【1話】王と秘書
初投稿です。よろしくお願いします。
最初はギャグ要素多めです。
「よし、それではその案件は次の段階に進めていいな。3日後の会議に間に合うように今の方向で練り直しておいてくれるか」
「かしこまりました。それでは失礼致します。サンク様もお疲れですし、もうお休みになられて下さいね……?」
「あぁ、ありがとう。おやすみキリア。」
「はぁーーーーーつかれた……。今日はこれでおしまいか。明日も朝から会議だってキリアも言ってたし、さっさと風呂でも入って寝るか……。だぁぁぁぁ王様がこんな忙しいとか聞いてねえぞおおおおおお!」
あ、ども。俺? 朝倉マサトって言います。
今はサンクリード・ルイナスと言って、このルイナス王国の王様やってます☆
いやね、ホントはこんなん柄じゃないんだけど……昔、とある事故に巻き込まれて死んじゃったときに、急に真っ白な空間で目が覚めて、女神とか言う人?が、転生させてやるって……!!
これきたあああああメイン神キタ! これで勝つる!! ってなもんすよw
んでまぁ、そんときに俺の親友も一緒に事故にあっちゃってて、その親友と2人で異世界ライフを満喫してたんだけど……。
とあることがきっかけで、王様になっちまえばいいんだよww って勧めてくれたんでなってみたら……ほら、見事に今の状況っすよ…………。
はぁ…王様とかふんぞりかえって好きなことできんじゃんw とか思ってた時期が俺にもありましたよっと。
毎日内政のターンばっかで、会議やらなんやらで大忙し……。
え、親友? あぁあいつなら…って。
コンコン。
「マサトー。いるかーー?」
あ、噂をすれば。
「おーう。入れよカズキ!」
肩くらいまで伸びた赤髪、碧眼に整った顔立ち。身長は180くらいで身体は細く見えるが、その実かなり鍛えられている。
そう。俺の親友であり、共に女神に転生させられた男、夕海カズキ。
こちらの世界では、『勇者ユーリ』だ。
「いやー、つっかれたわー。隣の山脈、ありゃマジキチだわww」
「またそーやって、カズキは1人でふらふら遊んで来たのかw 楽しそうに色々旅できてんだからいいじゃねぇかよ。んで、何があったんだ?」
あれ? そういえば確か、あの山脈には守護龍がいるとかじゃなかったか……?
「いやーあそこはマジヤバイな! 素材探しにちょろっと様子見るつもりで行ったんだけどさw なんか天然のトラップみたいなのがやたら多くて、段々燃えてきてさww」
「ゲーマー根性発揮しすぎだろww」
「そんでさ、最奥になんかでっけードラゴンいたからさ、うおーーファンタジー!! これぞ醍醐味ドラゴン退治!! って倒してきたんだよw つえーのなんのって、3日も戦いっぱなしでようやく倒したぜw さっき戦利品の解体したとこ! この牙と鱗、おすそ分けだからなんか使えよww」
え……隣の山脈のドラゴン………?
「おいまて!! それ、この国の守護龍デスカラーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「えーでは、次の議題に移ります。トラム山脈の守護龍が突如姿を消した問題についてですが…」
はいキタ。そら議題にもあがりますわな……。とりあえずカズキには、素材は遠い国で売るか自分で加工しろって言って空間ボックスに仕舞わせてるから、バレないとは思うけど……。
後処理どーすんだよこれまじ……。
「守護龍の不在により、近隣の魔物が活発になっているという報告が私のところにあがっております。」
「守護龍の不在により、生態系が乱れていると」
「守護龍の不在により、植物の生息域に変化が」
「守護龍の不在により、うちの息子が受験に落ちました」
「守護龍の不在により、娘が彼氏を連れてきまして……」
ほらー…問題山積みじゃねぇかよ……ってあれ?
