【14話】サンクと奇襲軍
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「さんちゃんだけじゃないわー。ゆーちゃんも一緒。あの日のことは、アタシも忘れないわー」
「あの日…………俺が、いや俺たちがキリアに出会った日。そして、俺が王になると決めた日…………」
「もう5年になるのかしらー。雪の降った、寒ぅーい日だったわねー」
「雪の中にあなたたちを見つけた時は、ホントに驚いたわー」
「…………………………」
「あなたの眼は、死んでいた。思い詰め過ぎて、考え過ぎて。そして、輝いていた。怒りの焔の渦に飲み込まれていた。ランとダン、2人を救えなかったことに、自分が許せないのね」
「………………っく!」
「けど、さんちゃんはそれと同時に救いもしたわ。きりちゃんのことを。そして2人の運命を。奴隷になり、救いのない人生を送っていたきりちゃんを。奴隷の道を歩まされ、救いのない道へ堕ちそうになっていたランとダンを。さんちゃんは、ゆーちゃんと2人でちゃんと救ったわ」
「助けられなかった……。俺は、救えてなんかいないんです。2人を…ランとダンのことを見殺しにしてしまったんです!!」
「いいえ。2人が動かなければ、ランとダンの姉弟は奴隷として一生を終える運命だった。きりちゃんも、今こうして笑ってる未来なんて存在しなかった。さんちゃんたちのしたことは、そういうことなのよ。そして、これからもさんちゃんの行動は、未来を変えるの」
「俺……は………!」
「さてー。2人とも! アタシが教えてあげる昔話はこの辺までよー? そろそろ出てきたらどうかしらー?」
「え…?」
「………ルイナス様、すみませぬ。盗み聞きをしに来たのではなかったのですが……」
「ごめん…な、さい」
「ガンダ! ルナ! どうして…いつから……?」
「やーっぱり気付いてなかったのねー?ほとんど最初からよー。ねー?」
「はい……。ルイナス様とキリア殿のこと、込み入った話でつい耳を傾けてしまっておりました……勝手な行動、誠に申し訳ありませんでした」
「サンクさ…ま。ありが……とう、ございま……す」
「ありがとう…って、何を…」
「キリア…様、助けて…くれ、た。今、キリ…ア様と、一緒…にいれるのは…サン、ク様のお……か、げ」
「お、俺は……!」
「その時の詳しい事情はわかりませぬ。ラン殿とダン殿のことも、ミント殿のおっしゃっておったことした私は知りませぬ。しかし、私は、私たちは、今のキリア殿なら知っております。皆のために精力的に働いて下さり、ルイナス様のもとで、楽しそうに仕事をしているキリア殿なら知っております」
「…………ミント様、2人に教えるために……」
「さあねぇー?」
「はぁ……。別に話したくないだけで、隠したい訳ではないですけど……。俺は、人攫いや奴隷売買が嫌いだ。憎んでもいる。それでも、復讐のために兵を出す訳ではない。人攫いがいることで、キリアや、ランやダンのように奴隷にされそうになる人が増える。だから俺は人攫いグループは全て潰す。これ以上、あんな悲劇は起こしたくないんだ」
「それでー? 2人はどうするのかなー? アタシはさんちゃんの味方。兵を出すわー」
「私は……それでも騎士団は出せませぬ。ルイナス様のお気持ちを聞いて、揺れる思いは有りました。しかし、他に方法はあると思います。殲滅戦など、騎士団にそんな命令は……!」
「ルナ、も……ガンダ様と…一緒。他の、道……がある、と思…う」
「そうか。わかった……。今回の件は俺とミント様の部隊で片付ける。これ以上話すことはない」
「ルイナス様………」
「サン…ク、様」
「大丈夫よー。さんちゃんはアタシが守ったげるー」
「俺はキリアとユーリのところに戻る。2人は解散してくれ。ミント様も、今日はありがとうございます。また明日の正午に」
「はぁーい」
「ユーリ、アルと連絡は取れたか?」
「…………あぁ。問題ない。ホントにやるのか?」
「ガンダとルナは断ってきたよ。別にお咎めをする気はないさ。ミント様が手伝ってくれる。なんとかするさ」
「サンク様…何か……他に方法はないのですか?」
「俺がそっちに参加して、捕縛する方向には出来ないのか」
「生かしておく意味が無い。それに、ユーリが参加しなければ人質救出の可能性が下がるだろ。アルと2番隊、まぁ仮に騎士団をつけたとしても、確実に成功させられると思うか?」
「いや……救出作戦はスピードが命だ。騎士団の参加は逆に成功率を下げる可能性があるし、騎士団がいなければ戦力に不安が残る……」
