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王と勇者の異世界日記  作者: 塩とわかめ
-- 1章 サンクとキリア --
5/15

【5話】ユーリとガンダ

マサトとカズキのやりとりを書いてる時って、なんかほっこりします。

ガンダさんの親バカっぷりを書いてる時って、なんかニヤニヤします。

「なー、客にはお茶出そうぜお茶w ってか、珈琲がいいっすw あ、ミルクと砂糖いっぱいでよろw」


「あのなぁ………こんな夜中に、しかも疲れ果てて寝ようとしてるときに、何故お前は窓から進入してくるんだよ……」


「ほら、そろそろ俺の顔が見たくなった頃かなーって思ってさw ほら、ダーリンにおかえりのちゅーはよww」


「あなた……遅いよ、、早く、来て?」


「すまないな、忙しくてあんまり構ってやれなくて……でも、俺はいつでもお前のところに帰って来るよ。全く、寂しがりやの子猫ちゃんめっ」


「やめろ! 終わりどころが見えないノリを続けるなっ!! てか、子猫ちゃんてなんだよ!いつの時代のラブシーンだよ! てかこの展開誰得だよ!! って、あれ、お前の後ろにいるの誰? 1人じゃなかったの……? てことは、今のやりとり全部…………」


「あの……私お邪魔です…よね? ご、ごめんなさいっ! 誰にも言いませんからっ」


「はっはっはww ほら、こういうシーンもたまには投入して、淑女の方々にも喜んで頂かないとかなーって? で、こちらの淑女の方が盛大に顔真っ赤にして照れちゃってんだけど、どーする?ww」


「どーするじゃねーよ! 完全に勘違いしてるじゃねーか! てか、この子誰?! マジこんな夜中に何しちゃってくれてんの?!」


 もしかしてこいつ、いくらかわいいからって女の子拉致ってきてないよな……はぁ。

 グレーの髪色のパッツン前髪で、結構幼く見えるしなぁ……完全にカズキのタイプだわ、これ。アウトだな。通報しないと。


「サンク様、どうかされましたか?」


「おー、キリアさんおひさーw」


「ユーリ様……お久しぶりでございます。こんな夜中にどうされたのですか? それに、その子は……騎士長のガンダ様の娘さん、では?」


「お、流石キリアさん、話が早いなw 迷子のところを保護したから、とりあえずここに連れて来たのよw」


「はぁ……なぜガンダの娘がこんな時間に迷子に……。そしてなぜ問答無用でここに連れて来る。一応ここ、一国の王の寝室なんですけど……。とりあえずキリア、悪いけど珈琲でも淹れてくれるかな?無視するわけにもいかんしな」


「あ、俺はミルクと砂糖いっぱいでよろw この子のも、甘々でねw」


「かしこまりました」





「で? どういう経緯でこんな事になってんの?」


 事と次第によっちゃ、あなた死にますよ? ガンダさんに滅されますよ?


「いや、経緯も何も、酒場で晩飯食って、さてこれから素材狩りでも行くかなーって思って歩いてたら、街の入り口で途方に暮れてる美少女がいるじゃん? んで、あぶねーから家に送ってやるかー俺ちょーやさしーww とか思って声かけたら、家には戻りたくないの一点張りでさーww」


「んで、お持ち帰りしようとして引っ叩かれてここに逃げてきた、と?」


「ちげーよww この子がキリアさんなら助けてくれるかもって言うから、わざわざここまで送り届けたんだよwww」


「そういえばキリアも彼女のこと知ってたみたいだし、面識あるの? というか、まずお名前は?」


「あ、すみません! 私、リンカって言います。歳は16です。キリアさんとは仲良しって訳じゃないんですが、他に頼れる人も思いつかなくって……すみません!」


「リンカちゃんは、たまにガンダ様の忘れ物を届けに王城にいらしてましたので、その時に何度か。一度食事もご一緒させて頂いたこともありました」


 あー、なるほどね。家出したはいいけど、行くところが無くて途方にくれてたところを、変態勇者に拉致られた……ってことね。

 てか、この子16?!マジか、どーみても12歳くらいにしか見えんのだが……ロリコン勇者に狙われるぞ。実に危険だ。


「んで? 家を飛び出したんだろ? 何があったの?」


「それは……パパが…パパが酷いんです! 学校で仲良くなった友達4人くらいを連れて帰ったら男の子だけ殴って追い返すし、町で落し物を拾ってくれたお兄さんは投げ飛ばしちゃうし、学校の男の先生がプリント届けてくれただけで軍に呼び出して職務質問するし、授業参観では隣の席の男の子に授業中ずっとガン飛ばすし、術技大会のダンスで手を繋いだ男子なんて全員翌日軍の詰所に呼び出しされたんですよ?! 他にも色々……」


