祭りについて
いくつもの大陸を渡って、あっちの街からこっちの街へと旅していると、時々タイミングよくお祭りに出くわすことがある。
観光にはまたとない。
特別なイベントだからこそ、その土地の特色が濃く表れ、かつ街の非日常の顔を見ることができる。
通りがかりのオレたちでも、実に心躍る体験だ。
由来や土地柄、季節などで祭りの内容は千差万別。中には奇祭と呼ばれるものだって。
一番多いのは、やっぱり神様に関する祭り。
神様はこの世界に数多存在するし、縁を持つ街も多いから。
善神を讃えたり、悪神を鎮めたり。
闘神に肖ったり、賢神に願ったり。
行われる『祭り』の、ニュアンスというか、タイプは街によってそれぞれだ。
フェスティバル――煌びやかな装飾を街中に施して、飲めや歌えで夜を徹し活気を焚く――
リチュアル――供物を山と用意して、粛々と神へ捧げる――
セレモニー――元服や婚姻を神の御前で示し、認めてもらう――
面白いのは同じ神を崇める街であっても、ところによってタイプが異なることだ。
祭りの起因となったエピソードが違うからだな。
こちらの街で善神でも、あちらの街では悪神と扱われることもある。
神には人以上に二面性があるってわけ。まぁ、相当にテキトーな方々だからね。
また同一宗派の都市が、互いに連携して執り行う祭りもある。
一度見ることが出来たんだけど、まーぁ豪勢、御大尽。街三つ四つの財源が合併してるものだから、イベントはとにかく派手。
長蛇のパレードが鼓笛と踊りで練り歩き、降り続ける紙吹雪、誰もがお面かメイクで顔を飾って、衣装を纏って、給水所代わりに酒・酒・酒――こんな具合だった。
扉の樹は一日中、連絡通路として開放されており、こっちでは夏なのにあっちでは冬だから、出店の種類ががらりと違って面白い。
フェスティバルの中でもパワフルな例。
リチュアル、も見たことがある。エァレンティア大陸のある街で。
豊穣神に、豊作を報告するお祭りだった。
街の真ん中に祭壇を立てて、今年の収穫物を供える。全部だ。全ての作物が豊穣神のものですよ、と示すため。
そして街の住人たちは、丸五日間、絶食する。
食べ物を目前にして食わずに過ごす一週間はかなりきつそう。
でもこれは、豊穣神の所有物を掠め取るつもりはない、という信心深さを表すための重要な儀式なんだそうだ。
五日間で豊穣神は捧げものを堪能しきるため、以降はようやく人が手を付けていい、と定められている。
そうやって今年に満足した豊穣神は、来年も作物を豊かにしてくれる。というお祭り。
意外にも観光客は多いらしい。目的は……ダイエット。
それを企画として打ち出している旅行代理店もあるとかで、神様にまつわるイベントだってのに、なんつーか……たくましい、とだけコメントしておく。
セレモニーも経験がある。トレミダムでだ。
師匠に弟子入りして、しばらくしてのこと。
あの街の海神神殿では四季のそれぞれの日に、海神様を本尊へお招きし、街の代表たちがご挨拶申し上げる――という祭りが行われる。
実際に海神様が降臨なさるわけではないけど、とある巫女さんがぶっちゃけてた。祈りは必ず届くから、気持ちを形にするため、実際にいらっしゃるかのように振る舞うお祭りなんだ、と。
……なんだ、けど。
イグナのセンサーは、海神様の依代とされる石像から、微弱な神威波をキャッチ。
これ、もしかして?
石像の両目に力が宿っていたように感じるのは、本当に気のせいだったろうか。
とにかく。
師匠は海神流天海剣に新たな弟子を取った場合、これに出席して報告する義務があるわけだ。
オレも師匠と一緒に、事前に教えてもらっていた作法で、抜き身の剣とともに礼をして。これでようやく、名実ともに弟子になれたんだ。
以来、可能な限りこの祭りには参加している。
多いってだけで、神様由来でない祭りもいっぱいある。
例えばドゥノーの樹誕祭なんかそうだった。
あとはレドラムダでは、女帝の誕生日と先代の命日、お世継ぎの誕生日に、大陸を上げての祭りが催される。
ノイバウン大陸のある街では、冬が長く厳しいため、春の訪れを盛大に祝うんだそうだ。
火祭りの噂も聞いた。
ジッズ大陸のだったかな?
街中の建物の、屋根という屋根に防火加工を施して、その上で篝火を一昼夜の間燃やすんだと。
奇妙な風習だけど、オレも炎には一家言持ちだからな。いつか参加してみたいもんだ。
団子投げ祭り、なんてのもあるんだとか。
トマトを投げるところはオレも心当たりがあるけれど。
東軍と西軍とに別れて、それぞれ紅白の団子を投げ合うんだって。
最終部には緑の団子を加えて、三色を串に刺して、和解する。
聞けば死人が出る苛烈さで、祭りの期間中は女子供を余所の街へ逃がすっていうんだから。
なんでそんなことすんのかね。