「わかってるじゃないか。人質救出が最優先事項だ。そこにユーリとアルを割く以上、アジトは強襲して潰すしか選択肢がないんだよ。俺とミント様でもそれは問題無いが、全軍招集は念の為だ。まぁ無理だったけどな」
「くっそぉ!! 感情的になってるくせに、冷静に分析しやがって! お前を止める材料がなんも残ってねーじゃねーかよ!!」
「それが俺だよ。この間は冷静じゃなかったよな、ユーリには助けられた。ありがとな。お陰で冷静に戻れたよ」
「冷静を通り越して冷徹だっつーの……。明日正午からだな。ミスのないようもっぺんアルっちと話してくる」
「では、私もご一緒させて頂きます……」
「…………冷徹でも冷酷でもなんでもいい。人攫いは潰す。それだけだ」
「せいれーつ」
「「「ハッ!!」」」
ミント様の部下、総勢100人か。
数は部隊の中で1番少ないが、下位部隊があり、その中から選りすぐられた100人だ。
入れ替え戦が定期的に行われていて、部隊の練度は他の追随を許さない。
「さんちゃーん、任務の内容教えたげてー」
「あぁ………」
「ミント指揮下特務部隊、通称アゲハ部隊の諸君!! 本日の任務は、砂漠に潜む人攫いグループの殲滅だ! タタル砂漠の岩山地帯、カラスの寝ぐらに人攫いグループが潜伏している! 既にこの『夜の爪』と名乗るグループに、23人もの人が捕まり幽閉されている! 人質の救出は別の地点にて勇者ユーリが向かっているため、君達の任務は『夜の爪』の殲滅となる!!」
「そんなグループが……」
「23人も?! 許せねぇ」
「勇者様に任せれば安心だ!」
「正午より任務開始! タタル砂漠へと向かう! 現地到着次第、速やかに殲滅戦を開始する! 『夜の爪』は岩山の洞窟をアジトとしている。天井は空いている箇所もあるが、脱出は不可能。出入り口は前後2つ。まずはこの出入り口を塞ぎ、その後全員で岩山ごと魔法で吹き飛ばせ! 1人も逃がすことは許さんぞ!!」
「え、不意打ちで全員生き埋めに?」
「岩山ごとって…全員で遠距離から攻撃か…」
「捕縛するんじゃないのか……」
「文字通り殲滅……皆殺しにしろってことか」
「いくら人攫いっても、皆殺しって……」
「気分のいいもんじゃあないな……」
「俺、ちょっと嫌だな……」
「仕方ないだろ、王様直々の作戦だぞ」
「これは民の平穏な日々を守るための作戦だ!! 皆の善戦を期待する!!!」
「そう……だよな」
「あぁ、ほっとくと知り合いがさらわれる」
「俺たちが守るんだ」
「そ、そうだよ、守るための戦いなんだ!」
「あ、あぁ! 綺麗事なんて言ってられねぇ」
「では、各員時間まで待機!!」
「あらー、いい演説じゃないー? 腰の引けた隊員がうまく騙されてくれたわねー」
「騙されてって……まぁ、間違ってはないですが」
「自分もそうやって騙してるのかしらー?」
「………………そんなこと、ありません」
「あら、そうー。さーて、アタシは時間まで、その辺でぷらぷらしてるわー」
「………はい」
砂漠地帯まではあと20分ってとこか……。
ガンダとルナはやはり来なかったな。当たり前か。
昨日は言い過ぎた……か。あの2人が、真っ向切って反発してくるなんて、思いもしなかった。
帰ったら謝ろうか…………。ははっ、何を考えてるんだ俺は。
あいつらと友達にでもなってるつもりか?アホか俺は。
俺は王で、2人はそれに仕える従者だ。王が従者に謝ってどうする。
そうか……友達みたいに思ってたのか、2人のことを。
2人はどう思ってんだろうな、俺のこと。
今回の件で見限られるか? 王に反対して、兵を出さなかったくらいだもんな。普通に考えたら打ち首モノか。
それだけ、俺に反発したってことか……。
あと10分。作戦開始エリアまでは10分だ。
いいんだよな、これで。
人攫いグループは悪だ。放ってはおけない。
でも、カズキには反対された……。キリアにも、ガンダとルナにもだ。
俺は間違っていないはずなんだ。
なんでみんな反対するんだ。人攫いグループを潰すことの何がいけないんだ。
強襲以外にどうする? 交渉? 全て生け捕りか? 無理だろ、そんなもの。
砂漠地帯までは警戒しながら進軍すれば問題無いだろう。
しかし、砂漠に入れば別だ。敵だって見張りくらい立てる。
砂漠に入って岩山のアジト手前までは約5分。即座に入り口の封鎖と、外に出ている敵の捕捉をしなければ逃げられる。
悠長に生け捕りなんてしてる余裕はないんだ……。
わかっているはずなのに、なんで俺はこんなにも不安なんだ……。
「さんちゃん、着いたわー」
「えぇ、砂漠地帯はすぐそこ……。ここで準備を整えましょう」
「みんなー。ここからはスピード勝負よー。役割を確認して、最終準備ねー」
「「「ハッ!!」」」
もうすぐで作戦開始だ。もう後には引けない。
いいのかこれで?