「うん、わかった、もうわかったよ。それは大変だったね……。あ、それじゃ彼氏が出来たって言うのは?」


「彼氏? そんなもん作れる訳ないじゃないですか! 私だってもう16だし、彼氏くらい欲しいですけど……ね? 勇者サマっ」


「ほぇ? あー、そう! そうだね! そりゃそうだよ! 当たり前だよね!ww」


 あいつ全く聞いてなかったな……。てかリンカちゃん、カズキに惚れたのか? やめたほうがいいぞ、奴は勇者じゃない。変態勇者だ。


 それと、彼氏の件はガンダの早とちりかよ……というかガンダの親バカっぷり酷すぎんだろ。

 親バカで括ると世間の親バカさん達に失礼だな、これは。


「それで……今日は私の部屋に泊まってもらうとして、リンカちゃんはどうしたいの?」


「私は……わかりません……。ケンカしちゃって勢いで飛び出して来ちゃったけど、パパには悪いことしちゃったなって……でも、なんか帰りづらくて……」


「明日……こっそりガンダさんの仕事でも覗いてみますか? 前も一緒に少し覗いたことがありましたよね。1日ゆっくりして落ち着けば、素直に謝ることもできるかもしれないわよ?」


「うん……そうしてみます! 今日は泊めて下さい。ごめんなさい!」


「いいのよ。サンク様、勝手に決めてしまい申し訳ありませんが、そういうことでもよろしいですか? 本来部外者は立ち入りできない部分もありますが……」


「構わないよ、キリア。部外者って言ってもガンダの娘さんだし、騎士団の訓練風景だって隠すようなことでもないしね?」


「なんかおもしろそうだし、俺も明日一緒に行こーかなーww 国王様、今晩はワタクシメもここに泊めて頂けませんかwww」


「嫌だ」


「ヒドスグルwww 頼むよーww」


「ゆ、勇者サマも明日もご一緒して頂けるのですかっ!」


 あーリンカちゃんの目がキラキラしちゃってるよー……ここで断って、カズキが明日来なかったら俺が悪もんじゃん……。


「仕方ないな……ソファで寝ろよ?」


「イェーイw さっすが国王ともあろうお方は器が大きい!ww」


「勇者、サマっ! 今日は本当にありがとうございました! あの……明日も、よろしくお願いしますっ!」


「おー、また明日なーw」


 まさかこいつ、リンカちゃんの周りにハートが飛び交ってるのに気付いてないのか?

 勇者になると、鈍感属性がオートで付いてくるのかなぁ……。

 まぁいっか、俺は知らん。寝よ。





「おはようございます」


「んーー、おはようキリア。あぁ、リンカちゃんもおはよう」


「おはようございますっ。あれ、勇者サマは?」


「あぁ、向こうで爆睡中。多分ほっとくと昼まで寝てると思うな……」


「わ、わたし! 起こして来ますねっ!」


「では、私は朝食の準備をして参ります」


 ふわぁーー。昨日久々にカズキと遅くまで喋ってたから眠いなぁー。

 普通に考えて、あいつが泊まりに来ててすぐ寝れる訳ないよなw

 さってと、今日は……俺もガンダのとこかなぁ、やっぱり。騎士団とこも最近行ってないし、ついでに見学させてもら……


「きゃーっ」


 え? なんだ、今のリンカちゃんか?


「リンカちゃん、どうした?! 何かあっ……」


 あー、そういえばこいつ、寝惚けてると辺りのものを巻き込む性質があったんだった……。


「うーん…あと5年……むにゃ」


「なげぇよ!5年とか冬眠ですらもっと早く目覚めるわっ!」


「イテェっ! なんだ?! ケツイテェ!! あれ、なんでリンカちゃんがここに?」


「お前が寝惚けて抱きついたんだよ、さっさと起きて謝っとけよ」


「い、いえ、あの…びっくりはしましたけど、そんな嫌とかそんなこと……」


「あちゃー、またやっちゃったのかw リンカちゃんごめんね?」


「だ、大丈夫です!」


「お、おうw 朝から元気だねww まぁ俺も朝から元気なんd」


「下ネタやめぃ!」


「イテェーー! うぅ、お茶目なジョークじゃないかよ……w」


「はいはい、飯食ったらガンダんとこ行くぞ。早く準備しろよー」






「よし、お前ら………せいれ、つ…」


 ガンダ、目に見えて落ち込んでるーーー!!