「最後の2つおかしくね?! 守護龍関係なくね?!?!」
「ルイナス王、どうなされました? 急に。」
「ごほん……い、いや、受験の件と娘の彼氏の件は守護龍とは無関係じゃないのか?」
「何をおっしゃっているのですか! トラム山脈の加護には、学力向上もあるではありませんか。祭壇に三日三晩祈りを捧げるのはどこの受験生も行なっていること。それなくして受験合格など……」
「あ、そ、そうなんだ……。いや、知ってた、もちろん知っていたさ。当たり前だろ? でも、彼氏ができたことはいいことじゃ……」
「いえいえ、ガンダ騎士長の娘さんにできた彼氏というのは、守護がなくなり暴れた魔物から、娘さんを守ったのが縁でお付き合いすることになったと……」
「娘の話出したのお前だったのかよガンダっ! 騎士長もっと重大な事案報告しろよっ! てかそれ守護龍のせいかよっっ!!」
「サンク様、落ち着いて下さい。騎士長の親バカは今に始まったことではないではありませんか」
「あ、あぁ。キリアありがとう。珈琲か、いつも助かる。守護龍の消失で、俺も少し動揺していたみたいだ」
あー、キリアの淹れてくれる珈琲はいつも美味いな……。ちょっと落ち着いた。
「そ、それでは議題に戻りますが、急務なのは活発になり近くの里に降りてきた魔物への対処になりますかな?」
「いや、うちの娘の問題が急務なんだが……昨日も夕飯に連れてきやがって……あいつめ……俺の権限で地方勤務にしてやろうか…うーむ……」
ガ、ガンダもあの極端な所がなけりゃ完璧なんだが……。騎士長仕事しろよ……。てか、それ職権乱用すぎるだろおい。
「ガンダ様、地方勤務よりも山脈近辺の魔物退治の方が闇に葬るにはうってつけです」
っておい、キリア! 何言い出しちゃってくれてるんすか?! ストレートすぎません?!
「ほう……。確かにそれなら大義名分も立つか……。これで娘も………」
いやいやいやいや、なんかヤバイ方向に進んでません?! え、この会議そんな会議だったっけ?! 魔物退治に無理矢理行かすとか…あ、魔物退治すりゃいいのか。
「待て待て、ガンダの娘の話もわかるが、それはお前がまず、娘の話をちゃんと聞いてやることが大事ではないか? それに魔物の話だが、それについてはいい案がある」
「ルイナス様……わかりました。取り乱してしまい申し訳ありません……。して、良い案とは一体?」
「うむ。とりあえずは私に免じて、娘さんとは話し合いの場を設けてくれ。それで、いい案というのはだな……」
「えーーー、なんで俺が魔物退治行かなきゃいけないんだよー。明日から隣の国に遊びに行こうと思ってたのにー。素材もこっちで売るなとか言うし、加工もしてもらいたいしなぁ。あ、そうそう! 隣の国にいい鍛冶屋がいるって噂なんだよなぁー、ドワーフらしいぜw ドワーフww 定番でいいよなぁ……ドワーフの作った剣! 燃えるぅぅぅwww」
「いやいや、お前がその素材になった守護龍倒しちゃったからこんなことになってんだろjk……」
「まぁ、やっちゃったことは気にすんなよw どんまい! はっはっはwww」
「どんまいてそれ、お前のセリフじゃねーから……。はぁ………」
「わーった、わーったよ! やるから魔物退治! そんな怒んなってーww んでも、あのドラゴンもドラゴンだよ。守護龍なら守護龍と首に看板でもぶらさげとけっての、全く……」
いや、そんなマヌケな守護龍いねーだろ。
「まぁ、人助けも勇者の役目だって。ドワーフんとこは、それから行きゃいーじゃねぇか。珍しい素材もとれるかもよ?」
「ん?確かに! お、なんかやる気出てきたぁぁww んじゃ、ちょっと行ってくるわww んじゃまたな!」
「え、ちょ、今からってお前もう夜中……って、足はえぇ……」
なんの説明も聞かずに行きやがった……。まぁ夜中に活発になる魔物も多いしいいんだけど、もう日付跨いだんだがなぁ。
ま、元の世界では0時とか、こっからがスタートみたいなもんだったしな、寝てる日の方が稀だったわな。
かく言う俺もそうだったはず、なんだがなぁ…。ふわぁ……ダメだ、寝みぃ。毎朝6時にはキリアが起こしにくるからな、なんとも健康的な身体になったことで。
ダメだ、寝みぃ。大事なことなので2回言いましたっと、寝よ。
-山脈麓某所- AM.3:00
