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第54話

「えっ、ゲドさん私を知っているの?

 以前会ったことあった?」


尚も質問を繰り返そうとするマリアを遮って、

再びオッサンが口を開く。


「まあ、そう焦るな。

 まず、お前さんを知っているかとの質問だが、

 よ~く、知っている。

 耳にタコができるほど、お前さんの話を聞かされたからな」


―――っん、聞かされた?


「そして、会ったことがあるかという質問だが、

 会った事はない。

 今日が初対面だ」


「ほな、何で、あったことも無いのに、マリアだって判ったんや?

 同名の別人かも知れへんやん?」


黙っていることに、飽きたのか、カレンが突っ込む。


「マリアという名前の女の子、というだけなら、それこそ他にもいるかもしれない。

 しかし、『錬金術師』絡みとなれば、話は別だ。

 お嬢……マリア、

 あんた、エルドレッドさんの娘さんだろう?」


「えっ、ゲドさん!

 お父さんを知っているの?」


「このエンドで、エルドレッドさんの名前を聞いたことが無い者は、ほとんどいないんじゃないかのう?」


「そうですね、ここ出身でない僕達でさえ、その名前は知っていましたからね」


存在をアピールするためか、レオンも会話に加わる。

そうだな、そうやってここにいることをちゃんとアピールしとけ、

そうしないと、そのうち読者が「レオン?」いたっけ?そんな奴?

と言い出しかねないからな。


「最も、実際に会った事がある人となると、その数はかなり減るかもしれんがのう…。

 ましてや、話したことある人となると…、そう多くはないかもな…」


「だから、それがなんやっちゅうねん!

 オッサン、エルドレッドさんと知り合いなんか?」


「………相変わらず、人の話を最後まできかんなぁ、お前は。

 とりあえず、最後まで聞け!

 で、どこまで話したかのう……

 そうじゃった。

 門番でもあるワシとは、何度も話す機会があったわけじゃ。

 エルドレッドさんもよく外に出かけていたからな」


「そうですね、門番をしていれば、話す機会も多かったでしょうね。

 でも、それだけでは、マリアさんを知っている理由にはなりませんよね?」


「せや、せや、たまには良い事いうやんけ、レオン」


「いやな、実は立派な理由になるんじゃよ、それが…」


「どういう事なの、ゲドさん?」


あー、何か落ちが読めてきたような…


「先程、言った、エルドレッドさんと会話をしたことがある人なら、

 ほぼ、100パーセント、マリアの事を知っているんじゃないかのう?

 あの人(エルドレッドさん)の話題の8割は、娘自慢だったから……」


「……父さんってば……」


頭をかかえるマリア。

まぁ、ある意味予想通りだ。


「は、八割ぃ~、ほんまかぁ~?」


「それって、門番との必要なやり取りを除いた、雑談の8割がマリアさんの話だったと?」


「……いや、最低限必要な会話のやり取りを含めての会話の8割じゃ。

 事務的なやり取りを除いたら、会話の9割近くになるじゃろうなぁ~」


あら~、オッサン(ゲド)が遠くを見つめているよ…

会話を思い出しちゃったのかもなぁ~。


「………お、父さん……ってばぁ~…」


マリアよ、あの娘大好き親父(エルドレッド)じゃあ、仕方ない。


「あの娘自慢さえ、なければ、本当に良い人なんじゃがなぁ~」


そのように語る、オッサンを、


『あんたが言うな、アンタが』という表情で見つめる姉弟(ふたり)


人の振り見て我が振り直せ、ってこういう事なんだろうなぁと思ったのは内緒だ。


「そういえば、最近はエルドレッドさんに会っておらんが、

 今日は、一緒じゃないのかのう?」


「えっ!」


思わず、驚きの声を上げるマリア。


無理も無い、エルドレッドが殺されてから、もう半月以上経っている。


てっきり ー殺されたかもしれないということはともかくー、

亡くなった事は、既に知れ渡っているものと思っていた。

一応、有名人だしな。


でも、どうやらそうではないようだ。

何故だろう?

何かあるのだろうか?


まあ、何にせよ、無理に広めることも無いだろう。

ちょうどいい、もう一度アレをやってみるか。


読者の皆さんは覚えているだろうか?

諸般の事情(作者の怠慢)のせいで多くの方がお忘れであるかと思うが、

ギルドでの会話を思い出して欲しい。

具体的には51話……、ってなんだ51話って??


まあ、いい。

例のマリアが初の正解者になった件である。


あの技をもう一度使うことにする。


「マリア、親父(エルドレッド)の死の事は黙っていろ」


「えっ、『センセー』? 何?」


「へっ、突然どないしてん、マリア?」

突然、『センセー』などと言い出すマリアに驚いて声をかけるカレン。


「あれ、カレンには聞こえてないの? これ?」

カレンの反応に驚き、カレンを見たあと、レオンの方をみるマリア。


「どうかしたんですか、マリアさん?」

当然、何も聞こえていないレオンも、ちょっと心配そうな顔でマリアをみる。


何より、質問を投げかけたのに、変な反応されてオッサン(エルドレッド)の被害者ゲドさんが困っている。


まずい……のか?

まあいい。


「マリア、後で説明するから、俺の言うことをそのまま伝えろ!

 ゲドが不審に思うぞ!」


「えっ、……そうね」


「今日は、一人前の『錬金術師』になるために、

 父に頼らず、初めて採取に出かけるところです ってな感じで伝えろ」


俺の伝えた内容を、若干自分の表現にかえつつ、ゲドに伝えるマリア。


ちょっと、不審がっていたゲドも、父親が同行しない、

初めての外での採取に緊張しているせいだろうと思ったのか、

納得したように頷く。


ある意味狙い通りだ。

その為、わざわざ 初めて と付けたのだからな。

何せ、一つも嘘は言っていない。


「そうか、そうか、だから、エルドレッドさんではなく、

 姉弟(こいつら)が一緒なんだな。

 お前ら!しっかり護衛(しごと)しろよ!」


「いわれんでも、わーてるっての」


途中から、話を振られたカレンが面倒そうに答える。


「いや、お前等はわかっておらん。

 ただの採取の依頼であれば、自分の身さえ守っていればいいが、

 護衛ではそうはいかん。

 だいたい……………」


おしゃべり(ゲド)がここぞとばかりに、冒険者の心得を語りだす。

俺がいない時であれば、新米冒険者(こいつら)にとってはありがたい言葉なのだが、

いかんせん、マリアは冒険者ではないし、俺にいたっては、(今は)人間ですらない。


……当分終わりそうにない。

しゃーない。

口をだすか。


「マリア、お前この話、聞き続けたいか?」


例によって、マリアだけに聞こえるように話しかける。


マリアは黙って首を横に振る。


よし、言うぞ!


「次回に続く」

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