【8話】ユーリとキリア
少しずつ、転がり始める物語。
ギャグがちょこちょこブレーキをかけるみたいです。
「カズキ、ここんとこよく来るなー? 勇者業はいいのかー?」
「なんだよ、勇者業ってww ちょっとした息抜きタイムだからいいんだよw それに、ちょこちょこ依頼はこなしてるしなww あと、キリアさんの珈琲ヤバうまだしwww」
「まぁ別にいいんだけどさw そーいや話変わるけど、守護龍の素材ってどうしたん? 加工してもらうとか言ってなかったっけ?」
「あーあれねw マジすげーのできるぞあれはww こないだドワーフのおっちゃんと仲良くなって、今加工してもらってるとこなんだよw」
「ほぉー、いいなぁ。できるのめっちゃ楽しみだな! 俺もなんか作ってもらおうかなぁ……」
「おー、俺の終わったら今度はマサトのも頼んどいてやるよww」
「マジか! 頼む! かっちょいいの!w」
「任せとけw まぁ作るの俺じゃねーけどなww」
「サンク様、よろしいですか?」
「ん? キリアか。大丈夫だよ、どうぞ」
「失礼します」
「キリアさん、珈琲いつもありがとねw この珈琲が1番美味いわww」
「いえ、お口に合って何よりです。サンク様、先ほどルナさんが来られまして、相談したい事があるとのことでして」
「あ、そうなんだ? 通してあげてもよかったけど、悪いことしたな。そしたらちょっとこれからルナんとこ行ってくるわ」
「よろしいのですか? お呼びしますが?」
「いいよいいよ。んじゃ、行ってくるけど良い子にしてるんだぞ、ユーリ」
「子供じゃねーしwww」
「はははw じゃあちょっと行ってくるから、キリアよろしくね」
「はい。いってらっしゃいませ」
「いてらーww」
「ルナー、いるかいー?」
「え、あ、はい…どう…ぞ!」
「こんにちはーっと。なんか相談があるんだって?」
「わざわ…ざ、ありが…とうで、す。えっ…と、魔撃、団の2番隊、隊…長を決めな…いと、で」
「あぁ、しばらく適任者がいなくて不在で、ルナが仮で統括してたんだよね? 確か。2番隊か……もしかして?」
「は…い。アルくんを、と考え…てます。サン…ク様の意見、も聞…きたく、て」
「確か、1番隊が純粋な攻撃部隊。2番隊は特殊任務も多いテクニカル部隊だったよな? 魔法を使っての潜入任務や索敵、諜報あたりの大事な任務も結構あるね」
「は…い。どう思…います、か?」
「彼は先日、俺からの諜報任務も期待以上の成果を出してくれたしね。他の任務遂行状況は? って、ルナが隊長に推すくらいだし、問題は無し、か」
「はい…。任務はもち…ろん問題無、し。同隊だけ…でな、く、1番隊…や騎士団と…の繋が、りも良好……で、す」
「ふむ。なら決まり、かな? いやー、アル君も出世だなぁ。これでモリモリと働いてもらえるね☆」
「社畜バンザ…イ?」
「まーたあいつの入れ知恵かい……」
カズキのやつ、ルナをどうしたいんだよまったく……。
まぁかわいいからいいけど……って、なんかあいつの罠にハマってる気がする……。
まだいるんかな? あんま変なこと教えんなよって釘刺しとくか……ん?
(…の件よろしくお……致します)
(あぁ、バレな……にこっちでう……やっとくよw)
扉越しで聞こえにくいけど、キリアとカズキが何か話してる……?
(それに……クには、あまり知られ……いんだろ?)
(はい…。……件が絡むと、過敏……れますから)
(んじゃ、そろ……俺は行くわw)
(はい。くれぐ……気をつけて)
「キリア、なんの話してたの? 今のユーリだよな?」
「サ、サンク様……いえ、仕事の依頼をしただけで、特には。それでは、私も書類が残っておりますので失礼します」
「ちょっ、キリア……って、行っちゃったし……」
ちゃんとは聞こえなかったけど、俺には秘密の依頼ってことか……?
