嗜好品について
適切な量の水を飲む。
適切な量と種類の栄養を摂る。
これだけ厳守すれば、肉体には事も無し。
なんて訳には、いかないよな。
そりゃあ生きるにはそれで十分だとしても、人間やっぱり、楽しみも摂取したい。
嗜好品こそは心の燃料。
あまり多くを嗜み過ぎれば身を滅ぼすだろうけど、度を越さなければ長寿の秘訣だ。
ざっくりジャンルで分ければ、甘味・カフェイン・アルコール・ニコチン、こんなとこかな?
菓子類はよく口にする。
何せオレたちは、街にいるときはともかく、それ以外ではほとんど歩き詰めだ。カロリーは積極的に補給しないと。
おやつの時間は、わりと実務的な理由から毎日取っている。
糖分は疲労によく効く薬だし。
野営の時でも、旅の荷物に砂糖・蜂蜜は必ず入っていて、これと何らかの材料があればキアシアが絶品スイーツにしてくれる。
焼き菓子は保存食代わりになることも。
家畜の腸から作った水筒に、牛乳を入れておくと、しばらく後でチーズになってるんだぜ。だから一袋か二袋には、一緒に砂糖も入れといて、これが旅の間のとっておき。
飴、ガム、チョコ、ビスケット、砂糖漬け果物なんかの一口菓子は、わりと荷物の中でも優先度が高い。食べるのはもちろん、道中で出会った誰かと物々交換になったりね。僻地なら貨幣よりもよっぽど価値がある。
オレたちの枕には小豆が詰められていて、いよいよとなったときの非常食だ。まぁおかげさまでそこまでの危機は今のところないけど、枕を買い替えようってときには中身の小豆を砂糖で煮詰めてお餅を入れて。お汁粉って天にも昇る気分。
カフェイン。
お茶は食事や休憩のたびに飲む。
街にいる間に、茶葉や豆を薬研――時代劇とかで薬を挽いてるローラーな――で煎じておいて、必要なときにお湯に溶かして飲むんだ。
オレたちのティータイムの大半がこの粉末。ティーバッグも持ち歩いてはいるけど……缶一個分だけだな。 それ以上はちょっと贅沢し過ぎ。かさ張るからね。
ドリップコーヒーも街にいる間にしか飲めない。普段はキアシアに炒ってもらったコーヒー豆をポリポリやって誤魔化してる。
ちょっと変わった摂取方法で、粉末茶葉を香炉で焚くってのがある。テントの中で集まって、皆でじっくり吸引するわけ。こっちの世界だと結構メジャーらしいんだけど、いやぁ初めて聞いた。カフェイン摂れてるのかコレ? 気持ちは落ち着くけどさ。
噛み煙草ならぬ噛み茶ってのが、ある街の特産であったから、一回試してみた。……うん、苦いっつーか、えぐい。途中途中で水や牛乳を含んで、口内で薄めるんだそうだが、それでも気になるくらい濃い。常用してたらすぐ中毒になりそう。
また別な街の特産で、ヒョウタン型の果実があった。天日干しにされていて、お尻の部分に穴が一つあけてある。口からお湯を注ぐと、果肉由来の良質なカフェイン飲料が抽出される仕組み。こちらはなかなか甘くて香り高くて美味で、鍵を使ってちょくちょく仕入れている。使い終わったのは煮て食べられるし。
アルコールについてはオレから言えることはあんまりない。
イグナは大好きだろうに、旅の途中にはほとんど飲まない。泥酔もしないんだし、遠慮はいらないのに。
アインはもうちょっと遠慮したほうがいいと思う。とはいえ荷物に入る瓶の数には限界があるから、際限なくってわけでもないけど。
持ち歩いてる量は、四人全員で合わせて数本かな? これも菓子類と同じか、それ以上に取引の切り札になることがあるので、飲まないオレもリュックに入れてる。
料理酒はそれとは別カウント。
記念日や祝日にはキアシアも飲むけど。……こいつ一人のときには飲ませられないなぁ。数口で頬が上気して目が潤んで、誰とも構わずしな垂れかかって。いつもの慎重さも警戒心もなくなっちゃうんだから。酔っぱらった勢いの冗談のつもりか知らんけど、オレの寝袋に押しかけてきて、冗談じゃなかったわ。
ニコチン。
これこそコメントはない。オレたちの中で喫煙者はいないから。
立ち寄った街のカフェで、アインが水煙草を注文したことがあったくらいか。
煙草こそどこに行っても通貨の代わりになり、酒瓶よりさらに軽量、乾燥してるから日持ちの面でも無敵。持ってるだけでも損はない……とは、分かってるんだけどね。
どうもオレ、煙草の匂いが得意じゃなくって。
あぁでも、葉巻はいい香りしたなぁ。吸ってみるまではいかないけど。
その他の嗜好品といえば。
……大麻とかぁ?
街によっては合法だけど。
いやいや。
だったらオレ、お汁粉のほうがいい。




