第55話 第3章 END
「えっ、次回って……」
「あれ、何でそんなこと言ったんだ?
違う、違う、そうじゃ、そうじゃなぁ~い♪」
「何か、『センセー』楽しそうね?」
「いや、全然、全く、これっぽっちも楽しくないぞ」
「でも、『センセー』ってば表情がないから、わかり難いわ」
表情のあるメガネって何だよ!
というツッコミは、話が進まないので、
とりあえず、飲み込んで置いた。
決して、更なる返しを恐れた訳ではないぞ。
誤解しないように。
って俺は誰に言いわ……ゲフン、説明しているんだ?
そんなことより。
「とりあえず、あのおしゃべりおっさんに、
お前が、採取を楽しみにしていた事。
そして早く、採取に出発したい事を告げれば、
どうにかなるんじゃね?」
「え~、それだけぇ?
しかも、疑問形だし。
何か他の方法はないの?」
「え~い、試しもせず、
代案もあげずに、文句ばかり言うなんて、
お前は『 』か!」
ちなみに、『 』の部分は一億回こすると………
文字が浮かび上がって……くることもなく疲れるだけです。
あしからず。
「なによ『 』なんて、
ひどい侮辱だわ!
……………………『 』って何?」
「知りもしないのに、侮辱だとはわかるのか?
ともかく、とりあえず、試してみてから文句を言え!」
渋々ながらも、俺の言うことも一理あると認めたからか、
姉弟に冒険者の心得を聞かせているつもり
(カレンは明らかに聞き流している、レオンは真面目に聞いているようだが…)
の元冒険者、現門番にマリアが話しかける。
「おおう。そいつはすまんかったのう。
つい、いつもの感じで話し込んでしまった。
お嬢――マリアにしたら、早く採取に向かいたいよな」
どうやら、効果があったようで、長話を切り上げてくれた。
こっそりと、カレンがマリアに良くやったとサムズアップしている。
「いえ、いえ、私の方こそ、折角の貴重なお話を遮ってしまってすみません。
姉弟には後日ゆっくりと話してあげてください」
と言いつつ、おっさんには見えないように、カレンにサムズアップで返すマリア。
それを見て、余計な事を言うなとばかりに、先程の親指を地面に向けるカレン。
お前ら、本当に仲良くなった(?)な。
「そうじゃのう。
後日、たっぷりと話してやることにするわい。
ところで、こっちの門に来たと言う事は、目的地はティカの森ではないのか?」
「ええ、ナガラ湖まで。ただ、この時期なので場合によってはナガラの滝までを考えています」
「そうか、だから今日出発なのじゃな。
今年も例年通り、奴等が昨日出発したからのう」
「ええ。新人が採取の旅に向かうには最適の時期ですからね」
「だからと言って、油断しないようにな。
絶対に安全と言うわけではないのじゃからな。
姉弟が護衛の経験をつむのにも、もってこいという訳だな。
姉弟この時期に護衛の依頼をしてくれた嬢――マリアに感謝しつつ、
しっかり仕事をするんじゃぞ!」
「オッサンに言われんでも、しっかり護衛するわ!」
カレンが舌でもだしそうな勢いで――本当に舌を出しているし――ゲドに答える。
てっきり怒るかと思ってゲドの方を見てみると、
予想に反して、やさしい顔つきで応える。
「依頼主も当然だが、姉弟も怪我などするんじゃないぞ!
