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ぱらいそ~戦うゲームショップ!~  作者: タカテン
第四章:私より強いヤツが会いに来る!? 後編
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第三十七話:弱いものイジメ

「すげぇ、これがワンターン・キルか!」

「マジで出来るんだなぁ。無茶苦茶難しそうだけど」

「俺、練習して身につけよう!」

「アホ。あれだけのコンボを繋げようと思ったら、練習もそうだけど、その前にカスタマイズも相当細かく設定しなきゃならないぞ。さすがの店長でも、そのレシピなんて教えてくれないだろ」

「そもそもコンボが出来る云々の前に、まず弱パンチでも食らったらおしまいって体力に耐えられねぇよ」

 さきほど自分たちの目の前で起きた奇跡について、ギャラリーたちは興奮を抑えきれないとばかりに騒ぎ立てた。

 自分もワンターン・キルをものにするぞと宣言する者。

 あんな壮絶難易度の技なんて出来るわけねぇよと忠告する者。

 そしてそれでもいつか自分もやってやるんだと心を熱くする者。

 中には「スゲェよ、店長!」と感極まり美織に抱きつこうとして、ホンモノの強烈なカウンターパンチを食らう者までいる。

 まぁ、お約束の九尾だけど……。

「おいおいおい、何が『オレに任せておけ』だ。本当に何もせず相手に一勝をプレゼントしやがりやがって」

 美織側ではドサクサ紛れの凶行が失敗して涙目の九尾に笑いが起きているのに反して、レン側では円藤の怒鳴り声が炸裂していた。

「しかもなんだぁ今のは。アレを喰らったらおしまいだなんて、てめぇ、本当に勝てるんだろうなぁ?」

 先ほどの意趣返しのつもりか、円藤がジロリとレンを睨みつける。負けたらただではすまねぇぞと言わんばかりだ。

「おい、どうなんだ? 黙ってないで答えろよ!」

 円藤が黙って画面を見つめるレンの肩に手を掛ける。

 その瞬間、レンが立ち上がった。

「いててててててて!」

 同時に円藤が悲鳴をあげた。

 レンの肩を掴んだはずの右手が、気が付けば捻りを加えられて自分の背中に回されていた。そして背中の左肩あたりまで持ち上げられ、円藤は苦痛のあまり前屈みにならざるを得なかった。

「おい、一体なにしや」

「静かにした方がいいよ、円藤サン。私があとちょっと力を入れるだけで、あんたの右腕、外れちゃうんだからさ」

 この姿勢で、こんな言葉を言われて、果たして円藤に何が出来るだろう?

 円藤は黙るしかなかった。

「さて」

 突然の仲間割れにあれだけ騒いでいたギャラリーもしーんと静まり返る中、レンはひとり顔色を変えず、まるで「なにやってんだか」とばかりの表情を浮かべて座っている美織を見下ろす。

「あんたのワンターン・キル、見せてもらったぜ。さすがだった」

「そりゃどうも」

「だけど、まだ正確にはワンターン・キルは出来てねぇ。あんた、失敗したしな」

 一ラウンド目は最後の超必殺技が決まらなかった。

 二ラウンド目は一回失敗し、その次の挑戦で成功した。しかし、一度目の失敗時に与えたダメージが残っていた。ワンターン・キルとはその名の通り、一回のチャンスで仕留めないと成立しない。二回に分けてはダメなのだ。

「そうね。それがどうしたの? それともまさか」

 美織が立ち上がった。

 と言っても、小柄な美織では相変わらずレンを見上げるのは変わらない。

「あなたが本当のワンターン・キルを見せてくれる、とでも?」

 なのにそう言う美織は、まるでレンを見下ろしているかのような錯覚を皆に覚えさせるのだった。

 それはレンとて変わらない。見下ろしている相手から見下ろされているような変な感覚に一瞬呆気に取られる。が、

「……そうさ」

 正気を取り戻したレンが笑い飛ばす。

「あんたは三回目の挑戦で成功した。だが、オレなら一回で決めてみせる。本当のワンターン・キルを、な!」

 堂々と宣言し、席を変わるようにレンは手を振った。

「……なるほど、道理でやたらと見たがったわけね。面白い」

 レンに指図されるまま、美織は素直に従って席を離れた。

「最終ラウンドはお互いの操作キャラを交代させてもらうぜ」

「構わないわよ。だってこのままだと……」

 すれ違いざま、耳元で囁かれたレンは目を見開いて、側を通り過ぎる美織の後姿を見送った。

「さぁ、そうと決まったら、そんなおっさん放っておいて始めるわよ」

 しかもどっさと先ほどまでレンが座っていた椅子に腰掛けると、おろしたての筐体のコンパネをバンバンと叩いて催促までしてくる。

「……おもしれぇ」

 レンは円藤の戒めを解くと、素早く席に着く。

 早く戦いたかった。

 一刻も早く、目の前の敵をぶちのめしたかった。

 初めてだったのだ。

 自分を弱者として扱ったヤツは。

 すれ違いざま、美織がボソッと呟いた言葉がレンの頭の中を音の速さを通り越し、まるで光のように駆け回る。


「構わないわよ、だってこのままだと私が弱い者イジメしてるみたいだもん」


 美織は間違いなく、そう言ったのだった。


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