この世界について
未だに夢なんじゃないかって思うときがある。
目が覚めたら実家のベッドの上で、残り少ない春休みを過ごしていて。
両親がいて、友人がいて。
今日もナユねぇに会いに行く。
……残念ながら何度眠ってもそういうことはなく。
諦めて認めるしかない。
何の因果か知らないが、オレは生まれたのとは別な世界へ、来てしまったんだって。
もちろん最初はかなり堪えた。
生活からテクノロジーの一切を取り上げられるってのが、こうもダメージだとは。
イグナがいてくれて本当に救われた。
だが。
前人未踏の大地がまだ延々と残された世界。
街ごとに全く別な文化を育てた世界。
魑魅魍魎、魔なるもの、神なるものが跋扈する世界。
この世界にこそ、オレは希望を見出した。
すなわち魔法であり、
カラクリである。
魔法。
この世界の人間は、儀式や詠唱を行い、神の奇跡を模倣する。
中には傷をたちどころに癒し、欠けた肉体を再生するものもあるという。
カラクリ。
この世界では、オレたちの科学では思いもよらない仕方で部品を組み上げ、重心制御や連動率の問題をすっ飛ばして、家より巨大な機械が躍動する。
中には人間が身に付ける類のカラクリも、存在するのだとか……。
十数年求め続けた答えは、次元の異なる場所にあったわけだ。
科学や医学では、百年かかっても叶わないだろう。
でも魔法、あるいはカラクリでなら、きっと出来る。
ナユねぇの失われた全身を、創り出すことが、きっと。
差し当たり、カラクリを目指すことにする。
魔法はオレに使えたものか分からず、また元の世界に帰った時、使用できるか甚だ怪しい。
オレたちの世界には魔法を保証する神様なんて、いないからな。
翻って、カラクリなら技術だ。
オレの呼吸・歩行・体重・その他運動や生命活動が元の世界とほぼ変わっていないところから思えば、物理法則には一定の通ずるものがあることは間違いない。
ならばカラクリ技術は持って帰れば、使える公算がとても大きい。
この件はイグナも太鼓判を押してくれた。
当面は技術習得できる街を探して、旅することとなるだろう。
道中で立ち寄る街では、神様から課せられた仕事をしなくてはならないが……。
十分な数をこなしたら、元の世界へ返してもらえる約束だ。
面倒だが、サボれない。
次の街は果たして、魔法を育てているだろうか、それともカラクリを育んでいるだろうか。
その次の街は? その次は?
……このオレは、必要なものを見つけるまで、地の果てまでだって行く所存。




