶや)く。


「何なんだよ……お前らぁあぁ!」


 そして怒号と共に、羽を拡げた。

 カゲロウを思わせる、薄く()(とお)る緑の翼。

 それはすなわち回路神セキュアに(ゆかり)の証であり、目の当たりにしたものは神威に目を(くら)ませる。


 ユノハの(かか)げた左手の上に、光輪が現れる。

 輪の中心の虚無から、ぽとりと落とされたものがあった。

 それは絶えず色をグラデーションさせる一抱(ひとかか)えほどの球体で、ユノハの掌の上をフヨフヨと浮遊し、鮮やかに回転している。


 陸歩は声を上げそうになった。

 あの神球こそがユノハ最大の武装であり、その威力は身に染みているからだ。それを解放するなどと、賊をこの場で処刑してしまうつもりなのか。


「ユノハ、ちょっと待て、」


 聞こえていないのか。

 神球がじゃらりと()いた。かと思えば球は無数の輪に(ほつ)れる。

 それらがユノハの手を飛び立ち、甲冑の一団の首へ、次々と(から)まっていった。


「が、」

「ぐぅ!」

「ぅえっ!」


 そしてユノハの人差(ひとさ)(ゆび)に指揮されるように、じりじりと、宙吊りにし始めるのだ。


「何なんだ、お前ら、何なんだ、面白くもない、面白くない、お前ら、何なんだ……」


「おい――ユノハぁ!」


 抜刀した鈴剣。

 その冷たい切っ先を喉元に突き付けられて、ユノハはようやく陸歩を見た。


「おいユノハ。()めろ。一旦(いったん)止めろ」


「…………」


 ユノハの瞳はあからさまに不機嫌を映しており、いやそれどころではない。

 美貌を(ゆが)めて(たた)える色は、侮蔑(ぶべつ)、苛立ち、憎悪、およそ思いつく限り全ての負の感情で、氷点下を下回る外気よりもなお冷たい。

 (あるじ)の内心を代弁するように例の輪が、陸歩や、それからイグナの周りをブンブンと飛び、何か拍子があれば甲冑たちと同じように絞首刑にしそうな剣幕だ。


「……邪魔すんなよ、リクホくん」


「いいから、一回止めろ。本当に死んじまうぞ、その人ら」


(はな)からそのつもりなんだけど」


「まだ敵かどうかも分かんないだろうが」


 はっ、とユノハはせせら笑う。


「こいつらの相手をしたら『正しい手順』が曲がるよ、リクホくん?

 僕らはノイバウン大陸へ行くんだ。四人でね。連中はそれを邪魔しにきたのさ」


「あぁ? なんで?」


「知るかよ。興味もない」


 ユノハは指にさらに力を込めた。

 ついに甲冑たちの爪先(つまさき)が床を離れ、苦しそうに足をバタつかせ始める。

 あまりの蛮行に、陸歩は歯を()()す。


「おい! 止めろって言ってんだろうが!」


()めないって言ってるんだ。

 ……それとも、君が()めるかい? 僕を斬れるの? 君ごときの腕で」


「――試してみるかよ」


「…………」


「…………」


 やらなくては駄目か。

 陸歩が自らと、ユノハの呼吸を測り、斬りかかるタイミングを見定め始めたとき。

 唐突に甲冑たちが降ろされる。


「は、っはぁ!」

「ごっほ、ごっ、」

「ぅぅ……」


 ユノハの心変わりかと思えば。当の本人は忌忌(いまいま)しげに目を(すが)め、虫歯でも(こら)えるように口元を押さえていた。

 四方に散っていた輪が神球の形状に戻ると、彼の背からはカゲロウの羽が消え、()いで光輪が消え、球もまた空気に()けるように消えていく。


「……くっそ、最悪だ」


「ユノハ?」


「手順が変わったよ、リクホくん。あぁ、くそ。もう僕は知らないからな。手順が変わった、最善の手順は消えてしまった、次善(じぜん)の手順が()()がった、手順が変わった……」


 ブツクサと(こぼ)しながら、ユノハは船室へと戻っていってしまう。

 何をするのかと思えば、そのままさっきまで使っていた毛布に(くる)まり直し、なんと眠るつもりのようだ。


 陸歩は、いい加減に我慢の限界で、つい叫んでしまう。


「――だぁあっ! もう!」


「リクホ様」


「これだから嫌なんだよ! 神懸(かみが)かってる奴ぁ! どいつもこいつも(なぞ)かけばっかよぉ!!」


「心中お察しいたします」


 船室の奥から「あんたも神懸(かみが)かりでしょうが……」というキアシアの声がするが。

 それはそれとして。

 陸歩は乱した平静を、背中(さす)るイグナの掌で取り戻してく。


「……ありがと、イグナ。落ち着いた」


「いえ。今のは(いた)(かた)ないかと」


「……そんでぇ?」


 鈴剣はまだ抜刀したままだ。

 警戒も(とが)らせたまま陸歩は、甲板でぜいぜいと満身創痍(まんしんそうい)でいる甲冑の一団に誰何(すいか)した。


「あんた方は、どこの誰で何が目的? 悪いんだけど金目のものは、」


「――じゅ、ジュンナイ・リクホ殿とお見受けするっ!」


「……あん?」


 思いがけず名を呼ばれ、陸歩は面食らった。

 イグナと顔を見合わせていると。

 甲冑たちは次々に兜を脱ぎ、正座姿勢に直り、あまつさえ頭を深々と下げて来るではないか。


「赤き髪の乙女を従え、鈴の剣を帯びし英雄! 貴殿に相違あるまい!

 我々はレドラムダ大陸より、さる高貴な方に(つか)わされて(まい)った! ジュンナイ・リクホ殿! どうか我らにご同行頂きたい!」


「……はぁ?」


 色々意味が分からない。

 なんで名前を知っているのかとか。

 ノイバウンへ行こうとしているところへ、何故レドラムダからの使者が現れるのかとか。

 さる高貴な方とは一体誰ぞやとか。

 そもそも誰が英雄だ、とか。


 しかしそれ以上は遣いの者たちは、ぜひ来てくれの一点張りで、(がん)として(ゆず)らない。


「こりゃあ……」


 厄介なことになったのやも。


「――言っておくけどねぇ、リクホくん」


 ビクリとする。

 振り返ると船室のドアからユノハが顔だけを出して、実に(うら)めしそうに続けた。


「もう『正しい手順』は変わっちゃったんだからね。ノイバウン行きはなし。取り止め。今はそいつらと一緒にレドラムダへ行くのが正しいの。

 ……もし嫌だぁ、なんて、さらに勝手言ったら君ぃ」


 ぶっ殺すからね……それは口の動きだけだったが。


「……頭が痛いなぁ、イグナ」


「お(いたわ)しや、リクホ様」


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