悲劇は繰り返しちゃいけないんだ。
本当にこれしか方法はないのか?
人攫いは全て無くさなければいけない。
何か手はあったんじゃないのか?
俺は間違っていないんだ。
思考停止しているんじゃないのか?
もっとカズキに頼るべきだったんじゃ「さんちゃんー」
「な、なんですか?」
「準備はできたわー。いつでも行けるわよー」
「わか……りました」
「迷ってるのー? ここまで来て、人攫いがかわいそうーかなー?」
「かわいそうだなんてことはない!! …ですよ。何も迷っていません。行きますよ、作戦開始だ」
「さぁー、最終確認。岩山までは5分、目標が見えたら第1部隊は入り口の封鎖ねー。第2部隊は周辺の警戒と探索ー。第3部隊から第5部隊までは、万が一のフォローを意識しつつ、最終攻撃の陣形に散開ねぇー」
「「「ハッ!!」」」
「問題無いようならー、あとはさんちゃんー」
「えぇ……。これより、作戦行動を開始する! まずは速やかに出入り口の封鎖だっ!! 第1部隊から順に、進軍開始!!」
「「ハッ!!」」
迷うな! 迷うなマサト!! ここで迷っても、もう作戦が失敗するだけじゃすまない!!
ここまで来たら、迷いはこちらの被害を生んでしまう!!
もう進むしかないんだ!!!
「目標アジト確認しました! これより封鎖にかかります!!」
「第2部隊散開! 敵見張りの探索を行います!!」
「第1部隊敵アジトに向けて魔法準備!!」
(サンク!! 聞こえるか!! アジトへの進軍を止めろ!!!)
なんだ?! カズキの声…か? アルのコネクトか!
(サンク! 頼む、通じててくれ!! さらわれた子が1人増えている! 1人女の子がまだアジトにいるみたいだ!! 攻撃を中心しろ!!!)
は?! なんだって!!
「第1部隊! 攻撃を……」
『フレア・ボム』
『エア・プレス』
『アース・クエイク』
ドドドーーーーン!!!
「しまっ………!」
「敵アジト、封鎖完了!! アジト外の敵は順に第2部隊が捕縛しております!」
(ユーリ! ダメだ、攻撃は開始してしまった! 出入り口の封鎖が今終わった。ここでやめたら人攫いグループは取り逃がしてしまうぞ!!)
(間に合わなかったのか……! クソ!! まだ女の子は助かる! 襲撃を止めて引き返すんだ!!)
「今止めたら、夜の爪はまんまと逃げおおせることになるわねー。そしたら次も別の場所で誘拐を繰り返して、闇市が開かれるのねー」
「ミント様……! 聞こえて……くっ! なんとか人質を助けることは……」
「あの封鎖された中に飛び込んで、助けて逃げるのー? 部隊の集中砲火をかいくぐってー?」
「そんなこと………じゃあ、さらわれた子は……」
「わかってることを、言わせるつもりー?」
(サンク! 聞こえてるのか?! 今すぐ止めて引き返すんだ!! 人攫いのアジトなら、俺がまた何回でも見つけてやる!!)
「ルイナス様! どうなされたのですか?」
「もう、部隊の準備は完了しているわー。あとはさんちゃんの合図をみんな待ってる。1秒ごとに逃げる準備が整っていっちゃうわねぇー」
アゲハ隊が俺の合図を待っている……撃ての合図で人攫いは壊滅する。
しかし、今撃つとアジトにいる女の子をも殺すことに……。
どうすればいい、どうすれば……!
何かいい手はないのか、何か何か何か何か!!
考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!!
(サンクーーーーーーーー!!!!!)
「さんちゃん、もう、逃げられちゃうわよ?」
あぁ……ああああ……アァァァアァ。
「う………撃て」
「全隊! 目標、前方岩山!! 発射!!!」
ヒュ………ンッッドンッッ!!
ドガッッドドドドガガーーーーン!!!!!
「な……………今…のは、、、カズ………ユーリ!!! ユーーーリーーーーー!!!!!」
「今……ゆーちゃんがアジトに飛び込んで………」
「うそ…だろ、おい………! ユー……リ?おい!!!」




