表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王と勇者の異世界日記  作者: 塩とわかめ
-- 1章 サンクとキリア --
14/15

【14話】サンクと奇襲軍


 …………………。


 ………………………。


 ……………………………。



「さんちゃんだけじゃないわー。ゆーちゃんも一緒。あの日のことは、アタシも忘れないわー」


「あの日…………俺が、いや俺たちがキリアに出会った日。そして、俺が王になると決めた日…………」


「もう5年になるのかしらー。雪の降った、寒ぅーい日だったわねー」

「雪の中にあなたたちを見つけた時は、ホントに驚いたわー」


「…………………………」


「あなたの眼は、死んでいた。思い詰め過ぎて、考え過ぎて。そして、輝いていた。怒りの焔の渦に飲み込まれていた。ランとダン、2人を救えなかったことに、自分が許せないのね」


「………………っく!」


「けど、さんちゃんはそれと同時に救いもしたわ。きりちゃんのことを。そして2人の運命を。奴隷になり、救いのない人生を送っていたきりちゃんを。奴隷の道を歩まされ、救いのない道へ堕ちそうになっていたランとダンを。さんちゃんは、ゆーちゃんと2人でちゃんと救ったわ」


「助けられなかった……。俺は、救えてなんかいないんです。2人を…ランとダンのことを見殺しにしてしまったんです!!」


「いいえ。2人が動かなければ、ランとダンの姉弟は奴隷として一生を終える運命だった。きりちゃんも、今こうして笑ってる未来なんて存在しなかった。さんちゃんたちのしたことは、そういうことなのよ。そして、これからもさんちゃんの行動は、未来を変えるの」


「俺……は………!」


「さてー。2人とも! アタシが教えてあげる昔話はこの辺までよー? そろそろ出てきたらどうかしらー?」


「え…?」


「………ルイナス様、すみませぬ。盗み聞きをしに来たのではなかったのですが……」


「ごめん…な、さい」


「ガンダ! ルナ! どうして…いつから……?」


「やーっぱり気付いてなかったのねー?ほとんど最初からよー。ねー?」


「はい……。ルイナス様とキリア殿のこと、込み入った話でつい耳を傾けてしまっておりました……勝手な行動、誠に申し訳ありませんでした」


「サンクさ…ま。ありが……とう、ございま……す」


「ありがとう…って、何を…」


「キリア…様、助けて…くれ、た。今、キリ…ア様と、一緒…にいれるのは…サン、ク様のお……か、げ」


「お、俺は……!」


「その時の詳しい事情はわかりませぬ。ラン殿とダン殿のことも、ミント殿のおっしゃっておったことした私は知りませぬ。しかし、私は、私たちは、今のキリア殿なら知っております。皆のために精力的に働いて下さり、ルイナス様のもとで、楽しそうに仕事をしているキリア殿なら知っております」


「…………ミント様、2人に教えるために……」


「さあねぇー?」


「はぁ……。別に話したくないだけで、隠したい訳ではないですけど……。俺は、人攫いや奴隷売買が嫌いだ。憎んでもいる。それでも、復讐のために兵を出す訳ではない。人攫いがいることで、キリアや、ランやダンのように奴隷にされそうになる人が増える。だから俺は人攫いグループは全て潰す。これ以上、あんな悲劇は起こしたくないんだ」


「それでー? 2人はどうするのかなー? アタシはさんちゃんの味方。兵を出すわー」


「私は……それでも騎士団は出せませぬ。ルイナス様のお気持ちを聞いて、揺れる思いは有りました。しかし、他に方法はあると思います。殲滅戦など、騎士団にそんな命令は……!」


「ルナ、も……ガンダ様と…一緒。他の、道……がある、と思…う」


「そうか。わかった……。今回の件は俺とミント様の部隊で片付ける。これ以上話すことはない」


「ルイナス様………」


「サン…ク、様」


「大丈夫よー。さんちゃんはアタシが守ったげるー」


「俺はキリアとユーリのところに戻る。2人は解散してくれ。ミント様も、今日はありがとうございます。また明日の正午に」


「はぁーい」






「ユーリ、アルと連絡は取れたか?」


「…………あぁ。問題ない。ホントにやるのか?」


「ガンダとルナは断ってきたよ。別にお咎めをする気はないさ。ミント様が手伝ってくれる。なんとかするさ」


「サンク様…何か……他に方法はないのですか?」


「俺がそっちに参加して、捕縛する方向には出来ないのか」


「生かしておく意味が無い。それに、ユーリが参加しなければ人質救出の可能性が下がるだろ。アルと2番隊、まぁ仮に騎士団をつけたとしても、確実に成功させられると思うか?」