気をつけて行って来い!」
「はい、行って来ます」
今度はレオンがしっかりと返事を返す。
なんだ、姉弟と門番仲良いじゃん。
ゲドさんも良い人だし。
この門番がいるなら、姉弟も大丈夫そうだな。
今回の採取の旅で、そこそこ鍛え上げられるだろうしな。
って、別に姉弟がどうなろうが、ヲレの知ったことじゃないけどな。
やれやれ、やっと門に到着できそうだ。
なぜだろう、ここまで来るのに、一年以上もかかった気が………
「マリアさん、先程の最適の時期というのは何のことなのですか?」
あれっ、何か意識が飛んでたぞ、いったい何が……
何か追求しないほうがいい気がする。
うむ、考えるのやめよう。
「それは、毎年この時期に、新兵の野外実戦訓練があるのよ。
なので、兵士たちが魔物を退治してくれるし、
盗賊の類もこの時期はこの辺りに出没しないのよ」
レオンの疑問にマリアが答える。
「えっ、せやったら、ウチ等いらんのちゃうん?」
「いや、いや、いくら兵士達が優秀であったとしても、
魔物を全滅させられる訳でもないし、
念のため護衛をつけるのが常識なのよ」
カレンの疑問にマリアがまた答える。
マリアの答えは間違っていないが、全ての真実を伝えてはいない。
確かにこの時期であっても、冒険者の護衛を頼むのは常識だ。
しかし、この時期ティカの森に採取に行くのに、護衛を雇う者はいない。
近くて安全なので、必要がなくなるのだ。
よって、ティカの森をメインにしている新人冒険者・駆け出しの冒険者は依頼が極端に減ってしまう。
ならば、護衛の依頼を受ければいいじゃないかと思うだろうが、話はそう簡単な事ではない。
採取の依頼と護衛の依頼では要求されるレベルが違う。
また、依頼する側も採取と違って、自分の命がかかっている為、新人や駆け出しに護衛の依頼はしたくない。
やはり、いつも頼んでいる冒険者や、少しでも腕の良い冒険者に依頼したがる。
そして、この時期は護衛の依頼の件数事態が減ってしまうため、
護衛を中心にしている中堅どころの冒険者が余ってしまい、ますます新人や駆け出しに仕事が回ってこない。
よって、この時期に(格安とはいえ)護衛の依頼を新人に出してくれる依頼者は大変貴重なのだ。
なので、恩に着せようと思えば、できなくもないのだが、マリアはその事には一切触れない。
ってな事を考えているうちに、やっと、
今度こそ本当に門にたどり着いた。
いや~、ここまで本当になが………
何だろう、これ以上考えては危険な気がする…
というか、危ないと確信しているヲレがいる。
やめておこう。
今はまだ、その時期ではない……(打ち切りが決まっているいまこそその時期か?)
うん、打ち切りってなn……だ……っ…け……
ヲレが再び意識を失っているうちに、門で外出の手続きをすませた3人が、
今まさに門をでるところであった。
あれっ、ヲレどうしたんだっけ?
まぁ、いいだろう。
やっと採取の旅に出発でき……なんか頭痛が…
おかしいな、ヲレ頭ないのに……
駄目だ、これに触れては…
「………ンセー、センセー、『センセー』ってば、どうしたのよ、さっきからずっと黙り込んで」
「…マリアか」
「やっと返事してくれた。『センセー』の返事がないと不安になるから…無視しないでよ…」
「…すまん、何故か意識を失っていたようだ」
「『センセー』大丈夫なの?お医者さんに行く?したくはないけど採取の旅に行くの延期する?
………『センセー』までいなくなったら、私本当に一人ぼっちになっちゃう……」
「な~に、神の怒りに触れさえしなければ大丈夫さ!
オレには大いなる野望があるから、それを叶えるまでは例え死んでも、ゾンビになって復活するからな!」
しんみりするのも嫌なので、あえて明るく振舞う。
「ブフッ!
……まったく『センセー』ってば。
メガネのゾンビって何よ、それって!」
ちょっとツボったのか、マリアが噴出す。
どうやら、いつもの調子に戻ったようだ。
「ようし!お前等!
採取の旅に出発するぞ!」
「「「………」」」
「そこは、声を揃えて「オー!!」って答えろよ!!
お前等!!!」
くそー、締まらない終わり方だが、これにて
第3章 END
俺の頭の中に[フィールドエリアに入ったのを確認しました。フィールドマップ表示に変更します]という声が響いた。