「ひぃぃぃぃやっっふぅぅぅうううう!!」
「やっベー、見たことないモンスターもいっぱいいるww テラテンション上がってきたああああwww モンスターが素材にしか見えねぇーーー!」
「みwwなwwぎwwっwwてwwきwwたwwwww」
翌朝、山脈麓の魔物問題は謎の魔物消失により解決していた……。
あー、魔物問題も片付いたし、ガンダんとこの娘問題はまぁどーでもいいから放置して良し! やっとちょっと落ち着くなー。
コンコン
「サンク様、失礼します」
「おーキリア。いつもありがとう。この珈琲タイムが1番の癒しだよ」
「いえ、サンク様の秘書として当然でございます」
珈琲うめぇし、横には美人秘書! 流石にメガネはかけてないけど……身長は160くらいで、綺麗な立ち姿が印象的。銀色の腰までありそうな綺麗な髪は、束ねていつも肩から垂らされていて、更に身体のラインはもはや完璧と言わざるを得ない…おっぱいもFはあるだr……
「…様!……ンク様、サンク様。」
「ん? え、あ、おおう? なんだ?」
「聞いておられなかったのですか? なにか考え事をしてらしたようですが……大丈夫ですか?」
「え、あ、ごめん! いや、んん、すまんな、少し先日の問題について考えていてな」
やっべー、女体の山脈問題について考えてたとか知られたら、ドン引きされちまうとこだった。
「流石ですね。丁度私もそのことについてお話を持ってきたところでした」
「ん? 大体片がついたかとは思っていたのだが、まだ何か問題が?」
「えぇ、あと1つ大事な問題が未解決となっております。 受験生の落第問題です」
えーーーーーーそれ本気だったんかい………。
落第問題って、自分でキチンと学べよ、神頼みでなんとかしようとすんなし…。
「そ、それで、それに対する解決案等は何かあがってきているのか?」
「いえ……皆で必死に案を出しているのですが、受験を無くせばいいやら、寝てても卒業できるようにすればいいやら、サンク様の銅像を崇めるようにしようやら、娘が彼氏と駆け落ちしそうになっているやら、それくらいしか出ておらず、サンク様の方で何か妙案はないものかと……」
「おかしい案ばっかだなおい! 堕落したNEETのスクツになるぞこの国! てかガンダあああああああ!!話し合い失敗してんじゃねえかああああああ!!!」
「ガンダ様はかなり意気消沈しておられて……八つ当たりで、ただいま隣国への侵攻準備を整えておられましたので……」
「ちょっと待って! 落ち着いて!! まず落ち着いて深呼吸しようか。ガンダに深呼吸させてええええええ!!」
「いえ、今のガンダ様には落ち着いて頂くことが先決かと思いまして、既に先程意識を刈り取って参りましたので、しばらくは大丈夫かと思います。まぁ……3日は目を覚まされないと思いますので、その間に落ち着かれるかと」
「ぱ、ぱないのぉ…。そ、それならとりあえずは安心だな……。まぁ話は学業問題に戻る訳か……。あとは、俺の銅像崇拝? いやいや、小っ恥ずかしくて街歩けない上に、学業向上効果とかマジでねぇから…ん? 銅像?」
「えぇ、山脈側の街の端に礼拝堂がありますので、そこにサンク様の10/1スケールの銅像を建てる計画です。既に作業は開始させておきました」
キリアさん話はぇー……。てか建築中とかいつのまに確定事項だったのか……。
俺の銅像に祈りとかマジかんべんして欲しいんだけどな……。しかも大きさ10倍かよ! 逆プラモまじぱないのぉ!
ん…? 銅像…崇める象徴がありゃいいんだよな?
それならいっそのこと………。
「いやー、壮観だな。いい出来映えじゃないか。建築士には褒美を弾んでやってくれ」
「かしこまりました。しかし、これもサンク様の素晴らしいアイデアがあってのこと。受験生たちも喜んでおり、かなりの礼拝者が見込めるであろうとのことです」
「あぁ。その収入は学業関連の投資に9割、残りは衛所の向上にでもあててやってくれ。騎士長があれでは大変だろ……」
そこには、立派なドラゴンを模した銅像に跨り、空を駆ける赤髪の青年……そう、勇者ユーリの銅像がそびえ立っていた。
そしてその銅像の隅には、娘の彼氏に関する相談をマシンガントークで訴えかける筋骨隆々な男と、涙目でそれを聞く細身の司祭がいたとかいないとか……。