 いやまぁ、大事な娘が家出しちゃったら仕方ないだろうし予想はしてたけど……。


「今日、は、1対1の模擬…戦だ。2人1…組にな、れ。それ…で、そ…れから、ん……?あ…ぁ、ペアをつ、くった…ら、模擬せ…………んだ」


「「「は、はっ!」」」


 だめだこりゃ……かっこいいとこなんて全く見せられないぞガンダ……。

 てか、喋り方がルナそっくりになってるぞ。


「パパ……」


「あれは……ものすごくわかりやすく死にそうになっていますね」


「今日はこれ、空気読んで出直した方がいいんじゃないか?」


「おーここが練兵場かーww 楽しそうだなーw すんませーーん、俺も訓練混ぜてくださーーーいwww」


 空気読まないバカがいたーーーーー!!!


「ん……? 君は…勇者ユーリ殿…か!? なぜ、こんなところ…に?」


「あーw 昨日の夜、リンカちゃんを送って…」


「リン…カ? リンカ! 何故ここに?!」


 あちゃー、見つかっちゃったよ。昨日こっそり覗きに行こうって話してたのに……って、あいつそういや、ほとんど話聞いてなかったな……。


「パパ……。あの、昨日の夜はごめ…」


「昨日の夜…勇者殿、一緒……にいた? 朝まで? 一緒に朝まで?」


 あ、これはまずい。


「ガンダ! ユーリは昨日リンカちゃんを保護し…」


「ゆうううしゃどのおおおおおお!!!! 私との決闘を所望するうううううう!!!! この先に進みたくば、私を倒してゆくがよいいい!!!」


 あちゃー……なんでそうなる……。説明しなきゃな。


「決闘……だと?! 決闘を申し込まれて逃げるのは漢の恥……! いいだろう、漢の決闘受けてつかまつる!!」


 あぁもう、ノリノリだし……喋り方おかしくなってっし。そういやこういうノリ大好きだったな、カズキのやつ……。もう知らんぞ、俺は。


「サンク様、止めなくてよろしいのですか?」


「いいよ、もう。ユーリも楽しんでるみたいだし、放っておこう。リンカちゃんも気にしなくていいからね? あいつが好きでやってるだけだから」


「でも……勇者サマが怪我でもしたら……」


 あ、心配するのはそこなのね。がんばれガンダ。


「勇者殿に木剣を!」


「あ、ユーリ!」


「王よ、大丈夫でござりまする。心配には及びませぬそうろうつかまつる」


 そうろうつかまつるって何語だよ。


「まぁ、お前がそう言うなら止めはしないが……。それでは、この『模擬戦』、私が立ち会いをさせて頂く。よいな?ガンダ」


「……寛大な処置痛み入ります。このガンダ、今回の処分は後ほど如何様にも」


「理由や経緯はどうあれ、勇者と騎士長との『模擬戦』を見れることは、他の兵達にもいい刺激になるだろう。今日は特別訓練があると聞いてここに来ただけだよ。なぁみんな?」


「「「はいっ!!」」」


「と言うことだ。双方、兵の良き手本となるような素晴らしい打ち合いを期待してるぞ? それでは、構えっ」


「「………………」」


「始めッッ!!」


 やはり先手はガンダか。気持ちの問題もあるだろうが、あいつの剣は攻めの剣。当然の展開だろうな。

 対してカズキは……と、今のところうまく捌けてるように見えるな。焦りの色は見えないけど、あいつポーカーフェイスだからイマイチわかんねーな……。


「いけーーー!! 騎士長いまだーー!」

「そこだ! あぶねぇっっ!!」

「勇者様もすげぇぞ! 騎士長と互角だ!」

「どっちもすげえよ!! レベルがちげぇ!」


「勇者サマ……がんばってください…」


「サンク様、リンカちゃん……」


「あぁ、気付いてるよ。ユーリの心配をしてるように見えて、内心ガンダのことが心配でたまらないんだろうな。ガンダが攻め込まれる度に辛そうな顔してる」


「えぇ、素直になれないだけみたいですね」


「それはガンダも一緒なんじゃないかな? どこかに捌け口を求めないと、素直になれなかった……ってとこかな。それをユーリは受け止めてあげてるんだよ」


 まぁ勇者サマはきっとわかってませんけどねー。

 最初から最後まで一貫して、楽しそうだから割り込んだだけだよ、あいつは!