キリアも明らか動揺してたし、なんの話だったんだ……。
問い詰めても答えてはもらえなさそうだな。無理矢理聞き出せば、答えるんだろうけどそれはなぁ……。
くそっ。モヤモヤするなぁ。
「いらっしゃいませー! あ、アルじゃん、いらっしゃーい!」
「おう、アル君いらっしゃーいw」
「え?! サンク様?! なんでここに?!」
「なんでって、サンク様、海行ってからもちょこちょこ来てくれてるのよー? うちのお得意様になんてこと言うのよー。中々来ないあんたより常連さんよ?」
「いや、確かにここんところ立て込んでて来れてはなかったけど……」
「週2で通ってます☆ あ、そうそう、一応ここではサンクはやめてね? 騒ぎになったらお店に迷惑かけちゃうし、一応お忍びで来てるから。ここではリードでよろしく!」
「あ、確かにそうですね……。リード…君……よし!リード君、新メニューの試作とか手伝ってくれててすっごい助かってんだよー! ほらアル、これ食べてみて? 魚の煮付けなんだけど…」
「あ、ビールも頂戴。どれどれ……あ、うまい。これ……梅干し?煮付けに?」
「そう! びっくりでしょ? 臭みがとれてすっごいさっぱりになるの! リード君のアイデアで入れてみたんだけど、これが美味しくってお客さんにも大好評!」
「いやいや、ちょっと食べたことあった味を提案してみただけで、ここまで美味いのはおやっさんのウデがいいからだよ。俺も美味いもん食えて、かわいい看板娘もいて幸せだしね」
「もうー! リード君上手なんだからーっ! そんなこと言っても割引しないよー?」
「ホントのこと言ってるだけだから、そんなこと考えてないよw ん、アル君どした? 表情が固まってるよ?」
「イ、イエベツニ……」
(アル君がガツガツ行かないなら、俺が口説いちゃおっかなぁー。ミキちゃんかわいいしー)
(ちょ! 何言ってるんですか! だ、だめですよ……)
「ほほうー。それならガツガツ行っちゃう覚悟は出来たんですかな?2番隊隊長サン?」
「そ、それなんで! ってそらそうか……。俺もさっき聞いたとこなのに……」
「なんでも何も、最後推したのは俺だしなぁ。だから、今日はアル君の祝賀会! 俺のオゴリだから呑め呑め!」
「それはありがたいんだけど、何故今日俺が此処に来るとバレて……」
「そりゃ、君が誰に報告したいか考えたら、ここしか待ち伏せ場所が思いつかなかったけど?w」
「当たってるからなんも言えねぇ……」
「あ、ミキちゃん! 今日はアル君の出世祝いだから、こっち、美味い酒とツマミ持ってきてね!」
「はいは〜い! なにーアルってば出世したの? すごいじゃん! そしたら……これ!あたしの1番オススメのお酒!」
「お、おう。まぁな。忙しくなるだけな気もするけど……」
「この出世株のアル君、今超お買い得物件だけど、どう? ミキちゃんw 」
「あはは、お買い得ってw そうだね、昔約束したみたいに、お嫁さんにしてもらっちゃおうかな?」
「ぶっ!お嫁、さんっt○78+¥%<^885☆*」
「もうー、動揺しすぎだよー! そんな嫌がらなくても、昔の話しただけだよー」
「はっはっは。アル君は嫌がってないと思うけどね?w ま、アル君がんばりたまへよ! 俺はお先に帰るけどごゆっくり。ミキちゃん、これでアル君の分も一緒によろしく。今日は好きな物どんどん出してあげてね?明日からたいへーんなお仕事がたっくさん待ってるから、ミキちゃんも優しくしてあげてねー。んじゃまたー」
「はぁーーい! リード君も、また来てねーっ」
「嵐のような人だな……」
ふぅ。ちょっとからかい過ぎたかな?
モヤモヤしてると、ダメだな。
「あれー? さんちゃんだーっ!」
「え? ミント様?!」
「なんでこんなところにー? あっはー、さてはここのお店に入るとこ……かにゃ?」
「ここのお店って……『ドMの館』違います! 断じて違います!!」
「さんちゃん、そういうのが好みなの……? アタシはいつでも、さんちゃん好みの女になる…よ?」
「だから、違いますって! たまたま前を歩いていただけですよっ」
「そーいうことにしといたげようー。んじゃ、かわりにこれから1軒付き合ってねー?」
「はいはい。どこへでも付き合いますよ」
「はーい、さんちゃん、かんぱーい」
「乾杯。ここは俺がオゴリますよ。変な噂広められたら困りますしね……」
「相談料、だねー。で、何に悩んでるのかなー?」
「本当にこの人は……狙って出てきたんじゃないですよね……?」
「まさかー。たまたまあの辺りでご飯食べた帰りだよー。さんちゃんが、悩んでますー! って顔で歩いてたから、いかがわしいお店に入るのを悩んでるのかなーって……」
「それはもういいですって! …………大したことではないんですが、キリアのこと、です」
「きりちゃんと、距離を感じたーってとこ?」
「?!……そんなに顔色に出ます? 結構ポーカーな方だと思ってたんだけど、自信なくしますね。その通りです。隠し事、されてるみたいな感じで……」
「ふぅーん。乙女には、隠し事の1つや2つ、あるものよー?」
「いやでもっ、キリアが俺に隠し事なんてしたの初めてで……カズキとなんかコソコソやってるみたいで、なんかその……」
「妬いちゃった?」
「そういうんじゃ……」
「少し、放っておいてあげたらー? 大事なことなら、ちゃんと言う子でしょ? きりちゃんは」
「それは……そう、ですが……」
「何も聞かずに信じてあげることも、愛情の1つだよー」
「またそーやって、愛情とか。俺はキリアのこと……」
「ふふっ。結論は急がなくてもいいと思うよー? 大事な時に、大事な決断ができる心構えだけで、大丈夫」
「信じてはいる……んですよ。でも、なんかモヤモヤしちゃってるんです」
「アタシのカラダでムラムラ解消しちゃう……かにゃ?」
「ムラムラじゃなくて、モヤモヤです!!」
「似たようなもんでしょーっ」
「全然違いますっ!!」
「あははっ。やっぱりさんちゃんといると楽しいやー。心配しない、心配しないっ」
「はぁ……ありがとうございます。まだモヤモヤはしますけど、がんばって信じてみます」
「がんばらなくっても、いいんだよー」
「どっちですか! 信じろって言ったじゃないですかっ」
「がんばって信じろなんて言ってないわよー? さんちゃんは、さんちゃんのままでいいの。それでダメなら、また夜にアタシのこと誘ってくれていいよー?」
「なんか勘違いされそうなワードが散りばめられてましたが、言いたいことはなんとなくわかりました。また、頼りに行くかもわからないです」
「いつでもおいでー。さんちゃんならいつでも歓迎だよー」
「ありがとう……ございます」
やっぱりミント様には敵わない。俺は俺のままでいればいい、ってことか……。
あれ、ここの店の支払いたっけぇ………。
オゴリを見越してこの店にしただろ。やっぱりミント様には敵わねぇ……。