成人について
大人と子どもの境目なんて、だいぶ曖昧なもんだ。
オレは18歳で……ん? それからこっちに来てどれくらい経ったんだっけ?オレって今は何歳ってことになるんだろうね。
まぁとにかく、18+α歳なオレだけど、自分を大人なんてちっとも思わない。
でも、日本の法律的には成人済み。
飲酒や喫煙は二十歳からだけど、世の中のルール的には大人として扱われてたわけ。
実家住みで、学費も生活費も親に出してもらっててだぜ?
お前は大人ですよって言われても。
ピンとなんかこねぇよなぁ。
人が成ると書いて、成人。
現在の日本だと、満18歳から成人。
不思議だなぁと思う。
一定の年齢に達した日、急に人が成るなんてこと、あるかね? 昨日まで子どもだったちゃらんぽらんが、一夜にして?
つっても個人が心身ともに、経済力や責任能力まで併せて十分に成熟するまでを、社会がいちいち判定してられるかっていうと、それこそそんな訳ないよな。
いつから大人、は取り決めとく必要があるのは当然。
こっちの世界だと、いつから大人かは大陸ごと、あるいは街ごとに違う。
カシュカ大陸は20歳としているところが多い。
やっぱ十進法の感覚的に20ってキリがいいのかな。
亜人はまた別として、人間の寿命はまぁだいたいオレたちの世界と同じだから、成人のタイミングも似るのかもしれない。
ヴェルメノワでは、上記の通り20歳で設定されている。
これには一応、魔術に基づいた理由があって。
人間の魂は誕生から約20年で安定、というか硬化を始めるんだそうだ。柔軟さを失って意固地になって、悪人なら更生する見込みがぐっと減る。
なので億法都市では、その年齢を区切りに、より罪を重くしている。
少年法みたいな考え方ね。
ドゥノーは例外で、15歳とずいぶん早い。
これは、この街の開祖である神託者の少女が、世界樹を植えたのが十五の時だったことに由来している。
毎年、樹誕祭の一幕で、元服を行う。
羊の角杯で御神酒を飲むんだって。
エァレンティア大陸は『海上の華』トレミダムでは、子の成人は親が決める。
なかなか類を見ない慣習かも。
うちの子はもう十分大人だから、と両親が届け出たら、その日に海神神殿に身体の一部――大抵は髪――を奉納して、晴れて成人。
とはいえ、我が子を3歳で成人させるだとか、40を過ぎてもさせないだとか、そんな親もいない。
だいたいみんな、自分がしたのと同じ歳でさせる。
ので、結局19歳から20歳くらい。
レドラムダ大陸では徴兵制があって、16歳からの三年間を、男子は軍で、女子は修道院で過ごす。
これから戻ると一人前ってことで、成人だ。
退役・卒業時に女帝様から賜る勲章がその証。これには大陸民としての社会保障番号が刻印されていて、戸籍の管理にも役立っているとのこと。
アインの故郷、巨人族の成人の儀式は血生臭い。
自らの肉体・戦技の練度に確信を持った未成年は、験の良い日を選んで大人を一人指名し、真剣で決闘をするのだそうだ。
これが本気の決闘。
申し込まれた側の大人も、万一にも子どもに負けようものなら、家名に傷がつくから手加減はない。
勝敗はどうあれ、闘いを終えれば、若者は一人の戦士として認められる……生き残りさえすれば。
年齢によって『大人』を定めていない街は、やっぱりというか、代わりに本人の勇気や責任を測る試験・試練を実施しているところが大半だ。
この崖を、素手だけで登れたら成人。
あの霊峰の頂きにある寺院へ、百度参れば成人。
自分の家を自分だけで建てられたら成人。
数十巻からなる詩を全て暗記したら成人。
中には『子どもを作って父、あるいは母になったら成人』なんて街もある。なんつーか、サイクルが前倒しな感じするなぁ、それって。
そういえばキアシアは?
外見の年齢はオレと同じくらいだし、彼女の寿命は人間と同程度の様子。
ってことは、キアも成人済みなのかな……。
思い切って訊ねたんだけど。
「うちの一族ってそういうの無かったんだよね」とのこと。
そういうの、無い……。大人と子どもの区別ってこと?
「何歳かって、そんなに重要に思ったことないわね。それより、その人に何が出来るかじゃない?」
あー、能力主義だったのかな?
それ以上突っ込んで聞くのも、滅んでしまった一族の話題だし、デリケートそうだから止めといたけど。