 にしても、片手剣での決闘か……。


「だからサンク様も、模擬戦としてお認めになられたのですね……」


「それでガンダもリンカちゃんも素直になれるなら、1番いいんじゃないかな?」


「お互いの距離が離れたッッ」

「2人とも表情が変わったぞ!!」

「最後の打ち合いになる……のか?!」


「ん、そろそろ決まりそうだな……次を当てた方の勝ち…かな」



「勇者殿、参りますよ」


「あぁ、いつでも来いッッ」


「だ、あああああぁぁぁぁぁ!!!」


 ガンダの全力を込めた右からの袈裟斬り。カズキは自然体に構えた身体を半身ズラしてそれを見切ってみせた。

 カズキの勝ちか……あとは流れたガンダの身体に一撃入れれば……。



「…………パパあああああああ!! 負けないでえええええええ!!!」



 一瞬、時が止まった気がした。


 勝負を決めるはずだったカズキの一撃は空を切る。

 流れた身体を咄嗟に沈み込ませることで勝負を決めるはずだった一手をかわしたガンダは、倒れ込みながらも身体を反転させる。次の瞬間、その木剣はカズキの首元にそっと当てられていた。




「ふぅっ。パパになるとこんなに強くなるもんなのかねw あんたの勝ちだよ、ガンダさん」


「いいえ、娘の前では世界一カッコ良くあろうとする、ただの親バカな男の意地ですよ。勇者殿も人の親になれば、きっとわかります」





「「「ガンダ様の勝ちだあああああ!」」」

「「「うおおおおおおおお!!!!」」」


「パパぁぁーーーー!!!」


「2人とも、いい試合だったな。今回はガンダの底力が半歩上回った形だったな」


「いえ、最後の最後、リンカの声が聞こえたと思った瞬間に身体が勝手に……それに、勇者殿は魔法の1つも使わずにこちらの土俵で戦って下さった。勝てたとはとても思っておりません」


「いやいや、ガンダさんほんっとに強かったよw めっちゃ楽しくて、魔法なんて使おうとも思わなかったしねww 」


「ユーリ様は、昨日の晩家出したリンカちゃんを私のところまで送り届けて下さったのです。勘違いや誤解はこれで解けましたでしょうか?」


「あぁ……その件に関しても勇者殿、本当にすみませんでした。リンカも、昨日はすまなかったな……。お前のことになるとつい冷静さを欠いてしまうのは悪い癖だな」


「ううん、私も昨日は急に出て行っちゃって、心配かけてごめんなさい! ムキになっちゃって、どうしていいかわかんなかった……」


「俺は全く気にしてないよーww それよりも、リンカちゃんがちゃんと仲直りできたみたいでよかったよ!」


「これで色々とひと段落だな。ガンダも、これに懲りて少しはリンカちゃんの話を聞いてやれよ?」


「はい……リンカが一晩いなくなって、改めて娘の大切さが身に染みました……!! 私はやはりリンカを愛しています!!!」


 あ、だめだこりゃ。全然懲りてねぇな。


「リンカちゃん。今度はガンダ様の許可をもらって、遊びに来て下さい。クッキーでも焼いておきますね」


「ほんと?! やったぁ! 絶対遊びに来ますねっ。その時は勇者サマも……」


「ん? クッキーいいねw 是非俺にも下さいませww ってか、そーやって仲良くしてると2人、仲良し姉妹って感じだねww」


「ふふ。私もこんなかわいい妹なら大歓迎だわ」


「わ、私もキリアさんみたいなお姉ちゃんがいたら、うれしい……です」


「リンカちゃん、照れて耳まで真っ赤だぞ。そしてこっちのおっさんはそれ見て恍惚の表情なんだが……あ、ぶっ倒れた。模擬戦でよっぽど消耗したんだな……そこに娘のかわいい照れ顔で、完全に逝ったな」


「え? え? ぱ、パパーーーーーー!!」


「我が人生に一片の悔い無…し! うぅっ」


 やっぱだめだな、こりゃ。


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