「いや……救出作戦はスピードが命だ。騎士団の参加は逆に成功率を下げる可能性があるし、騎士団がいなければ戦力に不安が残る……」


「わかってるじゃないか。人質救出が最優先事項だ。そこにユーリとアルを割く以上、アジトは強襲して潰すしか選択肢がないんだよ。俺とミント様でもそれは問題無いが、全軍招集は念の為だ。まぁ無理だったけどな」


「くっそぉ!! 感情的になってるくせに、冷静に分析しやがって! お前を止める材料がなんも残ってねーじゃねーかよ!!」


「それが俺だよ。この間は冷静じゃなかったよな、ユーリには助けられた。ありがとな。お陰で冷静に戻れたよ」


「冷静を通り越して冷徹だっつーの……。明日正午からだな。ミスのないようもっぺんアルっちと話してくる」


「では、私もご一緒させて頂きます……」





「…………冷徹でも冷酷でもなんでもいい。人攫いは潰す。それだけだ」






「せいれーつ」


「「「ハッ!!」」」


 ミント様の部下、総勢100人か。

 数は部隊の中で1番少ないが、下位部隊があり、その中から選りすぐられた100人だ。

 入れ替え戦が定期的に行われていて、部隊の練度は他の追随を許さない。


「さんちゃーん、任務の内容教えたげてー」


「あぁ………」

「ミント指揮下特務部隊、通称アゲハ部隊の諸君!! 本日の任務は、砂漠に潜む人攫いグループの殲滅だ! タタル砂漠の岩山地帯、カラスの寝ぐらに人攫いグループが潜伏している! 既にこの『夜の爪』と名乗るグループに、23人もの人が捕まり幽閉されている! 人質の救出は別の地点にて勇者ユーリが向かっているため、君達の任務は『夜の爪』の殲滅となる!!」


「そんなグループが……」

「23人も?! 許せねぇ」

「勇者様に任せれば安心だ!」


「正午より任務開始! タタル砂漠へと向かう! 現地到着次第、速やかに殲滅戦を開始する! 『夜の爪』は岩山の洞窟をアジトとしている。天井は空いている箇所もあるが、脱出は不可能。出入り口は前後2つ。まずはこの出入り口を塞ぎ、その後全員で岩山ごと魔法で吹き飛ばせ! 1人も逃がすことは許さんぞ!!」


「え、不意打ちで全員生き埋めに?」

「岩山ごとって…全員で遠距離から攻撃か…」

「捕縛するんじゃないのか……」

「文字通り殲滅……皆殺しにしろってことか」

「いくら人攫いっても、皆殺しって……」

「気分のいいもんじゃあないな……」

「俺、ちょっと嫌だな……」

「仕方ないだろ、王様直々の作戦だぞ」


「これは民の平穏な日々を守るための作戦だ!! 皆の善戦を期待する!!!」


「そう……だよな」

「あぁ、ほっとくと知り合いがさらわれる」

「俺たちが守るんだ」

「そ、そうだよ、守るための戦いなんだ!」

「あ、あぁ! 綺麗事なんて言ってられねぇ」


「では、各員時間まで待機!!」




「あらー、いい演説じゃないー? 腰の引けた隊員がうまく騙されてくれたわねー」


「騙されてって……まぁ、間違ってはないですが」


「自分もそうやって騙してるのかしらー?」


「………………そんなこと、ありません」


「あら、そうー。さーて、アタシは時間まで、その辺でぷらぷらしてるわー」


「………はい」






 砂漠地帯まではあと20分ってとこか……。


 ガンダとルナはやはり来なかったな。当たり前か。

 昨日は言い過ぎた……か。あの2人が、真っ向切って反発してくるなんて、思いもしなかった。

 帰ったら謝ろうか…………。ははっ、何を考えてるんだ俺は。

 あいつらと友達にでもなってるつもりか?アホか俺は。

 俺は王で、2人はそれに仕える従者だ。王が従者に謝ってどうする。


 そうか……友達みたいに思ってたのか、2人のことを。

 2人はどう思ってんだろうな、俺のこと。

 今回の件で見限られるか? 王に反対して、兵を出さなかったくらいだもんな。普通に考えたら打ち首モノか。

 それだけ、俺に反発したってことか……。



 あと10分。作戦開始エリアまでは10分だ。

 いいんだよな、これで。

 人攫いグループは悪だ。放ってはおけない。

 でも、カズキには反対された……。キリアにも、ガンダとルナにもだ。

 俺は間違っていないはずなんだ。

 なんでみんな反対するんだ。人攫いグループを潰すことの何がいけないんだ。

 強襲以外にどうする? 交渉? 全て生け捕りか? 無理だろ、そんなもの。

 砂漠地帯までは警戒しながら進軍すれば問題無いだろう。

 しかし、砂漠に入れば別だ。敵だって見張りくらい立てる。

 砂漠に入って岩山のアジト手前までは約5分。即座に入り口の封鎖と、外に出ている敵の捕捉をしなければ逃げられる。

 悠長に生け捕りなんてしてる余裕はないんだ……。


 わかっているはずなのに、なんで俺はこんなにも不安なんだ……。


「さんちゃん、着いたわー」


「えぇ、砂漠地帯はすぐそこ……。ここで準備を整えましょう」


「みんなー。ここからはスピード勝負よー。役割を確認して、最終準備ねー」


「「「ハッ!!」」」



 もうすぐで作戦開始だ。もう後には引けない。

 いいのかこれで?

 悲劇は繰り返しちゃいけないんだ。

 本当にこれしか方法はないのか?

 人攫いは全て無くさなければいけない。

 何か手はあったんじゃないのか?

 俺は間違っていないんだ。

 思考停止しているんじゃないのか?


 もっとカズキに頼るべきだったんじゃ「さんちゃんー」


「な、なんですか?」


「準備はできたわー。いつでも行けるわよー」


「わか……りました」


「迷ってるのー? ここまで来て、人攫いがかわいそうーかなー?」


「かわいそうだなんてことはない!! …ですよ。何も迷っていません。行きますよ、作戦開始だ」


「さぁー、最終確認。岩山までは5分、目標が見えたら第1部隊は入り口の封鎖ねー。第2部隊は周辺の警戒と探索ー。第3部隊から第5部隊までは、万が一のフォローを意識しつつ、最終攻撃の陣形に散開ねぇー」


「「「ハッ!!」」」


「問題無いようならー、あとはさんちゃんー」


「えぇ……。これより、作戦行動を開始する! まずは速やかに出入り口の封鎖だっ!! 第1部隊から順に、進軍開始!!」


「「ハッ!!」」


 迷うな! 迷うなマサト!! ここで迷っても、もう作戦が失敗するだけじゃすまない!!

 ここまで来たら、迷いはこちらの被害を生んでしまう!!

 もう進むしかないんだ!!!




「目標アジト確認しました! これより封鎖にかかります!!」

「第2部隊散開! 敵見張りの探索を行います!!」

「第1部隊敵アジトに向けて魔法準備!!」


(サンク!! 聞こえるか!! アジトへの進軍を止めろ!!!)


 なんだ?! カズキの声…か? アルのコネクトか!


(サンク! 頼む、通じててくれ!! さらわれた子が1人増えている! 1人女の子がまだアジトにいるみたいだ!! 攻撃を中心しろ!!!)


 は?! なんだって!!


「第1部隊! 攻撃を……」


『フレア・ボム』

『エア・プレス』

『アース・クエイク』


 ドドドーーーーン!!!


「しまっ………!」


「敵アジト、封鎖完了!! アジト外の敵は順に第2部隊が捕縛しております!」


(ユーリ! ダメだ、攻撃は開始してしまった! 出入り口の封鎖が今終わった。ここでやめたら人攫いグループは取り逃がしてしまうぞ!!)


(間に合わなかったのか……! クソ!! まだ女の子は助かる! 襲撃を止めて引き返すんだ!!)


「今止めたら、夜の爪はまんまと逃げおおせることになるわねー。そしたら次も別の場所で誘拐を繰り返して、闇市が開かれるのねー」


「ミント様……! 聞こえて……くっ! なんとか人質を助けることは……」


「あの封鎖された中に飛び込んで、助けて逃げるのー? 部隊の集中砲火をかいくぐってー?」


「そんなこと………じゃあ、さらわれた子は……」


「わかってることを、言わせるつもりー?」


(サンク! 聞こえてるのか?! 今すぐ止めて引き返すんだ!! 人攫いのアジトなら、俺がまた何回でも見つけてやる!!)


「ルイナス様! どうなされたのですか?」


「もう、部隊の準備は完了しているわー。あとはさんちゃんの合図をみんな待ってる。1秒ごとに逃げる準備が整っていっちゃうわねぇー」


 アゲハ隊が俺の合図を待っている……撃ての合図で人攫いは壊滅する。

 しかし、今撃つとアジトにいる女の子をも殺すことに……。

 どうすればいい、どうすれば……!

 何かいい手はないのか、何か何か何か何か!!

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!!


(サンクーーーーーーーー!!!!!)


「さんちゃん、もう、逃げられちゃうわよ?」





 あぁ……ああああ……アァァァアァ。






「う………撃て」


「全隊! 目標、前方岩山!! 発射!!!」


 ヒュ………ンッッドンッッ!!


 ドガッッドドドドガガーーーーン!!!!!





「な……………今…のは、、、カズ………ユーリ!!! ユーーーリーーーーー!!!!!」


「今……ゆーちゃんがアジトに飛び込んで………」


「うそ…だろ、おい………! ユー……リ?おい!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